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航空機の仕組み ~ 人類の夢を実現したモビリティ ~

航空機※1は、人類が「空を飛びたい」という夢をかなえたモビリティ※2です。ライト兄弟の初飛行から今日に至るまで、航空機を支える技術は空力、エンジン、材料、電子制御、航空システムなど、あらゆる工学領域の経験や知見によって進化しました。また、昨今の電動化技術進化やドローンの普及により、近年は単なる「移動手段」ではなく、移動を主軸とした社会システムや新たな価値を創造しています。

日本の空には毎日5,000機以上の航空機が飛んでいます。種類は飛行機、滑空機(グライダ)など様々です。本稿では、主として固定翼の航空機について概説します。まず、航空機の歴史について、誕生するまでの黎明期から、ライト兄弟の初飛行、その後の技術革新の過程を紹介します。その後に、飛行機に関する工学について解説します。「なぜ飛行機は飛ぶことができるのか」、機体の構造(方式、ジェットエンジンの仕組み)、さらに航空機を支える主要な技術について解説します。最後に航空機に関連する計測器を紹介します。

※1

「航空機:Aircraft」は空を飛ぶ機体の総称。「飛行機:Airplane/Plane」は固定翼を持ち、エンジン等の動力で前進して浮力を得、飛ぶ機体の総称。グライダは動力を持たないので「飛行機」ではなく「航空機」、ヘリコプタは回転翼機なので、「飛行機」ではなく「航空機」、旅客機は「飛行機」であり「航空機」でもある。

※2

(Mobility) 基本的な意味は、「人や物が移動すること、またはそのための手段、サービス全体」を示す概念。

《本稿の記述は、筆者の知見による解釈や、主観的な取り上げ方の面もあることをご容赦ください。また、記載されている技術情報は、当社および第三者の知的財産権他の権利に対する保証または実施権を許諾するものではありません。》 

航空機の歴史

1)初期の挑戦

人類の飛行へのあこがれは、神話の時代に存在していたようです。「イカロス」の物語では、翼をもっていて自由に飛び回るが太陽に近づき過ぎて墜落し命を落としました。「野心」と「節度」の逸話とされています。「イカロス」が墜落したとされている海域は伝説の由来から「イカリア海」と呼ばれています。史実として紀元前から飛行に関する記録が残っています。最古の記録としては、中国の凧(たこ)が挙げられます。理論的ではなく経験的に風を利用した道具であると推察されます。

9世紀ごろのイスラム圏で「史上初の有人飛行実験を行った人物」とされているのは、イブン・フィルナース(Ibn Firnās)です。木枠に羽根を張ったグライダのような翼を身に着けて高所から滑空したようです。図1はイブン・フィルナースと機体の記念像です。

図1 イブン・フィルナースと機体の記念像
図1 イブン・フィルナースと機体の記念像

出典:Imre Solt、WIKIMEDIA COMMONS、Ibn Battuta Mall on 2 June 2007 Pict 10.jpg、CC BY-SA 3.0

中世のヨーロッパにおいても、「マルムズベリーのエイルマー(Eilmer of Malmesbury)」が人工の翼を背負って飛行を試みた記録が残っています。これも、初期の飛行史として評価されています。

2)ルネサンス時代

15世紀になると、飛行することは科学研究の対象となりました。代表的な科学者である「レオナルドダビンチ」は鳥を研究対象として、翼の運動や空理の流れ、滑空に関する研究を著作として残しました。現在のヘリコプタの原型や羽ばたき式飛行機のイメージが記述されています。なお、いずれのイメージは実証された記録は残っていないようです。

図2 レオナルドダビンチのヘリコプタ イメージ
図2 レオナルドダビンチのヘリコプタ イメージ

出典:Wikimedia Commons、Leonardo helicopter.jpg、パブリックドメイン

図3 レオナルドダビンチの飛行機のイメージ
図3 レオナルドダビンチの飛行機のイメージ

出典:Wikimedia Commons、Leonardo Design for a Flying Machine, c. 1505.jpg、パブリックドメイン

図4 レオナルドダビンチの羽ばたき式飛行機イメージ
図4 レオナルドダビンチの羽ばたき式飛行機イメージ

出典:Wikimedia Commons、Design for a Flying Machine.jpg、パブリックドメイン

本稿で扱う航空機に含めませんが、18世紀には世界初の有人気球の飛行が成功しています。これは、人類初の持続的な飛行と言えるでしょう。

3)航空機の原理確立

19世に入ると、航空機は経験や試行錯誤の段階から科学的原理に基づいて体系的に研究されるようになりました。中心的な役割を果たしたのが「近代航空の父」と称されるケリー卿(英国)です。ケリーは飛行に必要な力を整理し、現在でも基本的な理論である「揚力(Lift)」「抗力(Drag)」「推力(Thrust)」「重力(Weight)」という4つの力の概念を確立しました。また、揚力を発生させる主翼と、安定性を確保する尾翼、そして推進装置を分離する現代の固定翼機に通じる基本構成を提唱しました。実際にグライダを製作して滑空実験を行い、人が搭乗可能な飛行の実証にも成功している。ケリーの研究は、航空機の設計に必要な理論的枠組みを確立し、その後のライト兄弟へつながる近代航空の基礎を築きました。そして、1853年に世界初の有人グライダの飛行に成功しました。

図5 ケリー卿がつくったグライダのレプリカ
図5 ケリー卿がつくったグライダのレプリカ

出典:Nigel Coates、Wikimedia Commons、George Cayley Glider (Nigel Coates).jpg、CC BY-SA 3.0

