計測関連用語集

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オシログラフ(おしろぐらふ)

(oscillograph) 電気信号の波形を観測・記録する装置として、米国のウエスチングハウスは1920年に携帯型の電磁オシログラフを発売していた。1924年に横河電機は日本初の電磁オシログラフを国産化している(電磁型オッシログラフ)。オシログラフは記録計(レコーダ)の昔の名称といえる。波形観測の機器としてオシロスコープ(アナログオシロスコープ)が登場するが、これを「ブラウン管(CRT、陰極線管)を使ったオシログラフ」と解説してる文献がある(※)。oscillographとは「oscillation(発振)やoscilator(オシレータ、発振器)のgraph(図、形状)」という意味で、「発信している波形」のことから「信号の波形を観測・記録する」機器のことを指すようになったと推測される。 (※) オシロスコープをオシログラフと呼ぶ文献の例。 オシロスコープの歴史は古く,1897年(明治30年)にドイツ人ブラウン(Karl F.Braun)が大学の学生に電流波形を見せようとして考案した陰極線管(以下,ブラウン管またはCRT:Cathode-Ray Tube)により,電気現象を電子ビームに変換してブラウン管の蛍光面に描かせたときにさかのぼる。現在のような形のオシロスコープができたのは,1932年(昭和7年)11月に発表されたCRTを使った最初のオシロスコープ「CRTオシログラフ」と言われている。 (IEEJ Journal,Vol.124,No.5,300~303ページ、2004年。岩崎通信機でオシロスコープの開発に従事した成田芳正著) IEEJは一般財団法人 日本エネルギー経済研究所。 電磁オシログラフは、長い周期の波形を紙に記録する機器で現在のカテゴリー(機種分類)では記録計(レコーダ)である。オシロスコープは短い周期の波形を観測・記録することに優れている(記録計とは別の、波形観測機器であるオシロスコープというカテゴリーになっている)。レコーダは長時間の記録ができる(たとえば紙を補充すればいつまででも記録できる)。反対にオシロスコープは変化が速い(周波数が高い)信号を観測できるが、記録できる時間は短い。現在でも記録計(メモリレコーダなど)とオシロスコープは、基本の仕様の項目は同じだがその数値は異なり、使い方(アプリケーション)がまったく違っている。それは電磁オシログラフとアナログオシロスコープの時と変わらない。 横河電機は日本初の電磁オシロフラフを開発したことが、後の計測器部門(現在の横河計測)に影響したかはわからないが、1990年頃に「オシログラフィックレコーダ」という品名の記録計(メモリレコーダ)をつくっていた。またメモリレコーダのことをメモリオシログラフと呼称する人が当時の横河電機の計測器部門にいた(当サイトのメモリレコーダのカテゴリー名が「メモリオシログラフ」なのはそれが理由である)。三栄測器や渡辺測器(現グラフテック)という「わが社こそ記録計の老舗、王道メーカなり」と自負している2社はオシログラフに特別な愛着はないが、横河電機にはオシログラフは特別であるようだ。上記の3社よりも後の1980年代にメモリレコーダに参入し、現在ではメモリレコーダのトップシェアとなった日置電機に、オシログラフ製品がないことはいうまでもない。 株式会社近計システムは保護継電器向けの3相デジタルパワーメータPHAシリーズをラインアップする計測器メーカだが、主力は電力会社向けの計測・監視装置である。同社ホームページの製品ページのトップのサブタイトルは「自動オシログラフ(じょう乱記録)」である。具体的な製品としては、ネットワーク対応型総合計測装置 NEO-5000は、「入力変換器(ISO-3032)と組み合わせて使用する多機能型総合計測装置で、オシロ波形解析ソフトで故障解析ができる」とある。デジタル自動オシロ AMX-2000/2200は「入力変換部、演算部、波形記録部、通信部で構成したオールインワン型の自動オシロ装置で、波形解析ソフトを使用して故障解析ができる」とある(2024年4月現在)。ここでいうオシログラフやオシロの定義は不明であるが、電力会社の意向に沿って名称は命名されていると思われる。 計測器情報: 横河電機のオシロフラフィックレコーダの製品例

オシログラフィックレコーダ(おしろぐらふぃっくれこーだ)

横河電機(現横河計測)のOR1400やORM1300などの品名。 オシロスコープが半導体メモリを備えサンプリングによるデジタル式(デジタルオシロスコープ)になったように、アナログのメータで表示していたレコーダもデジタル式のメモリレコーダとなった。記録計の主流がメモリレコーダになっていく1980年代~1990年代に、計測用レコーダの老舗である同社がデジタル式のレコーダとして世に問うた製品群だった。現在の横河計測にはこの品名の製品は無いが、DL708からDL950、DL350へと続くスコープコーダ(同社のオシロの通称である「DL」を冠したレコーダ。同社オシロの形名はDL1600やDLM3000のように数字4桁だが、レコーダであるスコープコーダは数字3桁)にそのDNAは継承している。 日置電機のメモリハイコーダや、三栄測器(旧NECアビオニクス、現エー・アンド・デイの工業計測機器部門)のオムニエースのように、横河計測のメモリレコーダの1種である。OR1400は2001年4月1日に販売終了し、後継機種はDL950やDL350(2021年3月現在)。 ORM1200/1300の製品カタログの表紙には「高速ユニバーサルレコーダ」と記載されている。カタログには「ORMシリーズは高速ユニバーサルレコーダの最新の進歩である。複数の絶縁アナログチャネルを装備し、ロジックチャネルもオプションで追加できる」旨が記載されていた。 オシログラフィックレコーダと同時期に発売されていたAR(アナライジングレコーダ)の正式な後継がスコープコーダである(参考記事を参照)。オシログラフィックレコーダもARも「レコーダのようなオシロ」という位置づけで登場したが、両者の正確な違いは、今ではわからない。オシログラフックレコーダの設計コンセプトを知ることができるような文献はほとんどない(国立国会図書館によれば、所蔵の1992発行の横河技報36(2) 85~88ページにはOR2300の解説がある)。

オムニエース(おむにえーす)

(omniace) エー・アンド・デイ社(の工業計測機器部門)のメモリレコーダの通称。ペーパレスが記録計の主流となり、メモリレコーダの主要メーカである日置電機や横河計測のモデルは紙に印刷する機能を主眼にしていない。グラフテックのレコーダも印字できる機種が廃止になっている中で、オムニエースは唯一、印刷機能にこだわっている。鉄道などの業種が主なユーザで、その意向を強く反映していると推定される。 omniは「すべての」、「あらゆる」の意味。aceは第一人者の意味(野球の主戦投手など)。omniaceは「あらゆるもののエース」。オムニというと、OmniBER(オムニバー)、「すべてのBER(誤り率)測定器」という名前のモデルが1990年代にhp(現キーサイト・テクノロジー)にあった。 オムニエースは記録計(レコーダ)の老舗計測器メーカの三栄測器がつくった。三栄測器はNECが資本参加して、非接触温度計(サーモグラフィ)メーカのアビオニクスと統合しNECアビオニクス(日本アビオニクス)になり、レコーダやアンプなどの計測器(元の三栄測器の機種群)は分離されて、エー・アンド・デイ(体重計などの家庭用健康機器や天びんなどの計量機器、自動車検査用の試験機などのメーカ)に吸収され、現在は同社の工業計測機器部門が設計・製造・販売している。

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