計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
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ティアック電子計測(てぃあっくでんしけいそく)

テープデッキなどのオーディオ機器のブランドであるティアック(TEAC)は、テープを使った記録計であるデータレコーダをつくる計測器メーカとしての顔も有名である(ソニーの関連会社とティアックの2社は1970年代~2000年代、データレコーダで競った)。同社は電子計測用各種変換・測定器の製造、販売を目的として、1985年にティアック電子計測株式会社(本社:神奈川県)を設立。2010年代にティアック本体に吸収され、いまは会社は存在しない。岩崎通信機(岩通)は2002年~2010年に営業部門を岩通計測という別会社にしていた(現在はティアックと同じように、岩通本体に吸収している)。アンリツも1980年~1990年代に営業部門を別会社「アンリツ電子」にしていた。このように計測器メーカが販売部門を子会社化する事例は多い。営業部門の分社化ではなく計測の事業そのものを分社化した例は、ケンウッド(現JVCビクター)のケンウッドティー・エム・アイ(1996年)、横河電機の横河メータ&インスツルメンツ(2010年)などがある。計測器が本業ではなくなったケンウッドや横河電機は、計測器ビジネスを本体から切り離している。 アンリツは計測器が主力事業だが、ティアックや岩通は計測器以外の売上も大きい。ティアックや岩通が計測器ビジネスを分社せずに続けている理由は、主力事業との相乗効果が見込めるためと推測される。現在、電気計測器の事業は単体で収益を出すことは難しい。ケンウッドティー・エム・アイはテクシオ・テクノロジーに社名変更し、直流電源とオシロスコープ以外に、交流電源やLCRメータ、EMI測定用のスペクトラムアナライザなどにラインアップを広げ、まるでミニキーサイト・テクノロジーのような総合計測器メーカになっているが、2012年に台湾の計測器メーカGood Will Instrument (GW Instek)の傘下となり、開発はすべて台湾なので、実態は中華系計測器メーカの日本法人(Good Will Japanとでもいう販売店)である。つまり、計測器だけで事業をしている純国産メーカではない。 ティアック電子計測の2005年頃の求人広告には以下の記述がある。同社が主力とするデータレコーダの2000年代の市場について説明した事例として興味深い。記録媒体としてのテープがほぼ生産中止になってもデータレコーダの需要は(一部の顧客で)なくなることはなく、同社は現在、唯一の多チャンネルデータレコーダのサプライヤとして事業を継続している。ティアックは世界中に子会社があり、データレコーダも米国(航空機市場など)での販売も多い。 従業員数:約60名(2005年3月現在) 売上高:約20億円(2005年3月期実績) 事業内容:電子/電気機器および電子/電気通信機器の製造/販売。電子計測用各種変換器、指示計器、記録器の製造/販売。電子応用測定器、試験機の製造/販売。電子応用機器の研究開発受託。 募集概要:自動車を中心とする産業分野で計測機器のニーズが増加。顧客は産業、防災・自然、基礎医学分野などの各種研究機関や企業の開発部門(多くが既存ユーザ)。製品の価格は10万~2000万円と幅広い。受注までは半年~1年と長期にわたるプロジェクトに関わることが多い。データ測定・記録などの研究開発で使うため、景気に販売数が左右されることはない。

データアクイジション(でーたあくいじしょん)

(data acquisition)計測器では、「データ集録」のこと。具体的にはデータロガーやスイッチコントロールユニット(切替器、スイッチ)など。離れた場所の状態を計測して長時間記録をする遠隔監視システムもデータ集録なので、広義にはテレメータも含まれる。acquisitionは「取得」、「獲得」の意味。またData AQquisitionを略記したDAQ(ダックと呼称)という表現も良く使われる。「データ・アクイジション」という表記もある。参考用語:アクイジション

データ集録機器(でーたしゅうろくきき)

データロガーなどのデータアクイジション関連機器のこと。データロガーやスイッチ/コントロールユニットなどがある。DAQ(ダック)と略記されることも多い。「データ収集システム」のように、集録ではなく収集と表記する場合もある。 当サイトの機種分類では、中カテゴリーとして「データ集録機器」を設けている。記録計の範疇だが、レコーダ(メモリレコーダやデータレコーダ、ハイブリッド記録計など)とデータ集録機器の厳密な違いは、説明が難しい。ロガー(ログを取るもの)とレコーダ(記録するもの)の違いは何か?という問いの正確な解説は難しい。メーカによってはロガー製品の品名が「○○レコーダ」であることは珍しくない。データロガーとメモリレコーダは現在の計測器としての記録計の代表なので、以下のように解説記事がある。

