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課題解決 ~ 品質向上に近道はない ~

 「課題解決」のキーワードから何を連想するでしょうか。まさに今抱えている問題への対応について思いを巡らすでしょうか。それとも、将来に発生するかもしれない事象を想像するでしょうか。何れの課題への対応は「なぜ」と思う疑問から始まると言っても過言でないでしょう。本稿では、「なぜ」と「課題解決」とにフォーカスし、関連する各種の手法について概説します。先ず、人類がこれまでたどってきた主な行動を文化や技術の進化に沿った「課題解決」の歴史を紹介します。その後に、主な課題解決に関連する手法が導入された背景や概要について解説します。最後に、課題解決に関連した計測器の例を示します。

《本稿の記述は、筆者の知見による解釈や、主観的な取り上げ方の面もあることをご容赦ください。また、記載されている技術情報は、当社および第三者の知的財産権他の権利に対する保証または実施権を許諾するものではありません。》

課題解決の歴史

課題解決の歴史は、大きくとらえると人類の進化と関係していると思われます。世界各地の文化や技術の進展に差はあっても、常に社会課題に取り組んだ人類の成果だと言えます。以下、時代とともに変化してきた課題解決の取組みについて概説します。

  1. 紀元前(古代文明)時代
    農耕や灌漑(かんがい)、道具や建造物は、長年の経験を積み重ねて、より良い物へ改良されました。天文学や測量技術については理論的な創出ではなく、経験が生かされたと推察されます。
  2. 紀元前から紀元後(古代ギリシャ、ローマ)時代
    課題を解決するために、物事を推論する論理学や哲学が発展しました。よって、科学や数学が体系的に確立されました。例として、アルキメデスによる「てこの原理」や「浮力」、ユークリッドによる「幾何学」が挙げられます。高名な哲学者は、ソクラテス、プラトン、アリストテレスです。エウクレイデスの幾何学は構造物設計に応用されました。
  3. 14世紀から17世紀初期
    ルネサンス期と呼ばれる時代に観察と実験に基づく科学の基礎が確立しました。天文学や工学、医学など多くの分野で理論が提唱されました。主な科学者として、地動説を提唱したコペルニクス、天文学のガリレオ・ガリレイ、多くの分野で貢献したダビンチなどを選出できます。
  4. 17世紀から18世紀
    近代科学を創出した時代とも言われ、多くの方法論が提唱されました。力学を確立したニュートン、バネ理論のフック、化学分野のボイル、数学のデカルトなどが挙げられます。
  5. 産業革命
    大量生産と効率化につながる技術革新と課題解決が発展した時代です。蒸気機関の開発による鉄道の発展や工場の動力確保、フォードで採用された流れ作業による自動車の生産などが主な例です。
  6. 20世紀前半
    課題解決へのアプローチとして、経営学や管理学が取り入れられました。フレデリックテイラ(米国)は「科学的管理法」を提唱しました。労働の効率化を科学的に改善する手法で、マネジメントの原点と評価されています。プロジェクトの管理手法として一般的に採用されている、ガントチャート(進捗管理の見える化手法)やアローダイヤグラム(後述)はこの時期に考案されました。
  7. 20世紀後半から現在
    課題全体を俯瞰するアプローチや課題解決手法が考案されました。生産領域ではトヨタ生産方式、課題分析手法としては、PDCAサイクル、「なぜ」を5回繰り返す手法「なぜなぜ分析」が挙げられます。最近では、ビックデータやAIを活用した課題解決手法が導入されています。課題解決手法には、具体的なプロセスや枠組みを提供し、問題を体系的に分析・解決するための手法が多く存在します。
  8. 今後
    AIなどを適用した新たな課題解決手法が考案されるでしょう。

