市場動向プレビュー

【イベントレポート】Rohde & Schwarz Technology Symposium 2025

汎用計測器とLabVIEWで生産ラインを自動化

展示品 各種ワイヤレスデバイスの自動試験計測システム
会社名 株式会社ペリテック
説明者 取締役 星野 尚紀 氏

星野氏当社は試験と計測のシステムインテグレーション、カスタマイズ製作に特化した会社です。主に自動計測に注力しています。NI(ナショナル・インスツルメンツ)のLabVIEW※1を使ったシステムが得意で、多くの実績があります。今回はワイヤレスデバイスのテストソリューションとして、R&Sの測定器を使って各種の無線デバイス(BluetoothやWi-Fi、LTE、6Gなど)の量産テストをデモしています。

※1

(Laboratory Virtual Instrument Engineering Workbench) National Instruments社が開発したプログラミング言語・開発環境。機能を持ったアイコンを線で接続してプログラムする。計測・制御・自動化で利用され、電気計測器の自動校正では高シェア。読み方:ラボビュー。

TEO自動計測というと普通は測定器がメインですが、搬送ロボットが動いていますね

星野氏量産では搬送が重要です。無線なのでシールドBOXも必要です。構成は無線機テスタ R&S CMP180、自動開閉できるシールドBOX、搬送ロボットと当社がつくった自動計測ソフトウェアです。ロボットが無線デバイスをつかんでシールドBOXに運び、中のピン治具に置き、電源が入り、計測器を制御して測定する、という完全自動化です。自動計測はタクトタイム※2を短くできます。

※2

(takt time) 製品を1個つくるのに必要な時間の目安(生産性の指標)。製造ラインが1日に8時間(480分)稼働し、注文が1日に100個の場合、タクトタイムは4.8分/個(稼働時間/必要生産数=480分/100個)。

無線デバイスをシールドBOXに自動搬送
無線デバイスをシールドBOXに自動搬送

TEOモニタ(図1)には8つのデバイス(DUT No.1~DUT No.8)が表示されていますね

星野氏お客さまのニーズ、生産の用途によって、フルカスタマイズします。最終的には複数のデバイスに対応します。今回は8つの製品をテストできるという実演です。R&Sの測定器も多ポートなので、上手く活用します。自動車の自動運転や航空・宇宙関係の無線デバイステストなどは、大変厳しい試験要求がありますが、R&Sの高精度計測と当社の自動計測ノウハウや計測器の知見を活用して提案しています。

TEO展示品はすでに販売していますか?

星野氏まず、当社のエンジニアリング能力でこのようなことができるという技術アピールです。この展示をベースにしてお客さまのニーズに合わせて提案できます。製品というよりはソリューション展示です。

TEO大量生産用の大型機器もできるのですね

星野氏ユーザの要望によって電気、メカ、ソフトウェアをトータルでカスタマイズします。展示している無線機テスタは生産ライン向きのモデルですが、最適なモデルを選びます。

図1 ソフトウェアとR&S CMP180
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少量から大量生産まで対応
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星野 氏
星野 氏

TEO御社はR&Sを使ったシステムは多いのですか?

星野氏無線関係は多いです。EMC分野のEMI※3テスタも手掛けていますから、R&SのEMIレシーバを使うことも多いです。

※3

(Electro Magnetic Interference) 不要な電磁ノイズの放出。EMC(Electro Magnetic Compatibility、電磁適合性)にはEMIとEMS(Electro Magnetic Susceptibility、電磁感受性)がある。EMI用のスペクトラムアナライザであるEMIレシーバはR&Sが業界標準になっている。

TEO昨年のR&S Technology Symposiumでは実機展示はなかったですね

星野氏提案内容は今年と同じですが、今回のような試作機は展示しませんでした。動いている機器がある方がわかりやすいので、今回は持ってきました。

TEO御社は自動計測では名が知れていますが、半導体分野に強い印象がありますが

星野氏はい、市販の計測器を組み合わせて半導体の自動計測をするのが得意です。お客さまのニーズに合あった専用テスタにできます。構成は汎用モジュールを使うので、一般の専用テスタよりも安価で、かつ拡張性もあります。半導体分野ではニーズにマッチしたので採用されてきたと思います。

TEONIとの関係を教えてください

星野氏当社はNIのインテグレーション パートナーの1社です。付き合いは20年以上になります。半導体テストやECU※4テストをしています。LabVIEWとTestStand※5を使って、お客さま特有の複雑な工程を自動計測で実現してきました。

※4

(Electronic Control Unit)自動車に導入されているエンジンやブレーキ、通信機器を制御している機器。

※5

自動テストや検証システムがより短時間で開発できるよう設計された、NIのテスト管理ソフトウェア。

TEO最近のNIはLabVIEWよりもIPライブラリ(出来合いのテストシナリオ)が増えていると伺いましたが、御社もそうですか?

星野氏いいえ、そうとはいえません。LabVIEWに価値があります。NIはLabVIEWを使わない方向に進んでいましたが、2023年10月にEmerson※6に買収され、「ソフトウェアが重要」であることを再認識しました。LabVIEWこそNIの強みですから、今後はその普及に注力していくと思います。スタンドアロン※7の計測器でも自動計測できるのがLabVIEWの利点です。LabVIEWがより普及すれば自動化だけでなく、今はやりのDX※8も進展すると思います。

※6

(Emerson Electric Co.)米国ミズーリ州の電機メーカ。プロセス制御計装機器、産業用オートメーションからコンシューマ製品まで手掛ける。エマソンの工業計器は国内の工場でも使われている。

※7

(standalone)IT用語でネットワークにつながっていない機器のこと。「独立、孤立している」という意味。ここでは「単体の計測器」を指している。

※8

(Digital Transformation) デジタルトランスフォーメーション。企業がデジタル技術を活用して、製品・サービスやビジネスモデルを変革すること。

TEO展示品は計測器からロボットまで、電源や通信などの制御をすべてLabVIEWでつくり込んでいるのですね

星野氏このように広範囲にシステム化するのは簡単ではありません。電気、機械、PLC※9、ソフトウェア、計測器などは個別の専門技術ですが、当社はすべてやります。今年設立40年ですが、試験機で始まり医療機器や電話交換機のテストなどを手がけ、知見を重ねました。30年前にLabVIEWの受託開発を始め、飛躍しました。

※9

(Programmable Logic Controller)工場などの生産現場で各装置をシーケンス制御している機器。読み方:ピーエルシー。

TEO最近の自動計測のトピックスはありますか?

星野氏自動計測 + 見える化でしょうか。ソフトウェアを使って試験を効率化するだけでなく、レポート作成やデータベース、連携などを求められます。帳票から試験仕様を自動的に読み込むこともあります。LabVIEWの良さをわかっているお客さまは話が早いですが、知らない方に理解していただくのはハードルがあります。

TEO御社の一番の競合はどこですか?

星野氏NIのパートナー各社は良きライバルです。

TEOありがとうございました

展示全景
展示全景