ドローン ~ 空のモビリティを創造 ~
無人航空機、いわゆる「ドローン」は昨今の世界情勢の中で、聞かない日がないくらいの馴染みある言葉でしょう。また、大阪・関西万博(正式名称:2025年日本国際博覧会)において行われた「ドローンショー」や「空飛ぶくるまのデモ飛行」を目にしたと思います。無人航空機は「空の産業革命」とも言われています。「ドローン」が認知され始めたころは、マスメディア等での空撮映像や農業での活用事例が紹介されました。(筆者の私見ですが)「ドローン」は趣味の延長との認識でしたが、新たな空中モビリティ※1として注目されています。本稿では、「ドローン」について解説します。なお、「ドローン」には空中だけでなく水中・水上の物も含まれます。特に断りがない場合は、本稿では空中ドローンを対象とします。なお、法令関連では「ドローン」ではなく法令に対応するため、「無人航空機」と表記することを予めご理解ください。先ず、「ドローン」の定義や市場の動向を述べます。次に、「ドローン」に関連した歴史を紹介します。その後に、「ドローン」に関連した法令を概説します。さらに、「ドローン」の飛行でポイントとなる、飛行カテゴリー、特定飛行、飛行レベル、および「ドローン」の技能試験、DIPS2.0に触れます。そして、「ドローン」の機体や水中ドローンについて解説します。また、「ドローン」のビジネスについて述べます。最後に「ドローン」に関連した計測器を紹介します。
(Mobility) 基本的な意味は、「人や物が移動すること、またはそのための手段、サービス全体」を示す概念。最近は単なる「移動手段」ではなく、移動を主軸とした社会システムや価値を表現。
《本稿の記述は、筆者の知見による解釈や、主観的な取り上げ方の面もあることをご容赦ください。また、記載されている技術情報は、当社および第三者の知的財産権他の権利に対する保証または実施権を許諾するものではありません。》
ドローンとは
英単語:drone(ドローン)は、ミツバチの雄バチです。「ドローン」の呼称が定着した由来は諸説あるようですが、英国が軍用として開発した無線操縦標的機(愛称Queen Bee:女王バチ)に対して、米国が開発した無人機を英国に対抗してdrone(雄バチ)と名付けたであるとか、無人機が飛行する際のプロペラの回転音が雄バチの羽音(ブーン)に似ているとかです。「ドローン」の定義は、適用する分野や制度によって異なりますが、技術的な用語として定めるのでしたら、「自律的または遠隔操作によって飛行、走行、航行する無人機の総称であり、空中、陸上、水上、水中を含む環境で用いられる無人機」でしょう。無人機として一般的な分類としては、①無人航空機、②無人車両、③無人船舶、④無人潜水機に分けられます。日本においては、一般的に「空を飛ぶ無人機」を「ドローン」として認識されています。
- 無人航空機:UAV:Unmanned Aerial Vehicle
- 無人車両:UGV:Unmanned Ground Vehicle
- 無人船舶:USV:Unmanned Vehicle
- 無人潜水機:Unmanned Underwater Vehicle
操作形態の観点では、①遠隔操縦、②自律に分けられます。
- 遠隔操縦:パイロットが操縦するもの。
- 自律:あらかじめプログラムされたルートを飛行するもの。もしくは、センサの情報に応じ、AIなどによって自己判断して移動するもの。
外観形状はドローンを定める要素ではありません。多回転翼機(マルチロータ)※2、固定翼、垂直離着陸機(VTOL:vertical take-off and landing aircraft)、球体形状などのドローンがあります。日本において、「無人航空機」は「航空法」によって、航空機の一種として定められています。航空法において、区分されているのは次の通りです。「ドローン」が「航空法」で定められたのは2015年の改正です。詳細は後述します。
「マルチコプタ:multicopter」とも呼称。技術文書や国際規格、法令では「マルチロータ:multirotor」が主流。一般向けやホビーでは「マルチコプタ」
| 飛行機 | 固定翼の航空機で、揚力により空中を飛行するもの。プロペラまたはジェット推進により飛行 |