データロガー(でーたろがー)

(data logger) データをメモリやPCに記録する機器。一定間隔で測定したデータを記録する。log(ログ)は記録や履歴の意味。データをロギングする(データのログを取る)測定器なのでデータロガー(data logger)。略称:ロガー。 温度などの時間変化の遅い物理現象(たとえば1秒サンプリング)を、センサからのアナログデータをデジタルに変えて記録する、可搬型の4~8チャンネルのモデル(数万円)から、ひずみ・振動を高速サンプリング(たとえば100kHz)で多チャンネル(たとえば128チャンネル)に測定するモデル(1千万円以上)まで多様なメーカと機種群があり、市場ニーズ・アプリケーションに対応している。 ひずみ・振動測定に特化している機種群はセンサ(ひずみゲージや加速度ピックアップ)からの信号を増幅してデジタル化するアンプをロガーに組込んで1筐体にしていて、単に電圧入力ができるだけの(本来の意味の)データロガーではなく、「ひずみデータロガー」とでもいう機種群を形成している。測定対象に近いセンサに特長があるもの、後段のデータ分析・解析の手法(PCとソフトウェアによる)に特長があるものなど各社で特長がある。 IoTの普及によって、従来センサとコンピュータの中間に位置していた計測器であるデータロガーは、その形態を変える可能性がある。異業種(センサメーカや、ビッグデータ解析が得意なIT機器メーカ)から、ほとんどマイコン機器と化したハードウェアであるデータロガーに参入する例もある。データ収集(データ収録)のためのDAQ(ダック、Data AcQuisition、データアクイジション)をデータロガーといっていることもあり、使用者によってデータロガーの意味は広範。 物理量測定器である温度計は温度センサと測定器で構成されるが、測定器は今やコンピュータなので、記録する機能を付加した「温度ロガー」が1つの機種群を形成している。温度ロガーは温度計メーカと記録計(データロガーを含む)メーカの両社がつくっている。その外観は可搬型で、温度の測定と記録ができ、各種の通信方式や記録メディアによってPCでデータ分析できるソフトウェアを用意していることが多い。カテゴリーは温度測定器(物理量測定器)かデータロガー(記録計)か意見が分かれる。 レコーダ(記録計)とロガーの違いは難しく、製品によってはどちらともいえないモデルもある。当サイトでは電磁オシログラフから続くペンレコーダ、ハイブリッド記録計、データレコーダ、メモリレコーダなどを「レコーダ・記録装置」に、データロガーやスイッチ/コントロールユニットなどをDAQの範疇として「データ集録機器」に区分している。

デジタイザ(でじたいざ)

(digitizer) アナログのデータをデジタルのデータに変換(デジタル化、デジタイズ)する装置のこと。IT分野と計測器では意味が異なるので、計測器のデジタイザを説明する。アナログ電圧信号をデジタルデータに変換する装置というと、ADコンバータ(Analog-to-digital converter)であるが、デジタイザはAD変換器にプリアンプ、メモリ、PCからの制御、PCへのデータ転送を行う機能を備えている。形状はボード(プリント基板)でPCに組込んだり、箱型でPCとイーサネットなどでつないで制御する(つまPC接続型の計測器である)。主に検査用途が多く、PCに高速にデータ転送できることが最大の特長である。 オシロスコープがデジタル化したことで、デジタルオシロスコープの機能がデジタイザと重複するようになったが、オシロスコープはほとんどがスタンドアロンで、故障解析やデバッグなどに有用である。測定波形の表示更新は速いが、測定データの格納はデジタイザほど速くない。両者は主な仕様は同じだが、用途、アプリケーションが異なる。オシロスコープは未知の信号(通常は2か4チャンネル入力、最大でも8チャンネル)を観測するが、デジタイザは既知の信号を多チャンネル(たとえば128チャンネル)でデータ収集する。そのため、機種群(カテゴリー)はデータ集録機器といえる。デジタイザのメーカは、海外のAcqiris(アキリス)が有名である。

TEDS(てっづ)