4)初めての動力飛行

19世紀末ごろから航空機の研究は理論から実証の段階へ進展しました。その最大の成果として評価されるのが、ライト兄弟による動力飛行の成功です。1903年、兄弟はアメリカ・ノースカロライナ州のキティホークにおいて、動力を備えた飛行機「フライヤ号」によって、世界初の連続的で制御された動力飛行に成功しました。ライト兄弟の最大の功績は、飛行における三軸制御(ロール・ピッチ・ヨー)を確立したことです。主翼のねじりによって機体のバランスを制御し、昇降舵および方向舵と組み合わせることで安定した飛行を可能にしました。なお、主翼のねじれによる操縦方法は、ドイツおよびアメリカにおいて特許を取得しました。彼らは、事前準備として独自の風洞実験を通じて翼型データを取得するなど、実験と理論を融合させた研究手法を確立しました。これらの点においても、その後の航空工学の発展に大きく寄与したと言えます。

図6 スミソニアン航空宇宙博物館に展示されているフライヤ号
図6 スミソニアン航空宇宙博物館に展示されているフライヤ号

出典:Azu、Wikimedia Commons、WFinsmithonian.jpg、CC BY-SA 3.0

5)世界大戦と航空技術の急激な進歩(1914〜1945)

20世紀前半になると、航空機技術は戦争を背景に急速な発展を遂げました。第一次世界大戦では戦闘機へと発展し軍事的価値が確立されました。また、1927年にはチャールズ・リンドバーグ(米国)が単独無着陸で大西洋横断飛行に成功し、航空機の長距離飛行能力と信頼性を実証しました。第二次世界大戦になると、航空機は重要な役割を担い、高速化・高高度化が進展しました。さらに大戦末期にはジェットエンジン機が実用化され、メッサーシュミットMe262に代表される軍用ジェット機が登場しました。

6)ジェット旅客機の黄金期(1950〜)

第二次世界大戦後、航空機技術は軍事から民間へと急速に転用され、1950年代に入るとジェット旅客機の時代が本格的に到来しました。世界初の実用ジェット旅客機であるデ・ハビランド コメットが登場し、その後、ボーイング707やダグラスDC-8が国際線の主力となりました。

図7 デ・ハビランド コメット
図7 デ・ハビランド コメット

出典:Het brein、Wikimedia Commons、Comet 4.jpg、CC BY-SA 3.0

ジェット化により飛行速度と航続距離が飛躍的に向上し、大陸間移動は一般的なものとなりました。さらに1960〜70年代にはワイドボディ機が登場し、特にボーイング747は大量輸送時代を切り開きました。また、航空機の安全性・信頼性も大きく向上し、自動操縦装置や航法システムの高度化が進みました。

図8 B747
図8 B747

出典:TWA Boeing 747-100 Bidini.jpg、GFDL 1.2

7)現代航空機と次世代技術

21世紀に入ると、航空機は効率性・環境性能・デジタル化の観点で大きな進化を遂げています。代表的な機体としては、複合材料を大幅に採用したボーイング787やエアバスA350があり、軽量化と燃費向上を実現しています。また、エンジン技術も進化し、高バイパス比ターボファンエンジン(後述)により燃費効率と静粛性が大きく改善されました。加えて、GPSや慣性航法装置(INS)を統合した高度な航法システム、フライ・バイ・ワイヤ(FBY)による飛行制御など、デジタル技術が採用されました。近年では、脱炭素化に向けた取り組みとして、持続可能な航空燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel))や電動航空機、水素燃料航空機の研究開発が進められています。さらに、自律飛行技術や都市型エアモビリティ(UAM)など、新たな形の航空機も実用化が模索されています。

8)日本における航空機の歴史

① 飛行機の構想誕生(1890年代)

日本における飛行研究の先駆けは、二宮忠八によるものとされています。1891年にゴム動力の模型機「カラス型飛行器」を飛行させ、1893年頃には有人機「玉虫型飛行器」を設計しました。「ライト兄弟よりも先に飛行機の原理を発見した人物」として評価されています。

図9 玉虫型飛行器(当時の呼称)の模型
図9 玉虫型飛行器(当時の呼称)の模型

出典:Y Sekiai、Wikimedia Commons、玉虫型飛行器の復元RC模型 前から.JPG、CC BY-SA 4.0

② 国産航空エンジン(1918年)

1918年、日本製鋼所室蘭工業所で日本初の国産航空機エンジン(室0号:むろぜろごう)が製造されました。航空機技術の国産化が始まりでしょう。

図10 室ゼロ号
図10 室ゼロ号

出典:日本遺産 ポータルサイト、https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/culturalproperties/result/4097/

③ 国産航空機の発展(1920〜1930年代)

1920年代になると、日本でも航空機の国産設計が進みました。海外の動向と同様に大戦が背景にあります。複数の企業が航空機製造に参入し、軍用機の開発が活発化しました。

④ 第二次世界大戦期

第二次世界大戦では日本の航空機技術が大きく発展しました。代表的な機体として、零式艦上戦闘機(略称:零戦) が知られています。

図11 復元された零戦
図11 復元された零戦

出典:Kogo 、Wikimedia Commons、A6M3 Zero N712Z.jpg、GFDL

⑤ 戦後の航空機開発再開(1950年代)

敗戦後、日本では航空機の研究・製造が一時禁止されましたが、1952年に航空産業が解禁されました。

⑥ 国産旅客機の誕生(1960年代)

1962年に日本初の国産旅客機である「YS-11(ワイエスじゅういち)」が初飛行しました。YS-11は日本の航空産業復活を象徴する機体と言えます。国内はもとより海外の航空会社でも運用されました。製造会社は官民共同の特殊法人 日本航空機製造株式会社です。総生産数は200機弱です。