| 回転翼航空機 | 回転翼(ローター)により揚力を得て飛行する航空機。ヘリコプタ |
| 滑空機 | エンジンを持たず、風や滑走で飛行する航空機。グライダ |
| 飛行船 | 気体の浮力により浮遊する航空機。 |
| 無人航空機 | 人が乗ることができない航空機で、遠隔操作または自律操縦可能なもの。2015年改正で追加。 |
ドローン関連の市場
言うまでもなく、ドローン関連のビジネスは急速に拡大することが期待されます。図2はドローン関連の市場動向です。
出典:内閣官房 小型無人機等対策推進室「レベル4飛行の実現、さらにその先へ」を引用して作成
ドローンの歴史
ドローンの歴史は、軍事的な起源、模型飛行機としての発展、その後、一般への普及となるでしょう。
1) 軍事的な起源(1910年代後半)
図3は第一次大戦中に米国で開発された空中魚雷ケタリング・バグ(Kettering Bug)です。無人の小型複葉機で、発射台により離陸する方式です。実戦には投入されずに大戦は終了しましたが、「自動操縦」や「無人爆撃機」の出発点と言えるでしょう。
「Kettering Bug.jpg」(パブリックドメイン)。出典:Wikimedia Commons
(原典:Encyclopedia of Astrobiology, Astronomy, and Space Flight – “Kettering Bug”)
1944年には、ドイツの「V-1」に対抗するため米国において、B-17爆撃機を改造して無人化しました。遠隔操作にて運用する計画でしたが、これも限定的な運用にとどまったようです。
2) Uコントロールの普及と軍需用標的機の発展(1930年代から1940年代)
米国では第二次大戦中に、1万機もの無人標的機が量産され、対空射撃訓練用として採用されました。米国のラジコン飛行機産業の創設期を築いたハリウッド俳優レジナルド・デニー(英国)が扱っていた模型飛行機がベースとなったようです。デニーはラジコン機の製造会社を開業しました。有名なエピソードとして、後のマリリン・モンローが製造会社で働いていました。さらに、マリリン・モンローが世に出るきっかけとなった写真を撮った陸軍航空隊の広報に、後に米国大統領となったロナルド・レーガンが所属していたこともエピソードです。ラジコン機発展の技術的な基礎となったと評価されているのは「Uコントロール(略してUコン)」です。1930年代に米国で特許を取得し商品化されました。仕組みは、操縦者と機体とを2本の鋼線で結び、U字型ハンドルを傾けて昇降舵を操作します。機体は操縦者を中心にして、半径約20mの円周上を飛行します。電気系は使わず、完全なアナログ操作です。宙返りや背面飛行などアクロバットが可能です。日本においては、「Uコン」と称して1940年代に伝わり、爆発的に広まりました。1970年代には20万人の愛好者がいたとのことです(筆者もその一人です)。
3) ラジコンの登場と進化(1950年代から1970年代)
アナログ無線で模型飛行機(ラジコン)を操作しました。その後、トランジスタ化により無線装置の小型化、高機能化が進みます。複数の操舵を同時に制御できるようになり、ラジコン模型飛行機が普及しました。現在のドローン操縦の基礎が醸成された時期です。ベトナム戦争において、無人偵察機が投入されました。現代の軍需用ドローンの先駆けとなったシステムでしょう。
4)電子化、自律化への変革(1980年代から2000年代)
マイクロプロセッサの進化、GPSの導入、デジタル無線化、衛星通信の適用等の採用により高性能化、長距離飛行が可能となりました。機体システム全体の制御がハードウエアからソフトウエア中心へ移行しました。1980年代後半にヤマハ発動機が産業用無人ヘリコプタを発売しました。
5)民生用ドローンの爆発的普及(2010年代以降)
軍用領域を除くと、一般的な民生向けドローンとして認知され普及に貢献したとされるのは、2010年に発売されたフランス パロット社の「AR.Drone」です。当時のドローンは高価なホビー機の位置づけでしたが、AR.Droneは低価格で撮影用のカメラを搭載し、しかも、Wi-Fiで映像を見ながらドローンの操作を行うことができました。2013年以降はDJI社「Phanton」シリーズが空撮用途の市場を席巻しました。センサ技術、電池、モータがシステムの進化に貢献しました。AIの搭載で自律飛行の性能が向上しています。機体の形状については、マルチロータ方式と言われる、複数のプロペラを有する方式が主流となっています。適用用途は空撮のみならず、測量、点検、農業、物流、防災などの多くの分野で活躍しています。
