計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
計測・測定に関連する用語全般が収録されており、初めて計測器を扱う方でも分かりやすく解説しています。
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特性インピーダンス(とくせいいんぴーだんす)

(Characteristic impedance) 電気信号を一様な伝送線路(伝送線路の媒体の種類や構造が一定)により伝送する場合に、ある伝送線路上において発生する電圧と電流の比として表現される。単位としてはオーム[Ω]が用いられ、通常50Ωや75Ωが用いられる。高周波回路で適用される分布定数回路においては、単位長さあたりのインダクタンスがLで、単位長さあたりの静電容量がCの場合で損失のない均一な伝送路の特性インピーダンスZ0は左式であらわされる。また、伝送路が同軸線路でその外導体の内径がD, 内導体の外径がd の場合の特性インピーダンスZ0は右式であらわされる。ここで、εr は同軸線路の絶縁物の比誘電率である。

トラッキング誤差(とらっきんぐごさ)

(tracking error) ネットワークアナライザによる測定において生じる測定誤差の1つで、「周波数レスポンス誤差」とも呼ばれ、反射トラッキング誤差と伝送トラッキング誤差の2種類がある。これらは、ネットワークアナライザを構成する回路要素(方向性結合器、ミキサ、局部発振器、検波器などのハードウェア)の周波数レスポンス(周波数応答特性: 振幅と位相の両方の特性を含む)の差異により生じる。 「反射トラッキング誤差」は、反射測定において送信側ポートからの反射信号と基準信号を受信する回路要素の周波数応答の違いに起因する誤差。「伝送トラッキング誤差」は、伝送測定において受信側ポートの伝送信号と基準信号を受信する回路要素の周波数応答の違いに起因する誤差である。

トランシーバ(とらんしーば)

1. 有線・無線通信で送信機や送信部品のこと。 2. 無線で通信する携帯機器のこと。以前は片側通信の機器が多く、自分が話すときはボタンを押し、相手が話すときはボタンを離す、という操作をして会話した。携帯電話が普及する以前は離れた2つの場所で会話できる無線通信機器として活躍した。たとえば、工事現場や、遠足の引率で先頭と最後尾など。1980年頃はまだ携帯電話は無く、2台に分乗して高速道路を走るとき、どこのサービスエリアで待ち合わせるかを相談するなど、トランシーバがあると便利だった。現在も工事現場などで使われるが、携帯電話の小型化、普及により、工事現場での使用例は減っている。

nanoVNA(なのぶいえぬえー)

2020年頃からECサイトなどで販売され始めた小型RF測定器の1種(tinySAやnanoVNAなど)。マイクロコンピュータやFPGAなどで内部のアナログ回路を簡素化し、低価格(約1万円)で小型(ポケットサイズ)ながら高い性能を実現したネットワークアナライザ。表示画面2.8インチのエントリーモデル(最高周波数1.5GHz)から、最高周波数6.3GHzモデルまである(2023年6月現在)。メーカは従来のRF計測器メーカ(キーサイト・テクノロジーやローデ・シュワルツなど)ではなく、開発者も日本ではなく中国が多い。nano(10憶分の1の単位、非常に小さいことをあらわす表現)VNA(Vector Network Analyzer)というネーミング。つまり「大変小さなサイズのVNA」ということ。 nanoVNAの説明は「超小型のネットワークアナライザ」、「コンパクトでハンドヘルドなベクトルネットワークアナライザ」、「個人で入手可能になった低価格ネットワークアナライザ」などで、明確な(定量的な)定義は難しい。「nanoVNA系格安ネットアナの操作方法(コマンド体系)」などの表記が雑誌やネットに見られる。モデルや仕様、使い方などは解説があるが、そもそもnanoVNAとは何か、は(毎年のように進化しているので)解説が困難である。 nanoVNAは日本人の高橋知宏氏が始めたプロジェクトである。オープンソースのため海外に広がり、複数メーカが製品をリリースするようになった。高橋氏は2016年頃にオリジナルを発表したが、回路図やファームウェアを公開していたので、中国のハッカーが改良し製品化したといわれる。2019年には中国の通販サイトに登場している。現在はnanoVNA-H、nanoVNA-H4、LiteVNA、LibreVNAなどのモデルが日本で購入できるが(2023年6月現在)、各モデルは開発者が異なる(tinySAの設計者である中国のHugen氏も開発者の1人である)。 日本では2022年頃から趣味のアマチュア電子工作の月刊誌、トランジスタ技術(CQ出版社)にnanoVNAの記事が掲載されるようになった。高額な計測器だったネットワークアナライザが激安価格になったので、電子工作マニア、アマチュア無線愛好家などが購入して使うようになり、トランジスタ技術 2023年8月号ではnanoVNAだけで約26ページの特集が組まれている(マニアがnanoVNAで測定した評価結果のグラフや操作方法が掲載されている)。 5万円以下の格安オシロスコープ(ポケットサイズからポータブルまで)がリゴルやOWON(オウオン)などの中華系オシロスコープメーカがつくっているように、nanoVNA、tinySAなどの小型/格安RF測定器も中国を抜きには語れない。中国発の計測器は2000年以降に数が増え、5~10年位かけて製品の品質を安定させ、従来の計測器メーカと遜色ないラインアップに成長しつつある。Siglent Technologies(シグレント)は2023年7月のTECHNO-FRONTIERに、日本で初めて出展した。テクトロニクスやキーサイト・テクノロジーのミドルクラスのベンチトップモデルと遜色ない仕様の製品を、上記2社よりも安価でリリースしている。Good Will Instrument (GW Instek)(日本での販売はテクシオ・テクノロジー)やリゴルに次いで、OWONやSiglent Technologiesなどの中華系格安計測器の露出が2023年から加速している。 エントリーからミドルクラスのオシロスコープのように、今後は(個人ユースではなく企業で技術者が使う)格安RF測定器(当然、中華系)が発売される時代が近づいているかもしれない。ハンドヘルド・スペアナは中華系格安メーカが主流で、キーサイト・テクノロジーやローデ・シュワルツ、アンリツは上位の高額モデル(ベンチトップ)にラインアップをシフトする、という図式である。計測器メーカはハンドヘルドでも高性能(安価ではない)モデルをラインアップしているので(Streamlineなど)、現在は中華系計測器メーカの参入はあまりないが、Good WillがEMCに特化したスペアナ(GSP-9330など)でシェアを伸ばすなど、今後のRF測定器メーカの展開(勢力図)はわからない。

