市場動向詳細

自動車の材料 ~ いろいろな材料で作られている自動車 ~

自動車は多くの部品で構成されています。エンジン搭載車では数万点の部品で構成されています。各々の部品もまた多くの原料や材料で作られています。車両のボディ※1やエンジン※2には鉄系の材料が、軽量化を目的とする部品にはアルミ系の材料、バンパーには合成樹脂系の材料、タイヤ※3にはゴム系の材料など、様々な材料が車両の機能や性能に合わせて適用されています。本稿では、自動車に適用されている主要な材料を解説します。先ず、材料の分類を示し、各材料の基本的な特徴を解説します。鉄系金属として炭素鋼、合金鋼、鋳鉄を、非鉄金属は銅、鉛、亜鉛、合成樹脂、ゴム、セラミックスについて述べます。その後に、主要な材料の製法について概説します。鉄鋼には高炉法と電炉法が、アルミニウムはバイヤー法とホールエルー法があります。銅や亜鉛、合成樹脂も説明します。最後に自動車の材料に関連した計測器の例を示します。

※1~※3 詳細は以下の記事をご覧ください。

・2024年1月30日公開「車のボディ ~ 車の性格を表す ~
・2022年6月2日公開「自動車用内燃機関の進化~まだまだ活躍するガソリンエンジン
・2022年9月30日公開「タイヤの技術 ~車を支える力持ち

《本稿の記述は、筆者の知見による解釈や、主観的な取り上げ方の面もあることをご容赦ください。また、記載されている技術情報は、当社および第三者の知的財産権他の権利に対する保証または実施権を許諾するものではありません。》

自動車の材料

自動車で使用されている材料の比率は、各所の情報によると一般的には表1となっています。一番多いのは鋼です。次にアルミニウム、プラスチックと続きます。

表1 自動車の材料比率
重量比率(%)
60
アルミニウム 15
プラスチック 15
ガラス 3
ゴム 4
その他 3

材料は固体、液体、気体に限らず基本単位の元素で構成されます。元素の内、約80%は金属元素です。物質を構成する基本単位である元素を原子番号の順にならべると、色々な特性が周期的に変化することが判ります。このことを元素の周期律と呼び、整理した表が周期表です。列(族)のグループと行(周期)のグループに分かれており、「族」のグループは性質が似た元素が配置されています。図1は、文部科学省が平成17年から毎年発行している「一家に1枚」に掲載されている「周期表」です。各元素の特徴が絵図にて表現されています。図2は一般的な周期表の例です。

図1 一家に1枚「元素周期表」
図1 一家に1枚「元素周期表」

出典:文部科学省 科学技術週間 「一家に1枚」を引用
https://www.mext.go.jp/stw/series.html

図2 周期表
周期表

地球の地表付近の元素の割合を質量パーセント濃度でまとめると表2となります。なお、各元素の割合については一般的な数値であると理解してください。金属のなかで質量の割合が一番多いのはアルミニウムです。続いて鉄となります。元素の存在割合を推定したのは、米国の地球化学者フランク・ウィグルスワース・クラーク(Frank Wigglesworth Clarke)らによるもので、「クラーク数」と呼ばれていましたが、現在では使用されなくなっています。

表2 地表付近の元素割合
順位 元素 比率(%)
1 酸素(O) 49.5
2 ケイ素(Si) 25.8
3 アルミニウム(Al) 7.6
4 鉄(Fe) 4.7
5 カルシウム(Ca) 3.4
6 ナトリウム(Na) 2.6
7 カリウム(K) 2.4
8 マグネシウム(Mg) 1.9
9 その他(Ti、H、P、、) 2.1

1.金属材料

金属の種類を分類する観点は色々ありますが、代表的な分類は①ベースメタル(コモンメタル)、②貴金属、③レアメタルとなります。

  1. ベースメタル
    鉄(Fe)や銅(Cu)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)などのように大量に使用され、生産量が多く、色々な材料に使用されています。
  2. 貴金属
    金(Au)、銀(Ag)、白金(プラチナ:Pt)、パラジウム(Pd)、 ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)の8種類を指し、希少で耐食性に優れています。
  3. レアメタル
    国際的な定義として一意的に定められていませんが、経済産業省 鉱業審議会において次の様に定められています。「地球上の存在量が稀であるか、技術的・経済的な理由で抽出困難な金属のうち、安定供給の確保が政策的に重要であるもの」。「レアメタル」として47元素が定義されていますが、その内、スカンジウム、イットリウム、ランタンなどの17元素を一般的に「レアアース」もしくは「希土類元素」と呼ばれています。「レアメタル」と「レアアース」の周期表における位置づけは図3です。
図3 周期表におけるレアメタル、レアアースの位置づけ
画像のキャプション