関係法令
ドローンを含めて、航空機に関連する主な法令は①航空法、②航空法施行令(政令)、③航空法施行規則(省令)です。
① 航空法:
航空機の安全運航、航空交通の秩序維持、航空施設の管理など。ドローンに対しては2015年改正により適用。遠隔操作または自律操縦可能な「無人航空機」を対象。飛行制限空域、目視内飛行の原則、禁止行為(危険物輸送・物件投下など)、機体登録方法(リモートID搭載※3)、操縦者ライセンス(正式名:無人航空機操縦者技能証明)制度など。
電波で識別情報を発信する機能(後述)
② 航空法施行令(政令):
航空法を具体的に実施するための細目を規程。ドローンの対象重量は重量100g以上(本体およびバッテリの重量合算)です。飛行の高度、空域に関する制限。飛行の方法(目視飛行、夜間飛行等)。許可・承認手続きの細目。人口集中地区上空などでの制限、高度150m以上の空域禁止など。なお、ゴム動力模型機、重量(機体本体とバッテリ)100g未満のものは、無人航空機ではなく、「模型航空機」に分類され、無人航空機の飛行に関するルールは適用されませんが、空港周辺や高度によっては航空法施行規則(国土交通省令)による規定が適用されます。
③ 航空法施行規則(省令):
航空法および航空法施行令を実施するために、国土交通省令として、さらに具体的な運用方法、手続きを規定。飛行許可申請の書式や手続き、機体の登録記号の表示方法。飛行前確認や飲酒時の禁止など。
航空法以外にも、ドローンを運用するために複数の法令が関係します。また、地方公共団体が定める条例等の遵守が求められます。
- 電波法:ドローンの通信に使う無線機器の利用規制(技適マークが必須)。
- 道路交通法:道路上での離着陸や飛行に関する規制。
- 民法:他人の土地上空を飛行する場合の権利関係。
- 個人情報保護法:カメラ搭載ドローンによる撮影でのプライバシー保護。
- 小型無人機等飛行禁止法:国会議事堂、皇居、首相官邸、原発などの重要施設周辺での飛行禁止(おおむね300m)。本法では200g未満の機体も対象。
- 電気事業法・港湾法など:インフラ施設周辺での飛行規制。
なお、上記法令の記述は概要であって各法令の条項を網羅していません。また、記述した事項の前後関係も考慮していません。詳細については、法令検索(e-GOV)でご覧ください。
ドローンに関する総合的な情報や個別のルール等については、国土交通省のサイトをご覧ください。
- 総合窓口サイト:無人航空機に関する各制度を平易に解説
- 無人機登録ポータルサイト:無人機の登録について解説
- 飛行許可、承認ポータルサイト:飛行許可・承認申請について解説
- レベル4飛行ポータルサイト:レベル4飛行について解説
- 無人航空機の飛行ルール:飛行ルールについて解説
各種法令に則って、無人航空機に関する飛行マニュアルを国土交通省が公開しています。https://www.mlit.go.jp/common/001218180.pdf
ドローン飛行のポイント
ドローンを飛行するうえで、ポイントとなる事項について解説します。
1) 飛行カテゴリー
飛行カテゴリーとは無人航空機の飛行形態をリスクの程度に応じて分類したものです。リスクに応じてカテゴリーⅠからⅢに分類され、各種手続きの内容が異なります。もっとも厳しい位置づけはカテゴリーⅢです。
- カテゴリーⅢ:無人航空機の飛行経路下において立入管理措置※4を講じないで行う飛行。(=第三者の上空で特定飛行を行う)。
- カテゴリーⅡ:無人航空機の飛行経路下において立入管理措置を講じたうえで行う飛行。(=第三者の上空を飛行しない)
- カテゴリーⅠ:特定飛行に該当しない飛行。安全な場所で目視内。航空法上の飛行許可、承認手続きは不要。
無人航空機の飛行経路下において、第三者(無人航空機を飛行させる者およびこれを補助する者以外の者)の立入りを制限すること。