2端子法(にたんしほう)

(two-terminal method) 一般にテスタなどで抵抗を測定する場合は2本の線でDUTに接続する。これを2端子法(または2端子測定法、2端子接続、2線接続)と呼ぶ。抵抗測定器の代表であるデジタルマルチメータ(DMM)も通常は2端子法で測定する。抵抗値が10Ω以下の小さな値になると、接触抵抗や測定ケーブルの影響を受けて正確な測定ができなくなり、4端子法を使う(高いインピーダンスでは5端子法)。 最も簡単な接続法であるが、接触抵抗、配線の直列インピーダンス、ケーブルや端子間の浮遊容量の影響を受けるため、数十kHz以上の周波数では誤差が多くなる。おおむねインピーダンスが10Ω~10kΩの範囲内での使用が望ましい。 参考記事: LCRメータの基礎と概要 (第2回)の2ページ目・・試料との接続方法を図解。

入力雑音電力(にゅうりょくざつおんでんりょく)

(Input noise power) 雑音源から回路に入力される雑音電力。入力雑音電力Ni[W]は計算上、雑音電圧の2乗を入出力インピーダンスの4倍で割った値となり、下式で与えられる。電気通信分野における増幅器(アンプ)等の雑音計算や雑音評価には、この(等価)入力雑音電力が使用される。

ネットアナ(ねっとあな)

ネットワークアナライザ(network analyzer)の略称。略記:NA。参考用語:VNA参考記事:アナライザあれこれ 第5回「ネットワークアナライザ」

ネットワークアナライザ(ねっとわーくあならいざ)

