市場動向詳細

変わり種エンジン ~ 内燃機関はまだまだ元気 ~

近年、自動車の駆動手段は多様化が進でいます。EV化(純電気自動車)への強い傾注から現実的な選択肢を採用する動きとなっています。多方向性への変化は様々な要因を挙げられます(私見ですが)、電池コストの高止まり、補助金終了による価格ギャップ、冬季性能の劣化、電力確保等々です。ただし、現時点の動向は純内燃機関※1への回帰ではなく燃料系の内燃機関が再評価されていると理解すべきです。その例として、EVの最重視から、電動化したエンジンとしてのHEVやPHEV※2、エコ燃料対応エンジン等々の採用が拡大傾向です。今回は、主に自動車用途として開発された内燃機関(以降エンジンと表記)の基本構造とは異なる「変わり種エンジン」を紹介します。なお、量産車への適用がなされず、研究開発に留まったエンジンも含まれています。また、紹介する変わり種エンジン以外にも多くの方式や構造が提案されています。変わり種エンジンを紹介する分類の観点については、重複する事項や他の分類に振り分けるべきではとの指摘があるかもしれないことを予め了承してください。

本稿では、まず、エンジンの基本的な種類について、往復運動と回転運動との観点で概説します。その後に変わり種エンジンを気筒配置、構造や燃焼方式の観点で紹介します。次に、今後の展望について、「内燃機関がなぜ今後も生き残るのか」、「EV時代に評価されるエンジン」について筆者の私見を述べます。紹介しきれなかった「変わり種エンジン」を紹介するサイトも記述しました。最後に変わり種エンジンに関連する計測器を紹介します。

《本稿の記述は、筆者の知見による解釈や、主観的な取り上げ方の面もあることをご容赦ください。また、記載されている技術情報は、当社および第三者の知的財産権他の権利に対する保証または実施権を許諾するものではありません。》

エンジンの種類

エンジンの種類を回転式かどうかで分類すると、既存の量産自動車に搭載されたエンジンは、往復運動のガソリンエンジン・ディーゼルエンジンと回転運動のロータリエンジンとなります。

1)ガソリンエンジン・ディーゼルエンジン

ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの構造は基本的に同じです。ガソリンエンジン用の燃料はガソリンの他、CNG(Compressed Natural Gas:圧縮天然ガス)やLPG(Liquefied Petroleum Gas:液化石油ガス)を使用するエンジンもあります。ガソリンエンジンはオットーサイクル※1を原理としています。ディーゼルエンジンは、ディーゼルサイクルと呼称される4つの工程となります。各工程は「空気を吸入」→「圧縮」→「燃料を噴射して燃焼」→「排気」となり、ディーゼルエンジンがガソリンエンジンと大きく異なることは「燃焼機構」です。ガソリンエンジンは、点火プラグによる火花で着火させますが、ディーゼルエンジンは、気筒内に燃料を噴射し、圧縮された空気の熱で自然着火させます。図1はガソリンエンジンとディーゼルエンジンの点火イメージです。

図1 ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの点火イメージ
図1 ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの点火イメージ

その他の方式として2ストロークサイクルエンジン(2ストエンジンと呼称)があります。過去に2輪車や軽自動車のエンジンとして採用されていました。図2は2ストエンジンの工程で、クランクシャフトの1回転で1回の燃焼となります。図の左側はピストンが最上位を示しています。赤矢印で示している通り混合気が吸入されます。真ん中の工程は点火された状態です。その後、右側の工程へ移行します。吸入された混合気がシリンダ内に流入するとともに、燃焼した排気ガスが図中の黒矢印の流れで排気されます。この時、排気工程で吸気された燃料が排気ガスに混じるため、排ガス規制の対応が困難となりました。

図2 2ストエンジンの工程
図2 2ストエンジンの工程

エンジンの基本構成は図3となります。エンジンブロック、ピストン、バルブ、点火プラグ、カムシャフト、コネクティングロッド(通称:コンロッド)、クランクシャフトなどで構成されています。