飛行カテゴリーの決定は図5のフローとなります。カテゴリーⅡにおいては、条件により許可、承認が不要となる飛行があります。
出典:国土交通省が公開している資料を抜粋して作成
2) 特定飛行
航空法の規制対象となる空域や方法で無人航空機を飛行させることを「特定飛行」と呼びます。図6の(A)から(D)が該当し、飛行許可が必要となります。緊急用務空域(C)の指定は、2025年12月11日時点でありませんが、直近の指定は大分県大分市で発生した火災です(2025年12月4日に指定解除)。規制対象以外の空域で飛行させる場合は、飛行許可の申請は無用です。
- 地表または水面から150m以上の高さ空域(BおよびC以外の空域ならびに地上水上から30m以内の空域を除く)。
- 空港周辺の空域。主要8空港およびその他空港やヘリポート等の条件あり。
- 緊急用務空域。緊急用務(山火事等)を行う航空機の飛行の安全を確保するため。100g以上のドローンに限らず、すべての機体が対象。
国土交通省航空局のサイトや航空局Xで指定が公示、解除されます。 - 人口集中地区(DID:Densely Inhabited District)の上空。国勢調査でも設定されている区分。(A)の要件である150mの根拠は「航空法」で定められている航空機の最低安全高度の基本要件である「地上から150m以上の高さで飛びましょう」です。つまり、150mより低い高度に、航空機が入ってくることはないからです。該当空域は次のサイトをご覧ください。https://www.gsi.go.jp/chizujoho/h27did.html
出典:国土交通省「無人航空機(ドローン、ラジコン機等)の安全な飛行のためのガイドラインを抜粋して作成
特定飛行の事例は図7となります。ドローンを飛行させる場合は特定飛行に該当します。
出典:国土交通省が公開している資料を抜粋して作成
3) 飛行レベル
飛行カテゴリーは飛行する際のリスクに応じて区分されるのに対して、「飛行レベル」は「どのような機体をどのように飛ばすか」について、技術的に区分することです。なお、「飛行レベル」は法令で直接定められていませんが、航空法の規制や運用ルールを分かりやすく整理、解説するために国土交通省が各種の公開情報の中で使用しています。表1は飛行レベル1から4の概要です。レベル1は目視内で許可が不要な、趣味で飛行させる場合です。レベル4は最上位の区分で、2022年の法改正で定められました。要件が厳しくなっています。飛行カテゴリーを区分する要件である「立入管理措置」によって、カテゴリーⅠとⅡ、Ⅲが区分されますが、飛行レベルに当てはめると、レベル2と3とでわかれます。
| レベル | 飛行形態 | 飛行場所 | 求められる対応 | 主な用途の例 |
|---|---|---|---|---|
| レベル1 | 目視内飛行 | 許可不要空域 | 通常の安全対策 | 空撮、趣味、農薬散布(目視内) |
| レベル2 | 目視内飛行 | 有人地帯 | 特定飛行の許可・承認 | イベント会場上空、都市部施設点検、測量 |
| レベル3 | 目視外飛行 | 無人地帯 | 立入管理措置(補助者配置等) | 自動農薬散布、山間部インフラ点検・巡視 |
| レベル3.5 | 目視外飛行 | 無人地帯 | 国家資格、機上カメラ監視で立入管理措置が不要 | 過疎地配送、巡回監視、インフラ点検、防災 |
| レベル4 | 目視外飛行 | 有人地帯 | 国家資格(一等操縦士)、第一種機体認証 | 都市部でのドローン配送、第三者上空飛行 |
4) 多数機同時運航
ドローンの多数機同時運航は、身近な事例として、花火大会や大阪・関西万博が挙げられますが、法令上の個別条文は成立していません。既存のルールの中で、飛行カテゴリーⅡ、Ⅲのもと、事前に飛行許可を申請し承認を得て実施されました。多数機同時運航は、作業効率の向上や新たなビジネスの創出につながることが期待されています。現行法は多数機同時運航を明示的に定めていませんが、安全運航の指針として、国土交通省は2025年3月に「無人航空機の多数機同時運航を安全に行うためのガイドライン(第一版)」を発行しました。
https://www.mlit.go.jp/koku/content/001880139.pdf
ドローン技能試験
