計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
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相互変調歪み(そうごへんちょうひずみ)

(Inter-modulation distortion) 周波数の多重化に伴い、デバイスや通信システムに近接した基本波を通すことが多くなってきた。この場合デバイスや通信システムにおける非直線性により、近接する基本波同士あるいは基本波の高調波と基本波の間で高調波歪みが発生し、これを相互変調歪みという。特に、2つの近接した基本波を通した場合に一方の基本波と他方の基本波の2次高調波との間で発生する高調波歪みを「3次相互変調歪み」といい、基本波の近傍に現れるためにフィルタで除去できず、デバイスや通信システムを評価する重要なパラメータとなる。「歪」は「ひずみ」と表記されることもあるが、この用語では「歪み」と記載されることが多い。

送信機(そうしんき)

(transmitter)信号を送信する機器のこと。部品から装置まで多様。アンテナは送信機と受信機の両方に使われる。別名:トランスミッタ

SAWデバイス(そうでばいす)

SAW(Surface Acoustic Wave)は、日本語では「表面弾性波」。弾性体の表面にエネルギーが集中して伝搬する波。この原理を使った電子部品をSAWデバイスと呼び、フィルタ、共振子、遅延線、発振器などがある。SAWデバイスではSAWフィルタが有名。SAWセンサの特殊な例としてボールSAWセンサがある(以下の参考記事で取材)。 SAWフィルタは、携帯電話、TVチューナ、無線LANなどの機器に搭載され、妨害波を抑圧し、信号波のみ通す高周波のフィルタとして使われている。SAWフィルタのメーカは日本電波工業株式会社(NDK)、日清紡マイクロデバイス株式会社、株式会社村田製作所、セイコーエプソン株式会社など、高周波(RF)部品のメーカである。 surface(表面)、acoustic wave(音波)なのでSAWは表面音波ととれるが、acoustic waveには弾性波という意味もある。「弾性表面波」という表記もある(なぜ英語のとおりに日本語にしないのか、理由は不明)。英語のsawは「のこぎり」なので、まったく違う意味になる。表面弾性波のSAWも、のこぎりのsawと同じ発音(そう)のため、発音からは区別はつかない。

増幅器(ぞうふくき)

小さい電圧信号を大きく(増幅)する機器。 「アンプ」と表現されることも多い。高電圧対応の電力増幅器や高周波対応のプリアンプなどがある。

ソースマッチング(そーすまっちんぐ)

(Source matching) 信号源(ソース)と伝送線路とのインピーダンス整合をとること。

ソースミスマッチ誤差(そーすみすまっちごさ)

(Source mismatching error) 信号源(ソース)と伝送線路とのインピーダンス不整合による誤差をいう。ネットワークアナライザによる測定においても生じる測定誤差で、送信側ポートにおいてDUTからの反射信号が信号源部で反射してDUTに再入射することに起因する誤差である。事前に送信側ポートに標準器(ショート端やオープン端)を接続し、補正することができる。

側波帯(そくはたい)

(Side band) 搬送波(周波数: fc )に対して、f1~f2の周波数帯を持った信号波(ベースバンドという)で振幅変調(AM変調)すると、搬送波を中心として、これより低い周波数成分fc-(f1~f2)と、これより高い成分fc+(f1~f2)が生ずる。これを側波帯という。下図のように搬送波より低い方を下側波帯(LSB: Lower Side Band)、搬送波より高いほうを上側波帯(USB: Upper side Band)という。2つの測波帯を含む周波数帯域(fc-f1~fc+f1)がこの通信で使用される占有帯域幅となる。 参考用語:側波帯雑音、帯域、キャリア

帯域幅(たいいきはば)

(Band Width) 電気信号が回路要素(フィルタ等)を通過する時に、下図のようにその最大レベルから3 dB下がった点(電力レベルで半分)の下限周波数と上限周波数の間の周波数範囲(f1 〜f2 )をいう。単位としては周波数[Hz]が用いられる。スペクトラムアナライザ(スペアナ)などの周波数分析機器で使われる基本用語。信号の帯域幅は、そのパラメータ(振幅や位相)が時間と共に変化する速さの尺度である。従って、帯域幅が広いほど回路要素を通過する信号は速く応答する。スペアナの仕様では「BW」と略記されることが多い。 「帯域幅」はいわなくても周波数のことであるが、「周波数帯域幅」という表現もみられる。「馬から落馬する」の類の表記と言えなくもないが、オシロスコープの用語で周波数帯域がある。帯域と聞いて周波数のことだとイメージしにくい素人には周波数帯域幅や周波数帯域と表記されているほうがわかりやすい。

