計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
計測・測定に関連する用語全般が収録されており、初めて計測器を扱う方でも分かりやすく解説しています。
フリーワード検索をはじめ、カテゴリー、索引から簡単にお調べいただけます。

フリーワード検索

検索用語一覧

52

各用語の詳細ページでは関連用語などを確認することができます。
このアイコンが表示されている用語には、詳細ページに図解や数式での説明があります。

自記記録計(じききろくけい)

円筒形(ロール状)の記録紙に温度(や湿度)を記録する温湿度計(記録計)のこと。別名、自記温湿度計。電気計測器を校正する標準室など、温湿度を一定範囲で管理している部屋に置かれ、何か月もの長期にわたり温湿度の変化を記録することに使われている。 原理は、温度についてはバイメタル(またはブルドン管)の変位(熱膨張)を、湿度については毛髪の伸縮を拡大して、記録計のペンを動かしてチャートに描く。白金抵抗温度計を使い、抵抗の変化を電流に変えて、電流計が温度を記録する方式もある。 「自動的に記録ができる記録計」を略した名称と思われる(「自分で記録する」ので自記、という解説もある)。一度設置して稼働させたら、チャート(記録紙)の交換以外には(原則)操作しない。自動で温度(や湿度)を記録するレコーダ(であり温湿度計)である。機種分類(カテゴリー)を温湿度計にするか、記録計にするかは判断が分かれる。メーカによっては「自記計」や「自動記録計」とも略称される。 温度全般の計測器をラインアップする佐藤計量器製作所 は、シグマⅡ型温湿度記録計などがあり、「自記記録計(温湿度)」のタイトルで4モデルを販売している(2023年11月)。いすゞ製作所は自記温湿度計の老舗だが、2022年に生産中止した(毛髪やドラム時計などの部品が入手できなくなったため)。日本計量機工業株式会社ホームページには、自記温度計・温湿度計としてNWR-9901(温度のみタイプ)、NWR-9903(温度・湿度タイプ)が掲載されている。記録日数を1~99日の間で変えることができる、食品・薬品倉庫、美術・博物館、標本庫、クリーンルーム、研究所などに販売実績がある、国家標準へのトレーサビリティ書類を発行可能、などの説明がされている。 JIS Z 8806(湿度測定方法)では、毛髪湿度計が定義されている。自記記録計(温湿度計)は、毛髪の湿度による伸縮から湿度を算出している。機構が機械的な毛髪式自記記録計は、湿度センサと、紙を使った記録計の組み合わせより安価なため、日本では標準室や美術館などで導入されている。紙で残すのは改ざんされにくいという理由もあるらしい。温度の測定と記録なら、小型のデータロガーで性能が良くて安価な製品が増えたが(たとえばおんどとり)、自記記録計はいまでも置き換わらずに多く稼動している。

自動平衡式記録計(じどうへいこうしききろくけい)

負帰還回路によって正確なペンの位置決めができる仕組みを持った記録計。日本では1951年に横河電機がER電子管自動平衡記録計を開発している。アナログ技術をベースにした自動平衡記録計は長年にわたって最もよく使われる記録計となり、進化の過程で大幅な小型化や長期信頼性の向上が進んでいった。渡辺測器(現グラフテック)のリニアレコーダなど、一時期は複数メーカがラインアップしたが、現在ではほとんど見かけなくなった。 一般的には「自動平衡式記録計」ではなく、ペンレコーダと呼称されている。環境計測のメーカであるリオンは、レベルレコーダという品名のペンレコーダをつくっている(2022年12月現在、1モデルが現役)。 参考記事:記録計・データロガーの基礎と概要・・他の種類の記録計も含めて解説。

スコープコーダ(すこーぷこーだ)