2022年12月から、ドローン操縦に関する国家資格制度が開始されました。正式名称は「無人航空機操縦者技能証明制度」です。無人航空機を飛行させるのに必要な知識および能力を保有することを証明する資格制度です。「無人航空機操縦者技能証明制度」のチラシは図8です。
出典:国土交通省が公開している資料
「無人航空機操縦者技能証明」に関する法体系は図8です。航空法の配下に「航空法施行規則」を始め、関連法令が規定されています。資格制度に関する詳細については、国土交通省のサイトをご覧ください。https://www.mlit.go.jp/koku/license.html
なお、前述の飛行許可等で解説した通り、「無人航空機操縦者技能証明」を取得することは、すべての無人航空機の飛行において必須要件ではありません。
出典:国土交通省が公開している資料
ドローンに関する民間資格を発行している団体が複数存在します。例えば、JUIDA(一般社団法人日本UAS産業振興協議会)、DPA(ドローン操縦士協会)です。国土交通省 航空局のホームページに掲載する講習団体(いわゆるHP掲載講習団体)が発行する民間資格は、飛行許可申請を行う際に必要な「操縦者の技能証明」として利用することができましたが、2025年12月4日までで終了となりました。なお、登録講習機関で得た民間資格は、国家資格取得で免除される事項があります。農薬散布用ドローンを購入し運用する場合は、機体を製造・販売するメーカの講習を修了(=メーカのライセンス取得する)ことが一般的なようです。飛行の態様、カテゴリー、機体認証と操縦士資格との関係は表2です。
| 飛行の態様 | 人口集中地区以外で 日中・目視内飛行 |
立入管理区画上空飛行 (第三者上空以外) |
第三者上空飛行 |
| 特定飛行 該否 | 該当せず | 該当 | |
| カテゴリー | Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ |
| 機体認証 | 不要 | 第二種 | 第一種 |
| 操縦士資格 | 不要 | 二等 | 一等 |
| 飛行に必要な手続き等 | 手続き等不要で飛行可能 | 〇 空港周辺、高度150m以上、イベント上空、危険物輸送、物件投下又は一定の重量(25kg)以上の機体を飛行させる場合は「飛行毎の国の許可・承認」も追加で必要 又は 〇 飛行毎の国の許可・承認の取得により飛行可能 |
〇 飛行毎の国の許可・承認の取得の全ての手続きがそろって飛行可能 |
国家試験(無人航空機操縦士技能証明)は一等と二等の二種類があります。飛行に必要な知識と操縦技能を証明するものです。学科試験、実地試験、身体検査に合格する必要があります。操縦士試験の概要は表3です。詳細は、国土交通省のサイトをご覧ください。
https://www.mlit.go.jp/koku/license.html
| 項目 | 一等無人航空機操縦士 | 二等無人航空機操縦士 | |
|---|---|---|---|
| 学科試験 | 試験方式 | CBT(コンピュータ試験) | CBT(コンピュータ試験) |
| 主な出題分野 | 航空法、関係法令 無人航空機の構造、性能 気象 運航管理、リスク管理 安全確保、事故対応 |
航空法、関係法令 無人航空機の構造、性能 気象 安全運航の基礎 |
|
| 難易度の位置づけ | 高い(有人航空に近い運航概念・管理能力を問う) | 基礎〜実務レベル | |
| 飛行レベル | レベル4飛行(第三者上空)を含む運航 | レベル1〜3飛行 | |
| 教則との関係 | 「無人航空機の飛行の安全に関する教則」全般+高度な運航理解 | 教則の基礎〜標準範囲 | |
| 実地試験 | 試験構成 | 実技試験+口述(状況判断) | 実技試験+口述(基礎確認) |
| 飛行内容 | 精密な離着陸 異常時対応 高度な機体制御 |
基本的な離着陸 安定飛行 安全確認 |
|
| 評価観点 | 操縦技能+運航管理能力+判断力 | 基本操縦技能+安全意識 | |
| 飛行環境想定 | 複雑な運航環境、第三者上空を想定 | 比較的単純な環境 | |
| 実務レベル | 業務、事業運航を主導できるレベル | 補助的、限定的な業務運航 | |