改題解決の手法

課題解決に関連する主要な手法を紹介します。なお、本稿では、概要の説明にとどめています。具体的な手法や実施方法については、各種の書物等をご覧ください。

1) FMEA

FMEAは Failure Mode and Effects Analysis(故障モードと影響分析)の略で、製品や製造プロセスの故障や不具合の防止を目的とし、「故障モード」を起点にして、製品の潜在的な故障を体系的に分析した後に、「故障や不具合」の影響や発生要因を特定し、問題が発生する前に対策を講じる方策です。FMEAの種類としては、製品の設計における「設計FMEA」、製造プロセスにおける「プロセスFMEA」などが適用されています。自動車業界では一般的に実施されています。国際規格(IEC 60812)やJIS(JIS C 5750-4-3)で規格化されています。品質管理規定 IATF16949、ISO9001などでは、コアツールとして推奨されています。

FMEAの生い立ちは1940年代の米国軍にさかのぼります。当時は、まだ体系化された手法ではなく、軍用装備の設計や製造において、故障を未然に防ぐ方策として運用されていました。FMEAの考え方はこの時に確立されたようです。1960年代になると、NASA(National Aeronautics and Space Administration:航空宇宙局)のアポロ計画時に体系化されたFMEAが運用され、効果が認知されました。1970年代には米国の自動車産業において、広く採用され、日本にも導入されました。1980年代以降、FMEAは標準化され、自動車業界では国際的な基準となりました。その後、自動車業界だけでなく、医療機器や航空宇宙産業など多くの産業界で適用されてきました。AIAG(Automotive Industry Action Group)とVDA(ドイツ自動車工業会)とで策定したFMEAハンドブックが公開されています。現時点、多くのOEMやサプライヤが、このハンドブックを受け入れています。詳細はAIAGのサイトをご覧ください。https://www.aiag.org/quality/quality-core-tools/fmea日本規格協会はAIAGの認定パートナです。

FMEAの基本的な手順は次の通りです。表1はFMEAシートの例です。

  1. 対象の選定
    分析対象の製品やプロセスを明確化する。
  2. 故障モードの特定
    潜在的な故障モード(どのように失敗するか)をリストアップする。
  3. 影響の分析
    故障が発生した場合、どのような影響があるかを評価する。
  4. 原因の特定
    故障が起こる原因(工程の問題、設計ミスなど)を特定する。
  5. リスク優先度数(RPN : Risk Priority Number)の計算
    RPN = 発生頻度 × 影響度 × 検出可能性。RPNの大きさにより、リスクの優先順位を決定する。
    発生頻度(Occurrence): 故障がどれだけの頻度で起こるのか。
    影響度(Severity): 故障が起こった場合の影響の大きさは。
    検出可能性(Detection): 故障をどれだけ検出しやすいか
  6. 対策の立案と実施
    RPNが高い項目に対して予防策や是正措置を決定する
  7. フォローアップ
    対策の効果を確認し、必要に応じて追加の対応を実施する。
表1 FMEAシートの例
FMEAの対象 故障の内容 故障の影響度 対策
機能 部品 部品の特性 故障モード 推定原因 故障の頻度 影響度 検知度 RPN 大作内容 日程など
                     
                     

2) DRBFM

DRBFMは Design Review Based on Failure Modeの略です。訳すと「故障モードに基づく設計審査」でしょうか。Design Reviewは設計レビュやDRとも呼称されますが、「単なる審査」ではなく、「設計の考え方や多面的な議論」と受け止めることが正しい解釈です。設計変更や条件変更などの変化点に着目して、その影響による課題の発生を未然に防ぐことを目的とします。FMEAは体系的にリスクを洗い出して対策を検討する手法ですが、DRBFMは「変化点」にフォーカスして議論を掘り下げ、課題の発生を防ぐことが特徴です。DRBFMは1980年代にトヨタ自動車が独自に考案した手法とされています。SAE(Society of Automotive Engineer:米国自動車技術会)でも規格化(SAE J2886)されています。

FMEAとDRBFMとの比較は表2となります。両手法を併用する場合もあります。FMEAで全体を俯瞰してリスクを洗い出し、さらに変化点をDRBFMでリスクをより深堀する進め方を推奨します。