(scope coder) 横河計測のメモリレコーダ(現在のレコーダの主流の、メモリに蓄積して表示するデジタル式のレコーダ)の品名。通称(現在の同社では形名)は同社のオシロスコープ(オシロ)と同じDL。実体はレコーダだが、オシロと同じ名称をつけたのにはメーカ内部の深い事情が推察される。横河には2系統のレコーダがある。 まずは工業計器のセンサとして主に温度を記録するもの。横河電機はIA(インダストリー・オートメーション)/FA(ファクトリー・オートメーション)の会社なので、プラントや工場の温度を記録する目的のレコーダをソリューション部門がラインアップしている。特長はペーパーレスで、離れた場所の中央監視室(制御室)にデータを送る。本体や表示画面は無く、入力信号の種類別のモジュールを電源モジュールなどにスタック(横に重ねて付けて伸ばしていく)ようなタイプもある。工場内のデータ集録を第一の主眼にしている。同業者の代表メーカはチノーなどで、いわゆる電気計測器メーカではない。 次が計測器の主流であるレコーダ。日置電機のメモリハイコーダや、エー・アンド・デイ (旧三栄測器)のオムニエースのような、計測器としての記録計の王道の機種群。ここに位置するのがスコープコーダで、横河電機の計測器事業部だった現横河計測がつくった。横河のレコーダというと前述の工業計器のレコーダ(μRやDARWIN)が一番に連想されるので、そうではなく計測器事業部が作った(計測器としての)レコーダである、と計測器事業部の看板商品のDLの名前を付けたと筆者は推測している。そのため、レコーダなのに、オシロです、という体をしていた。 あるレンタル会社はDLという名前に配慮して、オシロのページにスコープコーダを掲載していた。ところが横河計測のホームページでは「オシロ/波形測定器」ではなく「データロガー/データ収集(DAQ)」の項目に「高速データロガー」の注釈で掲載されていた(2023年2月現在)。スコープコーダは「レコーダのようなオシロ」(つまりレコーダではなくオシロであるという主張)で登場したはずなのに、一体いつオシロからレコーダに豹変したのか!と筆者は驚いたが、2023年10月現在、オシロとデータロガーの両方のページに掲載されている。つまりオシロでもありレコーダでもある(両方のいいとこどりをした、中間の仕様の製品)という趣旨である。 スコープコーダの前身の1種にオシログラフィックレコーダ(OR1400など)というオシロのような品名のレコーダがあった。このように横河の計測器部門にはレコーダとオシロの混血のような品名が登場する。「スコープコーダはAR(アナライジングレコーダ)の後継である」とメーカはその出自を説明している(参考記事を参照)。 当サイトのカテゴリー(機種分類)では、オシロの中に「レコーダオシロ」という分類をつくり、スコープコーダを掲載している(DLという名称やメーカの趣旨に沿って、特別にこの分類を作成した)。 2010年代にオシロの3大メーカ(テクトロニクス、キーサイト・テクノロジー、レクロイ)はADコンバータが8ビット以上の高分解能オシロスコープを発売したが、横河計測には12ビット分解能のスコープコーダがあるので、同社は前3社と同様な高分解能オシロスコープをラインアップしていない(参考記事の8チャンネルオシロを参照)。ただし、2023年5月に初めての8ビット以上のモデルDLM5000HD(12ビット分解能)を発売した。高分解能モデルと同様に2017年~2020年にかけて多チャンネルオシロの発売が続いた(前述3メーカは横河計測がオンリーワンだった8chモデル市場に参入した)。横河計測は8chの最新モデルDLM5000を2020年8月に発売したが、アナログオシロ時代の老舗、岩崎通信機は同年11月に12ビットの8chモデル、DS-8000を発売した。前述3メーカの8chモデルも同様に10~12ビットの高分解能で、唯一横河計測だけが従来の8ビットだった。テクトロニクスはミドルクラスのオシロのラインアップは高分解能(8ビット以上)が標準である(2023年現在)。つまりオシロの主流は知らない間に高分解能になっていた。

ソニー・プレシジョン・テクノロジー(そにーぷれしじょんてくのろじー)

(Sony Precision Technology) ソニーがデータレコーダなどの磁気式計測器をつくるために1969年に設立したソニーマグネスケール株式会社が1996年に社名変更した会社。精密測定機器(レーザを使った測長器など)もラインアップしていた。2004年にソニーマニュファクチュアリングシステムズ株式会社に社名変更(つまり、8年間の会社名)。ソニーのデータレコーダというと「ソニーマグネスケール」の次に「ソニー・プレシジョン」が思い浮かぶ(つまりSONYのデータレコーダといえば、「マグネスケール」か「プレシジョン」と呼称された)。 2000年代に記録媒体としての磁気テープが生産終了になるのに伴い、ソニーはデータレコーダからも撤退した。2004年以降の会社名であるソニーマニュファクチュアリングシステムズはソニーの最後のデータレコーダの会社名であるが、社名が長く、マグネスケールやプレシジョンのような略称はなく、「ソニーのデータレコーダ」とでもいうようないい方だった。その後さらに社名変更した「ソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ」が修理業務を引き継いでいたため、ソニーのデータレコーダの最終会社名は当サイトでは、ソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズと表示している。日立電子と日立国際電気、松下通信工業とパナソニックモバイルコミュニケーションズのような関係である。 SONYのデータレコーダは、もう1社のメーカであるTEAC(ティアック)のように会社名が継続していなくて(複数回、会社名が変わっているので)覚えにくい。TEACとSONYはオーディオ機器の「磁気テープを使ったレコーダ」のメーカである。テープレコーダは過去の物となったが、計測器としてのレコーダで競った2社のスタンス(工業用途の計測器のレコーダの、グループ内での位置づけ)は違っていたといえる。TEACは磁気テープ以外のメディアを使ったデータレコーダをしぶとくつくり続け、多チャンネル・長時間記録のデータレコーダの唯一のメーカとなっている(国内だけでなく、2012年には米国でもデータレコーダを販売している)。 ソニーの計測器というと一番にオシロスコープのソニー・テクトロニクが思い浮かぶが、データレコーダでもソニーはブランドだった。同じ計測器でもTektronixがオシロ以外にテレビ・オーディオ測定器などをラインアップしてソニー・テクトロニクスが存続したのと比べ、磁気テープを使った記録計に注力したソニーマグネスケールは、ソニーグループ内の他の製品群との合併によって会社名が変わり、磁気テープの終焉と共に計測器から撤退して会社は終わった。 多チャンネル・長時間の記録ができて、再生も可能なデータレコーダの需要はいまだに根強いが、磁気テープ終了後は自動車・鉄道分野ではひずみデータロガーが普及し(DEWETRON、DEWEsoft、CRONOS PL、CRONOS compactなど)、現在のデータレコーダの国内市場規模は2000年以前ほど大きくないと推定される。ソニーがデータレコーダから撤退したことは適切だったと思われる。