図3 エンジンの基本構成
図3 エンジンの基本構成

図4はエンジンを分解した一例です。多くの部品で構成されています。この例は直列4気筒です。

図4 エンジンの構成部品例
図4 エンジンの構成部品例

2)ロータリエンジン

これまで説明してきたエンジンはピストンが往復運動する構造で、レシプロエンジンとも呼称されます。自動車で採用されたその他の方式としてロータリエンジンがあります。ロータリエンジンは複数の構造がありますが、マツダ社が採用したロータリエンジンはバンケル型ロータリエンジンです。特徴を端的に表現すると「おむすび型のロータ」が回転します。ちなみに、ジェットエンジンもロータリエンジンに分類され、速度型ロータリエンジンと言われます。以降、バンケル型ロータリエンジンをロータリエンジンと呼称します。工程の概要は図5です。4サイクルエンジンンのクランクシャフトに相当するエキセントリックシャフトの周りをおむすび型のロータが回り、ロータハウジングとロータとで、4サイクルエンジンと同じく「吸入」「圧縮」「燃焼」「排気」工程となります。ロータハウジングとロータとが接する面はペリトロコイド(Peri trochoid)曲線となっています。4サイクルエンジンにある、吸入・排気のバルブはありません。吸排気のポートがロータによって解放されます。ロータが1回転する間にエキセントリックシャフトが3回転しますが、ロータの各辺で4工程が順番に行われるので、燃焼行程は1回転ごとに繰り返され、2回転に1回燃焼する4サイクルエンジンに比べて、高出力となります。

図5 ロータリエンジンの工程
図5 ロータリエンジンの工程
図5 ロータリエンジンの工程

出典:Y_tambe、Wankel Cycle anim ja.gif、https://commons.wikimedia.org、CC BY-SA 3.0

エンジンの構造をシリンダの配置で分類すると、直列、V型、水平対向、星形です。

図6 直列、V型、水平対向、星形エンジンの例
図6 直列、V型、水平対向、星形エンジンの例

変わり種エンジン

変わり種エンジンを特徴的な方式に分類し紹介します。

1)気筒配置

エンジンの基本構造は、前述した、直列エンジン、V型エンジン、対向エンジン、星型エンジンですが、その他にも多くの種類があります。表1はその一例です。

表1 気筒配置の例
方式 基本構造
H型エンジン 直列エンジンを2つ上下に重ね、それぞれのクランクシャフトをギアで繋いだ。
U型エンジン 直列エンジンを2つ横に並べ、クランクシャフトをギアで繋いだ。
W型エンジン V型エンジンを複数並べた構造。
X型エンジン 星型エンジンから派生し、X字型にシリンダーを配置。
星型エンジン クランクケースを中心に、シリンダーが放射状(星型)に配置されたエンジン。

① H型エンジン

直列エンジンを2つ上下に重ね、それぞれのクランクシャフトをギアで繋いだ構造です。

図7 H型エンジンの動作
図7 H型エンジンの動作

出典:MichaelFrey、https://commons.wikimedia.org、
H-Engine 4 strouke.gif、CC BY-SA 3.0

② U型エンジン

直列エンジンを2つ横に並べ、クランクシャフトをギアで繋いだ構造です。

図8 U型エンジンの動作
図8 U型エンジンの動作

出典:MichaelFrey、https://commons.wikimedia.org、
U-Engine.gif、CC BY-SA 3.0

③ W型エンジン

V型エンジンを2つ並べたような構造です、多気筒化(12気筒、16気筒など)しても、エンジンの全長を非常に短くすることができます。欧州車ではW8、W12、W16が販売された機種はあります。

図9 W型エンジンの動作
図9 W型エンジンの動作

出典:MichaelFrey、https://commons.wikimedia.org、
W-Engine with 60 Degree angle.gif、CC BY-SA 3.0

④ X型エンジン

星形エンジンから派生し、X字型にシリンダを配置した構造です。

図10 X型エンジンの動作
図10 X型エンジンの動作

出典:MichaelFrey、 https://en.wikipedia.org/、
Bourke - two stroke - four cylinder.gif、CC BY-SA 4.0