表2 FMEAとDRBFMとの比較
項目 FMEA DRBFM
目的 故障モードを特定し、予防策を立てる。 変更によるリスクを議論し対策する。
進め方 リスクを点数化(RPN: リスク優先度数)し、重要度に基づいて優先順位をつける。 議論を通じて「変更点」に関連する潜在的問題を検討する。
対象範囲 製品やプロセス全体。 設計変更点および関連部分。
実施タイミング 設計段階の初期やプロセス開発時。 設計や仕様変更が発生した場合。
主な視点 故障モードとその影響、および発生可能性。 「変更する理由目的」「どこに影響が出るのか」を議論する。

3) FTA

FTAはFault Tree Analysis(故障の木分析)の略です。製品の故障、あるいは課題を起点として発生した原因を分析する手法です。1960年代に米国ベル研究所で開発され、米国ボーイング社により育成されました。1990年にIEC 61025として国際規格になりました。JISでは C 5750-4-4として規格化されています。FTAでは、製品の故障や課題を仮定し、考えられる要因を発生確率とともに故障の木図(FT図と呼称)で表し分析します。FMEAとは逆のアプローチと言えます。製品で発生する故障や課題を上位とし、下位の要因へトップダウン的に展開します。製品の故障発生確率は、FT図に示された要因の事象をプール代数的に算出することができます。 図1はFT図の例です。左図は事例の回路、右図はFT図です。

図1 FT図の例
図1 FT図の例

4) QC七つ道具

「QC」とは「Quality Control」の略で「品質管理」を意味します。「QC七つ道具」の体系化に影響を与えたのは、東京大学教授、武蔵工業大学(現 東京都市大学)学長などを歴任された石川馨(いしかわ かおる)氏です。後述する、「特性要因図」の発案者でもあります。「七つ道具」の由来は諸説あるようですが、俗説の「弁慶の七つ道具」になぞらえたと言われています。なお、弁慶が持つとされる「七つの道具」は古文献での種類や数は一定でないようです。

QC七つ道具は、①パレート図、②特性要因図、③ヒストグラム、④管理図、⑤グラフ、⑥チェックシート、⑦散布図、⑧層別ですが、④管理図と⑤グラフを一つとして扱い、合計七つの手法です。

① パレート図(Pareto Diagram)

パレート図は、課題事項別に層別して、出現頻度の大きさの順に並べるとともに、累積和※1を示した図です。 課題事項の全体におよぼす影響の確認や改善による効果の確認に使用されます。多数の些細な項目ではなく、重要な項目が明確になり、対策を重点化することができます。パレート図の基本型は、経済学者のパレート(イタリア)が考案しました。その後、改良がなされ、現在のパレート図となりました。パレートは「パレートの法則」を提唱しました。この法則は、「80:20の法則」とも言われ、「全体の大部分は少数を構成する要素が生み出している。」としていることです。なお、この法則の数値は厳密ではなく象徴的なことであると理解してください。パレート図の適用例として、製品の不良原因の割合を分析する場合などに適用されます。

※1

データの各要素を順番に加算して得られる数値

図2 パレート図のイメージ
図2 パレート図のイメージ

② 特性要因図(Cause-and-Effect Diagram)

課題の原因と結果を整理して、全体像を階層的に示し分析する手法です。魚の骨のように構成されることから、魚の骨(フィッシュボーンダイアグラム)とも呼ばれます。特性要因図の用途は広く、品質問題の課題分析だけでなく、設計部門、営業部門、間接部門など、広い分野に適用できます。図3は特性要因図のイメージです。魚の頭の部分に課題事項を置き、骨の部分に関連する要因を表し、根本原因を見出すまで続けます。

図3 特性要因図のイメージ
図3 特性要因図のイメージ

③ ヒストグラム(Histogram)