ダイポールアンテナ(だいぽーるあんてな)

(dipole antenna) 導線をT型にしたアンテナ。ケーブルの先の給電点からT字に2本の直線状の導線(エレメント)を左右対称に伸ばした形状をしている。 線状アンテナの基本となる、最も構造が簡単なアンテナ。送受信したい電波の波長の1/2の長さの導線を垂直に設置した時に、水平方向の電波の送受信ができる。ダイポールアンテナを複数本組み合わせて利得を高めているのが、TV放送受信用に使われる八木・宇田アンテナである。 計測器情報:品名に「ダイポール」がつく製品の例

立ち下がり時間(たちさがりじかん)

(fall time、trailing edge time) オシロスコープの説明でこの用語を解説していることが多いが(立ち上がり時間など)、直流電源のラインアップが最も豊富な計測器メーカである菊水電子工業の製品総合カタログ(電源・電子負荷に関する用語)には、「入力電圧を遮断または出力をOFFした後、出力電圧が90%から10%に変化するのに要する時間」と説明されている。 デジタル信号を扱う場合、立ち上がりや立ち下がりのエッジを捉えて処理をすることは基本である。立ち上がりや立ち下がりの時間はデジタル回路では重要な仕様である。

ダブルリジッドガイドアンテナ(だぶるりじっどがいどあんてな)

(double rigid guide antenna) ラッパのような形状をしているアンテナ。主にEMI測定で使用される。メーカとしては海外のETS-LINDGRENが専業として有名。「ダブル・リッジ・ガイドアンテナ」という表記も見かける。 計測器情報:ETS-LINDGRENの製品例

チャンセレ(ちゃんせれ)

チャンネル(またはチャネル)セレクタの略称。複数の信号を切り替えるスイッチの役割をする計測器。通信測定器で、電気(RFなど)の製品と光の製品がある。光の製品は「光チャンネルセレクタ」が正式名称だが「光のチャンセレ」と呼ばれることがある。

直交変調(ちょっこうへんちょう)

(quadrature modulation) 変調の一種で、同相(I)波形と直交(Q)波形の2 つの搬送波(キャリア)が、1 つのチャンネルを通じて結合し(直交変調)、送信され、受信側で分離・復調される。この技術は現在の無線通信ネットワークで使用されている。(テクトロニクス の冊子「信号発生器のすべて」の用語解説より) I:In-Phase(同相)、Q:Quadrature-Phase(直交位相)のため、直交変調はI/Q変調と呼ばれることが多い。現在、携帯電話などの移動体通信を筆頭に、無線通信はデジタル変調を使うので、直交変調(I/Q変調)は無線通信の基礎である。計測器としては「I/Q変調信号発生器」などの品名のI/Qジェネレータが、移動体通信向けの信号発生器の主力製品である(以下の参考記事でキーサイト・テクノロジーの新製品を取材)。

通信計測器(つうしんけいそくき)