ソニーマグネスケール(そにーまぐねすけーる)

(Sony Magnescale) ソニーは1969年に磁気式計測器事業の子会社「ソニーマグネスケール株式会社」を設立(1996年に社名変更したので、27年間の会社名)。ソニーは磁気テープとそれを使った記録機器(オーディオのテープレコーダ、コンピュータ用の磁気テープ式記録装置など)の代表的なメーカである。その技術を計測器に活用して、磁気テープを使った長時間の記録計であるデータレコーダをつくり、ティアック(TEAC)とSONYはデータレコーダの2大ブランドだった。SONYのデータレコーダのメーカがソニーマグネスケールである。ただし、TEACと違い、ソニーのデータレコーダはグループ内の再編で何度も会社名が変わり、2010年頃にはデータレコーダから撤退している。以下にデータレコーダに関係する沿革を述べる。 1981年、ソニーマグネスケールは神奈川県伊勢原市に伊勢原事業所を設立。データレコーダの製造拠点となった。PC200Axシリーズのデータレコーダはオーディオ用のカセットテープとほぼ同サイズの記録媒体(SONY製DG60Msなど)が使える(1999年発行の製品カタログより)など、多くのデータレコーダを発売した。 1996年、「ソニー・プレシジョン・テクノロジー株式会社」に社名変更。同社の会社概要には「精密計測機器、精密記録機器の製造・販売」とある。データレコーダ(精密記録計)以外の計測器(精密計測機器)もつくっていた。直線移動量を検出する機器をマグネスケールと呼び、たとえば0.2mmピッチで磁気目盛りを記録したスケールの磁束を多数のギャップを持つヘッドによって検出する製品が1999年頃にWebに紹介されている。直線移動量だけでなく回転動作角度を検出できるモデルもあり、ソニーマグネスケール(ソニー・プレシジョン・テクノロジー)は測長器の会社でもあった。 2004年、ソニーマニュファクチュアリングシステムズ株式会社(Sony Manufacturing Systems Corporation)」に合併し、社名変更。同社はソニーグループの製造会社で「CD、DVD、Blu-ray Discなどの次世代光ディスクの量産や、デジタルカメラ/携帯電話の液晶画面のバックライトの製造に欠かせない生産精密機器や実装関連機器、測長器などを製造」している。ソニーのデータレコーダは製造子会社が担当する、という位置づけになったことが伺える。データレコーダは2000年代に生産中止(撤退)して、保守サービスだけ行っていたと筆者は記憶している(資料が残っていないので時期は不正確)。 2010年、計測器事業(伊勢原事業所)を森精機製作所(現・DMG森精機)の新設子会社である株式会社マグネスケールに譲渡(データレコーダは同社には移管されていない)。2023年現在、株式会社マグネスケールは磁気とレーザ光を検出原理とした高精度位置検出システムをつくっている。 2012年、「ソニーイーエムシーエス株式会社」を存続会社として合併。 2016年、ソニーから調達・物流・品質管理などの実務機能を移管され、「ソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ株式会社」へ社名変更。 SONYのデータレコーダといえば1970年~2000年代まで、TEACと共に自動車や重電などの顧客に重宝されたが、メーカ名は「ソニーマグネスケール」と「ソニー・プレシジョン」で、ソニーの製造会社である「ソニーイーエムシーエス」になったときにはすでにデータレコーダから撤退していた。ソニーのデータレコーダの最終会社名は「ソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ」で、データレコーダの修理を受付けていたが、ほぼそれも終了している(2023年5月現在)。 ソニーとティアックのデータレコーダはそれぞれ顧客をすみ分けていて、市場を2分していた。ソニーはAITテープに記録するSIR-1000シリーズや、HDDオプションがあるSIR-3000シリーズを最後に生産終了した(このときの会社名はSony Manufacturing Systems Corporation)。TEACもテープ式のデータレコーダから撤退したが、2012年12月にSSDを使うWX-7000を発売した(2023年現在も現役)。「SONY SIR1000 リプレース情報」と題して「テストと計測で幅広く使用されているSIR1000との置き換えがWX-7000で可能。テープメディア(AIT)に代わる収録メディアを提案」とTEACは発表した。ソニーのデータレコーダがそれなりに市場で使われていたことを物語っている。

DATデータレコーダ(だっとでーたれこーだ)

DAT(Digital Audio Tape)を記憶媒体として、データを記録するデータレコーダ。データレコーダは長時間記録をするために、一時期、DATデータレコーダは普及したが、記録メディアとしてのDATテープの生産中止にともない、現在はほとんど生産されていない。

打点レコーダ(だてんれこーだ)

リボンカセットで紙に記録するタイプのレコーダ。一般のレコーダとしては現在はほとんど生産されていない。

チャートレコーダ(ちゃーとれこーだ)

(chart recorder)紙(チャート)に記録するタイプの記録計のこと。最近の記録計(レコーダ)の主流はペーパーレス(紙に印字する機能が無い)が多いが、工業計器分野や、室内温湿度記録用にはつくられている。工業用チャートレコーダとしては横河電機のμRがある。 参考記事:記録計・データロガーの基礎と概要 ・・マイクロプロセッサを搭載したμR10000のペンモデルを例に、その構造を解説。