| 身体検査 | 視力 | 両眼、片眼とも一定基準以上(矯正可) | 同左(基準は一等より緩やか) |
| 色覚 | 業務に支障がないこと | 同左 | |
| 聴力 | 通常の会話・警報音の認識が可能 | 同左 | |
| 身体機能 | 操縦、緊急対応に支障がないこと | 基本操作に支障がないこと | |
| 判定方法 | 医師の診断書 または 指定方法 | 医師の診断書 または 指定方法 | |
| 厳格さ | 航空従事者に近い考え方 | 一等より緩やか |
1) 学科試験
学科試験は無人航空機を飛行させるのに必要な最低限の知識を問う三肢択一式の試験です。コンピュータを用いた CBT(Computer Based Testing)方式により実施され、全国各都道府県の会場で受験が可能です。試験は一等無人航空機操縦士と二等無人航空機操縦士の区分があり、学科の出題科目は、無人航空機に関する規則、無人航空機のシステム、無人航空機の操縦者及び運航体制、運航上のリスク管理です。学科試験の内容は国土交通省が公開している「無人航空機の飛行の安全に関する教則(第4版:2025年2月1日発行)」に準拠します。
2) 実地試験
実地試験は机上試験、口述試験、実技試験から構成されます。具体的な試験は、指定試験機関での実地試験もしくは、国土交通省登録講習機関(ドローンスクール)で所定の講習と修了審査に合格することで実地試験免除の選択が可能です。これにより、指定試験機関での実技試験が不要となり、学科試験と身体検査のみで技能証明が取得できますが、スクール費用は別途かかります。実技試験は、実際にドローンを操縦して、能力が評価されます。基本の試験内容は表4です。
| 機種 | 区分 | 科目 | 制限時間 | 位置安定機能 | 屋外/屋内 |
|---|---|---|---|---|---|
| マルチロータ | 一等 | ① 高度変化を伴うスクエア飛行 | 6分 | オフ | 屋外 |
| ② ピルエットホバリング | 3分 | ||||
| ③ 緊急着陸を伴う8の字飛行 | 5分 | ||||
| 二等 | ① スクエア飛行 | 8分 | オン | 屋外/屋内 | |
| ② 8の字飛行 | 8分 | ||||
| ③ 異常事態における飛行 | 6分 | オフ | |||
| ヘリコプタ | 一等 | ① 高度変化を伴うスクエア飛行 | 8分 | オフ | 屋外 |
| ② 円周飛行 | 10分 | ||||
| ③ 高高度飛行 | 15分 | ||||
| 二等 | ① スクエア飛行 | 8分 | オン | 屋外/屋内 | |
| ② 円周飛行 | 10分 | ||||
| ③ 異常事態における飛行 | 5分 | オフ | |||
| 飛行機 | 一等 | ① 周回飛行 | 10分 | オフ | 屋外 |
| ② 緊急着陸を伴う8の字飛行 | 10分 | ||||
| 二等 | ① 周回飛行 | 15分 | オン | ||
| ② 8の字飛行 | 15分 |
3) 身体検査(視力などの適性検査)
一等操縦士の最大離陸重量25kg以上と、一等操縦士の最大離陸重量25kg未満及び二等操縦士とでは求められる基準が異なっています。一等操縦士の最大離陸重量25kg以上では、航空機の身体検査基準に準じた基準とされており、医師の作成した無人航空機操縦者身体検査証明書等が必要となります。一等操縦士の最大離陸重量25kg未満及び二等では、自動車の運転免許に必要とされる適性検査基準と同等の基準とされていることから、自動車運転免許証の写しを提出することで受検できます。図10は無人航空機操縦者身体検査証明書の様式例です。
DIPS2.0
DIPS2.0とは、国土交通省が提供しているドローンに関する各種手続きをオンラインで行うためのシステム「ドローン情報基盤システム2.0」の略称です。①無人航空機の登録申請、②機体認証の取得申請、③技能証明の取得申請、④飛行許可・承認申請、⑤飛行計画の通報・確認、⑥事故等報告などの手続きを1つのシステムで完結できます。
① 無人航空機の登録申請:
100g 以上の機体が航空法の規制対象です。所有者および使用者の氏名、住所など情報、機体の製造者や型式などの情報を記入して申請します。登録されていない無人航空機を飛行させることはできません。申請した機体の登録記号が発番されたら、機体への登録記号の表示に加え、リモートID機能※5を搭載しなければなりません。図11はリモートIDの運用イメージです。