⑤ 星形エンジン

クランクケースを中心に、シリンダが放射状(星型)に配置された構造です。主として、航空機のエンジンとして採用されました。図11はエンジンとプロペラとが一体となって回転する構造です。その後、シリンダ側が機体に固定され、クランクシャフトと一体となったプロペラが回転する構造となりました。星形エンジンは前面から風を効率的に受けるため空冷に適しています。なお、4サイクルエンジンでは奇数気筒数です。偶数気筒数だと、1回転で点火が終了するので4サイクルが成立しません。

図11 星形エンジンの動作
図11 星形エンジンの動作

出典:MichaelFrey 、https://commons.wikimedia.org/、
Rotary engine - animation slower.gif、CC BY-SA 4.0

余談ですが、欧州高性能車のV型エンジンで主に採用されているクランクシャフトの構造である「フラットプレーン」と米国の大排気量エンジンで主として採用されている「クロスプレーン」があります。エンジン振動の基本的な性質では、「フラットプレーン」は高回転になるほど上下振動が激しくなります。一方、排気干渉は「クロスプレーン」では排気がぶつかるタイミングがあります。この性質が加速時の音に表れます。「フラットプレーン」は「かん高い音」となり、「クロスプレーン」では「ドロドロドロ」となります。

図12 フラットプレーンクランクシャフトとクロスプレーンクランクシャフト
図12 フラットプレーンクランクシャフトとクロスプレーンクランクシャフト

2)構造、燃焼方式

構造や燃焼方式を分類すると多くの構造が挙げられますが、主な構造を紹介します。表2は一例です。

表2 構造、燃焼方式の分類
方式 基本構造
ロータリーエンジン(LiquidPiston社製) バンケルエンジンの一種。ロータの形状が三角形のおにぎり型ではなく、タマゴのような形状(公式:ピーナツ型)。ロータにはバンケルエンジンで必要なアペックスシールはない。これが、大きな狙いの一つ。
対向ピストンエンジン 1つのシリンダーの中に2つのピストンが向かい合わせに入っており、中央で爆発させて両側に押し広げる構造。シリンダヘッドが不要なので部品点数が少なく、振動が少ない。
フリーピストン ピストンがクランクシャフトやコンロッドなどの連結機構を持たず、シリンダ内を自由に往復運動できる構造構造。部品点数が少ないので機械損失の低減や振動の低さが特徴。
スリーブバルブエンジン 通常の4ストロークエンジンにある吸排気の「キノコ型のバルブ」がなく、シリンダーとピストンの間にある「筒(スリーブ)」が上下もしくは回転することで吸排気ポートを開閉します。
2ストローク・ディーゼル クランク1回転(ピストンの上昇・下降)で吸気・圧縮・燃焼・排気を完了させ、1サイクルを行うエンジン。大型船舶や発電用エンジンで採用。熱効率が50%を超える燃費性能を誇る。ガソリンエンジンの2ストとは異なり、自然吸気では吸排気できないので機械的な機構(ブロワやターボ)が必要。
ナピア・デルティックエンジン 「対向ピストンエンジン」を3つ、三角形(デルタ型)に組み合わせた構造。
5ストロークエンジン 基本構造は2つの高圧シリンダ(両サイド側)と1つの低圧シリンダ(中央)で構成。高圧シリンダからの高温排気ガスを中央の低圧シリンダに導き、中央のシリンダで、さらに1回の膨張工程を行い、燃焼エネルギをさらに回収。工程は、「吸気」→「圧縮」→「出力」→「初期排気・膨張」→「最終排気」。
振動抑制エンジン エンジン振動を抑制するため、バランサと呼称される偏心の重りをエンジンに同期して回転させ、振動を抑制。基本概念は20世紀初頭にフレデリック・ランチャスタ(英国)が考案。実用例は三菱自動車が1974年に採用してから各社で普及。
CVCCエンジン(複合渦流調速燃焼)
Compound(複合・複式)・Vortex(渦流)・Controlled Combustion(調速燃焼)の頭文字
ホンダが考案した構造。副燃焼室で濃混合気を点火し 主室の希薄燃焼を誘起することで、マスキー法(米国、1975年)を酸化触媒なしで達成。
アトキンソンサイクル 容積型内燃機関(オットーサイクル)をベースに圧縮比よりも膨張比を大きくする構造。
ミラーサイクル アトキンソンサイクルと同等の原理を使っているが、構造は全く異なる。吸気バルブの閉じるタイミングを遅らせて、実質的な圧縮比を小さくする。従来部品をほとんど流用できることが特徴。ラルフ・ミラー(米国)が考案。
オーバルピストンエンジン 真円でないオーバル形状のピストンを採用。実質的には1つのピストンで2気筒分のバルブ、点火プラグを具備。ホンダがバイクレースのカテゴリである「GP500」に適用。