(Transducer Electronic Data Sheet) 計測用センサに組み込まれた電子チップにセンサ固有の情報が記述されていること。IEEE 1451.4規格によって定義されているため、TEDS対応のセンサは異なるメーカの計測器でも読み出せるので、(センサ固有の数値を)手動設定入力せずに測定ができる。データはセンサパラメータのテーブルであるテンプレートに格納され、電圧センサ、ひずみゲージ(ブリッジセンサ)、電流出力センサなど、多種類のテンプレートが用意されている。 TEDSは「センサ内でトレーサビリティデータを記録してあるEEPROMで、データを電子的に読み書きすることができるチップ」である。マイクロホン(マイク)では内部のプリアンプに内蔵されている(マイクは圧電素子を使った振動センサである)。マイクを複数使用するときは、センサの位置を特定するのにTEDS対応だと便利である。 計測器メーカでは共和電業や東京測器研究所(ひずみ測定器)、小野測器(振動測定)、東陽テクニカ(PCBなどの加速度ピックアップ)、TEAC(ティアック、加速度トランスデューサ、レコーダ)、HBM(センサ、DAQ)などがTEDS対応のセンサをラインアップしている。 発音は「てっづ」と呼称されることが多い。

DEWEsoft(でゅーそふと)

2000年にスロベニアで設立されたデータロガーのメーカ。製品名はSIRIUS(シリウス)など。元々はオーストリアのデータロガーメーカDEWETRON(デュートロン)の解析ソフトウェアの名称。世界中の自動車産業ではDEWEsoft社のデータロガー(解析ソフトを含む)が使われている。日本の鉄道産業で採用されているドイツimc社のCRONOS(クロノス、CRONOS PLやCRONOS compact)とFAMOS(ファモス)同様に、強力な解析ソフトウェア(バックエンド)を備えたひずみデータロガーである。日本法人はデュージャパン株式会社という。

DEWETRON(でゅーとろん)

オーストリアのデータロガーのメーカ、DEWETRON GmbH。DAQ(Data Acquisition、データアクイジション)システムとしては、ハードウェアのDEWE2、DEWE3、TRIONなどのデータロガーやパワーアナライザがある。バックエンドを担う解析ソフトウェアはOXYGENという。2020年にはPU[REC](Pure Recording)というアナライザを発売している。 同社HPには「DEWETRONは1989年にPCベースの測定機器のサプライヤとして設立された」とある。世界中の自動車業界で採用され、ひずみ計測(データ集録とデータ解析)で有名になった。レコーダのサンエイといわれた三栄測器が1990年頃に日本の販売店をしていた(当時はNEC三栄株式会社の特販部が売っていた)。2007年頃に販売契約が解消したようで、NEC三栄はその後にDEWETRONと競合するようなモデルを開発している。特販部は2007年に独立して「デュートロン・ジャパン株式会社」になった(つまりDEWETRONの日本法人である)。ただし2008年にはオーストリアの計測器メーカDEWEsoft(デューソフト)の販売店になり、デュージャパン株式会社に社名変更している。現在のDEWETRONの総代理店は日本電産リード株式会社がしている。 DEWETRONとDEWEsoftの関係を説明する。日本の鉄道業界に採用されているひずみデータロガーであるドイツimc社のCRONOS(クロノス、CRONOS PLやCRONOS compact)はFAMOS(ファモス)という解析ソフトウェアが有名で、ハードウエア(データロガー)はCRONOSを使わないが、バックエンドのデータ解析にはFAMOSを使うケースがあるくらいである。つまりひずみや振動などの測定は、データ収集後の処理が重要である。DEWETRONの解析ソフトウェアはDEWEsoftといった。DEWETRONといえばDEWEsoftで後行程のデータ解析ができることが特長の1つだった。ところがDEWEsoftの開発部門は2000年頃に独立して別会社をつくった。DEWETRONはDEWEsoftの使用権を(猶予期間を経て)失った。そのため、冒頭で述べた新しいプラットフォームを開発して、モデルを一新した(DEWEsoftに代わるOXYGENをつくった)。つまり、それまでの自動車業界に納品されている実績あるDEWETRONではなく、新しい新生DEWETRONが、現在のDEWETRONである。 DEWEsoftで解析できることが自動車業界に採用されたDEWETRONであるならば、DEWEsoftが今のDEWETRONともいえるが、ひずみデータロガーの老舗DEWETRONは、分裂してDEWEsoftとの2社になった。

テレメータ(てれめーた)

