【展示会レポート】SEMICON Japan 2024
国際的な半導体製造装置・部品材料展示会であるセミコンショーは、7月のSEMICON West(米国、SEMI主催)と12月のSEMICON Japan(SEMIジャパン主催)が、大規模な世界2大イベントです。SEMICON Japan 2024は東京ビッグサイトの東ホール全部(Hall 1~8)を使って開催され、来場者の延べ人数は10万人を越えました(2023年は8.5万人)。展示された多くの計測器の中から、まだ展示会レポートで取り上げていない3製品をTechEyesOnline(TEO)取材班が紹介します。
まず、赤外線を主とする光学機器の総合商社、アイ・アール・システムのアクティブサーモグラフィ。この分野をラインアップするInfraTecの製品群が、デバイス内の微細な不良を検知するデモを取材しました。次に、半導体製造装置向けのロードセルに注力するティアック。指示計やシグナルコンディショナの販売状況や、半導体市場の産業用イーサネットの規格動向など、興味深い話を伺いました。最後はパーティクルカウンタ(微粒子計測)の老舗、リオン。半導体の回路パターン幅の微細化が進み、3nm線幅デバイスが量産されています。2022年に発売された、従来品よりも測定粒子径が小さい20nmの液中パーティクルセンサを紹介します。
- 株式会社アイ・アール・システム InfraTec ハイエンドサーモグラフィ ImageIR
- ティアック株式会社 カラーグラフィックデジタル指示計 TD-9000T、ロードセルシグナルコンディショナー TD-SC1
- リオン株式会社 液中パーティクルセンサ KS-20F
高感度・高機能なアクティブサーモグラフィをエントリークラスから提案
製品名 | InfraTec ハイエンドサーモグラフィ ImageIR |
会社名 | 株式会社アイ・アール・システム株式会社 |
説明者 | 営業1部 マネージャー 山崎 博之 氏、アプリケーションエンジニア 内藤 紘平 氏 |
内藤氏当社は光学機器やセンサなどの輸入商社で、特に赤外線(IR:Infrared)の計測器は20年以上販売しています。今回は半導体に応用できる非接触の計測・検査製品を紹介しています。面精度などの形状測定ができるレーザー干渉計や内部の欠陥を探査できる超音波センサなどです。SEMI※1やCEの安全基準に準拠した磁気ヒステリシス※2の評価装置も取り扱いを始めました。
(Semiconductor Equipment and Materials International) SEMIは米国にある「国際半導体製造装置材料協会」。ここではSEMIが規定したSEMI規格(半導体やFPDの製造装置を標準化している国際基準)のこと。また、EU(欧州連合)加盟国の基準を満たす機器には基準適合マーク(CEマーク)が付けられる。
(hysteresis) 磁界による磁性体の磁化の特性(履歴現象)を示すことば。history(歴史)と語源が同じ。
TEO一番前に展示しているサーモグラフィカメラを説明してください
山崎氏サーモグラフィは赤外線を使った非接触の温度測定器です。展示しているのは高速・高感度な中赤外/ブロードバンドの冷却式検出器を使ったサーモグラフィのシリーズです。それを利用して半導体デバイスなどの内部の不良個所を、発熱によって精密に検出するデモを行っています。顕微台の下部に測定対象を置き、上からサーモグラフィで撮影しています。作動距離が20cmあるので、ある程度の凹凸がある対象物でも、十分な距離をとって測定できます。測定対象はマルチチップモジュール、スタックダイパッケージ、パワー半導体などで、故障解析が主眼です。

TEO1倍顕微 15μmとありますね
山崎氏1画素の寸法が15μmなので、分解能が15μmの高画素撮影になります。サーモグラフィはドイツのInfraTec社のImageIR 8300hpで、1倍の顕微レンズを付けています。
TEOデモの測定対象物は何ですか?
山崎氏セラミック抵抗です。カメラの撮影タイミングと同期させながら抵抗に電流を流して、発生する微小な温度変化から故障解析を行うシミュレーションデモを見せています。ショートや異物などの不良個所は周囲と熱の伝わり方が異なるため、欠陥があると周りと違う温度差がでます。ただし普通にサーモグラフィで測定すると22~23℃くらいです。測定画面の赤い画像(22.87℃)で、これではどこが不良個所かわかりません。この装置の測定結果が青色の画像です。13.99mK(ミリケルビン)は0.01399℃です。このオーダで温度測定できるので、欠陥の有無や箇所を精緻に特定できます。
TEO製品名称はアクティブサーモグラフィ(ロックインサーモグラフィ)とありますね。アクティブとは何ですか?
内藤氏一般的なサーモグラフィカメラは、熱(光)が出ているのを単に測定するだけなので、パッシブです。それに対してアクティブは光らせ方を制御します。光を出した後の反応を測定することもあります。光らせるのとカメラを同期して測定します。カメラ側がただの受け身(受動的)ではなく、能動的に測定するという意味です。対象物が発熱をしないときは、外部から熱を加え、励起して測定します。アクティブは昔からある手法で、InfraTecだけではありませんが、最近着目されています。
TEOカメラがアクティブなのですか?
内藤氏いいえ、カメラはパッシブです。測定対象を発熱させるための回路や、同期させる装置をカメラと組み合わせています。カメラの性能が上がったために、アクティブにすると以前よりも速く正確に測定でき、性能が改善するようになったのです。InfraTecのサーモグラフィは、アクティブサーモグラフィ用の各種アクセサリをオプションで用意しています。対象物の昇温に関係のある事象と同期をとりながらの撮影(ロックイン、または同期検波という)を行います。これにより、ただ高速で撮影しただけでは埋もれてしまうような微小な温度変化を捉えます。普通、サーモグラフィのメーカはカメラしか販売しませんが、InfraTecは同期回路などの周辺機器や解析ソフトウェアを揃えているので、ユーザがすぐにアクティブの測定系を構成できることも大きな特長です。
TEOお客さまや価格、競合との違いを教えてください
山崎氏大学や研究所が多いです。サーモグラフィだけなら約1500万円からですが、顕微レンズやソフトウェアなどを付けると2500万円くらいになります。競合品はキャスターが付いたもっと大型の専用測定システムで、5000万円~1億円くらいです。InfraTecは半導体用の専用ではなく一般的なハイエンドサーモグラフィに、オプションのソフトウェアなどを組み合わせているので安価です。従来は高額な大型機器でしかできないことが、サーモグラフィと周辺機器を組み合わせることでできるようになりました。
TEOありがとうございました