出典:JOGMEC公開資料を抜粋し一部加筆
Japan Organization for Metals and Energy Security
独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構

鉄系金属

自動車で使用されている材料の中で最も多いのが鉄系の材料です(表1を参照)。一般的には「鋼:ハガネ」と呼称されます。「鋼」を分類する観点として、含有する「炭素量」があります。表3は炭素量と分類との関係や用途を示しています。炭素をほとんど含まれていないのが「純鉄」、炭素含有量が0.02%~2.14%のものは「鋼鉄」、2.1%~6.67%のものは「鋳鉄」と呼称されます。

表3 鉄鋼の呼称と用途
分類 炭素量(%) 特徴/用途
純鉄 0.02未満 磁化されやすい、磁性を反転できる等の特性から変圧器等の産業機器や通信機器、医療機器で使用。酸化されやすいのがデメリット。
鋼鉄 0.02~2.14 炭素の他に、ケイ素やマンガン、リンなどが含まれている。炭素の量に応じて硬さや粘りが変わる。様々な用途に向く。自動車のボディやフレームで使用
鋳鉄 2.1~6.67 含有量が多いので、融点が低い、硬い、摩耗性に優れる。自動車のエンジンブロック、フライホイール、ブレーキロータで使用

「純鉄」はその特性から限定的な用途となっています。「鋼鉄」と「鋳鉄」について、さらに分類すると表4となります。炭素鋼については、JIS※4で細かく分類されています。

※4

(Japanese Industrial Standards) 日本産業規格。2019年7月1日の法律改正により日本工業規格から日本産業規格へ名称変更。

表4 鉄鋼の分類
分類 種類
鉄鋼 炭素鋼 SPC材(冷間圧延鋼板)
SS材(一般構造用圧延鋼材)
S-C材(機械構造用炭素鋼鋼材)
SK材(炭素工具鋼鋼材)
合金鋼 ステンレス鋼
ハイテン鋼
合金工具鋼
機械構造用合金鋼
超硬合金鋼
鋳鉄 球状黒鉛鋳鉄、ねずみ鋳鉄、可鍛鋳鉄など

炭素鋼

炭素鋼の分類と特徴は表5です。

表5 炭素鋼の分類と特徴
種類 炭素含有量(%) 特徴
SPC材(冷間圧延鋼板) 0.1未満 Steel Plate Coldの略。
炭素鋼の中で最も柔らかい材料。
丸棒ではなく、薄板の形状でプレス加工しやすい。
SS材(一般構造用圧延鋼材) 0.1~0.3 Steel Structureの略。
SS**と表記され、**は鋼の引っ張り強さを示す。
加工性と溶接性に優れる。
S-C材(機械構造用炭素鋼鋼材) 0.1~0.6 SteelとCarbonの略。
S**Cと種別を表記。
SS材に比べて機械的強度が高いが、溶接面で劣る。
精密機械部品で使用。
SK材(炭素工具鋼鋼材) 0.6~1.5 SteelとKouguの略。
炭素工具鋼材、硬さや耐摩耗性に優れる。

合金鋼

合金鋼の分類と特徴は表6です。

表6 合金鋼の分類と特徴
種類 特徴
ステンレス鋼 SUS材、Steel Use Stainlessの略。
鉄に、クロム、ニッケルを添加。
クロムとニッケルの含有量に応じた種別あり。
加工性がよく強度もあるのでさまざまな用途で使用。
ハイテン鋼 高張力鋼とも呼称される。
引っ張り強さが高いことが特徴。SS材に比べて2倍以上の引張強度。
自動車のボディに適用されている。
今でも成分や製法が研究開発されている。
合金工具鋼 切削工具、金型など、耐久性と耐摩耗性が求められる用途で使用。
鋼に、タングステン、クロム、バナジウム、モリブデン元素を添加。
シャフトや歯車で使用。
超硬合金鋼 非常に強い硬度。
鉄、コバルト、ニッケルに加えて、クロム、タングステン、モリブデンなど多くの元素を添加。

鋳鉄

自動車部品や鉄道部品、家庭用品、マンホールなどで使用されています。鋳鉄は鉄とケイ素を主成分とし、炭素の含有量が2.1%以上のものです。炭素の状態により、鋳鉄と炭素鋼や合金鋼との大きな違いは、製品を作る際の加工方法が異なることです。金属を溶解して金型に流し込み、冷やして固める加工方法を鋳造と呼びます。鋳造に適した材料が鋳鉄です。鋳鉄の成分の特徴として、炭素量が多いことです。よって、融点が下がり、型の中を流れやすくなります。鋳鉄の名称は多種多様のようです。表7は代表的な呼称の鋳鉄と特徴、自動車部品での用途です。使い分けは強度や加工性、コストなどによって選択されています。