図12 YS-11
図12 YS-11

出典:Toshiro Aoki、Wikimedia Commons、Japan Maritime Self-Defence Force NAMC YS-11M (YS-11-112) Aoki-1.jpg、CC BY-SA 3.0

航空機の構造

航空機の主な構成要素は、①主翼、②胴体、③尾翼、④降着装置(ランディング・ギア)、⑤推進装置(エンジン)、⑥操縦・制御システム(フライトコントロール)、⑦電装システム(アビオニクス)、⑧補助翼です。機能の概要は次の通りですが、詳細については後述します。

  1. 主翼(Wing)
    揚力を発生させる航空機にとって最も重要が構造です。フラップ、スラット、エルロンなどの高揚力装置・操縦翼面を含みます。また、燃料タンクを内蔵することが多いです。
  2. 胴体(Fuselage)
    乗客・貨物・操縦席・機器などを収納します。①主翼や③尾翼、⑤降着装置接続のための強度構造も担っています。
  3. 尾翼(Empennage / Tail)
    航空機の姿勢を安定させる部分です。垂直尾翼(Vertical Stabilizer)、水平尾翼(Horizontal Stabilizer)で構成されます。
    垂直尾翼:舵(ラダー)によってヨー(方向)制御を行います。
    水平尾翼:エレベータによりピッチ(上下姿勢)を制御します。
  4. 降着装置(Landing Gear)
    離着陸や地上走行を支えます。ノーズギア(前脚)、メインギア(主脚)に分かれています。
  5. 推進装置(Powerplant)
    エンジンとナセル(エンジンカウル)および関連システムで構成されます。主な種類は、ターボファン、ターボプロップ、ターボジェット、レシプロエンジンです。
  6. 操縦・制御システム(Flight Control System)
    機体の操縦をつかさどるシステムです。主翼・尾翼の操舵面はエルロン、エレベータ、ラダー、スポイラ、フラップなどです。制御方式はメカニカル、ハイドロメカニカル、フライ・バイ・ワイヤ(FBW)が採用されています。近年の大型機は、操舵面と制御側とが機械的につながっていない、FBWが主流となっています。
  7. 電装システム(Avionics)
    航法・通信・計器・飛行管理などをつかさどるシステムです。主な機器は、FMS(フライトマネジメントシステム)、GPS / INS、無線機(VHF/UHF)、オートパイロット、レーダー(気象・航法) などです。
  8. 操縦翼面
    図13は機体に作用する回転運動を示しています。重心(Center of Gravity)を中心にして、ピッチング(Pitching):機首が上下に動く運動、ローリング(Rolling):左右に傾く運動、ヨーイング(Yawing):左右に方向転換(首振り)する運動です。それぞれの運動に対応する操縦翼面は、エレベータ、エルロン、ラダーです。
図13 機体に作用する運動
図13 機体に作用する運動

出典:Nancy Hall; Glenn Research Center, NASA、Wikimedia Commons、Rollpitchyawplain.png、PD-USGovを元に作成

図14 ピッチング運動とエレベータの動作
図14 ピッチング運動とエレベータの動作

出典:Nancy Hall; Glenn Research Center, NASA、Wikimedia Commons、Aileron pitch.gif、PD-USGov

図15 ローリング運動とエルロンの動作
図15 ローリング運動とエルロンの動作

出典:Nancy Hall; Glenn Research Center, NASA、Wikimedia Commons、Aileron roll.gif、PD-USGov

図16 ヨーイング動作とラダー動作
図16 ヨーイング動作とラダー動作

出典:Nancy Hall; Glenn Research Center, NASA、Wikimedia Commons、Aileron yaw.gif、PD-USGov

各要素の詳細について解説します。

1)主翼の形状

主翼の形状は機体の大きさや目的によって種々の形式が採用されています。図17は一例です。①は旅客機などで採用されているテーパ翼です。軍用機では後退翼(②)が採用されています。

図17 主翼の形状
図17 主翼の形状

出典:Uomo Grigio、Wikimedia Commons、Wing angles.jpg、public domainを元に作成

2)主翼の内部構造

主翼の基本構造部品はスパー、リブ、ストリンガ、スキンです。

図18 主翼の内部構造
図18 主翼の内部構造

出典:国土交通省が公開している資料を元に作成

3)胴体

乗員、貨物、燃料、航法装置を収納します。胴体の構造形式は、小型機や大型旅客機でもセミモノコック構造が主流です。図19はセミモノコック構造です。外板は空気を受けると同時に構造強化も担っています。フレームは胴体の「輪切り方向の」の骨組みです。ストリンガは胴体の前後方向に設けられる細長い補強材です。胴体の曲げやねじりに対する強度を向上させます。セミモノコック構造の特徴は、荷重の分散構造です。外板、フレーム、ストリンガが一体となって強度を確保します。局所的な破損が全体の崩壊につながりにくいです。また、軽量で高強度の特性が得られます。近年、炭素繊維(CRFP)が採用され、さらなる軽量化が進んでいます。その他の胴体構造として、トラス構造、モノコック構造があります。トラス構造は初期の航空機や超軽量機で採用されました。パイプの骨組みに布張りの構造です。モノコック構造は外板だけで強度を確保します。初期の航空機やグライダで採用されましたが、補強部材が適用されているので、純粋なモノコック構造の機体の採用は少数です。