(network analyzer) 電子部品の伝送特性を測定する機器。略称:ネットアナ。ネットワークといっても、LANやクラウドのような通信網のことではなく、回路網のことをネットワークと呼んでいる。高周波の回路網に使用される各種の部品や回路システムの特性を評価する総合試験なのでアナライザの名称がある。 信号源を内蔵し、DUTに与えた高周波信号の反射波や透過波からSパラメータを求めることによって、DUTのインピーダンスや減衰量などを測定する。測定結果は伝送特性や位相特性などの周波数特性(f特)以外に、スミスチャートによる「複素インピーダンスの周波数による変化の推移」が表示できる(現在主流のVNAの話。スカラネットワークアナライザは振幅と位相の内、振幅しか測定できない)。DUTはアンプなどのアクティブデバイスやアンテナ、フィルタなど(パッシブデバイス)、様々な高周波部品である。DUTとの接続は各種の治具(テストフィクスチャなど)が使われる。DUTを接続する前に校正キット(ECalなど)を使用する。マイクロ波やミリ波などの「高周波の伝送理論」、たとえば特性インピーダンス、分布定数回路、定在波などを理解していないとネットワークアナライザは使いこなせない。 カテゴリーは回路素子測定器(LCRメータ、インピーダンスアナライザなど)やFRA(Frequency Response Analyzer、周波数特性分析器)に近い機種群である。扱う周波数はMHzからGHzの高周波になるので、RFの基本測定器であるスペクトラムアナライザやSGをつくっている計測器メーカが手掛けている。世界的にトップシェアはキーサイト・テクノロジーで、ローデ・シュワルツやアンリツもラインアップしている。最近はスタンドアロンではなくPC接続型のモデルも増え、USB計測器をキーサイト・テクノロジーなどが発売している。リアルタイムスペクトラムアナライザでRF分野に本格参入したテクトロニクスも小型のネットアナを発売し、MWE2017(2017年12月開催のマイクロウェーブ展)に出展している。 (計測器だけでなく)一般には「ネットワーク」というと通信やコンピュータが連想される。実際にプロトコルアナライザ(回線に通信されているデータ内容を見る測定器)で「ネットワークアナライザ」という品名の製品が、フルーク(現フルークネットワークス社)に以前あり(現在は廃止品)、大変誤解と混乱を招く名称だった。現在、通信の測定器で「ネットワーク関連測定器」というような表現をしている製品群があり、各種の通信規格を評価するが、このネットワークとネットアナは計測器の初心者には混同されやすい。 参考用語 ネットアナの用語一覧

ノイズソース(のいずそーす)

(noise source)ノイズフィギュアメータと併用して、雑音指数(ノイズフィギュア)を測定するための発生器。雑音発生器とも呼ばれる。 参考記事:ファンクションジェネレータの基礎と概要 (第1回)・・・さまざまな信号発生器・発振器を列記して概説している。

ノイズフィギュアメータ(のいずふぃぎゅあめーた)

(noise figure meter)信号に含まれるノイズの大きさを測定する計測器。日本語では「雑音指数測定器」と呼ばれる。

パッド(ぱっど)

(Pad) RFで使われる減衰器(アッテネータ)のこと。減衰器のことを「ATT(アッテネータ)」や「Pad(パッド)」と表現している。高周波の固定減衰器を「アッテネータパッド」と呼んでいる。高周波の代表的な計測器メーカであるアンリツには「二信号特性測定用パッド Z-164A」という製品がある。この仕様は「2つの信号を混合して1つにする整合器」で、固定減衰器の1種といえる。RFだけでなく音響の分野でもATTやPadという用語が使われている。ATTは少なくともRFだけでなく低周波でも使われる表現だが、パッドは低周波ではほとんど使われない。

パワースプリッタ(ぱわーすぷりった)

(power splitter) 1つの信号を2つ以上の回路に分配する部品。パワーデバイダとは抵抗を分割するための抵抗の配置が異なる。TVアンテナからの信号を複数台のTVに入力するためのパワースプリッタを分配器と呼んでいる。 計測器情報:「パワースプリッタ」が品名につく製品の例

パワーデバイダ(ぱわーでばいだ)

(power dibider) 1つの信号を2つ以上の回路に分配する部品。パワースプリッタとは抵抗を分割するための抵抗の配置が異なる。 計測器情報:「パワーデバイダ」が品名につく製品の例

反射(はんしゃ)

(Reflection)電磁波が伝送路を伝わるとき、媒体が違う面や、特性インピーダンスが異なる箇所では少し反射されて、信号源側に戻る現象が起こる。高周波の基本理論の1つ。反射という現象を応用した測定手法がTDR(Time Domain Reflectometry、時間領域反射法)である。サンプリングオシロスコープによる伝送線路のインピーダンス測定や、光ファイバの破断点検出(OTDR)に応用されている。

反射係数(はんしゃけいすう)

(Reflection coefficient) 伝送線路上のある基準面において、その基準面への入力波に対するその基準面からの反射波の比としてあらわす。通常、反射係数(Γ)は電圧比としてあらわされ、複素数である。下式で、Vi : 入力電圧, Vr : 反射電圧, θ: 入力電圧と反射電圧の間の位相角。|Γ|の取り得る値の範囲は、|Γ|= 0 〜 1 である。

光半導体(ひかりはんどうたい)

