市場動向プレビュー

【イベントレポート】Rohde & Schwarz Technology Symposium 2025

無線機テスタを使ったHILSで実車走行環境を再現

展示品 SDVにおける緊急動作HILS
会社名 株式会社マックシステムズ
説明者 エンジニアリング部 上田 一輝 氏

上田氏当社は1.電子計測器・試験器の専門商社、2.特注システムのアプリケーションとハードウェアの設計製作、3.電子部品の故障解析~受託試験まで高品質・高信頼性のものづくりをサポート、4.ドライビングシミュレータのソフトウェアや関連機器の販売から、地図・シナリオ制作、技術サポートまで、の4事業で試作~製造までの量試一貫を行っています。昨年のR&S Technology Symposiumに続き、R&Sと共同開発した「横浜みなとみらい地区を自動車で走行したときの電波環境再現システム」を展示しています。

R&S CMX500とSMBV100B
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システムの構成
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GPS地図(左)、電波状況(右)
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TEO無線機テスタ※1 R&S CMX500、ベクトル信号発生器 R&S SMBV100Bと組み合わせて、NIのLabVIEWでソフトウェアをつくったのですね※2

上田氏そうです。CMX500は基地局シミュレータとして大手4社のキャリアを再現し、SMBV100BはGNSSシミュレータとしてGPS信号を発信します。ECU※3の受信機はNTTドコモのSIM※4を使っていますが、緊急通信網を使用してNTTドコモ以外のキャリアに接続できることも確認します。2台の測定器を使っているので、自動車にSIMを載せた状態を再現し、GPS地図情報やファームウェアアップデートを実際の模擬走行中にOTA※5環境で動作検証できます。

※1

(transceiver tester、radio tester) CMX500は基地局シミュレータ(シグナリングテスタ)だが、R&Sの品名は無線機テスタ。

※2

同社はNI(ナショナル・インスツルメンツ)のアライアンスパートナーである。

※3

(Electronic Control Unit)自動車のエンジンやブレーキ、通信機器を制御している機器。ここでは自動車内部の通信ではなく、SIMを実装して外部と通信するECUを指している。

※4

(Subscriber Identity Module) 通信デバイスが通話やデータ通信を行うためのICカード。「加入者識別モジュール」。契約者情報が記録されていて、スマートフォンに装着されている。携帯電話だけでなくタブレットなどの通信デバイスに挿入するとデータ通信を行うことができる。

※5

(Over The Air) インターネット経由でソフトウェアを更新する技術。従来、自動車のソフトウェアはディーラや整備工場で物理的なメディアを使って更新していたが、通信機能を持つ自動車は無線でソフトウェアをアップデートする。

TEO電波測定器で実測したデータを使いますか?

上田氏場所ごとに測定した電波強度データからCMX500内にテストシナリオをつくります。テストシナリオをつくる作業はユーザと相談して当社が行います。

TEO無線機テスタの上にある機器は何ですか?

上田氏2つある黒いのは、電波を混ぜ込んでいるコンバイナです。4つの電波を受けてミキシングしています。小さなプリント基板が受信機で、SIMを搭載しているので自動車のECUに相当します。大きなプリント基板はeCall※6用の受信機です。これを使えば自動車の緊急通報ボタンが押された場合の通信の検証ができます。

※6

(Emergency Call) 車両緊急通報システム。自動車事故時に車両(車載システム)から無線ネットワークを介し、緊急連絡センターへ自動通報を行うシステム。読み方:イーコール。

送信と受信のコンバイナ
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SIM付き受信機(ECUに相当)
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eCall用の受信機(左)
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TEOECUベンダーが、みなとみらい地区の走行時に自社製品が正常に送受信できるかを実験室で確認できるのですね

上田氏そうです。HILS※7というテストの仕組みがあり、自動車メーカはほとんど導入しています。新規開発のECUは何千回も繰り返しデータを取りながら試験します。すでに構築しているお客さまのHILS環境に、今回展示している当社システムを追加して機能アップすることを想定しています。SIMを載せていない自動車HILSのメーカは、当社のこのシステムを導入するメリットがあると思います。

※7

(Hardware In the Loop Simulator or Hardware In the Loop System) ECUやセンサなどの実機ハードウェアをシミュレーション環境に組み込み試験する手法。自動車開発では実機の開発段階(試作品が無い状態)で早期に検証作業を進めるために利用されている。読み方:ヒルズ。欧米ではHILと呼称される。

TEOこのシステムを開発した背景を教えてください

上田氏2025年10月から、災害や通信障害などの非常時には他の事業者のネットワークを利用する、事業者間ローミングが義務付けられます※8。R&S CMX500は1台でフルローミング試験に対応しているので、無線機テスタを活用したeCallの動作確認環境を考えました。HILS構築はすでに実績があるので、SDV※9向けのシミュレーションベースのテスト環境をつくることができました。仮想環境を使って多様な条件をシミュレーションすることで、実測での試験が不要になり費用と時間が削減できます。効率的な試験や高品質な検証は需要があると思っています。HILSやドライビングシミュレータ、計測器のシステムアップなどの知見を使い、無線機テスタのアプリケーションをつくりました。

※8

2025年1月に総務省から「非常時の事業者間ローミング試験」について発表があった。LTE通信方式で音声通話をする携帯端末(VoLTE)は2025年10月から、通話機能のないデータ通信端末(eMTC / NB-IoTを除く)は2027年10月から、フルローミングに対応することになる。

※9

(Software Defined Vehicle)ソフトウェアによって定義された自動車。

TEO展示品はまだ形名や品名がない、ソリューション展示ですね

上田氏昨年のこの展示会で初お披露目し、機能のアップグレードをしながらPRしてきましたが、まだ販売実績はありません。当社は中部地区の自動車関連企業に販路があるので、これからお客さまごとのカスタマイズを進めたいと思っています。

TEO隣の展示はドライビングシミュレータですか?

上田氏フランスのAV Simulation社の代理店をしていて、「SCANeR™studio」という製品を取り扱っています。画面に表示しているのはみなとみらい地区です。実際の標識や料金所などのデータを当社でつくり込んでいます。ドライビングシミュレータは単体での販売・サポート以外に、説明してきたCMX500のシステムとも連携可能です。

ドライビングシミュレータ
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上田 氏
上田 氏
展示全景
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TEOHILSはどんな実績がありますか?

上田氏テスト対象はユーザによって様々ですが、テストに必要なリアル環境を再現するための計測機器やシミュレータを選びます。車両環境としてCANやLIN※10などの各種の電気信号を模擬して、テスト対象が自動車の環境にいることを再現するシステムを構築しています。エンジニアリング部では特注システムの設計製作をしていて、ユーザが必要な試験に最適なHILS環境の構築、シミュレータを活用したソリューション提供を行っています。

※10

CAN : Controller Area Network、LIN : Local Interconnect Network。車載ネットワークに導入されている代表的な通信規格。

TEOありがとうございました