図19 胴体構造
図19 胴体構造

出典:Tosaka、Wikimedia Commons、Airframe (4 types).PNG、CC BY 3.0

図20 セミモノコック構造
図20 セミモノコック構造

出典:Kolossos、Wikimedia Commons、Fuselage-747.jpg、CC BY-SA 3.0を元に作成

4)燃料タンク

燃料は翼の中にある燃料タンクからエンジンに供給されます。大型機は翼のほとんどが燃料タンクとなっています。燃料の重さにより、翼に作用する曲げの負荷を小さくする役割もあります。また、機体の重心は翼の近くにあることから、燃料が減っても重心の変化が少ないので、飛行性能への影響を抑制できます。航空機が何らかのトラブルにより緊急着陸する際は、必要最小限の燃料を残して放出します。

図21 一般的な燃料タンク
図21 一般的な燃料タンク

出典:Tosaka、Wikimedia Commons、Jet-liner‘s main fuel tanks.PNG、CC BY-SA 3.0を元に作成

5)ランディング・ギア(Landing Gear)

ランディング・ギアは、航空機が地上を走行・離陸・着陸するための脚部構造です。航空機の重量を支え、衝撃を吸収し、安全に地上移動できるように設計されています。大型旅客機では、胴体下のメインギヤと、機首側のノーズギアの組み合わせが一般的です。ランディング・ギアの主な構成は、

① 支柱(Strut / Shock Strut):主脚の中心構造、オレオ式(油気圧式)が主流、油(オイル)+窒素ガスで衝撃を吸収

② 車輪・タイヤ(Wheel & Tire):高圧タイヤ、大型機は複数輪で重量を分散

航空機のタイヤ※3は横方向のグリップ力は無用のため、接地面のパターンは縦方向となっています。タイヤの種類はバイアスタイヤからラジアルタイヤへ移行しています。耐熱性、耐荷重性などが要求されます。充填するガスは窒素ガスです。空気よりも自然漏洩(しぜんろうえい)する量が少なく、さらに着陸時にタイヤ表面温度は250℃以上の高温となるため不測の事態が発生しても酸素が含まれないので爆発や火災を抑制できます。また、タイヤ中に水分が含まれると、着陸時の温度上昇で水蒸気となり内圧が上昇します。高高度ではマイナス60℃程度まで下がるので水分は凍結し内圧は低下します。つまり、温度変化により内圧が安定しません。一方、窒素ガスの製造過程では水分を除去されるので水分がほとんど含まれません。なお、モータースポーツのF1(Formula One)では、コストや公平性の観点から窒素ガスの使用は禁止され、現場で生成できるドライエアにより水分の除去を行っています。タイヤの内圧は乗用車用タイヤの6倍以上のようです。タイヤの表面が摩耗すると表面部分を張り替える「リトレッド」を行います。ラジアルタイヤの場合、300回程度の離着陸で「リトレッド」されます。それを3回程度繰り返されます。

※3

2022年9月公開「タイヤの技術 ~車を支える力持ち~」をご覧ください。

図22 航空機のタイヤ
図22 航空機のタイヤ

③ ブレーキ(Brake System):カーボンディスクブレーキ、アンチスキッドシステム(ABSに相当)を装備

④ 操舵装置(Steering System):ノーズギアの操舵で地上を旋回、電気/油圧制御が一般的

⑤ 引き込み・格納機構(Retraction System):油圧で作動、ギヤの格納ドアと同期して開閉、格納後はメカニカルロックで固定

6)コックピット

パイロットは航空機を操縦、監視、運航管理するための操作室です。近年の機体は電子技術の発展に伴い、個々の計器を集合させたものから、液晶パネルの統合計器へ変化しました。図23の左側はB474、右側はB787のコックピットです。B747に比べ、個々の計器類が大幅に減っていることがわかります。

図23 コックピット(左側:B747、右側:B787)
図23 コックピット(左側:B747、右側:B787)

出典:B474 Snowdog、B747-cockpit.jpg、パブリックドメイン、B787 Noyu30、Wikimedia Commons、N787BAcockpit.jpg、CC BY-SA 4.0

7)ジェットエンジン

ジェットエンジンを分類すると、①ターボジェット、②ターボファン、③ターボプロップ、④ターボシャフトに大別されます。

① ターボジェットエンジンの基本構造

ジェットエンジンの基本形であるターボジェットを例にして基本構造を解説します。図24はジェットエンジンの基本構造です。エンジンの吸気口からの空気を回転しながら圧縮する圧縮機、圧縮機からの圧縮空気に燃料を噴射して高温・高圧の燃焼ガスを発生させる燃焼室、燃焼室からの高温・高圧の燃焼ガスを受けて回転するタービンの3つで構成されています。タービンは前方にある圧縮機の軸を介してつながっており、圧縮機はタービンと一緒に回転する構造となっています。

図24 ターボジェットの基本構造
図24 ターボジェットの基本構造

出典:Jeff Dahl / (Mod by Tosaka)、Wikimedia Commons、ジェット・エンジンの動作原理(詳細図).PNG、CC BY-SA 3.0

② ターボファン

図25はターボファンの構造です。ターボジェットの構造と同様に、圧縮機、燃焼室、タービン、排気口を有していますが、エンジン内部に高圧系と低圧系の二つの回転軸(2スプール)があり独立して回転する構造です。高圧スプール(黄色部分、B)はガスタービン(④、⑥)として機能し、強力な排気ガスジェット(⑥)を発生させ、低圧スプール(水色部分、A)を回転させます。低圧スプールの回転はタービン(③)により取り入れた空気を圧縮し、さらに、ファン(②)を回転させることで、ファンが追加の推力を提供します。黄色と水色の2つのスプールは回転速度が異なり、高圧スプールは低圧スプールよりも速く回転します。ターボファンはハイバイパス・ターボファン・エンジンとも言われます。バイパスとは、タービンを通過する空気(⑧)の体積とファンのみを通過する空気(⑨)の比率を指します。ハイバイパスエンジンでは、タービンを通る空気量よりもはるかに多くの空気がファンを通過します。