(opto semidonductor) 2つの意味がある。従来は以下の1.だったが、最近2.の意味でも使われている。 1. 半導体の中で、電気信号を光信号に変換する発光素子、光信号を電気信号に変換する受光素子、発光素子と受光素子を組み合わせた複合素子を、「光半導体」と総称する。その種類と用途は以下。 (1)電流を光に変換する光半導体(発光素子) ①LED:照明、信号灯、ディスプレイ、電子機器のバックライトなどに使用。 ➁レーザーダイオード:DVDの書き込み、光ファイバ通信、3Dセンサなど。 ➂赤外線LED:テレビのリモコン、防犯カメラ、車両カメラなど。 (2)光を電流に変換する光半導体(受光素子)・・光の検出をするので、光センサとも呼ばれる。 ①フォトダイオード:カメラの露出計、光通信システム、分光器、暗視装置など。 ➁フォトトランジスタ:自動ドア、カメラ、スマートフォン、光電センサなど。 光デバイスをopto device(オプトデバイス)と呼んでいる。opticalは日本語では「光学」になるので、optical semiconductorは「光学 半導体」である。ここでいう光半導体は英語では、opto semidonductor。 光半導体に関する国内メーカの対応は様々。総合半導体メーカのルネサス エレクトロニクスは、2020年5月に光半導体事業(半導体レーザーとフォトダイオード)から撤退し、製造拠点である滋賀工場の生産ラインを停止すると発表した。光デバイス専業メーカの浜松ホトニクス(通称:浜ホト)は、2019年6月に光半導体事業の生産能力向上のため、浜松市の新貝工場に新棟を建設すると発表した。 2. NTTは次世代の基幹通信網として、オールフォトニクス・ネットワークのIOWN(アイオン)構想を2019年に発表した。光を電気に変換しないで光のままで処理することで、電気よりも高速・大容量を実現する。そのためのキーは「チップ内で(電気を使わず)光で処理をする」光半導体である。ここでいう光半導体は前述の受光素子、発光素子ではなく、光電融合デバイスを指す。NTTは、「従来の半導体上で電子回路が担ってきた情報のやり取りを光回路に置き換える」、電子が通る銅配線の代わりに「シリコンに光を閉じ込めて通す道、光導波路を形成する」研究を進めている(プリント基板に安価に光導波路が形成される未来を想定している)。 IOWNグローバルフォーラムには世界中の先端企業が参画している。インテルは光半導体(シリコンフォトニクス)の研究に注力している大手企業の1社である。電子ではなく、従来よりももっと高速の光を使って情報を伝えて処理することで、「これまでにない超低消費電力、超高速処理で動く半導体」の開発が進んでいる。 2000年代から、半導体のシリコン基板上に、光導波路、光スイッチ、光変調器、受光器などの素子を形成する技術が研究されてきた。シリコン基板上に受光器などを集積するので、シリコンフォトニクスと呼ばれる。NTTは光送受信モジュールを開発できたことを成果としてIOWNを発表した。インテルは2020年12月開催のIntel Labs Day 2020で、シリコンフォトニクスの研究テーマとして、従来のサイズから1000分の1に小型化した変調器を紹介した。シリコンのCMOS集積回路の製造技術は確立しているので、シリコンフォトニクスによる超高速・小型・低消費電力の光半導体は、比較的に安価な製造コストで実現できると考えられている。

非線形回路網(ひせんけいかいろもう)

(Non-linear network) 入力信号の周波数成分と出力信号の周波数成分とが異なる回路網をいう。即ち、非線形回路網は、非直線性を示す回路要素を含んでいるために入力信号の周波数成分とは異なる周波数が生成されたり(高調波や相互変調波など)、周波数変換された信号が出力されたりする。

ファブリペロー共振器(ふぁぶりぺろーきょうしんき)

(Fabry-Perot resonator) ファブリペロー干渉計ともいう。反射板・透明板・半透鏡などで構成され、通信、レーザー、光学分野で使われる。電波の共振波長から誘電率などが測定できる。 シャルル・ファブリとアルフレッド・ペローから命名された。

Field Fox(ふぃーるどふぉっくす)

キーサイト・テクノロジーのハンドヘルドRF製品群の通称。NA(ネットワークアナライザ)にSA(スペクトラムアナライザ)機能の一部を付加した、マイクロ波/ミリ波のハンドヘルド製品群である。

VSWR(ぶいえすだぶりゅあーる)

(Voltage Standing Wave Ratio)電圧定在波比の略記だが、VSWRやSWRという表記の方が良く使われている。高周波の伝送に関する基本的な単語。デジタルではなくアナログの基礎用語。