直動式記録計(ちょくどうしききろくけい)

指示計器(メータ)と同じ原理で、構造は可動コイルにペン機構を組込んでいる。過去には実験用や工業用の記録計として活躍していたが、今では温湿度記録計くらいになってしまった。佐藤計量器製作所やいすゞ製作所などがつくっている。電池で長時間駆動できる小型で安価なデータロガーの普及によって、直動式記録計の需要は限られたものとなった。他の種類の製品も含めて次の記事に解説がある。技術情報・レポート/原理・基礎の「記録計・データロガーの基礎と概要」https://www.techeyesonline.com/tech-column/detail/Reference-Recorder-01/

ティアック電子計測(てぃあっくでんしけいそく)

テープデッキなどのオーディオ機器のブランドであるティアック(TEAC)は、テープを使った記録計であるデータレコーダをつくる計測器メーカとしての顔も有名である(ソニーの関連会社とティアックの2社は1970年代~2000年代、データレコーダで競った)。同社は電子計測用各種変換・測定器の製造、販売を目的として、1985年にティアック電子計測株式会社(本社:神奈川県)を設立。2010年代にティアック本体に吸収され、いまは会社は存在しない。岩崎通信機(岩通)は2002年~2010年に営業部門を岩通計測という別会社にしていた(現在はティアックと同じように、岩通本体に吸収している)。アンリツも1980年~1990年代に営業部門を別会社「アンリツ電子」にしていた。このように計測器メーカが販売部門を子会社化する事例は多い。営業部門の分社化ではなく計測の事業そのものを分社化した例は、ケンウッド(現JVCビクター)のケンウッドティー・エム・アイ(1996年)、横河電機の横河メータ&インスツルメンツ(2010年)などがある。計測器が本業ではなくなったケンウッドや横河電機は、計測器ビジネスを本体から切り離している。 アンリツは計測器が主力事業だが、ティアックや岩通は計測器以外の売上も大きい。ティアックや岩通が計測器ビジネスを分社せずに続けている理由は、主力事業との相乗効果が見込めるためと推測される。現在、電気計測器の事業は単体で収益を出すことは難しい。ケンウッドティー・エム・アイはテクシオ・テクノロジーに社名変更し、直流電源とオシロスコープ以外に、交流電源やLCRメータ、EMI測定用のスペクトラムアナライザなどにラインアップを広げ、まるでミニキーサイト・テクノロジーのような総合計測器メーカになっているが、2012年に台湾の計測器メーカGood Will Instrument (GW Instek)の傘下となり、開発はすべて台湾なので、実態は中華系計測器メーカの日本法人(Good Will Japanとでもいう販売店)である。つまり、計測器だけで事業をしている純国産メーカではない。 ティアック電子計測の2005年頃の求人広告には以下の記述がある。同社が主力とするデータレコーダの2000年代の市場について説明した事例として興味深い。記録媒体としてのテープがほぼ生産中止になってもデータレコーダの需要は(一部の顧客で)なくなることはなく、同社は現在、唯一の多チャンネルデータレコーダのサプライヤとして事業を継続している。ティアックは世界中に子会社があり、データレコーダも米国(航空機市場など)での販売も多い。 従業員数:約60名(2005年3月現在) 売上高:約20億円(2005年3月期実績) 事業内容:電子/電気機器および電子/電気通信機器の製造/販売。電子計測用各種変換器、指示計器、記録器の製造/販売。電子応用測定器、試験機の製造/販売。電子応用機器の研究開発受託。 募集概要:自動車を中心とする産業分野で計測機器のニーズが増加。顧客は産業、防災・自然、基礎医学分野などの各種研究機関や企業の開発部門(多くが既存ユーザ)。製品の価格は10万~2000万円と幅広い。受注までは半年~1年と長期にわたるプロジェクトに関わることが多い。データ測定・記録などの研究開発で使うため、景気に販売数が左右されることはない。

データレコーダ(でーたれこーだ)