① ロータリエンジン

バンケルロータリエンジンの一種です。ロータの形状が三角形のおにぎり型ではなく、タマゴのような形状(公式的にはピーナツ型)です。ロータにはバンケルエンジンで必要なアペックスシールはありません。これが、大きな狙いの一つです。燃焼室が3箇所、1回転で3回燃焼します。軽油・灯油等にも対応します。ディーゼルエンジンのように圧縮点火も可能です。吸気と排気の側面が異なるので、バンケル型ロータリエンジンのようにロータを並列に追加することはできません。ドローンに搭載する発電機として試作事例があります。詳細はLiquidPiston社のサイトをご覧ください。https://www.liquidpiston.com/

② 対向ピストンエンジン

1つのシリンダの中に2つのピストンが向かい合わせに入っており、中央で爆発させて両側に押し広げる構造です。実質的に2倍の気筒数に相当します。シリンダヘッドがないので部品点数が少なく振動を抑制でき、また熱効率が高くなります。大戦中の戦車や航空機等で採用されました。

図13 対向ピストンエンジンの例
図13 対向ピストンエンジンの例1

出典:UtzOnBike、 Opposite_piston_engine_anim.gif、
https://commons.wikimedia.org/wiki/、CC BY-SA 3.0

図13 対向ピストンエンジンの例2

出典:MichaelFrey、https://commons.wikimedia.org、
Simpson‘s Balanced_2-Stroke_of_1914_high-res_animation.gif、CC BY-SA 4.0

③ フリーピストンエンジン

ピストンがクランクシャフトやコンロッドなどの連結機構を持たず、シリンダ内を自由に往復運動できる構造です。部品点数が少ないので機械損失の低減や振動の低さが特徴です。ピストンと燃焼室の配置によって、3つの構造に分類できます。a.シングルピストン型、b.デュアルピストン型、c.対向ピストン型。発電機や油圧発生源として適用例があります。

図14 フリーピストンエンジンの例
図14 フリーピストンエンジンの例

④ スリーブバルブエンジン

通常の4ストロークエンジンにある吸排気の「キノコ型のバルブ」がなく、シリンダとピストンの間にある「筒(スリーブ)」が上下もしくは回転することで吸排気ポートを開閉します。欧州では1920年代の高級車や大戦時の航空機用エンジンで採用されました。

図15 スリーブバルブエンジンの例
図15 スリーブバルブエンジンの例

出典:Stahlkocher 、https://commons.wikimedia.org、Bristol_Perseus_sleeve_valve_radial_engine.jpg、CC BY-SA 3.0

⑤ 2ストロークディーゼルエンジン

クランク1回転(ピストンの上昇・下降)で吸気・圧縮・燃焼・排気を完了させ、1サイクルを行うエンジンです。大型船舶や発電用エンジンで採用されています。熱効率が50%を超える燃費性能を誇ることが特徴です。ガソリンエンジンの2サイクルとは異なり、自然吸気では吸排気ができないため、機械的な機構(ブロワやターボ)が必要です。代表例は大型船舶のエンジンです。基本工程は、①掃気。②圧縮、③燃焼、④排気です。掃気は下部から、排気は上部へと流れるのでユニフロー掃気方式とも呼称されます。

  1. 掃気:排気弁、掃気口は開いています。加給された圧縮空気が掃気口から流入します。
  2. 圧縮:排気弁、掃気口とも閉じてピストンの上昇とともにシリンダ内の空気は圧縮され高圧・高温となります。
  3. 燃焼:噴射された燃料が自己着火して急速に燃焼します。
  4. 排気:膨張の後半で排気弁が開き排気口から排気されます。この排気エネルギは過給機によって回収され、次の掃気工程に活かされます。
図16 2ストロークディーゼルエンジンの工程
図16 2ストロークディーゼルエンジンの工程