製品を製造する工程で、同じ設備や材料を使って、同じ作業手順で製造しても、できた製品には色々な特性に「ばらつき」が生じます。例えば、寸法、重量などです。このような「ばらつき」がどのように「分布」しているかを可視化する手法として「ヒストグラム」が適用されます。データの分布やばらつきを視覚化するための棒グラフで表現します。ヒストグラムを作成すると、図5のような特徴を示します。「ばらつき」や「かたより」から要因を推定する情報となります。

図4 ヒストグラムのイメージ
図4 ヒストグラムのイメージ
図5 ヒストグラムの種類
図5 ヒストグラムの種類

④ 管理図(Control Chart)

時系列データをグラフ化し、プロセスの安定性が管理されている状態かどうかを判断するための手法です。経済学者シューハート(米国)によって考案されました。管理図の基本構成は、中心線(CL:Center Line)、上方管理限界線(UCL:Upper Control Line)、下方限界線(LCL:Lower Control Line)です。異常なデータの変動を特定し、原因を究明する対象とします。例えば、プロットしたデータが管理限界値を超える、データの時系列が連続して特定の方向へ動く、データが特定の範囲に集中する、データの変動が周期性を示す、などの変化があると、異常が発生した可能性があることを認識できます。

管理図は、測定データの種類に応じて使い分けられます。

  • x – R管理図:
    データ群の平均値をグラフ化した¯x管理図とデータ群の範囲をグラフ化したR管理図とを組み合わせて同時に見られるようにする。
  • x管理図:
    個々のデータをプロットして管理する。
  • p管理図:
    不良品の割合を用いた管理図です。
  • c管理図:
    c管理図はp管理図と異なり、各ロットに含まれる欠陥数を用います。プリント配線板の不良を管理する場合など、欠陥の範囲が定まっている場合などに適しています。
  • u管理図:
    cは欠陥数を扱いますが、u管理図は欠陥率を扱います。欠陥の範囲が一定でない場合などに適用されます。
図6 管理図のイメージ
図6 管理図のイメージ

⑤ グラフ(Graph)

グラフとは取得したデータの集まりを、判りやすくするために図で示す手法です。データを可視化することで、数字の大小や変化などを早く読み取ることに役立ちます。その他にも、目視による直感のし易さや訴求性の高まり、データを読むことからの労力軽減等メリットがあります。グラフの種類としては、「棒グラフ」、「折れ線グラフ」、「円グラフ」、「帯グラフ」、「Zグラフ」、「レーダーチャート」などがあります。

図7 グラフの例
図7 グラフの例

⑥ チェックシート(Check Sheet)

データを収集する際、データが簡単に取れ、そのデータが整理しやすいように、分類した項目の点検やデータ取得を漏れなくチェックできるよう予め設定したシート(様式)のことです。使用目的にあうように工夫して作成されます。一般的には2種類のチェックシートが運用されています。グラフ化する目的や用途に応じて、グラフの種類を選択しましょう。

  • 記録用チェックシート:
    データを取得する際、データ項目の記録漏れや解析しやすいようにする形式のチェックシートです。
表3 データ記録用チェックシートの例
不良項目 1月20日(月) 1月21日(火) 1月22日(水) 1月23日(木) 1月24日(金)
寸法不良 //// //// // /// // 16
ひずみ //// //// // //// /   / 18
キズ   /// //   / 6
凸凹 //// /   /   6
汚れ // /// / // / 9
その他 / // / /// /// 10
15 21 12 9 8 65
  • 点検用チェックシート:
    製品の検査項目、設備の点検、安全確認など検査や点検の漏れを防止するために適用されます。
図8 点検用チェックシートの例
図8 点検用チェックシートの例

⑦ 散布図(Scatter Diagram)

対になった 2つの変数間の関係(相関)をx軸とy軸とにプロットしてグラフ化し、相関関係の有無や度合いを知ることができます。また、プロットした多くの点の集まりから、特に飛んだ点があれば、異常の発生原因を究明するきっかけとなります。図9は散布図のイメージです。実際に作成すると、図10のような相関関係の強さを示す特徴となります。

