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【展示会レポート】SEMICON Japan 2024

半導体機器向けのロードセル製品群が充実

製品名 カラーグラフィックデジタル指示計 TD-9000T、ロードセルシグナルコンディショナー TD-SC1
会社名 ティアック株式会社
説明者 情報機器事業部 メジャメントプロダクト営業部 営業課 担当マネージャー 末安 浩二 氏

TEO御社はコンシューマ向けのオーディオ製品や業務用音響機器で一般には知られていますが、計測器としては大容量のレコーダの老舗です。ただしレコーダともう1つ、ロードセル※1もラインアップが豊富です。製品の特長から教えてください

末安氏半導体の製造や圧入、プレスなどの装置で荷重を測定するためのロードセルと、センサの信号を受ける表示器やアンプなどの関連製品を展示しています。一番の特長はTEDS※2です。ロードセルと表示器をつないだら、手順として校正※3をしますが、当社製品は従来のような手動ではなく自動です。ティアックは国産で最も早くTEDSに対応しました。他には、ロボットなどの機械の可動部で使用される、屈曲性に優れたロボットケーブルの採用や、高機能の表示器を他社より安価にラインアップしていることも特長です。

※1

(loadcell) 力や質量(荷重)を検出して電気信号にするセンサ。別名、荷重変換器。力によって変形すると電気抵抗が変わるひずみゲージを内蔵し、力(N:ニュートン)をmV/Vの電気信号にして出力するトランスデューサ(変換器)。電子はかり(質量計測)、材料の強度試験(引張/曲げ/衝突試験)など、広範囲に使われる。

※2

(Transducer Electronic Data Sheet) センサに組み込まれた電子チップにセンサ固有の情報が記録される仕組み。電圧センサやひずみゲージなどの多種類のテンプレートがIEEE1451.4で定義され、TEDS対応センサは他社の計測器でも読み出せる。

※3

ロードセルと指示計(表示器)を接続し、ロードセルの定格出力などのパラメータを指示計に設定する操作を「校正」と呼んでいる。ここでいう校正とは機器間同士の組合せ(値付け)を指す。ロードセルに分銅を乗せたり(分銅校正)、ロードセルの試験成績書を見たり(等価入力校正)して、値を指示計に手入力する。現在は3つめのTEDS校正(自動校正)がある。

展示ブース
展示ブース
ロードセル関連製品の例
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データレコーダ
データレコーダ

TEOいつ頃からロードセルを始め、どんな分野に販売していますか?

末安氏ティアックは70年の歴史がありますが、ロードセルは約40年前に発売しました。録音と再生をするデータレコーダ※4の前段にあたるセンサを取り扱ったのが始まりのようです。ロードセルを使用する市場はたくさんありますが、当社は特に半導体設備関連に注力しています。具体的には小型、低容量モデルです。当社ロードセルの主なお客さまは半導体製造装置の関連メーカです。装置内部に組み込まれているので気づかれませんが、この会場の展示機器の中にも、(当社だけではなく)たくさん使われています

※4

(data recorder) 現在、計測器レコーダの主流は測定データをメモリにデジタルで記録するメモリレコーダだが、大容量媒体にアナログで長時間記録し、かつ再生できる物をデータレコーダと呼ぶ。自動車や鉄道、飛行機、発電所などの振動・ひずみ計測に長らく使われたが、記録媒体のテープが生産終了してデータレコーダもほぼ製造中止になった。ティアックは運搬機器向けの多chデータレコーダをラインアップする唯一の国産メーカである。

TEO競合と比べた御社のポジションを教えてください

末安氏競合の国産大手企業が2社あり、当社よりも高シェアです。ティアックは10位以内には入ると思います。ご愛顧いただいているお客さまの要望に沿えるように製品開発を進めることで売上増を目指しています。大手では難しい細かいニーズにカスタマイズで対応することもあります。

TEO新製品はどれですか?