従来の定義は「テープなどの大容量・長時間記録ができるメディアにデータを記録するタイプのレコーダ」だが、現在ではその定義に収まらないモデルが多く発売されている。 機器としてのテープレコーダ(オーディオ機器やコンピュータなどの記憶媒体としての情報機器)をつくっていたSONYとTEACは、その技術を使い、テープに記録し、再生もできる計測器としてのレコーダをつくった。これを「データレコーダ」という。SONYはテープもつくっていたが、その生産終了によって、ソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズはデータレコーダの生産を終了した。TEACはテープでなくデジタルメモリ(SDカードなど)を使ったデータレコーダを1モデル続けたが、従来の(テープの)データレコーダほど顧客のニーズには合致せず、ほとんどデータレコーダから撤退状態になった。 記録計(レコーダ)の主流はアナログからデジタルに変わり、デジタルオシロスコープ同様、サンプリングしたデジタルデータで記録される。ただし、従来の測定データ(バックエンド)は長らくアナログデータとして保存・保管されてきた。何か不具合や問題が発生すると、保存してあるアナログデータをデータレコーダに入力し再生させる(データレコーダと普通のレコーダの違いは再生機能の有無)。あたかも今、その現象(振動や騒音やひずみ)が発生している状態を再現し、問題解析や分析を行う。保険の意味も含めて、既存メディアで保管されているアナログデータを再生できる測定器としてデータレコーダは需要を保ってきたが、メディアとしてのテープが生産中止になるとほとんどのデータレコーダは生産終了した。 近年SSDなど(HDDより信頼性が高い大容量記録媒体)の安価な普及に伴い、廃止から10年近いブランクをおいて国内計測器メーカ1社が新製品で再参入した(TEACは2012年に新製品のワイドバンドデータレコーダーWX-7000シリーズを発売)。輸送機器などの評価に多チャンネルのひずみ・振動測定用として使われているが、多チャンネルのひずみデータロガー(ひずみ測定に特化したロガー)もこの分野には普及している。昔からの再生機能があるデータレコーダは鉄道、飛行機などの運輸や、宇宙・防衛の市場でまだ使われている。ひずみデータロガーに置き換えたユーザも多いが、前述の1社が再参入したように、データレコーダはまだ根強い人気(需要)があると推定される。 リオンは環境計測の会社で、騒音・振動の計測器の国内トップベンダーである。屋外で騒音や振動を計測する際、各種のセンサからの信号を受けて増幅し、デジタルデータにして記録したり、PCに送るための騒音・振動用のフロントエンドは、データロガー(やチャージアンプ、またはアンプを内蔵したデータロガー)が担う。リオンには4chの(屋外で使うことを想定した小型のハンドヘルド)のデータロガーDA-21があるが、なんとこの製品は集録データを再生できるデータレコーダである(品名も「データレコーダ」)。操作部にはREC(記録)とPLAY(再生)のボタンがある。メモリは最大32GBのSDカードに対応している。SONYの関連会社やTEACなどのデータレコーダメーカがデータレコーダをほとんどつくらなくなったので、振動・騒音という自社製品群のためのフロントエンドである(振動・騒音用途の)データレコーダを自社開発したと推測される。環境測定の顧客ニーズに応えたモデルといえる。 無線計測器の雄、ローデ・シュワルツには、「I/Q データレコーダー」なる品名のモデルがある。製品説明には「デジタルI/Q データストリームを記録・再生できるレコーダ。 デジタルI/Q インタフェースを備えた複数のR&S製品と組み合わせて使用すると、データをリアルタイムで保存または再生できる」とある。この製品はデジタル方式の移動体通信などで使う高周波(RF)の信号発生器であるI/Qジェネレータなどと併用されると思われる。「記録と再生ができる」という機能はまさに「データレコーダ」であるが、低周波の基本測定器であるレコーダの1機種群がデータレコーダだと思ったら大間違いで、無線通信の分野の専用測定機と併用するデータレコーダなのである。 「データレコーダ」という単語は大変に平明なことばだが、計測器でその意味するところは奥深い。今後も新しいデータレコーダ製品が出現するかもしれない(以下に紹介する、従来からの「テープに記録して、再生できる」データレコーダではなく)。 計測器情報: データレコーダの製品例(テープに記録する従来からのモデル)、 TEACのWX-7000シリーズ、 リオンのデータレコーダDA-20/21/40、ローデ・シュワルツのI/Qデータレコーダ―

デジタルデータレコーダ(でじたるでーたれこーだ)

データレコーダの従来の記録メデイアであるテープではなく、SDやSSDなどのデジタルメモリに記録するタイプのデータレコーダ。 まだテープが現存していた時代にデータレコーダのメーカはテープも含めて各種の記録媒体を試した(たとえばMOなど)。テープは早晩、ディスクなどの媒体に変わることを、ティアック、ソニーというテープを使った機器(オーディオや情報機器)のメーカは知っていた。データレコーダの2大メーカは計測器専業メーカではなく、ティアックとソニーマニファクチャリングという、テープレコーダやテープの関連メーカである。ただしIT機器の進歩は早く、記憶媒体はどんどん変わり、古い媒体は生産中止となり、計測器のような足の長い製品の記録媒体には向くものがない。特にデータレコーダは現場(屋外)で長時間記録するため、HDDは信頼性が無く、ソニーマニファクチャリングはテープ(やHDD)のモデルSIR-1000/3000シリーズを生産中止にしてデータレコーダから撤退した。 ティアックはSDを使ったデジタルデータレコーダのLXシリーズ(LX-10、LX-100、LX-1000)をほとんど最後に残ったデータレコーダとしてつづけた。SSDなど(HDDより信頼性が高い大容量記録媒体)の安価な普及に伴い、テープ式のデータレコーダの廃止から10年近いブランクをおいてティアックはデータレコーダの新製品 WX-7000シリーズを2012年に発売した。 振動計や騒音計などの環境計測メーカのリオンは、振動・騒音計測のフロントエンドとしてDA-21データレコーダをラインアップしている(SDに記録するデジタルデータレコーダ)。これを除けば、現役のデータレコーダはティアックのデジタルデータレコーダLXシリーズとWX-7000シリーズのみといえる。 参考用語:DATデータレコーダ、VHSデータレコーダ

電磁オシログラフ(でんじおしろぐらふ)