図9 散布図の例
図9 散布図の例
図10 散布図における相関の度合い
図10 散布図における相関の度合い

⑧ 層別(Stratification)

層別とは取得したデータの特徴を何らかの特徴(=基準)によって分類して分析することにより、全体像では見えない傾向などの課題を抽出することで、異なる条件の影響を明確にする手法です。多くのデータを細かい小グループに分けることで、課題解決のヒントが得られます。層別する主な観点としては、時間(日時、季節など)、場所(製造ライン、拠点など)、人(作業者、チームなど)、材料(材料のロットなど)、製品(型番、ロットなど)が挙げられます。層別は製造関連だけでなく、サービス業でも適用できます。単独の手法だけでなく、他の手法、例えばパレート図などを併用することでより明確な課題を把握できます。本稿で解説した①から⑦の手法において、例えば、散布図での各軸の切り口を設定することは、「層別」と言えます。

5) 新QC七つ道具

1960年頃に整理されたQC七つ道具は製造業だけでなく、多くの分野で普及しました。その後、1970年代に入ると、OR(オペレーションズリサーチ)※2やVE(価値工学)などが導入されました。それらの手法の中で、課題解決の手法として取りまとめられた手法が「新七つ道具」です。QC七つ道具と新QC七つ道具との大きな違いは、分析方法が「QC七つ道具は定量的」で、「新QC七つ道具は定性的」なことです。両手法の違いを整理すると表4です。QC七つ道具は、長さや不具合率など数値化できるデータの分析に適用されます。新QC七つ道具は「組立作業がやりづらい」など数値化が難しい定性的な言語データの分析に適しています。新QC七つ道具が適用されるシーンは、問題を把握するために、課題改善活動の初期段階で用いられます。新QC七つ道具は「New seven QC Tools」と英訳されることから「N7」と呼称されることがあります。新QC七つ道具はQC七つ道具を併用することで、幅広い課題解決の対応や効率化が期待できます。

※2

(Operations Research) 複雑な課題を数学や統計学などを用いて体系的に解決する手法。

表4 QC七つ道具と新QC七つ道具との比較
観点 QC七つ道具 新QC七つ道具
分析方法 定量的な数値データの解析 定性的な言語データを整理して可視化
活用シーン 製造現場を中心に活用 設計部門だけでなく、営業などの広い部門で活用
適した課題 客観的な評価を判定 数値化が難しい課題を明確化する
図11 QC七つ道具と新QC七つ道具の処理
図11 QC七つ道具と新QC七つ道具の処理

新七つ道具は①親和図法、②連関図法、③系統図法、④マトリックス図法、⑤アローダイアグラム法、⑥PDPC法、⑦マトリックスデータ解析法です。

① 親和図法(Affinity Diagram)

ある課題に対する事実や意見などを言語データで記述し、得られたデータの「親和性」によって整理して、新たな名前を追加することで、課題の本質を理解する手法です。文化人類学者の川喜多次郎氏(故人)が考案した方法に由来することから、「KJ法」とも呼ばれることがありますが、KJ法はデータの整理で終わるのではなく、新たな「知見」や「アイデア」を発想することが目的です。なお、「KJ法」は株式会社川喜多研究所の登録商標(商標登録第4867036号)です。課題に対する言語データ化は複数人の集団によるブレインストミング※3で実施されます。一般的な手順は、①集めたデータや意見をカードに書き出す。②カードに記述された内容の関連性をまとめてグループ化する。③グループ化されたカード群に共通する事項をラベル化して記述する。④グループ化したラベルの関連性を整理して、課題の全体像を視覚化する。

※3

(brain storming) グループ活動の効果により、一つのことをきっかけとしてアイデアの連鎖を引き起こす手法。自由な発想により、アイデアの量を期待。批判は厳禁。

図12 親和図法のイメージ
図12 親和図法のイメージ

② 連関図法(Relations Diagram)

課題に関する「原因と結果」や「目的と手段」などの関係を理論的に整理することで、絡まった要因を明確化し、課題の本質を絞り込む手法です。

図13 連関図のイメージ
図13 連関図のイメージ

③ 系統図法(Tree Diagram)

