市場動向詳細

木曜の17時30分からを“レクロイ・タイム”に! オンラインを充実させるテレダイン・レクロイ・ジャパン

Q:御社のセミナー参加者は、どんな課題をお持ちですか?
測定方法に関することが多いです。例えば、当社では電源マネジメントのテーマでセミナーを開講しています。携帯電話などの可搬機器では、バッテリーから表示器やスピーカに電源供給しています。供給されている電源の状態をマネジメントしたいという課題をお持ちの技術者は、プロービングして測定しないといけません。では具体的にどのように測定するのが良いのか、という問題解決を当社のセミナーで学んでいかれます。DC電圧・電源レール波形を捕捉するのに3つのプロービング手法がありますが、それぞれの測定結果を例で示して、どの手法が最適なソリューションかを解説します。バッテリーからの電源供給が良くないと、電池が長時間もたないという事態になりますから、電源マネジメントは重要です。

セミナーが課題解決のための情報提供になっていると自負しています。


12ビットだからこそ可能な測定を解説

レクロイ船越01 Q:技術課題の解決方法について習得できる一押しセミナーがあればご紹介ください
「高分解能オシロスコープ」のコースは受講者が増えました。当社は2011年に12ビットの高分解能モデルを発売しました。それから6年が経過して、最近では、他社からも高分解能モデルが発売されました。他社も含めてモデルが増えたことは、高分解能測定が、市場で徐々に認知されてきたのかもしれません。(注:デジタルオシロスコープは、製品の価格帯とは関係なく8ビットが標準です。電圧の分解能はDMMなどに比べて決して良くはありません)

そもそもオシロスコープが8ビットだということを、あまり認識されていない技術者の方が結構いらっしゃると感じています。そのため12ビットになると何が違うの?どう変わるの?という質問をよくいただきます。そのあたりのことをセミナーでは基礎からお伝えしています。

歴史的にはオシロスコープはアナログで、ブラウン管で波形を見る装置でした。なので(誤解を恐れずに言えば)波形が出ているのか出ていないのかが観測の出発点でした。時代が過ぎて、現在のデジタルオシロスコープ は、取ったデータをPCに持っていくのが当たり前になりました。そうするとフロントエンドとして、A/D変換器として使用されることも多くなります。その場合はA/D変換器の精度(分解能)が求められます。オシロスコープの一番の性能は周波数帯域やサンプリング速度ですから、技術革新によってそれを向上させてきたのが、オシロスコープの進化の歴史です。現在当社でも100GHzという超高速モデルがあります。これは横軸(時間軸)のスピードアップですが、一度立ち止まって、縦軸(電圧軸)の精度向上をしたのです。

最近流行のEV車はもちろん、ハイブリッド車も電気駆動部分の高効率化を目指してバス電圧をあげる方向にあります。数百はおろかkVオーダーの電圧をパワー素子によりスイッチングし、モータ駆動電流を自在に制御しますが、この要となるパワー素子の高効率化が最もキーとなる設計ポイントのひとつです。

スイッチング動作のフェーズはターンオン、導通、ターンオフ、オフの4つの区間に分けられますが、最近ではデバイスの高速化と回路動作の改善によりターンオン、ターンオフの損失が低下し、さらなる高効率化の為には導通区間の損失を評価する必要性が高まっています。しかしながら、オフ時に数百~数kVのバス電圧が導通時には1V以下に低下するような大きな電圧スイングを持つ出力波形を精密に計測するには、広いダイナミック・レンジが必要で、8ビットA/Dを使用した従来型のオシロスコープでは、ほとんど計測することは出来ませんでした。

 導通区間のみを計測しようと電圧レンジを高感度に設定して、数百V~数kVのオフ区間の波形区間をオシロスコープの画面からはみ出す設定にしてしまうと、はみ出した区間ではオシロスコープの入力増幅器が飽和状態となり、飽和状態からの復帰に時間がかかるため、計測したい導通区間の波形を正確に計測することが出来ません。逆にレンジを大きくして全体波形を捕捉すると、今度は分解能が8ビット(256ステップ)しかないため、1V程度の電圧を精密に計測したいのに、1ビットのステップがそれ以上の荒さとなってしまうからです。

 リアル12ビットのA/Dを搭載した当社のHDOシリーズでは、縦フルスケールを12ビットの細かさでAD変換し、それに合わせてオシロスコープ自身のノイズを低減しています。つまり4096ステップと8ビット機に比べて16倍の細かいステップでの計測が可能です。この為、これまで不可能だった導通区間の損失計測を実測のライブ波形で評価する事が可能になります。技術者の課題が当社製品で解決できる一例でしょうか。


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