表7 鋳鉄の種類、特徴、用途
鋳鉄の種類 特徴 自動車部品の用途
白銑鉄 銑鉄を急速冷却して製造、炭素がセメンタイト(Fe3C)として存在。断面が白い光沢。硬くてもろいが、耐摩耗性が高い。 ディーゼルエンジンのシリンダライナなど。
球状黒鉛鋳鉄 鋳鉄に含まれる黒鉛を球状化、マグネシウムなどを添加。ダグタイル鋳鉄とも呼称。強度に優れる。 サスペンション、デファレンシャルケースなど。
ねずみ鋳鉄 炭素がセメンタイトよりも黒鉛の形で結晶化。断面がねずみ色。切削しやすく耐摩耗性、耐食性あり。 エンジンのシリンダブロックなど。

非鉄金属

「非鉄金属」は名前の通り、「鉄でない金属」ですが、「鉄」以外の分類を含めるので、幅広いくくりです。JISでは全ての金属材料を鉄鋼部門(G)と非鉄部門(H)とに分けて規格化しています。「鉄」以外の金属は、数えきれないほど存在します。「鉄」と「鉄以外」に分けたのは、学術上のくくりではなく、恐らく、「鉄の生産量」が圧倒的に多かったからだと推察されます。

1) アルミニウム

アルミニウムはボーキサイトと呼ばれる鉱石から生成されます。「ボーキサイト」の由来は最初の産地であるフランス アルル地方の都市「レ・ボー(Les Baux)」に、鉱物や鉱石の接尾語として使われる「-ite」が付加されて「bauxite」となっているようです。様々な化合物(酸化鉄や二酸化ケイ素など)が混ざっており、主成分がアルミニウムの酸化物「Al2O3」です。地球上でもっとも多い金属の元素です。生産量は非鉄金属の中で断然トップです。鉄や銅は紀元前5000年以上前から使われていたことが遺跡から判っていますが、アルミニウムが金属として確認されたのは約200年ほど前です。さらに、鉱石から製錬されるようになったのは、わずか130年ほど前です。アルミニウムの存在は判っていなくても、宝石の「サファイヤ」や「ルビー」はアルミニウムの酸化物なので古くから身の回りにありました。アルミニウムの特徴は、錆びにくく、軽いことです。鉄の約3分の1です。熱伝導率は鉄に比べて3倍あり、銅と比べても約半分です。融点は約660℃と低く、延性が高いの加工しやすい材料です。アルミの表面処理である「アルマイト加工」は日本で発明されました。

日本で最初にアルミボディを採用した車両は、ホンダ「NSX」です。アルミニウムは鉄と同様に、合金となる元素が添加されます。アルミニウム合金の分類と特徴、用途は表8です。

表8 アルミニウム合金の特徴と用途
分類 特徴 主な用途
1000系 純アルミ
アルミ純度99.00%以上
アルミ箔、導電材
2000系 Al-Cu系
ジュラルミンの名称
油圧部品、航空機
3000系 Al-Mn系
加工性、耐食性に優れる
アルミ缶
4000系 Al-Si系
耐摩耗性が優れる
鍛造ピストン
5000系 Al-Mg系
加工性、耐食性に優れる
自動車ホイール
6000系 Al-Mg-Si系
強度、耐食性に優れる
建築サッシ
7000系 Al-Zn-Mg系
高強度
鉄道車両構造材

2) 銅

色々な用途で使われています。銅の歴史は古く、先史時代(文字がなく記録が残っていない時代)の遺跡発掘で発見されています。日本はかつて世界一の銅産国でした。銅の色は光沢のある赤色で導電性、熱伝導性、耐食性、加工性などが優れています。これらの特性を活かして、電子部品、調理器具などで使用されます。また、銅の「微量金属作用」により「腸管出血性大腸菌O157」などのウイルスに対する抗菌効果が実証されています。銅の特徴を改めてまとめると表9となります。

表9 銅の特徴
特徴
熱伝導性 熱の伝わりやすさが優れる。
電気伝導度 電気を良く通す。伝導率の基準。
耐食性 表面に形成される保護皮膜が腐食の進行を防ぐ。
加工性 柔らかい。
磁性なし 磁性がない金属。磁気を嫌う電気計測で使用する。
殺菌作用 微量金属作用による抗菌効果あり。
光沢 最初の銅表面は赤色でその後変化し緑青色へ。
リサイクル性 金属の中でもリサイクル性に優れる。