(electromagnetic oscillograph) 高速の信号を記録するレコーダ。主に温度・歪・変位などの測定で使用する。現在はほとんど生産していない。略称:電磁オシロ。「オシロ」という名前が付いているが、機種分類はオシロスコープではなく「レコーダ・記録装置」に分類される。 ブラウン管を用いたオシロスコープ(いわゆるアナログオシロスコープ)が発明される以前から使われていた波形測定器。電磁オシログラフは多チャンネルにできるため、電力・機械の分野で1980年代まで広く使われたが、サーマルアレーヘッドを使って高速に感熱紙に波形を記録するタイプのレコーダ(サーマルレコーダ)に取って代わられた。さらに現在は半導体メモリに記録や保存を行うメモリレコーダがレコーダの主流となっている。アナログオシロがメモリにストレージ(蓄積)するデジタル式(DSO)に代わったように、レコーダもデジタル式(=メモリレコーダ)が主流となった。記憶媒体は紙が少なくなり(ペーパーレス)、ネットワークを介して測定データを収集するモデルもあるが、重電業界(電力や鉄道など)ではいまだに紙で残すことが多い。そのためA4サイズの紙に印字できる大型モデルがメモリレコーダの主力タイプの1つで残っている(たとえばオムニエース)。 日本では1924年に横河電機が電磁オシログラフ(電磁型オッシログラフ)を国産化している(以下の参考記事が詳しい)。「オシログラフ」という名前は同社にとって特別なものと推察される。そのためかは不明だがメモリレコーダが計測器としての記録計の主流になっていった1990年頃に、同社の計測器部門では「オシログラフィックレコーダ」という品名のOR1400やORM1300などの製品があった。 計測器の老舗で国内のレコーダ3社というと、横河電機、三栄測器、渡辺測器だった。1980年代にメモリオシロに参入した日置電機のメモリハイコーダは現在ではトップブランドである。横河電機の計測器部門は分社化して会社名は横河計測となりスコープコーダというメモリレコーダをシリーズ化してラインアップし続けている。三栄測器のオムニエースはエー・アンド・デイの工業計測機器として健在である。渡辺測器はグラフテックと社名変更し、メモリレコーダであるサーマルアレイレコーダは生産中止になっている。1980年以前のアナログのレコーダ時代は横河電機、三栄測器、渡辺測器が担ったが、現在のデジタルのレコーダは日置電機、エー・アンド・デイ、横河計測が3大メーカである。

電磁型オッシログラフ(でんじがたおっしろぐらふ)

(electromagnetic oscillograph) 1924年にYEW(株式会社横河電機製作所、現在の横河電機)は、逓信省電気試験所(当時)から国産化の要請を受け、携帯用電磁型オッシログラフ「3要素型N-3」を開発した。現在では電磁オシログラフと呼ばれるが、当時の横河電機の品名(製品名称)は電磁型オッシログラフだった。 1940年(昭和15年)に「陰極線オッシログラフ高速撮影法」というA5ハード版、127ページの冊子が工業図書株式会社から刊行されている。1964年の月刊トランジスタ技術創刊号には、オシロスコープの表示波形を「波形をオッシロで見る」と記述している記事がある。古くはオシログラフはオッシロフラフ、オシロスコープはオッシロスコープといっていたことがわかる。オッシロがいつ頃、現在のようなオシロに変化したかは不明である。

トリガ計測(とりがけいそく)

(trigger measurement)設定されたトリガの条件を入力信号が満たすと、自動的にデータを記録すること。オシロスコープやレコーダなどの電気信号を記録する測定器に搭載されている機能。 参考用語: トリガ機能 参考記事(会員専用):【展示会レポート】2019国際ロボット展(iREX2019)の1社目 ・・株式会社東京測器研究所のひずみ計測機であるマルチレコーダーTMR-300がトリガ計測によって自動でデータを収録することが語られている。

ハイブリッド記録計(はいぶりっどきろくけい)

(hybrid recorder) データロガーの“PCとの親和性の良さ”と、自動平衡式記録計の測定結果の見易さの特徴を併せ持った記録計。「ハイブリッドレコーダ」と呼称された。打点記録計にマイクロプロセッサを導入したインテリジェント記録計として、1980年初頭に横河電機が世界に先駆けて開発した。マイコンの採用によってアナログ式の記録計より高機能である長所を持っていて、通信機能はさらにPCとの親和性を増した。多チャンネルで長時間記録ができたが、周波数応答が遅いため遅い現象の記録用として使われた(たとえば温度の記録など)。 2000年代には横河電機・T&M事業部の記録計の主力モデルはDR130/DR230ハイブリッドレコーダで、通称(愛称)はDARWIN(ダーウイン)だった。2000年代中旬のその他メーカのハイブリッドレコーダの例としては、日置電機の8411、8412、8415などがある。同社の形名は88xxがメモリレコーダ(メモリハイコーダ)なので、84xxは別系統の製品である。2022年現在、ハイブリッドレコーダという名称の記録計はどの計測器メーカにも見当たらない(横河も無い)。1980年から2010年頃までの間に存在した記録計の1種類といえる。 工業計器で横河電機の同業である株式会社チノーには、「ハイブリッド記録計(打点式)KH4000」というモデルがある(2023年11月)。