「系統図法」は課題解決や目標達成に対する手段を多段階に整理し構造化する手法です。課題や目標を細分化することで、具体的な手段が得られやすくなります。実施する際の基本は、一つの課題や目標に対して複数の階層に展開することです。課題や目標は、他の手法、例えば連関図法を展開して明確化します。図14は系統図の一例です。目標を達成するために二次手段まで展開し、最後は「効果」、「実現性」、「コスト」で総合評価し、採否を決定します。

図14 系統図法のイメージ
図14 系統図法のイメージ

④ マトリックス図法(Matrix Diagram)

明確にしたい目的に対して、多くの情報があるとき、二つの事象で行と列を設定し、事象と事象とが交差する箇所に、記号を記述することで全体像を理解することが可能となります。マトリックス図法には、L型マトリックス図、T型マトリックス図、X型マトリックス図などがあります。

図15 マトリックス図のイメージ
図15 マトリックス図のイメージ
図16 各種のマトリックス図
図16 各種のマトリックス図

⑤ マトリックスデータ解析法(Matrix Data Analysis Method)

多くの変数をマトリックス形式(行列)で整理して、変数間の相関関係や分布の特徴を把握します。図17はマトリックスデータ解析法のイメージです。マトリックス形式への整理は、マトリックス図法などで作成します(左図)。整理したデータを二次元のグラフにプロットします(右図)。得られた分布から変数の相関関係などを分析します。

図17 マトリックスデータ解析法のイメージ
図17 マトリックスデータ解析法のイメージ

⑥ アローダイアグラム法(Arrow Diagram)

プロジェクト管理や作業計画などにおいて、作業の順序関係や必要な日数を図示する手法です。PERT図とも呼ばれます。クリティカルパス(最も時間のかかる工程)を特定し、納期遅れのリスクを低減することが可能となります。図18は作成例です。左図は作業内容と所用日数、作業前に終了すべき作業内容です。この条件を元にアローダイアグラム(右図)を作成します。作業工程を図示することで、作業の前後関係や全体像が明確になります。図18におけるクリティカルパスは ① → ② → ③ → ④ → ⑥ → ⑦ となります。この作業工程を注視した管理が必要となります。

図18 アローダイアグラムの作成例
図18 アローダイアグラムの作成例

⑦ PDPC法(Process Decision Program Chart)

訳すと、「プロセス決定プログラム図法」です。計画策定時に発生する可能性のある不測の事態を想定して、それらに対する対策を事前に検討するための手法です。PDPC法には「強制連結型PDPC法」と「逐次展開型PDPC法」があります。強制連結型PDPC法は予めスタートとゴールとを定め、不測の事態が発生することを想定した対応策を検討し、どのような不測の事態が発生しても、対応策を実施しゴールへ向かいます。逐次展開型PDPC法は、ゴールに向けた実施事項を予め複数検討し、実施した結果、ゴールへ導けないと判断された場合は別の実施事項を行いゴールへ向かいます。図19はPDPC法のイメージです。

図19 PDPC法のイメージ
図19 PDPC法のイメージ

その他の手法

1) 5W1H

5W1Hは「What(何を)」、「Why(なぜ)」、「Who(誰が)」、「When(いつ)」、「where(どこで)」、「How(どのように)」の頭文字を並べた造語です。課題解決や情報伝達の際、全体像を整理することが可能となります。単語の順番については、明確な定義はなく、適用するテーマによって変わることもあります。例えば、Who(誰が)、When(いつ)、Where(どこで)、What(何を)、Why(なぜ)、How(どのように)の場合やWhen(いつ)、Where(どこで)、Who(誰が)、What(何を)、Why(なぜ)、How(どのように)の例もあります。5W1Hに費用(How much)の観点を加えた、5W2Hがあります。