末安氏カラーグラフィックデジタル指示計 TD-9000TのPNPタイプを2024年12月に発売しました。国内市場ではNPNタイプが主流ですが、欧州などではPNPが好まれ、半導体製造装置などのお客さまの声に応えてラインアップを増やしました。

TD-9000T(PNP)
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展示パネル
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システム構成例
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TEOPNPとNPNの違いを教えてください

末安氏PやNは半導体の種類です。電子スイッチに使われるトランジスタにはPNP型とNPN型があります。センサの接点出力にはどちらかのトランジスタが使われます。センサが検出したらスイッチがONになり電流が流れますが、型によってその方向が異なります。PNPはセンサから負荷(表示器など)に、NPNは逆にセンサ側に電流が流れます。表示器の外部入力接点方式は、センサの型によってPNP型とNPN型の2つがあります。欧州では、PNPの方が高い安全性があるので採用されているといわれています。日本はNPNが主流ですが唯一、東海地区の自動車関連では昔からPNPです。この系列のサプライヤ(部品メーカなど)はすべてPNPのセンサや表示器を使います。製造設備は良否判定(OK/NG)をしますが、そのときの入出力の制御にどちらの型を使うかという話です。

TEOSEMICON Japanは毎年出展していますか?

末安氏いいえ、10年ぶりです。ラインアップが揃ってきたので久しぶりに出展しました。展示しているモデルを例に説明すると、計装※5用の小型デジタル指示計 TD-700Tを10年前に発売し、展示会に出品しました。次に電池式の保守用のTD-01 Portableを、5年前に最上位機種のTD-9000T(NPNタイプ)をリリースしました。

※5

(instrumentation) 計装とは、工場などの生産工程を制御するために、計測装置や制御装置を装備し、測定・制御・管理することや、そのための工業計器を指す。「計測器を装備する」という意味。生産工程(production process)で使う計装の機器をプロセス機器とも呼ぶ。

TD-700T
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TD-01 Portable
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TD-9000T(NPN)
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TEOロードセル関連製品の、はやりはありますか?

末安氏最近はPLC※6制御が多くなり、通信でデータを読んでしまうので表示はいらないといわれ、3年前に表示レスのシグナルコンディショナー※7 TD-SC1を発売しました。手のひらサイズの薄型・軽量です。売上トップは今でもTD-700Tですが、はやりとしては表示レスの需要が増えています。

※6

(Programmable Logic Controller) 生産現場のコンピュータシステムで、各装置を制御している機器。マイクロプロセッサを内蔵し、ユーザが変更できるプログラムによって動作する。FA(Factory Automation、工場の自動化)メーカの三菱電機やオムロンが有名。パナソニック、横河電機なども販売している。たとえば、三菱電機のシーケンサや横河電機のFA-M3など。

※7

(signal conditioner)センサの微弱な信号を増幅して記録計などに入力するアンプを指す。「信号を整える物」という意味。指示計(表示器)もアンプ機能を持つが、ティアックは表示機能があると指示計(Indicator)、表示がないとシグナルコンディショナーと呼んでいる。

TD-SC1(展示品)
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TD-SC1(製品カタログ)
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末安 氏
末安 氏

TEO製造現場のフィールドバス※8は、産業用イーサネット※9が増えています。半導体製造装置メーカは装置内の通信に2010年代からEtherCATの採用を始めています。TD-SC1はCC-LinkとEtherNET/IPに対応していますが、EtherCATはこれからですか?

末安氏現在の日本市場ではCC-LinkとEtherNET/IPに対応していれば無難です。CC-Linkは三菱電機がつくった規格ですし、EtherNET/IPは設置が楽なのでなるべく使いたいという声を聞きます。センサ大手のK社もEtherNET/IPが多いようです。逆にいうとこの2つに対応していないと候補に選ばれません。トヨタ自動車が工場内にEtherCATを全面的に採用すると2016年に発表したので、当社も注視していますがお客さまと話していてもまだEtherCATはほとんど聞きません。ロードセル関連の通信規格としてはまだ需要がないと思います。ただしEtherCATはEtherNET/IPよりも高速なので、リアルタイム制御には有望です。半導体製造装置やサーボモータ業界ではリアルタイム制御の普及のためにEtherCATの採用を推奨している感があります。乗り遅れないようにウオッチしています。

※8

(field bus)原料やエネルギーの生産施設であるプラントの運転に欠かせない、圧力、流量、温度などを測定する製品群(圧力伝送器、温調計など)をフィールド機器という。フィールド機器の通信に使われる規格をフィールドバスと呼ぶ。現在の生産現場に普及している産業用ネットワークの呼称。規格にはPROFIBUS、Modbus、CC-Linkなどがある。フィールド機器は「工業計器」や「計装の機器」、「プロセス機器」とほぼ同義。

※9

(industrial ethernet) 生産現場にイーサネット技術を活用する規格が2000年頃からつくられるようになり、通常のイーサネットと区別して産業用イーサネットと呼ばれる。PROFINET、EtherNET/IP、EtherCAT、CC-Link IEなどがある。

TEOありがとうございました