波形測定器(はけいそくていき)

波形測定器というとオシロスコープやレコーダ(記録計)を指していることが多い(正確な定義はない)。具体的にはデジタルオシロスコープやメモリレコーダなど。メモリを内蔵していて、測定値(通常は電圧信号が多い)をサンプリングしてデジタルデータにして、測定器の画面にグラフ(時間と共に変化する信号の波形)を表示する。定義が「波形を測定できる、(場合によっては表示する)測定器」とすれば、ハンドヘルドのデジタルマルチメータで画面に波形表示できるモデルや、データロガーなどのデータ集録機器も含まれる。 オシロスコープや記録計、DAQを広く波形測定器と呼称しているともいえる。デジタイザはオシロスコープと双子のような製品のため、「オシロスコープ/波形記録装置」というタイトルで、波形記録装置の項目にデジタイザを掲載している文献もある。波形測定器に記録装置(記録計)が含まれるケースである。 ただし、オシロスコープの国産代表である横河計測の製品ページでは、タイトル「オシロスコープ/波形測定器」にはオシロスコープを、タイトル「データロガー/データ集録(DAQ)」にはレコーダやスコープコーダを掲載している。同社の「波形測定器=オシロスコープで、レコーダ(メモリレコーダ)やデータロガーは波形測定器ではない」という認識が伺える。日本初の電磁オシログラフを製品化し、レコーダの歴史をつくった(我が社がレコーダの王道である)と自負する横河電機では、後発で参入してトップシェアを取ったデジタルオシロスコープが波形測定器であり、記録計/レコーダとは違う、という主張を(ホームページの何気ない表記から)感じるのは筆者だけであろうか。 通販サイトには「波形測定器」の項目にファンクションジェネレータや任意波形発生器を掲載している場合がある。テクトロニクスが2000年代にAFGシリーズで画面に(発生している信号の)波形表示を始めて以降、エヌエフ回路設計ブロックやキーサイト・テクノロジーなどの信号発生器各社がこれに倣い、現在のFGやAWGはほとんどが(出力している)波形を計測器前面のパネルに表示するようになった。ただしこれは波形を表示してはいるが測定はしていないので、「波形測定器」というには無理がある。「波形が表示されているから波形測定器、という安易な分類」で、横河計測のような(計測器についての)深い洞察がない。ECサイトは計測の素人でも検索しやすい作り方をしているが、計測器のプロが作ってはいないので、利用する側に知識が必要とされる。 スペクトラムアナライザ(スペアナ)やVSAなども、測定した信号波形を表示する測定器だが、波形測定器とは呼ばれない。スペアナが表示している波形はスペクトルという(周波数、波長、元素などを横軸にしてその大きさや分量を縦軸で示したグラフをスペクトルと呼称している)。信号の時間推移による大きさの変化を波形と呼び、時間軸の測定器(波形を表示できる測定器)を波形測定器と呼んでいるとも説明できる。 波形測定器は機種群(カテゴリー)の1名称といえるが、その範疇は不確か。また、各モデルの名称(品名)に使われることはない。なぜなら、「波形測定器」では「具体的に何(どんな物理量、波形)を測定するのか不明瞭である。「任意波形発生器」は、「任意の信号波形をつくって発生することができる」と、計測器ユーザはその名称から理解することができるので、品名になっている。

PC直結型記録計(ぴーしーちょっけつがたきろくけい)

高速CPUや大容量DRAMなどの半導体の進歩と、通信技術の発達による高速・大容量の実現により、各種の分野でPCと直結したデータアクイジション機器への要求が高まり、2000年代に入ると、新しい技術を使ったPC直結型やペーパーレスの記録計が多く発売された。1950年代に国産初の自動平衡式記録計を製品化して、記録計のリーディングカンパニーを自負していた横河電機は、ペーパーレス化とともに、“新技術を使用した最新記録計”として「PC直結型レコーダ」を200年代に強力にPRしていた。モデルとしては、最大1600チャンネルが可能な拡張型のモデルDA100や、高速タイプのMX100で、現在に続く横河電機のデータロガーの源流の製品群である。ただし「PC直結型」という名称は2022年現在は死語で、ほとんど聞かない。現在は横河電機以外のメーカも含めて、PC直結型が当たり前になったからである。

ビジグラフ(びじぐらふ)