図25 ターボジェットの構造
図25 ターボジェットの構造

出典:Richard Wheeler (Zephyris)、Wikimedia Commons、Turbofan3 Labelled.gif、CC BY-SA 3.0

参考:シェブロンノズル

シェブロンノズルはジェットエンジンの排気ノズル後縁に設けられた「ギザギザ形状」です。主な目的はエンジン騒音の低減です。コアノズルから排出される高温・高圧の流れとファンノズルからの流れや外気が急激に混じることで強い乱流が発生し騒音の要因となります。「シェブロンノズル」と呼ばれる構造によって混流が滑らかになり乱流の発生が抑制されます。図26は「シェブロンノズル」の一例です。ボーイング787等で採用されています。

図26 シェブロンノズル
図26 シェブロンノズル

出典:Olivier Cleynen、Wikimedia Commons、GEnx-1B on Air India B787(2).jpg、CC BY-SA 3.0

③ ターボプロップ

ジェットエンジンの一形態です。ターボジェットと同様に、空気取り入れ口、圧縮機、燃焼室、タービン、排気口で構成され、圧縮機およびタービンとつながる軸に減速機を設け、プロペラの軸を駆動します。

図27 ターボプロップエンジンの構造
図27 ターボプロップエンジンの構造

出典:Original: Emoscopes Vector: M0tty、Wikimedia Commons、Turboprop operation-en.svg、CC BY 2.5

④ ターボシャフト

ジェットエンジンと基本構造は同じですが、出力の取り出し方が異なります。ヘリコプタ向けとして用いられています。タービン部に設けられている、圧縮機やタービン軸と独立したフリータービンを有し、軸出力を得ます。軸回転は変速機を介してロータなどを回転させます。

図28 ターボシャフトの構造
図28 ターボシャフトの構造

出典:Emoscopes、Wikimedia Commons、Turboshaft operation.png、CC BY-SA 3.0

8)エンジン数の制約

旅客機は「ETOPS」※4の規制により、一方のエンジンが故障しても、もう一方だけで飛行し、60分以内にたどり着ける空港があるルートでしか飛行が認められていなかったので、中長距離に就航する大型の旅客機は4基が一般的でした。例えば、B747です。その後、3発機が持てはやされた時期はありましたが、技術の進歩と「ETOPS」の緩和により、中長距離の国際線には2発機が就航しています。

※4

(イートップス) 双発機が陸地から遠く離れた洋上やへき地を飛行する際に適用される運航基準。

9)レシプロエンジン

近年の小型機で採用されているエンジンの主流はレシプロエンジンです。ジェットエンジンが開発されるまで、2026年2月に公開した記事「変わり種エンジン ~ 内燃機関はまだまだ元気 ~」で紹介した、星型エンジン等が採用されていましたが、近年は、空冷式水平対向エンジンが主流です。水平対向エンジンの特徴であるピストンがクランクシャフトを挟んで左右に配置されているので低振動であり、また前方からの投影面積が小さいので航空機の空気抵抗を減らすことに適しています。

10)ジェットエンジン燃料

ジェット燃料に求められる特性は、①燃焼性がいいこと、②燃焼時の発熱量が高いこと、③適度な揮発性があること、④凍結しにくいこと、⑤耐食性が低いこと、⑥清浄度がこと、⑦電気伝動性がたかいこと、などです。ジェットエンジン燃料はケロシン系とワイドカット系とに分類されます。ケロシン系は灯油に近い成分で、ワイドカット系は灯油成分に加えて、ガソリンの成分が含まれます。ワイドカット系は極低温環境でも優れた着火性能と流動性を求めるためです。ワイドカット系は主に軍用機で使用されていましたが、引火点が低い特性から取り扱いの課題があるため、近年では軍用機でもケロシン系が使用されているようです。

航空機はなぜ飛べる

航空機の飛行は、①重力、②揚力、③抗力、④推力の4力のバランスで成立しています。

  1. 重力:万有引力の法則に従って機体が地球に向けて引っ張られます。
  2. 揚力:機体が空中に浮いていられるのは、重力を打ち消す反対向きの力です。
  3. 抗力:機体を前に進めようとする力に対して押し戻す空気抵抗の力です。
  4. 推力:機体を前に進める力です。

4つの力の関係を、機体の飛行の状態により図示すると、図29となります。水平等速飛行の場合は4つの力がバランスしています。減速飛行の場合は推力よりも抗力が上まっています。加速する際は抗力に対して推力が大きい状態です。

図29 4つの力関係
図29 4つの力関係

抗力の要因は、圧力抗力(空気の動圧によって受ける)、摩擦抗力(空気と機体との摩擦)、誘導抗力があります。誘導抗力は揚力を発生させる翼の上下の圧力差により発生します。圧力の高い方から低い方へ流れようとするので、翼の端では、下から上へ回り込もうとする渦が発生し抗力となります。グライダでは翼の先端を細くしています。一般的な旅客機では、翼の先を上方へ曲げたウイングレットと呼ばれる形状にすることで誘導抗力を低減します。

図30 ウイングレットの例
図30 ウイングレットの例

出典:Adrian Pingstone、Wikimedia Commons、Winglet and nav light arp.jpg、Public Domain

航空機が空気の流れを利用して飛ぶことができるのは、翼の上側に向く力(揚力)を発生させることができるからです。揚力の基本原理は、①圧力差(ベルヌーイの原理)、②運動量保存(ニュートンの第3法則)、③循環理論(クッタ・ジューコフスキーの定理)です。揚力は3つの理論で総合的に説明されますが、個々の原理に分解して解説します。詳細な説明については、各所の書物等を参照してください。