リモートIDとは航空法の規定により、登録を受けた無人航空機には、無人航空機の登録番号を遠隔から識別するための機能であるリモートIDを備え、作動させなければならない。ただし、搭載義務の適用は除外される要件が定められている。
出典:内閣官房小型無人機等対策推進室「リモートIDの導入について」を抜粋して作成
リモートID機能で発信される情報は、「製造番号、登録番号、位置、速度、高度、時刻」となっており、個人情報は発信されません。詳細な要件は、国土交通省が公開している資料をご覧ください。https://www.mlit.go.jp/koku/content/001444589.pdf
適合しているとして届出があったリモートID機器等の一覧は次のサイトで閲覧できます。
https://www.mlit.go.jp/koku/content/001484158.pdf(2024年12月5日時点)
② 機体認証の取得申請
第三者上空を補助者なしで目視外飛行を行う場合や一部の特定飛行で許可、承認不要とするためには、「機体認証」※6を受けた無人航空機を、技能証明を受けた操縦者が飛行させる必要があります。事前に「無人航空機の登録」が必要です。国または登録検査機関により検査を行い、合格すると機体確認書が発行されます。
特定飛行を行うことを目的とする無人航空機の強度、構造及び性能について、設計、製造過程及び現状が安全基準に適合するか検査し、安全性を確保するための認証制度。認証の種別は第一種機体認証と第二種機体認証がある。
| 認証種別 | 対象飛行 | 認証主体 | 安全要件 | 有効期間 | 必要資格 | 対応カテゴリー | 対応レベル | メリット |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 第一種機体認証 | 第三者上空を含む高リスク飛行(レベル4、カテゴリーⅢ) | 国土交通省 | 衝突回避機能、フェイルセーフ、通信途絶時自動帰還、冗長化、安全装置 | 1年 | 一等無人航空機操縦士 | カテゴリーⅢ | レベル4 | 都市部や第三者上空での目視外飛行が許可不要(条件付き) |
| 第二種機体認証 | 無人地帯で補助者なし目視外飛行(レベル3.5、カテゴリーⅡ) | 登録検査機関 | 基本フェイルセーフ、通信途絶時安全措置、機体強度確認 | 3年 | 二等無人航空機操縦士 | カテゴリーⅡ | レベル3.5 | 夜間飛行や人口集中地区での目視外飛行が許可不要(条件付き) |
メーカ製の量産モデルを事前に認証を受ける認証は「型式認証」として扱います。設計及び製造過程が安全基準及び均一性基準に適合するか検査し、安全性と均一性を確保するための認証制度です。型式認証を取得している無人航空機一覧は国土交通省のサイトで閲覧できます。
https://www.mlit.go.jp/koku/content/001910820.pdf(2025年9月12日時点)
③ 技能証明の取得申請
第三者上空を補助者なしで目視外飛行を行う場合や一部の特定飛行で許可、承認不要とするためには、機体認証を受けた無人航空機を、技能証明を受けた操縦者が飛行させる必要があります。
④ 飛行許可・承認申請
特定飛行を行う場合は、事前に飛行の許可・承認を受ける必要があります。
⑤ 飛行計画の通報・確認
無人航空機を飛行させる前にあらかじめ、他の無人航空機の飛行計画や飛行禁止空域等の確認を行うとともに、自らの飛行計画(日時、経路など)を通報する必要があります。
⑥ 事故等報告
事故等が発生した際、操縦者が国土交通大臣に事故等の内容(日時、場所など)の報告を行う必要があります。事故や重大インシデントの事例は次の通りです。
「事故」:無人航空機による人の死傷(重傷以上の場合)、第三者の所有する物件の損壊、航空機との衝突又は接触
「重大インシデント」:航空機との衝突又は接触のおそれがあったと認められるもの、無人航空機による人の負傷(軽傷の場合)、無人航空機の制御が不能となった事態、無人航空機が発火した事態(飛行中に発生したものに限る)。