図20 5W1H
図20 5W1H

2) なぜなぜ分析

課題の原因を掘り下げて、真の根本原因をあぶりだし、具体的な対策案を検討する手法です。課題に対する「なぜ」を通常、5回程度繰り返して本質的な原因を特定し、課題の体系化を行います。図21なぜなぜ分析の一般的な形式です。図22は工作機のベルトが切れて設備が停止した不具合を事例としてなぜなぜ分析と対策検討を行った例です。

図21 なぜなぜ分析の一般的な様式
図21 なぜなぜ分析の一般的な様式
図22 なぜなぜ分析の実施例
図22 なぜなぜ分析の実施例

3) SWOT分析

自社の内部環境と外部環境とを4つの要素、Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)で分析する手法です。内部環境はStrengthsとWeaknesses、外部環境はOpportunities、Threatsです。現状の把握やリスクを顕在化することで、今後の戦略策定につなげます。QC七つ道具や新QC七つ道具を適用する際、課題を抽出する手法としても使用されます。

図23 SWOT分析のイメージ
図23 SWOT分析のイメージ

4) QFD(品質機能展開)

Quality Function Deploymentの略です。1960年代から70年代にかけて品質を保証する仕組みとして考案されました。その後、各所で展開され海外へも広まりました。今では、品質管理の分野だけでなく商品開発などでも展開されています。顧客の要求を的確に捉えて、優位性のある製品やサービスを開発する手法です。顧客が「何を望んでいるか」を「どのように実現するか」に変換して、優先度を明確化することで、手戻りが減り、効率的で魅力的な商品を生み出すことです。QFDを展開するイメージは図24です。

図24 QFDの展開イメージ
図24 QFDの展開イメージ

QFDの中核をなすツールは「品質表(House of Quality)」です。顧客要求と設計要素との関係を整理し可視化することが特徴です。図25は品質表のイメージです。詳細については、各種の書籍などをご覧ください。

図25 品質表のイメージ
図25 品質表のイメージ

5) TRIZ

TRIZは「トゥリーズ」と読みます。「発明的問題解決理論」という意味のロシア語を英語で表記(発音)した場合の頭文字をとったものです。ロシア語の頭文字で書くと「ТРИЗ」となります。それぞれの単語を英語で表現して並べ替えると「Theory of Inventive Problem Solving」となるので、英語ではTIPS「ティップス」と呼称することもあります。TRIZは、ゲンリフ・アルトシュラ(ロシア)によって1946年に考案されました。問題解決や革新のための体系的な手法です。TRIZの概念は、既存のアイデアや知識を体系化し、これを利用して問題を解決するための、発明やイノベーションを促進させる方法論です。TRIZの中核となる考え方は、①発明にはパターンがある(共通する原理など)、②技術進化には法則がある(偶然ではなく、一定の法則に従って進化)、③進化の鍵は矛盾を解決すること(矛盾を解決することで解決)です。特徴的なツールとして、「40の発明原理」が提案されています。矛盾を解消するための方策を40に分類しています。解決するための方策として、①システムを分割し独立させる、②機能や動作を逆転する、③システムを柔軟にする。などです。図26は「40の発明原理」イメージです。TRIZについては、NPO法人 日本TRIZ協会のサイトをご覧ください。http://www.triz-japan.org/index.html

図26 TRIZ 40の発明原理
図26 TRIZ 40の発明原理

出典:FotoSceptyk、40 principles of TRIZ method 720dpi.jpg、CC 表示-継承 4.0

関連計測器の紹介

課題解決に関連した計測器の一例を紹介します。

図27 課題解決に関連した計測器の例
図27 課題解決に関連した計測器の例

おわりに

課題解決は永遠の命題と言っても良いでしょう。技術が進化しても新たな課題が湧いてきます。本稿では課題解決の主な手法について解説しましたが、その手法についても、技術進化に合わせて改良されるでしょう。特に、AIが普及すると、課題解決に際して、従来の視点や観点での対応は難しくなるでしょう。今後も、課題解決の方法論が進化することを期待しましょう。

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