① ベルヌーイの原理

飛行機の翼は、一般的に上面がふくらんだカーブ、下面はフラットの形状になっており、風が当たると、上面の流れは速く流れ、下面は上面に比べて遅く流れます。流速が早いほど圧力は低くなるので、上面の圧力<下面の圧力となり、上向きに押し上げられる力、つまり揚力が生まれます。これは、ベルヌーイの定理を使った説明です。

図31 流速差による揚力発生
図31 流速差による揚力発生

② 運動量保存

翼は空気の流れを下向きに押し曲げます。その反作用で翼は上に押し上げられます。翼が上向きに傾いている角度(仰角)があると、揚力は高まります。

図32 翼が空気を下向きに押し下げるイメージ
図32 翼が空気を下向きに押し下げるイメージ

③ 循環理論(クッタ・ジュコーフスキー)

循環理論は翼のまわりに発生する渦に着目し、翼の上面の流速が早く下面が遅いと循環が生じることで圧力差が発生し揚力が発生する理論です。

図33 循環理論による揚力のイメージ
図33 循環理論による揚力のイメージ

関連技術

航空機に関連する技術を紹介します。

1)衝撃波

衝撃波とは、物体が空気中を音速レベルで移動したときに発生する、急速な圧力・密度・温度・流速の変化が起きる波のことです。航空機が空中を進むと、空気に圧力の変化(音波)が生じます。音波は音速で前方に進み、空気はゆっくり押しのけられる状態ですが、音速を越えると、空気は航空機よりも前もって動くことができないので、急激に圧縮されます。よって、圧力波が一か所に集中し圧力・密度・温度が一瞬で変化するので薄い圧縮層ができます。これが衝撃波です。この衝撃波が地面に届くと「ドーン」と言う大きな音が発生します。

2)材料

一般的な構造物の多くは、力を支える部材として「鋼」が使われます。しかし、航空機では「鋼」の使用は限定的で、「軽い」と「強い」を両立させる軽合金が選択されます。航空機の構造部材で「鋼」が適用されるのは、「脚:ランディング・ギア」やエンジンをつる「パイロン」です。ランディング・ギアをアルミ合金で製作すると、柱の断面積が3倍以上になる試算があります。ジェットエンジンのロータでは「ベアリング」に「鋼」の玉が使用されています。最近では、セラミックの玉も使われています。なお、ベアリングの潤滑は「霧状の油」を噴射して行います。高温高速の環境下で稼働するので、液体状の油では、油をかき回す抵抗、発熱、パワーロスの要因となります。さらに、液体状の油では遠心力で外へ飛ばされます。さらに、泡立ちが発生し潤滑性能が低下します。通常のベアリングで適用されるグリースについても、同様の理由で使用されません。

近年の機体には複合材料である炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastic)が採用されています。B787やA350では50%を越える使用率となっているようです。主に、主翼や胴体、尾翼に適用されています。特徴はアルミよりも30%程度の軽量化が可能で、疲労や腐食に強いことです。デメリットとしては、製造コストが高い、衝撃による損傷の検知が困難、修理が難しいことです。

3)航空機のセンサ

航空機に搭載されているセンサを大別すると、①飛行データ系、②慣性系、③エンジン系、④環境・安全系、⑤構造監視系となります。これらのセンサおよび統合されるシステムの、あらゆる故障に対応できるよう、整備用の人員・設備・部品・工具等、多くを備える必要があります。冗長性のための装備を有して設計・証明されており、また全ての運航条件下で常に必要とはされない装備品も搭載しています。例えば、晴天時、着氷が想定されない場合の防除氷システムや、機内のエンターテインメントシステムなどは安全性とは関わりありません。このような諸条件を考慮して、故障があっても安全性を損なわないことを前提として、限定的に運航を認める仕組みが設定されています。この仕組みは、MEL(Minimum Equipment List) という文書に規定されています。この文書のなかに、機体に装備されているセンサやシステム類に関する情報が記述されています。

なお、MELの直訳は「最小装備表」となりますが、この文書の役割である「故障時に飛行を許容するための運用基準」を表すために、「運用許容基準」と記述することが適切です。MELの上位文書は、MMEL(Master MEL)です。文書名は「原運用許容基準」と呼ばれます。航空機メーカが機体型式ごとに作成します。MELは航空会社がMMELを基に作成します。同じ機体でも航空会社ごとにMELが異なります。MMEL、MELとも各国の航空局によって承認される法的拘束力のある文書です。実運用では、仮に故障が発生した時に、飛行が可能かどうかを判断するために、機長は装備されているMELを参照します。なお、エンジンや翼類など明らかに安全上重要で、かつ必ず使用されるものは含まれません。B787のMMELは次のURLから閲覧できます。
https://www.boeing.com/content/dam/boeing/boeingdotcom/commercial/mmel/B787_Rev_19_5_20_2025.pdf