なお、事故等の報告をしない、または虚偽の報告、負傷者の救護などを講じない場合は、罰金や懲役刑が科せられます。
ドローンの機体
1) ドローンの基本形
ドローンの機体を構造の観点で分類すると、①マルチロータ、②固定翼、③垂直離着陸、④シングルロータです。
① マルチロータ
最も一般的な構造です。複数のプロペラで上昇・下降、旋回が可能です。基本構造と構成部品は図12です。
② 固定翼
飛行機と類似の機体形状です。
③ 垂直離着陸型
VTOL(Vertical Takeoff and Landing)型固定翼ドローンです。マルチロータと固定翼機の機能を備えています。狭い場所での離着陸ができる一方、飛行機のように高速で飛行できます。なお、操縦士技能証明には「マルチロータ」と「飛行機」の両方の資格取得が必要とされています。
④ シングルロータ型
いわゆるヘリコプタ型の機体です。
2) 特殊なドローン
① 軍用ドローン
軍用ドローンの機体はメディア等で紹介されています。図16は軍用ドローンの例です。
② 水中ドローン
水中ドローンは、水中を潜航できる無人潜水機の通称です。水中ドローンの方式は、①AUV(Autonomous Underwater Vehicle):自律型水中潜水機、②ROV(Remotely Operated Vehicle):遠隔操作型水中潜水機に分けられます。カメラや各種センサを搭載し、船上や陸上から遠隔操作で操縦し、水中の映像撮影や調査、作業を行うことができます。潜水士が行うには危険が伴う場所や狭い場所での調査、救助活動、さらに、インフラ点検や水産業など多くの分野で活用が進んでいます。操縦手法は、有線によるものが主流ですが、光による通信技術、音波を使った音響通信技術などが開発されています。水中ドローンに関する直接的な単独法は存在しませんが、関連する法令、例えば、港則法(こうそくほう)、海上交通保安法、漁業法、河川法、ダム・貯水池管理規定、環境・文化財関連法令などの適合が求められます。
水中ドローンに関する取り組み状況等については、関係団体のサイトをご覧ください。
一般社団法人 日本水中ドローン協会 https://japan-underwaterdrone.com/
特定非営利活動法人(NPO)日本水中ロボネット https://underwaterrobonet.org/
ドローンビジネス
ドローンは「空の産業革命」と称されている通り、官民を挙げた活動が推進されています。平成2015年から「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」を設置し、議論が進められています。政府側17組織、民間側44組織。図16は政府および民間の構成員です(2025年5月時点)。
出典:経済産業省が公開した資料を抜粋して作成
また、経済産業省と国土交通省とが中心となり、内閣官房が改定、発行している「空の産業革命に向けたロードマップ」は2021年5月に初めて作成され、その後、改定が続いています。最新版は「空の産業革命に向けたロードマップ2024」です。大きな柱は、①社会実装、②環境整備、③技術開発です。図19は2024年以降の全体像です。
出典:内閣官房が公開している資料を抜粋して作成
① 社会実装
ドローンの活用を広げるため、ドローン物流事業の拡大を始め、様々な分野での利活用拡大に向けた支援。災害対応でのドローン活用の推進
② 環境整備
ドローンに関する制度、ルール、インフラを整備するため、プロバイダ認定、操縦ライセンス制度の迅速化、型式認証の取得促進
③ 技術開発
安全で高度な運航を可能にするため、機体、ポート等の技術開発支援。運行管理技術開発。
関連計測器の紹介
ドローンに関連した計測器の一例を紹介します。
その他の製品や仕様については計測器情報ページ から検索してください。
おわりに
ドローンは「空の産業革命」と言われています。従来の空撮用途である「空飛ぶカメラ」から「空中のモビィティ」として、インフラ点検、環境観測、物流、防災、農業、医療、移動など多岐にわたる展開が想定されています。今後もさらなる技術進化やサービスの発展に期待しましょう。
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