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【展示会レポート】第39回ネプコン ジャパン / 第17回オートモーティブ ワールド

エレクトロニクスの開発・実装展のネプコン※1 ジャパンとクルマの先端技術が一堂に集まるオートモーティブ ワールドが、2025年1月22日~24日に東京ビッグサイト東ホールで開催されました。7展で構成されるネプコン ジャパンから2社、8展で構成されるオートモーティブ ジャパンから1社の計測器・試験装置をTechEyesOnline取材班(TEO)が取り上げます。その他の8社の展示品を写真で紹介します。

※1

(Nepcon) 1965年に米国で開催されたNational Electronic Packaging & Production Conference、「国際 電子 包装 & 生産 会議」の頭文字からできた造語。「エレクトロニクスの製造・実装のカンファレンス」、電子機器や半導体などの製造にフォーカスした展示会。

モジュール計測器の老舗 ナショナルインスツルメンツ(NI)には、電源管理IC(PMIC)やエラーベクトル振幅(EVM)などを高速・高精度に評価するPXIシステムがあります。平山製作所は1970年代から高加速寿命試験(HAST)装置を製造・販売しています。高性能と高品質を安価に提供するリゴルは、エントリーからミドルクラスのオシロスコープを充実させています。3社の最新ソリューションや新製品を紹介します。

  1. 日本ナショナルインスツルメンツ株式会社 PXIモジュール計測器
  2. 株式会社平山製作所 高加速寿命試験装置(HAST装置) PC-R9 / PC-R9D
  3. リゴルジャパン株式会社 8chオシロスコープ MHO/DHO5000、ポータブルオシロスコープ DHO800/900ほか

I/Oとソフトウェアが融合したモジュール計測器

展示会名 ネプコン ジャパン / 第26回 電子部品・材料 EXPO
製品名 PMIC検証ソリューション、Connectivity Test Bench、バッテリセル品質テスト
会社名 日本ナショナルインスツルメンツ株式会社
説明者 APACセールスディベロップメント グループマネージャー 瀬倉 弘臣 氏

瀬倉氏ナショナルインスツルメンツ(NI)のPXI※2システムのプラットフォームを紹介します。LabVIEW※3とハードウェアで、原則は構成されます。最近は自動車や半導体などで高度な計測やタクトタイム※4を求める計測が増えているため、対応するI/Oモジュールなど、拡張性の高い製品群を用意しています。特長は3つあります。まず省スペースで、従来はラックに組み込んでいた計測器が4~18スロットの1つのシャーシ※5に収まります。つぎに、必要なI/Oを選んでお客さまの需要に合ったカスタマイズができます。最後に、PXIはPCI Expressバスがベースですから、GP-IBやUSB通信に比べるとデータのスループット※6が高く、効率や開発コストに寄与します。

※2

(PCI Extensions for Instrumentation) PCのバス規格であるPCI(Peripheral Component Interconnect)を産業用に拡張した規格。計測器の通信規格としては1970年代からGP-IB(General Purpose Interface Bus)がある。PXIのモジュール計測器は2000年代から登場している。

※3

計測用に普及しているNational Instruments社のプログラミング言語(ソフトウェア、開発環境)。標準室で行われる計測器校正の自動化(自動計測)で広く使われている。読み方:ラボビュー。

※4

(takt time) 製品を1個つくるのに必要な時間(生産性の指標)。定義は製造ラインの稼働時間/必要生産数。

※5

(chassis) PXIシステムでモジュールを格納する筐体(外枠)をシャーシと呼ぶ。

※6

(throughput) 機器が単位時間あたりに処理できるデータ量(処理能力)を指すことば。

TEO「パワーマネージメントICの検証ソリューション」から、まず説明してください

瀬倉氏タブレット端末だけでなく自動車の電動化など、機器の電源制御は重要です。電源ICの評価にはバイポーラ電源や電子負荷を何台もつなぐ必要があるので、多チャンネル計測が得意なPXIに向いています。高精度の電源、電子負荷、SMU※7などのモジュールをPXIシャーシに実装したPMIC(Power Management IC、電源管理集積回路)の検証システムをデモしています。対象のPMICによって評価仕様は異なりますが、ソフトウェアで柔軟に対応します。高精度の試験品質を保ちながらテスト時間を短縮します。チャンネルが多いとデータ量が増えますが、その収集・管理の工程をあらかじめデザインできます。

※7

(source measure unit) 電圧電流発生(ソース)と測定(メジャー)の両方の機能がある計測器。ソース・メジャー・ユニットとも呼ばれ、半導体などのI-V特性の測定に使われる。