搭載されている主要なセンサの全体像は表1です。表2は各センサの概要です。

表1 主なセンサ
カテゴリ 主なセンサ 用途
飛行データ ピトー、静圧、AoA、加速度、ジャイロ、温度 速度・高度・姿勢・空力状態
航法 IRS/INS、GPS、磁気センサ、レーダー高度計 位置・姿勢・進路保持
エンジン 温度、圧力、流量、振動 エンジン制御・保護
機体状態 油圧、ブレーキ温度、ギア位置 システム健全性
環境 温度、湿度、空気質、天候 ECS・安全・快適性
安全警報 煙、火災、酸素、失速 異常検知・緊急警報
表2 主要なセンサの概要
No 分類 センサ名 機能 用途
1 飛行データ系センサ ピトー管 動圧を測定し対気速度を求める Airspeed Indicator(対気速度計)やオートパイロットの入力
静圧 外気静圧を測定 高度計(Altimeter)、垂直速度計(VSI)の基礎データ
迎角センサ 翼と相対風の角度を測定 失速警報・安定性制御
加速度計 3軸の線加速度を測定 INS/IRS、AHRS、G-Load監視、構造監視
ジャイロセンサ 3軸の角速度(回転)を測定 姿勢(Pitch/Roll/Yaw)、INS/IRS・AHRS の基礎要素
(RLG:Ring Laser Gyro が航空機で広く使用)
温度 外気温・全温を測定 大気密度計算、空力補正、エンジン制御
(Air Data Computer の入力)
2 航法・姿勢基準系センサ IRS — Inertial Reference System
(慣性基準システム)
内部の加速度計・ジャイロにより機体の位置・速度・姿勢を算出する自己完結型システム FMS、オートパイロット、姿勢表示の基準
(RLG/FOG 加速度計を使用)
INS — Inertial Navigation System
(慣性航法システム)
加速度+ジャイロデータから航法計算を行う GPS喪失時のバックアップ航法
GPS受信機 衛星測位(位置・速度・時刻) RNAV・RNP航法、FMS 位置更新
磁気 地磁気ベクトルから磁方位を計測 Heading(磁方位)検出、AHRS統合
電波高度計 電波の往復時間から地面までの真高度を測定 自動着陸、GPWS/EGPWS、低高度警報
3 エンジン系センサ 排気温度 温度測定 エンジン温度監視・FADEC制御
油圧 圧力測定 潤滑系統異常検知
燃料流量 流量 燃料消費管理、エンジン効率監視
振動 振動測定 異常振動=ブレード損傷等の早期検知
4 機体システム系センサ 油圧 圧力測定 油圧システム状態監視(フライトコントロール用)
ブレーキ温度 温度測定 炭素ブレーキの過熱監視
車輪速度 速度測定 アンチスキッド制御(ABS)
位置 位置測定 フラップ・スポイラ・ギア・ドアの位置検知
5 環境系センサ 減圧 圧力測定 客室加圧制御・安全監視
温湿度 温湿度測定 ECS制御・乗客快適性保持
気象レーダ 気象 降水・乱気流・嵐の探知
6 安全・警報系センサ 煙探知機 煙測定 貨物室・客室火災の検知
火災検知器 火災検知 エンジン、APU、ベイ内の火災検知
酸素濃度 酸素濃度測定 客室酸素濃度監視
失速警報 失速度測定 失速の予兆を検知(AoA 等と連動)

4)パイロット免許

飛行機のパイロット免許(航空従事者技能証明)は、主に趣味で操縦するための「自家用操縦士」、プロとして報酬を得るための「事業用操縦士」、エアライン等で旅客輸送を行う「定期運送用操縦士」に大別されます。取得には指定機関での「航空身体検査」合格と、無線従事者免許(航空特殊無線技士等)の取得が必須です。17歳から自家用ライセンスの取得が可能ですが、プロを目指す場合は航空大学校や各大学の養成コース等の進路選択が一般的です。

A.主な免許の種類

パイロットの免許は、操縦する航空機の種類や目的によって分類されます。

  1. 自家用操縦士 (PPL:Private Pilot License)
    自動車免許でいう普通免許(アマチュア向け)にあたります。報酬を得て人を乗せることはできません。17歳から取得可能です。
  2. 事業用操縦士 (CPL:Commercial Pilot License)
    プロとして報酬を得て航空業務に従事できます。エアラインのパイロットを目指す際の第一歩となります。
  3. 定期運送用操縦士 (ATPL:Airline Transport Pilot License)
    旅客機などの定期運送事業で機長として乗務するために必要な最高位の資格です。

B.取得のために必要なもの、プロセス

どの免許を目指す場合でも、以下の要素が共通して必要です。

  1. 航空身体検査証明書:国土交通省指定の機関で受診し、基準を満たす必要があります。
  2. 無線従事者免許:管制機関と交信するために必要です(自家用は「航空特殊無線技士」、事業用は「航空無線通信士」が一般的)。
  3. 訓練・試験:飛行スクールや養成機関で訓練を受け、学科試験および実技試験に合格する必要があります。

C.パイロットになるための方法

プロのパイロットを目指す場合、主に以下のルートがあります。

  1. 航空大学校:国立の養成機関。
  2. 航空会社(自社養成): 航空会社に入社後、訓練を受けてライセンスを取得するルート。
  3. 大学の操縦コース:航空操縦学科がある私立大学へ進学するルート。
  4. 自衛隊:航空学生として入隊し、操縦技術を習得するルート。
  5. 私立のフライトスクール:国内外の訓練機関でライセンスを取得するルート。

5)安全設計

航空機の最重要要件は安全なことです。基本的な考え方として、航空機は 「一つ壊れても安全」 が原則です。対応策として、①レダンダント:同じ機能を複数同時装備、②ダブル:独立した二系統、③バックアップ:予備、などの考え方が採用されます。エンジンにおいては、飛行中に1基が停止しても一定時間内に代替えの空港へ緊急着陸することが求められます。操縦システムでは三重・四重の冗長設計、電気系では物理ルートの分離、油圧系では3~4本を搭載します。