有線(光通信など)と無線(ワイヤレス)がある。新しい通信方式が開発されるとそれを評価する測定器が現れる。その時代の通信方式に対応するため、計測器の寿命が短い専用器が多い(2年位で次モデルになる場合もある)。基本測定器は有線では光測定器の光パワーメータ(OPM)、光源、光スペクトラムアナライザなど、無線ではRFパワーメータ、信号発生器、スペクトラムアナライザである。 有線の通信測定器は 1. プロトコルアナライザ(略称:プロアナ):RS-232Cなどの低速のオンラインモニタ(ラインモニタなど)と、バスアナライザ、超高速のギガビットLAN(参考記事あり)などのモデルがある。無線LANのプロトコルアナライザもある。 2.ネットワーク測定器:ここでいうネットワークとは通信回線網のことで、交換、伝送、IPなどの伝送品質を評価したり、端末や通信装置の代わりになってエミュレーションしたりする測定器。SDH/SONETアナライザ、BERT(ビット誤り率試験器)や疑似呼(コールシミュレータ)、IP負荷試験装置など。 3.光測定器:光通信の測定器や光ディスクなどのDVD評価用測定器。電磁波としての光を扱う測定器で、照度計や輝度計のような人が感じる光(明るさ)の測定器ではない。光パワーメータ(OPM)、光源、光スペクトラムアナライザ、OTDRなど。 4.ケーブルテスタ:OSI参照モデルの物理層(レイヤ1)の測定器。LANのケーブルテスタやTDR(障害位置試験器)など。5.アナログの伝送線路の測定器:レベルメータ、選択レベル計など。以前はアンリツや安藤電気がつくっていたがほぼ撤退し、今は大井電気がラインアップしていて、ユーザは工事会社が多い。上記2の機種群は高速になると電気でなく光通信になるので、光測定器の機能を持つが、それらは光通信の基本測定器ではなく通信方式に対応した専用測定器なので、2に分類される。3の光測定器はOPMや光スペクトラムアナライザなどの光の基本測定器と、OTDRや光ロステスタなどの光ファイバ用の専用測定器がある。 デジタル伝送品質の評価の1つであるアイパターンの測定は、主にサンプリングオシロスコープで行われてきた。インタフェースは電気と光の両方がある。アプリケーションは通信であるが、製品はオシロスコープ(&光測定器)である。代表例がキーサイト・テクノロジーのDCA(デジタルコミュニケーションアナライザ)だったが、広帯域オシロスコープ(高速オシロスコープ)が普及した現在では、生産中止になっている。 無線の通信測定器は、別名RF測定器や高周波測定器と呼ばれる。 1.基本測定器:標準信号発生器(SG)、スペクトラムアナライザ(スペアナ)、高周波パワーメータ。 2.通信方式に対応した専用測定器:移動体通信用のワンボックステスタや無産機テスタ、送信機テスタなどの変調解析機能があるスペアナ、シグナリングテスタなど。「無線LANのアナライザ」というと、RF(無線)の項目を評価するモデルはこの項目に分類されるが、プロトコル解析のモデルは(扱っているのが無線であるが)有線の測定器であるプロトコルアナライザに分類される。 ネットワークアナライザ(ここでいうネットワークとは高周波部品の回路網のこと、略称:ネットアナ)は有線の測定器だが、高周波の測定器なので、RF(無線の測定器)と並べて説明されることが多い。高周波デバイスなどを評価する専用器である。インピーダンスアナライザやLCRメータなどの回路素子測定器や材料評価用の測定器と同じ分類にされることも多い。 無線を中心に通信計測器全般を手掛ける老舗のアンリツでは、有線通信のことを「ワイヤード(wired)」と呼称している。無線通信のワイヤレス(wireless)は「線でつながっていない(線が無い=無線)」という意味で、広く普及していることばである。それに倣えば有線は「ワイヤード(線でつながっている)」と呼称するのが自然である。この説明は正しいが、有線通信は一般には「有線(通信)」や「光通信」と呼称されることが圧倒的に多い。通信を熟知した代表的な通信計測器メーカが使う表現が、他の通信業者も使うことばとは限らない。計測の世界の表現は統一されていない用語(方言)も多い。 計測器情報: (有線)プロアナ、光測定器、ネットアナ (無線)信号発生器(通信)、スペアナ、 無線/移動体測定器

抵抗減衰器(ていこうげんすいき)

歪みを発生させることなく、電圧信号を減衰させる機器。(=減衰器、アッテネータ)

定在波(ていざいは)

(Standing wave) 伝送線路上において、波長(または周波数)・伝送速度が同じでその信号の進行方向が互いに逆向きの2つの信号が存在すると、相互の干渉によりその波形がその場に止まって振動しているようにみえる波動が生じる。この波動を定在波という。参考用語:電圧定在波比、VSWR、SWR

デジタル信号発生器(でじたるしんごうはっせいき)