(visigraph) 三栄測器の電磁オシログラフの名称(品名か通称かは不明。現在は製造中止)。古い研究論文では「電磁オシログラフ」と記載されているが、日本電気三栄(1983年~2006年)製で、「5Lxxビジグラフ」という製品がある。電磁オシロフラフは1980年代まで使われたが、それ以降はメモリレコーダ(メモリを内蔵し、サンプリングしたデータを保存する、デジタル式のレコーダ)がレコーダの主流になった。ビジグラフ(5L42などのモデル)は、グラフテックのサーマルアレイコーダのような、チャートレコーダが記録計の主流になっていく1980年代に、併存していた三栄測器の電磁オシログラフである。1980年頃には大変売れていて、同社の稼ぎ頭の計測器だったという話があるが、三栄測器という会社はなくなり、中止になった過去のモデルについての資料がほとんどないので詳細はわからない。 中古計測器の販売サイトには以下のような製品が出展されている。 メーカ名:日本電気三栄、品名/形名:ビジグラフ/5L42 機能:電圧、電流の高速記録が可能。主な仕様:チャート最大速度4m/s、12チャンネル、記録紙幅203mm。銘板:VISIGRAPH、Type:5L42、NEC San-ei Instruments,Ltd Tokyo Japan 製品前面にはVISIGRAPH-5Lと表記されている。右側には1枚で3ch入力できるユニットが縦に3枚、実装されているように見える。背面にはひずみ計測で標準的に使われる多治見コネクタ(丸形3ピン)が9個ある。つまり9ch入力と思われる。モデル5Lは実装する入力モジュールの構成により種類があり、5L42は9ch入力仕様と思われるが、上記の主な仕様では12チャンネルとある。なお、計測部(ユニット)はユーザで自由に抜き差しできるわけではなく、メーカ出荷時につくり込んでいると推測される。 ユーザが公開している自社資産情報に5L42があり、以下の記述がある。 名称(カテゴリー):多点式記録計、商品名:電磁オシログラフ、形名:ビジグラフ5L42、仕様:電圧・電流の高速記録、入力12ch、チャート最大速度4m/s、記録紙幅203mm、メーカ名:日本電気三栄、購入日:1986年11月26日。 上記の記述でわかることは、5L42は1986年に販売されていた、仕様に「高速記録」とあるのは、メーカの仕様書などのトップに特長として記載されているためと想像される。商品名(品名)は電磁オシログラフで、ビジグラフは形名と書いてある。ただし品名や形名ではなく通称というのが適切と思われる。 日本電気三栄の6U01(電磁オシログラフ用抵抗箱)の製品カタログには以下の記述がある。 6U01形は電磁オシログラフの測定範囲を拡大するために設計された。電圧測定のときはガルバノメータへ直列に、電流測定の時には並列に電気抵抗を挿入し、ガルバノメータに流れる電流を制限する。6U01形は、日本電気三栄のP形ガルバノメータを使用する、直記式電磁オシログラフ(ビジグラフ5L40形、ビジライト5M20形)と組み合わせて使用する。6U01は6ユニットが金属ケースに組み込まれている。各ユニットには電圧、電流抵抗体とそれらの調整ダイヤル、切替スイッチ及び入力、出力端子等がある。 この説明で、ビジグラフには姉妹機のビジライトという製品群があったことがわかる。 各研究機関の論文で、使用した測定器について、以下のような記述がある。 ・ひずみ増幅器および記録計:三栄測器(株)製6M52形 ひずみ増幅器および5L形ビジグラフ(電磁オッシログラフ)。 ・ビジグラフ(三栄測器社 5L-32)とデータレコーダ(ソニー社)にデータを格納する。 ・記録は三栄測器製ビジグラフPR-101型(6素子)を使用。 上記の記述は「三栄測器」なので、1983年以前の購入品である。三栄測器はひずみアンプなどの老舗なので、ひずみ測定の記録用のレコーダとしてビジグラフが使われる例があったと思われる。また、データレコーダと併用するのは、振動、音、ひずみなどをアナログデータで保存し、バックエンドの解析に使用する場合で、2000年以前のデータレコーダ全盛時代の測定手法といえる。同社がひずみ計測用のレコーダの需要に対応してきたことを伺わせる。 月刊「トランジスタ技術」創刊号(1964年9月)の、「三栄測器、DA-842/DA-422オシロ用直流増幅器」の紹介文には「インク書きオシログラフ、電磁オシログラフまたはビジグラフと組み合わせて使う」と書かれている。この頃に三栄測器がつくっていたビジグラフは、まさに電磁オシログラフだったと思われる。 株式会社エー・アンド・デイの工業計測機器(旧三栄測器の製品群)ページには「メンテナンス終了および予定製品」一覧があり、ビジグラフについて以下の記載がある(2023年11月)。 製品名 / 製品形式 / 生産・販売終了(年月) / 保守終了年月 ビジグラフ / 5L40シリーズ / 1993年 / 2000年3月 ビジグラフ / 5L30シリーズ / 1982年 / 1991年12月 ビジグラフ / 5L16/17 / 1978年 / 1991年11月 ビジライト / 5M26/27/28 / 1991年3月 / 1999年3月 三栄測器は記録計の老舗だが、親会社の変遷、社名変更などがあり、過去のモデルも含めて、記録がきちんと残っていない。以下の参考記事のように横河電機の電磁オシロ開発史はあるが、同様にレコーダの歴史をつくってきた三栄測器の記録は、上記のトランジスタ技術の広告などで、断片的にしか知ることができない。

非接触電圧プローブ(ひせっしょくぷろーぶ)

メモリレコーダでもオシロスコープのような10:1や100:1の減衰機能付きの広帯域絶縁プローブが必要な場合がある。2017年頃から非接触電圧プローブが販売され、被覆したケーブルの上から交流電圧波形が観測できるようになった。防水加工などがされていて容易に電圧を測定できない部分の波形観測に便利である。参考用語:光絶縁プローブ 参考記事:メモリレコーダの基礎と概要 (第2回)の2ページ目・・メモリレコーダの周辺機器として非接触電圧プローブが紹介されている。 計測器情報:日置電機のSP3000 AC非接触電圧プローブ