⑥ ナピア・デルティックエンジン

「対向ピストンエンジン」を3つ、三角形(デルタ型)に組み合わせた構造です。英国では高出力のエンジンとして、軍用の船舶や鉄道車両として採用されました。

図17 ナピア・デルティックエンジンの動作
図17 ナピア・デルティックエンジンの動作

出典:MichaelFrey、https://commons.wikimedia.org、
Napier deltic animation large.gif、CC BY-SA 2.5

⑦ 5ストロークエンジン

基本構造は2つの高圧シリンダ(両サイド側)と1つの低圧シリンダ(中央)で構成されます。高圧シリンダからの高温排気ガスを中央の低圧シリンダに導き、中央のシリンダで、さらに1回の膨張工程を行い、燃焼エネルギをさらに回収します。工程は、「吸気」→「圧縮」→「出力」→「初期排気・膨張」→「最終排気」となります。

図18 5ストロークエンジンの気筒配置
図18 5ストロークエンジンの気筒配置
図19 5ストロークエンジンの工程
図19 5ストロークエンジンの工程

通常の4ストロークエンジンの排気工程の後に掃気の再吸入工程と掃気排気工程を設けた6ストロークエンジンも考案されています。エンジン内部の冷却に加えて、未燃ガスを燃やすことで熱効率の向上を狙っています。4サイクルエンジンは2回転で工程を終えますが、6ストロークエンジンは3回転で工程を終えます。

⑧ 振動抑制エンジン

エンジン振動を抑制するため、バランサと呼称される偏心の重りをエンジンに同期して回転させ、振動を抑制します。基本概念は20世紀初頭にフレデリック・ランチャスタ(英国)が考案しました。実用例は三菱自動車が1974年に採用してから各社で普及しました。

図20 振動抑制エンジンの例
図20 振動抑制エンジンの例

⑨ CVCCエンジン

主要な構造は従来の4サイクルエンジンと同じですが、点火プラグのまわりに副燃焼室を設け、そこに小型の副吸気弁が加えられています。主吸気弁から薄い混合気、副吸気弁から少量の濃い混合気を吸入し、燃焼室全体では薄い空燃比となります。点火は副燃焼室内で行われ燃焼が主燃焼室へ伝わります。

図21 CVCCエンジンの工程
図21 CVCCエンジンの工程

米国EPAテストでは、日産自動車のサニーにホンダのCVCCエンジンを搭載してデータを計測。当時、ホンダにはCVCCエンジンを積める大きさの車体がなく、やむなく、テスト時から使っていた他社の車体で適合テストを行いました

⑩ アトキンソンサイクル

容積型内燃機関(オットーサイクル)をベースに、リンク機構により圧縮比よりも膨張比を大きくする構造です。近年の実施例としては、日産の可変圧縮比エンジンがあります。

図22 日産 可変圧縮比エンジンの基本構造
図22 日産 可変圧縮比エンジンの基本構造

⑪ ミラーサイクルエンジン

アトキンソンサイクルと同等の原理を使っていますが、構造は全く異なります。吸気バルブの閉じるタイミングを遅らせて、実質的な圧縮比を小さくします。従来部品をほとんど流用できることが特徴です。ラルフ・ミラー(米国)が考案しました。

図23 ミラーサイクルエンジンの構
図23 ミラーサイクルエンジンの構

⑫ オーバルピストンエンジン

ホンダがレース用のバイクで採用した真円ではないオーバルピストンエンジンがあります。1970年代後半、バイクレースのカテゴリである「GP500」の規則(レギュレーション)は「4ストロークエンジンは最大4気筒まで」となっていました。見た目はレギュレーションに合致する4気筒でありながら、実質8気筒の発想です。1気筒あたりのバルブは吸気・排気とも4バルブの計8バルブ、点火プラグは2本、コンロッドは2本の構成です。なお、市販された機種もありましたが、レースではレギュレーションの改正により2007年度から禁止されました。