デジタル変調した信号を発生できる信号発生器。携帯電話の通信方式がアナログからデジタル化された1980年代に、機種が増え、RF測定器のメーカから多くのモデルが発売された。通信で使われる変調方式の進化とともに、その需要に対応するモデルが発売されている。メーカとしては世界的にも、キーサイト・テクノロジー、ローデ・シュワルツ、アンリツが3大RF計測器メーカといえる。携帯電話に3Gが導入された当時に通信測定器に参入したアドバンテストや横河電機も、限られた機種群をラインアップしていたが現在はすべて生産終了(撤退)している。AWGなどの信号発生器のラインアップがあるテクトロニクス社の技術資料には「デジタル波形ジェネレータ:デジタル・パターンを出力する信号発生器の一種で、ロジック信号発生器とも呼ばれる」という用語解説がある。「デジタル波形ジェネレータ」という表現は他社ではほとんど見られない。また「ロジック信号発生器」というと、本稿で説明しているデジタル変調信号を出力できるモデルではない。であるから、テクトロニクス社の「デジタル波形ジェネレータ」は「デジタル信号発生器」とよく似た単語だが、別の用語である。

TELEC(てれっく)

一般財団法人テレコムエンジニアリングセンターの略称。一般には「テレック」と呼ばれている。日本を代表する無線設備の認証・試験機関。1978年に無線設備検査検定協会(MKK) が創設され、1998年にTELECに名称変更した。日本では無線局を開設するなど、無線を運用するには認可や、技術基準適合証明(技適)の取得が必要になる(電波法で規定されている)。TELECは日本の電波法に基づき、無線設備の技術基準適合証明などを業務にしている。

電圧定在波比(でんあつでいざいはひ)

(Voltage standing wave ratio) 定在波の最大電圧(Vmax)と最小電圧(Vmin)の比。Voltage Standing Wave Ratioの頭文字をとって VSWRと略表記されることが多い。また高周波では単に SWR と表記することもある。 VSWR(ρ)は、下式で表される。ここで、|Γ|は、反射係数である。ρの取り得る値の範囲は、ρ= 1 〜 ∞ である。

電電ファミリー(でんでんふぁみりー)

NTTの前身である日本電信電話公社は製造部門を持っていなかった。研究開発を製品化するNTTの出入りメーカ(お抱え企業、下請けメーカ)をNTTのファミリー企業という意味でこう呼んだ。通信装置はNEC、富士通、沖電気、日立製作所がつくったのでNFOHと呼称された(一番はNとFで三番がOという、比率を表していると業界ではいわれた)。新しい規格に対応した通信装置(伝送交換)が導入されるときは、同じく電電ファミリーの大手通信計測器メーカ、アンリツと安藤電気が対応する計測器を開発した(たとえば1970年代から光ファイバによる光通信が導入されると、この2社が光通信測定器をつくり、R&Dから通信網の敷設・保守までほぼすべての測定器をラインアップした)。NTTは2社に仕様を示し製品を作らせる。性能が同じ2社の製品があることで、1社に依存しないというリスクヘッジになる。NTTが日本の基幹通信網を独占し、アメリカのベル研究所と肩を並べて研究開発をしていた時代のことである。 その後、通信の自由化によってNTTは分割され、ほかの通信事業者が参入して現在に至る。日本の通信料金は下がり安価になったが、研究開発や国際的な通信規格の策定の力は衰えたという指摘もある。NTTは2019年にIOWN (Innovative Optical and Wireless Network、アイオンと呼称)構想を公表した。光トランジスタの開発によって、従来の電子を使った半導体による通信網を完全なフォトニクスにすることで、世界的なゲームチェンジを狙う。NTTは2020年にNTTドコモの完全子会社化を終え、2021年にはNTTコミュニケーションズ(NTT com)とNTTコムウェアもグループ内へ編入する。過去の分社化から一転、強いNTTの復権がうかがえる。 JR東海は鉄道車両メーカの日本車輌製造(愛知県豊川市)を子会社にした。世界で競えるインフラを作り、輸出によって豊かな国になるためには、上流のR&Dから製造まで独占的な強い企業が必要という、冷徹な国際事情が存在する。たとえば原子力発電の世界有数メーカであるフランスのアレバ社はフランスの国有企業である。フランスは原子力発電を国策ととらえ、世界的なビジネスをしている。日本が世界に伍する技術分野に通信が復権するかはまだ不透明である。 参考用語:原子力発電所、重電メーカ、パワー半導体