【イベントレポート】Rohde & Schwarz Technology Symposium 2025
ローデ・シュワルツ・ジャパン(R&S)は2025年4月23日(水)に東京コンファレンスセンター・品川で、昨年に続きTechnology Symposiumを開催しました。TechEyesOnline取材班(TEO)はR&S製品を使った協賛企業のソリューション展示を取材しました。
信号の高速化で、高性能なプリント基板の製造現場では歩留まりが悪化し、対策が急務です。ヤマハファインテックは67GHz VNAによる次世代ベアボートテスタで、解決に挑戦します。開発中の検査装置について伺います。NIのLabVIEWを使った自動計測が得意なペリテックは、無線機テスタ、搬送ロボット、シールドBOXを組み合わせて、ワイヤレスデバイスの生産ライン自動化を実演します。計測器のシステムアップやアプリケーション開発ができるマックシステムズは、無線計測器を使ったHILS環境を提案します。生産ラインの検査とECU向けのHILS、3社の最新ソリューションを紹介します。
- ヤマハファインテック株式会社 VNAを使った次世代のインターポーザ検査技術
- 株式会社ペリテック 各種ワイヤレスデバイスの自動試験計測システム
- 株式会社マックシステムズ SDVにおける緊急動作HILS
VNAを使った次世代のインターポーザ検査装置の製品化
展示品 | ベアボードの高周波特性(67GHz)の自動検査技術 |
会社名 | ヤマハファインテック株式会社 |
説明者 | FA事業部 FA開発部 PMグループ リーダー 山崎 良一 氏、主事 高橋 国人 氏 |
山崎氏当社は楽器のヤマハの100%子会社です。ヤマハで蓄積した製造技術を応用して生産設備の開発・製造・販売をしています。顧客であるプリント基板メーカでは、5G通信やLSI間通信において、年々 信号周波数が高くなり、より高周波での信号完全性が担保できる検査ソリューションが求められています。そこで高周波特性測定機のRFテスタ Micro Prober MP Seriesを2019年に発売しました。今回はローデ・シュワルツ(R&S)のVNA※1を併用した、ベアボード※2の周波数特性を検査するシステムを提案しています。
(Vector Network Analyzer) 現在主流のネットワークアナライザの略称。
(bare board)電子部品が実装されていないプリント基板のこと。bare:裸。正式にはプリント配線板。多ピンの治具(コンタクトピン)でベアボードの検査をするのがベアボードテスタ。プリント配線板(ベアボード)に部品が実装されるとプリント回路板といい、2つを総称して「プリント基板」という。実際にはプリント回路板をプリント基板と呼ぶことが多いので、間違いがないようにベアボードという表現が良く使われる。
高橋氏電子機器の高機能化、信号の高速化によって、プリント基板のつくり方も変化しています。従来は普通に生産していれば良品になりましたが、高周波特性まで考慮が必要な品種では、10枚つくったら使えるのは2~3枚というような例もあります。その対策として、厳格な検査で良品と不良品を早い段階で仕分けするのが、今回の試みです。具体的には67GHzという、この業界では異例の高周波を使います。67GHzの測定器はR&Sなどにありますが、用途は研究室などの設計段階が主で、1点(または2点)程度の測定です。量産工程の検査は複数ポイントを一度に測定するので、DUT※3に探針する機構(プローバ)が重要です。
(Device Under Test) 被測定物、測定対象。VNAや半導体デバイスなどで使うことば。
TEO展示パネルに「次世代のインターポーザ※4検査技術」とありますね
高橋氏近年のICは巨大化しました。巨大化すると歩留まり※5が悪く、不良率が高まります。そのためICを小分けし、さらに選別した良品だけを組み合わせて1つの良品をつくります。これをチップレット※6といいます。チップレットは直接ベアボードには実装せず、インターポーザを介してつなぎます。今回の検査装置の第一の主眼はこのインターポーザの特性測定です。もちろんベアボードの特性測定にも注目しています。
(interposer) 半導体チップや電子部品を接続するための中間基板。サイズや形状が異なる部品を効率的に接続するために使用され、電子機器の小型化や高性能化で普及している。
製造プロセスの効率性(生産全体の成果)の指標。たとえば投入された材料・作業と完成した良品数の比。歩は割合、留まりは「完成品がたまる」こと。英語はyield(収率)。
(chiplet)従来は1つのチップに集積していた大規模な回路を複数の小さなチップに分けて、組み合わせて1つの半導体にする技術。チップレットは小さな面積で製造されるので、製造欠陥が少なくて歩留まりが向上する。
TEO展示品は開発途上の技術アピールですね
高橋氏まだ70%くらいの完成段階です。67GHzの両面・マルチポイントの検査装置として、来年にはリリースしたいと思っています。40GHzまでの装置はすでに製品化し、販売実績もあります(高周波特性測定機 MP502 / MP502-A)。
山崎氏当社の主力製品はFPC基板(フレキシブルプリント配線板)のベアボードテスタですが、高周波検査に対応した装置を2019年から始め、より難易度が高い67GHzに挑戦している状況です。
TEO製造ラインで使える高周波ベアボードテスタですね。展示品の構成を教えてください。VNAのR&S ZNAの下にあるのは何ですか?
高橋氏R&S OSP230 Open Switch & Control Unitで、RFのスイッチ/制御用に設計された製品です。VNAには4ポートしかないので、分岐する機器が必要です。OPS230は8ポートですが、完成品は最低20ポート以上にする予定です。
TEOR&Sサイドでの開発もありますね
高橋氏詳しくは話せませんがあります。測定器以降のケーブルも含めた開発は当社です。VNAとプローバ間の接続ケーブルを短くしたいので、装置内に組み込むには工夫が必要です。ピンの間隔は0.15mmピッチですから、接触したい箇所に正確に探針するのは簡単ではありません。展示しているDUTとの接続機構は4ポートです。
TEOVNAの画面と、プローバが表示している2.37は何ですか?
高橋氏VNAの横軸は周波数で、67GHzまでの反射特性です。DUTに接続するのに回転角などを調整する必要があり、2.37はその値を示しています。ステージは回転する機構がありDUTとの接触を微調整します。一番良い接触状態を学習して、装置に組み込んだ時にはその状態で繰り返し測定します。
TEO競合はありますか?
高橋氏水面下で開発している企業はあると思いますが、まだ67GHz製品は知る限りありません。40GHz製品でも当社を含めて世界に2、3社と思います。用途を限定したウェーハ※7用の装置は国内メーカもありますが、ベアボードやポリマーなどの有機材料でつくったインターポーザが対象だと格段に難しいです。これらの表面を拡大すると凹凸や反りがあり、繊細なプローブをあてられる装置はほとんどありません。
(wafer)半導体の前工程で製造されるシリコンウェーハは、多くの半導体チップが円盤状に形成された精密な板で、半導体検査装置のプローバ(多ピン)をあてて検査する。
TEO半導体テスタなら測定対象は精密加工されているので67GHzのような検査ができるが、ベアボードで同じことをするのは難しいということですね。お客さまを教えてください
高橋氏ベアボードメーカです。世界的な上位メーカが日本にはあるので国内需要は大きいと思います。
TEOVNAがR&Sな理由はありますか?
高橋氏一般的な話として、検査装置と測定器の組み合わせはお客さま次第で、当社には測定器の決定権はありません。67GHzだとR&Sともう1~2社ですが、当社は各計測器メーカと懇意にさせていただいています。
TEOありがとうございました