図24 オーバルピストンエンジン
図24 オーバルピストンエンジン

出典:Ux z、https://commons.wikimedia.org、Ovalpiston.jpg 、CC BY-SA 3.0

なぜ内燃機関は生き残るのか

内燃機関は150年以上を費やして進化してきました。EVと比較されますが、内燃機関が優位な大きな理由を端的に表現すると「物理的な壁」です。液体燃料(ガソリンや軽油など)のエネルギ密度は他の手段に対し圧倒的です。例えば、ガソリンのエネルギ密度は約12,000Wh/kgで、リチウムイオン電池は桁違いで、200~300Wh/kgです。液体燃料の特徴は「軽く、小さく、長時間のエネルギ保持」であり、内燃機関と液体燃料の組み合わせは、物理的にまだまだ優位性を維持できます。内燃機関の優位性がある適用分野は、長距離輸送、建機・重機、航空機、非常用発電等であり、EVにとって苦手な分野でしょう。また、インフラの観点で言えば、石油精製、輸送(タンカー・パイプライン)、給油設備、部品供給、整備技術者等々、内燃機関の進化とともに構築されてきました。EV化が理想形であっても、内燃機関を支えているインフラ並みのネットワークを簡単に置き換えできません。技術的な観点で言えば、基本原理は変わらなくても、直噴、可変バルブ、可変圧縮比、過給+リーン燃焼、代替燃料対応が代表的な技術です。

一方、EVとの比較では、EVは素晴らしい技術ですが、(私見ですが)万能ではないです。ただし、EVの得意領域は、都市部・短距離・定常運転・静粛性等です。逆に苦手の領域は、極寒・酷暑環境、連続高負荷運転、即時電気補給、充電インフラ未整備地域等です。これらの要件を補うために、内燃機関は今後も求められます。近年のEV vs 内燃機関の議論を決着させるのではなく、両技術の用途別最適化を論議すべきと考えます。将来、内燃機関は主役の座から降りるかもしれませんが、消えることはないでしょう。当面、内燃機関とEVとのハイブリッドシステムは終息することはないでしょう。余談ですが、EV車の加速フィーリングは振動が少なく、まさにモータ的と受け止められているので、機械的な変速ショックを意図的に再現するモータ制御が取り入れられた車種もあります。

EV時代に評価されるエンジン

EV時代に求められる内燃機関の基本要件は、「走らせるため」ではなく「システムを成立させるため」です。EV車の方式によっては、内燃機関とアクセルとを直結している必要はありません。具体的な要件は、モータの駆動力を支援する、電力・熱を供給する、EVの弱点(高低温環境等)を補うことです。また、新燃料(水素、バイオ燃料)等への適応力が内燃機関に求められます。エンジニアの視点では、EV時代への移行が進めば進むほど内燃機関に関連するエンジニアへの期待は高まると認識できます。EV時代に評価されるエンジンの要件をまとめると、次の通りでしょう。

  • 主役 → 裏方へ
  • 駆動 → 発電へ
  • 広回転 → 定点運転へ
  • 化石燃料 → 多様燃料へ

この要件により、従来のエンジンでは欠点だった事項が克服されることに、変わり種エンジンが生き残ることを期待できます。具体的な事例としては、バンケル型ロータリーエンジン、2サイクルエンジン等が挙げられます。

変わり種エンジンの紹介サイト

本稿で取り上げなかった、レトロな内燃機関などが紹介されています。
The Museum of Retro Technology - Power Generation – Unusual Internal Combustion Engines

関連計測器の紹介

変わり種エンジンに関連した計測器の一例を紹介します。

図25 変わり種エンジンに関連した計測器の例
図25 変わり種エンジンに関連した計測器の例

その他の製品や仕様については計測器情報ページ から検索してください。

おわりに

EV時代に移行しつつありますが、今後も期待される内燃機関とは、従来の運転していて「楽しい機械」ではなく、「静か」で、「頑丈」で、「電動化社会を支える」存在でしょう。これらの条件を満たす内燃機関は、極論かもしれませんが、本稿で紹介した「変わり種エンジン」かもしれません。今後も内燃機関がEV時代に適応する技術進化に期待しましょう。

自動車関連の他の記事は こちらから