市場動向詳細

【イベントレポート】第17回パワエレフォーラム(日本パワーエレクトロニクス協会主催)

日本パワーエレクトロニクス協会(PWEL)はパワエレ業界の発展に貢献すべく、2017年から技術者向けフォーラムを始めました。コロナ禍によってWebに限定していたフォーラムも2024年から会場への参加者を増やし、2025年2月7日(金)には計測器メーカ4社が実機展示を行いました。TechEyesOnline(TEO)は展示場を回り、パワエレの計測器、試験手法の最先端をレポートします。

ガウスメータを初めて国産化した電子磁気工業は磁気計測の老舗です。開発中の直流磁界(静磁場)を可視化する試作品や、軟磁性材のB-H測定などを紹介します。ケミトックスは創業50年、ISO/IEC 17025認定の独立系試験機関です。増加するV-t試験やパワーサイクル試験について伺います。パワエレのソリューションに注力するオシロスコープメーカ3社の展示を写真で紹介します。最後に、セミナー教材を展示しているPWELに現在の事業概要を伺いました。

  1. 電子磁気工業株式会社:B-Hアナライザ BH-1000、3D Magnetic Viewer MV-zero、ガウスメータ GM-6006
  2. 株式会社ケミトックス:パワーデバイスの信頼性評価
  3. オシロスコープ3社(テクトロニクス、テレダイン・レクロイ、ローデ・シュワルツ)
  4. 一般社団法人 日本パワーエレクトロニクス協会:パワエレフォーラム、パワエレ技術講座、キャリア成長

ガウスメータの老舗が提案する磁気計測

展示品 B-Hアナライザ BH-1000、3D Magnetic Viewer MV-zero、ガウスメータ GM-6006
会社名 電子磁気工業株式会社
説明者 開発部 開発課 主任 横山 望 氏

横山氏当社は磁気を使った検査装置や計測器を製造・販売していて、今回は磁気計測の3製品を展示しています。まずB-Hアナライザ※1は計測部と励磁※2の電源部の2筐体で構成されています。

※1

(B-H analyzer) 磁性体の磁化特性(ヒステリシス特性、B-H特性)の測定器。縦軸が磁束密度B[T(テスラ)]、横軸が磁界の強さH[A/m(アンペア/メートル)]のグラフを表示。磁性体にかける磁界Hのかけ方によってBの値は一定ではなく、B-Hグラフは菱形のループになり、ヒステリシス(履歴現象)という。B-Hカーブは磁性材料の研究・評価で使われる。

※2

励磁(れいじ)とはコイルや電磁石に電流を流して磁場を発生させること。反対に残留磁気を消失させることが「消磁」。

TEO製品カタログにはB-Hアナライザが2モデルありますね

横山氏展示しているBH-1000は軟磁性※3材料用で、トロイダルコア※4や短冊・棒形状の試料を測定します。もう1台のBH-1000Hはフェライトやネオジウムなど、磁石になるような硬磁性材料用です。

※3

軟磁性は、外部磁界で磁化された後で磁界がなくなると磁化を失って元の状態に戻る物質。外部磁界がなくても磁化を残すのが硬磁性。軟磁性材料は電磁石やトランスの磁心に、硬磁性材料は永久磁石になる。どちらかが優れているわけではなく、用途によって使い分けられる。ソフト磁性材/ハード磁性材や軟質磁性材/硬質磁性材などの表記もある。

※4

(toroidal core) 帯状の各種磁性材料(電磁鋼板など)を丸形に巻いて加工したもの。変圧器やノイズフィルタなどの中核(コア)に使われる。toroidalは「円環状」や「ドーナツ型」の構造を指す。

BH-1000
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製品カタログ(抜粋)
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測定結果(B-H特性)
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TEOBH-1000を展示しているということは、パワエレ※5分野は軟磁性ですか?

横山氏はい、パワエレ用の軟磁性材料の研究が行われています。モータの磁石などは硬磁性材料ですが、インダクタやチョークコイル※6と呼ばれる部品は軟磁性です。

※5

エレクトロニクス(回路理論、半導体、電子部品)とモータ駆動(パワー、制御)の両方を包含する技術分野であるパワーエレクトロニクは、パワエレと呼ばれる。本フォーラムもこの名称を使っている。

※6

インダクタ(inductor)は電磁エネルギーを蓄える受動素子の総称。電子部品としてはコイル(巻線)がある。特定の周波数をカットする目的で使用するのがチョークコイル(choke coil)。巻かれた導線が磁場をつくり、電流の急激な変化や高周波ノイズを阻止する。フィルタにも使われる。chokeは「ふさぐ」「通さない」の意味。

TEOメーカによってB-Hアナライザに違いはありますか?