6)航空業界の単位

航空業界では国際的な標準としてインチ(inch)、フィート(ft)、ポンド(lb)といった「ヤード・ポンド法」が主流です。日本を含む世界各国ではメートル法(国際単位系:SI)が一般的ですが、航空業界はアメリカが主導して発展した歴史的背景から、「ヤード・ポンド法」が標準として使われ続けています。以下の単位がよく使われます。

高度 フィート(ft)(例:30,000フィート)
距離 ノーチカルマイル(海里・NM)
速度 ノット(kt = 海里/時)
重量・燃料 ポンド(lb)
サイズ・ネジ・長さ インチ(inch)
気圧・高度計 inHg(水銀柱インチ)
圧力 PSI(ポンド/平方インチ)

7)空港施設の設計要領

空港の土木に関する技術基準が国土交通省から公開されています。
https://www.mlit.go.jp/koku/content/001597583.pdf

8)航空システム

主な航空システムを紹介します。

① ILS(Instrument Landing System:計器着陸装置)

着陸のために進入中の航空機に対して、指向性のある電波を発射し、滑走路への進入コースを指示します。

図34 ILSシステム
図34 ILSシステム

出典:国土交通省が公開している資料を抜粋して作成

② 航空灯火システム

夜間に航空機を利用すると地上に設置されている灯火類を見かけます。着陸時に灯火や地上を走行中の灯火は視認しやすい灯火となっています。

図35 航空灯火システム
図35 航空灯火システム

出典:国土交通省が公開している資料を抜粋して作成

③ 走路状態表示システム

滑走路を移動する機体や車両に対して警告等を示す灯火です。

図36 走路状態表示システム
図36 走路状態表示システム

出典:国土交通省が公開している資料を抜粋して作成

④ 管制空域

航空機が着陸・離陸する際は航空交通管制が行われています。空港から半径100kmが進入管制区、半径9kmが航空交通管制圏です。

図37 管制空域のイメージ
図37 管制空域のイメージ

出典:国土交通省が公開している資料を抜粋して作成

⑤ 空港使用料

国が管理する空港の施設を使用する航空機の使用者は、着陸料、停留料および保安料を支払うものとされています。また、日本国内で離陸もしくは着陸する航空機の使用者または上空を通過する航空機の使用者は、航行援助施設利用料を支払うものとされています。航空機運航に関して主に以下の料金が課されます。

表3 空港使用料
区分 支払先 概要
着陸料 空港管理者 空港の滑走路等の使用
停留料 空港管理者 駐機スポットの使用
保安料 空港管理者 空港保安施設
航行援助施設利用料 国(航空局) 管制・航法施設の利用

B787とA350について試算すると表4です。機体の重量や客席数に応じて、席あたりのコストが変わってきます。

表4 空港使用料の比較試算
項目 B787 A350
前提条件 想定機種 B787-9 A350-900
最大離陸重量(MTOW) 約254 t 約280 t
想定飛行距離 900 km 900 km
着陸料単価 590円 / t 590円 / t
座席数 約300席 330席
着陸料(一便) 約150,000円 約165,000円
航行援助施設使用料 約107,000円 約113,000円
座席当たりコスト 約860円 約840円

詳細な条件や計算方法は国土交通省のサイトをご覧ください。
https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk1_000056.html

航空機の機体番号

航空機には固有の番号が付与されています。公式のデータベースではないですが、航空機や航空会社、機体の情報を閲覧できるサイトとして、世界最大級の「Planespotters.net」と日本版のサイト「FlyTeam」があります。

Planespotters.net 英語が基本です。機体データ・履歴が充実しています。
FlyTeam 投稿された機体の写真、ニュース等が載っています。日本の情報に強いです。

航空機や部品、内装品、滑走路などの設備等航空機関連全般の情報が網羅されているサイトは次です。
https://www.aeroexpo.online/ja/

超音速旅客機の復活

超音速旅客機はコンコルド※5が2003年に退役して以来、約20年以上の時を経て、環境負荷を抑え、かつ「静かな」超音速飛行を実現する新型機の登場が期待されています。コンコルドが退役した主な理由は燃費が悪く採算が合わなかったことと、衝撃波による騒音規制です。現在、NASA(National Aeronautics and Space Administration:アメリカ航空宇宙局)や民間企業のプロジェクトが推進されています。なお、衝撃波の問題により超音速旅客機が陸地上空で飛行することは、現時点禁止されています。

※5

(concorde) 英仏が共同開発した世界初の超音速旅客機(SST)。マッハ2.0(時速約2,200km)で、パリ/ロンドンとニューヨーク間を通常の旅客機の半分の3時間で飛行した。日本には1989年、1994年に飛来した実績がある。

図38 Boom Technology社の超音速旅客機「ブーム・オーバーチュア」のイメージ
図38 Boom Technology社の超音速旅客機「ブーム・オーバーチュア」のイメージ

出典:Kuat-Entralla 3D Engineering、Wikimedia commons、Boom Overture rendering.png、CC BY 4.0

図39 NASA 超音速実験機
図39 NASA 超音速実験機

出典:Lockheed Martin Corporation、Wikimedia commons、Low-Boom Flight Demonstrator.jpg、PD-USGov

関連計測器の紹介

航空機に関連した計測器の一例を紹介します。

図40 航空機に関連した計測器の例
図40 航空機に関連した計測器の例

その他の製品や仕様については計測器情報ページ から検索してください。

おわりに

航空機、特に旅客機の基本的な使命は、「人と貨物を、安全で、快適に、早く、目的地へ輸送」することです。近年では、さらなる要求として、CO2排出削減や騒音規制、新燃料(水素燃料・水素電池、SAF:Sustainable Aviation Fuel)、電動化による環境適合性も求められています。今後も、航空機が持続可能性確保に対応する技術革新が必要です。

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