(telemeter) 遠地の測定データ(電気信号)を電話や無線にのせて、監視センターに一定の時間間隔で自動送信することにより、監視センターで現地の状況を「オンライン、リアルタイム」で把握するために用いられる遠隔自動データ収集装置。たとえば、ダムの水位を管理事務所でモニタするのに導入されている。最先端の技術ではなく、電話回線(銅線のケーブル)を使ったアナログの時代からある、遠隔監視の仕組み。デジタルの高速無線通信がはやりになった現在でも現役で使われているシステム。 工場や発電所などのプラントでは、各装置の状態(温度や圧力など)を測定して制御している(計装)。測定値(データ)を収集するデータロガーなどはデータ集録機器と呼ばれる計測器である。現在はデジタル通信や無線によって中央の管理室に温度や流量などの測定データが送られている。テレメータも同じ機能であるため、データ集録機器の1種に扱われている場合があるが、一般的にはテレメータは計測器ではない。それでは通信装置の範疇かというと、それも微妙である。つまり、テレメータは計測の機能も通信の機能もある装置である。 ただし、トルク計測のモデルには、データの送信機能をテレメータと呼んでいる例がある(以下の計測器情報を参照)。「トルクテレメータ」なる名称の計測器もある。デジタル通信が普及する以前の時代には、遠隔地に測定データを送る代表例がテレメータだったので、データ送信機能をテレメータと呼ぶことが多かったが、現在の計測器ではほとんどテレメータということばは使われなくなっている(以下の計測器情報でカタログを参照すると、製造中止になった過去のモデルが多いことがわかる)。くどいが、一般的にはテレメータは計測器ではない。 テレメータなどを使った測定手法をテレメトリ(telemetry)と呼ぶ。テレメータとテレメトリは同じように使われる用語で、使い分けが厳密とはいえない(市場や使用者によって使い分けられている)。テレメータはテレメーターという表記もある。 teleは「遠くの、遠く離れた」を意味する。テレメータは「遠くのメータ(測定器)」。似た言葉に、遠くのものを制御する遠隔監視制御装置のことをテレコン(tele-control)という。2020年からの新型コロナウイルス感染によるコロナ禍で普及したテレワーク(telework)は「(会社から)遠く(離れた場所)で勤務する」ことである。望遠鏡はtelescopeの翻訳で、tele(遠くを)scope(見る機器)である。

テレメトリ(てれめとり)

(telemetry) 日本語では「遠隔情報収集」。テレメータ(遠隔計測装置)などを使って、遠隔地の測定結果をコントロールセンタに送信すること。テレメータ(telemeter、遠くのメータ)は「遠地の測定結果を収集する装置」で、テレメトリは「遠隔測定の手法」を指す。 テレメトリもテレメータも遠隔制御でデータ収集する技術のため、2つの用語は似たような使い方がされる。一般には遠隔データ収集装置であるテレメータがメジャーで、各種の商品が多くのメーカから発売されている。そのため、そのような既存の装置ではなく、「遠隔制御による計測手法や、制御手法そのもの」をPRしたいときには「テレメトリ」と表現される。 たとえば、2024年1月にJAXA(宇宙航空研究開発機構、ジャクサ)が月面着陸に成功した月面探査機SLIM(スリム)は、テレメトリ―(遠隔制御用のデータ収集)を使用している。SLIMはカメラで月面を撮影し、宇宙用に開発した特別に高速のFPGAによって、撮影画像を地図と照合して自分の位置を把握し、機体を制御して着陸に臨む。管制室のモニタには、SLIMの高度の時間変化推移や状態(降下中か着陸したか、バッテリの残量など)がリアルタイムで示される。このモニタの表示は「テレメトリー画面」と呼ばれている。つまり、着陸までの一連の動作は遠隔制御でデータ収集することで成り立っているので、状態を表示している画面を「テレメトリー」といっていると推測する。ここでは「遠隔制御の手法全体」をテレメトリーといっている。遠隔地のデータ収集手法のことであるテレメトリという用語の応用使用例である。 上記でご承知のように、テレメトリはテレメトリ―とも表記される。 宇宙開発や原子力などは、近くで計測することが困難なため、このような分野ではテレメトリ技術(遠隔測定法)が早くから開発されてきた。安全保障(軍事、セキュリティ、インテリジェンスなど)の分野では遠隔監視が行われ、収集したデータのことをテレメトリと呼んでいる。このようにテレメトリは広範に使用されることばである。

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