横山氏大きく2種類あります。当社は直流が主で、交流も測定できますが10kHzくらいまでです。他社には数MHzまで対応している製品があります。当社もパワエレのお客さまに向けた、高周波B-Hアナライザの開発を進めています。

TEOつぎの展示は開発中の参考出品ですね

横山氏磁気を可視化する3D Magnetic ViewerのMV-zeroです。3軸の磁気センサを平面上に5×5(25個)並べています。PCとWi-Fiで接続し、センサが収集したデータをリアルタイムでPCに送信し、可視化します。25個のセンサは、赤色に光るとN極(+)、青色がS極(-)です。現状、静磁場(直流の磁界)がどのようになっているかを可視化した装置はありません。MV-zeroは磁束の飛び方や向きをリアルタイムにPC画面で観測できます。

製品チラシ(抜粋)
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MV-zero
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測定結果(PCの画面)
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TEOどんなアプリケーションを想定していますか?

横山氏インフラの検査です。建物の中に埋まっている鉄筋は腐食や減肉、切断などの劣化があると、鉄なので磁極ができます。この可視化装置を壁に沿って動かしていくだけでも、LEDの点灯状況で異常個所をある程度探索できると考えています。

TEO直流磁気計測の専門家、ならではの新製品ですね

横山氏開発部内で「磁気はEMCなど交流の可視化測定器はあるが、直流の磁界を見ることができる装置はない」と以前から話していました。直流磁気の可視化装置があったら面白いのではないか、という発想から開発が始まりました。参考展示でお客さまの声を聞いています。

TEO最後はガウスメータ※7ですね

横山氏ガウスメータは磁気の基本測定器で、GM-003から始まり何モデルもつくり続けています。現行のGM-6001/6006はタッチパネルを搭載し、オシロスコープのように磁束の変化を波形表示します。前身モデルはボタンと数値表示の、昔ながらの計測器(フラックスメータ※8 FM-2000のような外観)でしたが、デザインを一新し2022年に発売しました。従来から電圧出力があり、オシロスコープに入力して磁束の時間変化を観測していましたが、ガウスメータだけで確認できるようになりました。この機能は、知る限り当社オリジナルです。

※7

(gauss meter) 磁束密度の測定器。磁気(磁場)の指標(大きさ)は磁束密度のため、磁気の基本測定器。現在のSI単位では磁束密度はT(テスラ)だが、長らくG(ガウス)だったので、いまでもガウスメータと呼ばれる。

※8

(flux mater) ガウスメータが特定の場所の磁束密度を測定するのに対し、フラックスメータ(磁束計)は磁気全体の磁束量(総磁束量)を測定する。ガウスメータは測定対象の表面から出ている磁束量だけだが、フラックスメータは内部も測定する。両者は用途によって使い分けられる。

GM-6006と磁気プローブ
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フラックスメータ FM-2000
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横山 氏
横山 氏

TEOガウスメータのセンサ(磁気プローブ※9)は多種類ありますね

横山氏1軸、2軸、3軸、低磁界用などがあり、磁気プローブのラインアップもガウスメータの特長の1つです。実は当社のガウスメータは磁気プローブごとに使える機種が異なり、GM-5015、GM-5122、GM-5317など多くのモデルがありました。これらを2つに集約して利便性を高めました。1軸プローブ専用のGM-6001と、すべてのプローブが使えるGM-6006です。

※9

同社はホールプローブと呼んでいる。長方形をしたトランスバースプローブ(平型センサ)は軸の幅に対して垂直方向の磁場を測定する。円筒型のアキシャルプローブ(軸型センサ)はプローブ端面に垂直方向の磁場を測定するので、空芯コイルの磁束測定に適している。transverseは「横方向」、axialは「軸方向」。一般的にガウスメータはモデルごとに使えるプローブが異なることが多い。

TEO御社はガウスメータを初めて国産化したと伺いました。ネットの製品ランキングで「御社のクリック率がトップ」というデータがありました

横山氏ガウスメータの国産メーカは約10社あり、海外製品も使われています。最新モデルの「磁束の変化を波形表示する機能」などに興味を持っていただいたのかもしれません。

TEOメーカが多いですね

横山氏ガウスメータは磁石などの磁性材料の測定だけではなく、非破壊検査※10でも使います。自動車部品を検査する際は部品を磁化したり、脱磁※11したりする必要があり、ガウスメータで確認します。磁気測定にガウスメータは広範に使われるので、当社も含めて多くのメーカがハンディモデルなどを製造・販売しています。

※10

同社は渦電流探傷や磁粉探傷などの非破壊検査機器も主力製品群である。

※11

同社は磁気計測器とは別に「着磁・脱磁」用の電源をラインアップしている。

TEOありがとうございました