PMIC検証ソリューション
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測定結果 I-Fグラフ
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複数チャンネルPMICのPXI構成例
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瀬倉氏PMICの計測に適したIPライブラリ※8を使って測定し、レギュレータなどの電源ICの負荷電流-周波数特性を表示しています。

※8

NIがつくったテスト構成(出来合いのプログラム)。通常、ユーザはテスト工程をLabVIEWでプログラミングするが、IPライブラリはパラメータを入力するだけで計測ができる。NIではこれを略してIPと呼称することが多い。

TEONIのPXIシステムを他社と比べたときの位置づけを教えてください

瀬倉氏生産と評価がNIの強みです。上流のR&Dでも使われていますが、一番需要があるのは多チャンネルで高速に評価する、量産での機能検査を早く行い生産コストを下げる、ことです。NI以外の海外計測器メーカもモジュール計測器があります。各社とも特定の領域で優れた仕様で、R&Dには向いていると思います。

TEOブースは萩原テクノソリューションズと共同出展ですね

瀬倉氏同社はお客さまのニーズに合ったソフトウェアをつくれるインテグレータで、自動車業界に知見があり、パワーICと計測器の接続など、ハードウェアの特性を生かした最適なインテグレーションをしています。お客さまのテスト手法を良く知っているNIのパートナーの1社です。

TEOつぎは無線通信ですね

瀬倉氏ベクトル信号トランシーバ(VST)による、Wi-Fi 7※9のエラーベクトル振幅(EVM※10)を評価するデモです。VSTはベクトル信号発生器とアナライザが一体になったユニークなモジュールです。PXIe-5842は50MHzから23GHzまでの連続する周波数レンジをカバーする初めてのVSTです。NIは2012年にVST初号器を発売し、第3世代のPXIe-5842は即時帯域幅が従来の倍(2GHz)で、EVMや平均ノイズ密度などの主要なRF性能が向上しました。

※9

2023年12月に利用が認可された、Wi-Fi 6(6E)を更新した最新のWi-Fi規格。Wi-Fi Allianceが策定した7番目の規格。IEEE 802.11beに相当。

※10

(Error Vector Magnitude) デジタル変調信号の品質の指標。エラーベクトルの実効値で、「変調精度」とも呼ばれる。計測器の表示はIQ座標の位相コンスタレーションなどがある。

展示パネル
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PXIe-5842を使ったPXIシステム
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測定結果 subcarrier周波数のパワー
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TEO他社と比べた特長は何ですか?

瀬倉氏ハードウェアとして内部にFPGA※11を搭載しています。たとえば通信プロトコルを評価したい場合、その要件をFPGAに書き込んでしまえば、ハードウェアタイミングでチェックができます。また、2台のVSTを使い、1台目から出した信号を2台目で受けて、同期をとって信号を比較すると、元の信号のノイズを高精度に評価できます。これらは他社にはできない、NI独自の機能です。PXIのスループットと同期性能が強みです。

※11

(Field Programmable Gate Array) 書き換えできるLSI(論理ゲート)。マイクロプロセッサ(MPU)、GPU(画像処理用プロセッサ)と並ぶ主要なロジックデバイス。

TEO最後に「バッテリセル品質テスト」を説明してください

瀬倉氏始めのPMICで使っているSMU以外に、LCRメータやACIR※12テスタなどのモジュールでインピーダンス測定を行います。今回も多chアプリケーションなのは同様ですが、標準的なNIのIPライブラリを活用して、ユーザが簡単に試験できることも利点です。今後バッテリの形状や材料が変化するとIPライブラリの更新がありえますが、将来にわたって柔軟にテスト構成を組んでいけると考えています。

※12

(AC Internal Resistance) 交流内部抵抗。交流電流が流れている状態での電池のインピーダンス評価をACIRインピーダンステストと呼ぶ。特定の周波数の正弦波電流を印加して電圧反応を測定する。電圧応答から様々な情報が解明される。

バッテリセル品質テスト
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構成(製品カタログより)
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瀬倉 氏
瀬倉 氏

TEONIに汎用計測の素地があるので製品化できたのでしょうか?

瀬倉氏要素技術はありますが、お客さまからテスト手法を学び、それを実現できるようなハードウェア/ソフトウェアを開発しました。NIの強みが生かせると判断して、ソリューション提案しています。バッテリテストは競合も多いですが、汎用性はありつつ、特定のアプリケーションにつくり込んでいます。

今回はPXIのハードウェアを中心に説明しましたが、特定の製品というより、ソフトウェアとハードウェアが融合しているユニークな計測器/試験装置とご理解ください。個々の製品にはそれぞれ競合がいますが、トータルにNIと競合するようなメーカはいないと思っています。

TEOありがとうございました