3) 鉛

鉛は銅や金などとともに古くから使用されてきました。遺跡などで発見されています。鉛は柔らかい金属で、酸化しやすく灰色(鉛色)になります。特徴を表10にまとめました。

表10 鉛の特徴
特徴
融点が低い。
柔らかい。
耐食性。
化学的特性に優れる。
放射線を吸収することが強い。
特定の周波数を吸収する。

鉛を含めた重金属(鉛、水銀、カドミウム、6価クロム)による環境汚染が問題となり、対応策として規制が発効されています。主な規制はELV指令※5とRoHS指令※6があります。両規制を満足する製品の対応が求められます。日本においては、「廃棄物処理法」において、特別管理産業廃棄物と定められており、廃油、廃酸、廃PCB、廃石綿等と同様に、厳しい基準による管理と処理が求められます。

※5

(End of Life Vehicle) 廃自動車指令。2000年に交付された欧州指令で、自動車のリサイクルに関する要求と特定有害物質の含有に関する規制がある。含有物の規制として自動車の材料および部品について、基本的に鉛、水銀、カドミウム、六価クロムの許容濃度以上の含有を禁止。

※6

(Restriction of use of certain hazardous substance in the Electrical and electronic equipment) 有害物質使用制限指令。2011年に改正され「RoHS2」と呼称される。有害物質を一定割合以上含む製品が市場に出回らないことを規制している。規制対象は10物質。めっきに関係する物質としては、鉛、水銀、カドミウム、六価クロムが指定されている。鉛については一部の原材料で含有率に応じて適用除外となり、自動車のバッテリでも継続して使用されている。現時点では「技術的・科学的に代替が難しい用途」であることが背景にあると推測。

4) 亜鉛

青みをおびた銀白色の金属で、酸化されると白色の酸化膜が形成されます。融点は鉄、アルミニウム、銅などに比べて低温です。融点が低いので鋳造に適しており、ダイカスト用の合金として用いられます。高温で揮発して蒸気になりやすい(沸点 907 ℃)特性です。また、鉄よりもイオン化傾向が大きいことから鉄鋼の防食に欠くことのできない金属です。亜鉛めっき処理された鋼板は多くの製品に使用されています。

合成樹脂系

自動車用材料の中で、金属に次ぐ使用量の多い材料です。樹脂は「天然樹脂」と「合成樹脂」とに分類できます。樹脂とプラスチックとを同じ意味の言葉として使われることがありますが、JISの定義によると、樹脂は原料であり、プラスチックは成形品となっています。本稿では、主として石油や天然ガスを原材料として化学的に合成された「合成樹脂」について解説します。

合成樹脂は、「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」とに区分されます。「熱可塑性樹脂」は「汎用樹脂(汎用プラスチック)」、「エンジニアリングプラスチック」、「スーパーエンジニアリングプラスチック」に分類されます。「エンジニアリングプラスチック」は、一般的に略称で「エンプラ」と呼称されます。「熱可塑性樹脂」の特徴は、常温では固体、熱を加えると軟化して流動体となり、また冷えると固まって固体になります。ポリプロピレン(PP:PolyPropylene)やポリ塩化ビニル(PVC:PolyVinyl Chloride)などです。「汎用エンプラ」の特徴は、機械的強度に優れ、ギヤなどの機構部品などにも適用されています。なお、非炭素元素なども含むため、コストは高くなります。また、酸やアルカリに対する耐性は、やや弱いものもあります。ポリカーボネート(PC:PolyCarbonate)やポリブチレンテレフタレート(PBT:PolyButylene Telephthalate)などです。「スーパーエンプラ」は、エンプラの中でも、特に耐熱性が優れたものが対象となります。液晶ポリマ(LCP:Liquid Crystalline Polymer)などがあります。もう一方の区分である「熱硬化性樹脂」は温度を上げると一端流動体になりますが、化学変化を起こして固まり、硬い物質に変化するものです。熱可塑性樹脂と異なり、温度を上げても流動化しません。主な樹脂はフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などです。自動車で使用されているプラスチックの材料と適用部品の一例は表11です。

表11 自動車で使用されているプラスチックの材料と適用部品
分類 材料 自動車部品
汎用プラスチック ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリルニトリルブタジエン(NBR)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS) ダッシュボードなどの内装部品
バンパ
燃料タンク
ホース
ホイールカバー
汎用エンプラ ポリアミド(PA)
ポリアセタール(POM)
ポリカーボネート(PC)
変性ポリフェニレンエーテ(PPE)
ポリブチレンテレフタレート(PBT)
エンジン周辺部品
ギヤなどの機構部品
ヘッドランプ、樹脂ガラス
コネクタ、フェンダ
コネクタ
スーパーエンプラ ポリフェニレンサルファイド(PPS)
液晶ポリマ(LCP)
高耐熱PA(PA46、PA4T、PA6T)
コネクタ、ケーブル
コネクタ
エンジン周辺部品、機構部品、コネクタ
熱硬化性樹脂 ポリウレタン(PUR)
シリコーン
クッション
コネクタカバ、ホース、グリース

ゴム系

「ゴム」には天然ゴムと合成ゴムの2種類があります。天然ゴムは「ゴムの木」から得られる樹液(ラテックス)の水分を取り除いて生成されます。天然ゴムの成分を生産する植物は500種類以上確認されているようです。タンポポもその1つです。天然ゴムは、機械的強度や弾力性に優れていますが、耐熱性や耐油性、耐候性などが劣っています。チャールズグッドイヤ(Charles Goodyear、米国)の発見により、天然ゴムに硫黄を加えて加熱すると安定したゴムが得られました。この発見により、ゴムの工業化が進み大量されることとなりました。さらに、カーボンブラックを混合すると強度が高いゴムが得られることが判り、自動車用タイヤで使用されました。工業化が進むと天然ゴムが不足することなり、「合成ゴム」の研究開発が急速に進みました。日本における合成ゴム消費量の約8割は自動車用として使用されています。用途は、タイヤ※3、エンジン※2やトランスミッション※7およびブレーキ※8などのホース類、シール用パッキン、窓やドアのシール材など、多くの部品で使われています。

※7~※8 詳細は以下の記事をご覧ください。

・2022年6月27日公開「自動車トランスミッションへの期待~まだまだ進化が続く
・2021年5月28日公開「自動車のブレーキ ~ますます高まる重要性

その他材料

1) セラミックス

広義のセラミックスとは、非金属の無機原料を加熱処理した材料もしくは製品の総称です。狭義のセラミックとは、粘土や長石などの天然鉱物を原料とした身近な物では、ガラスや陶磁器、セメントなどがあります。セラミックスを高純度に精製し、化学組成や結晶構造、形状、製造工程を精密に制御して製造されたものを「ファインセラミックス」と呼ぶこともあります。セラミックスの特徴は、金属やプラスチックに比べて硬さや融点が大きく異なります。金属はクーロン力で原子が結びついていますが、セラミックスは強い化学結合により原子間が結びついているので、他の物質に比べて非常に硬く、また、化学的な安定性や高い融点を特徴とします。これまで述べてきた三大材料(金属、樹脂、セラミックス)の特徴をまとめると表12となります。但し、全ての材料に対して当てはまることではなく傾向として表記しています。

表12 三大材料の特徴比較
金属 樹脂 セラミックス
硬度
剛性
耐摩耗性
耐熱性
熱膨張係数
絶縁性
耐食性
耐薬品性
脆性
加工性

自動車で適用されている部品類としては、ガラス、スパークプラグ、燃料インジェクタ、排気ガス浄化触媒担体、電子回路基板、セラミックコンデンサ、セラミックヒータ、酸素センサ、温度センサ)、その他のセンサ(焦電センサ、圧力センサ)、リチウムイオン電池(負極)、モータの磁石などです。

材料の製法

主要な材料の製法を紹介します。

1.鉄鋼の製造方法

鉄鋼の製造方法は大きく分けると、①高炉法と②電炉法の二種類があります。製造方法の全体像は図4です。

図4 鉄鋼の全体像
図4 鉄鋼の全体像
図5 鉄鉱石
図5 鉄鉱石

① 高炉法

主原料は鉄鉱石です。鉄鉱石を溶融させる燃料であり、鉄鉱石から酸素を取り除くコークス※9及び鉄鉱石に含まれる不純物を取り除くために石灰を溶鉱炉(高炉)に投入します。そして、高炉内に酸素を吹き込み、投入した原料を酸素と反応させることで熱源となり、窒素、CO、CO2、水素などが含まれる高炉ガスが生成されます。高炉内では、鉄鉱石に含まれたシリカやアルミナなどの不純物とコークス、石灰とが反応します。溶融し酸素を奪われた鉄鉱石は「銑鉄(せんてつ)」と呼ばれます、高炉の底から取り出されます。不純物は密度が銑鉄より小さいので除去が容易で、これは「高炉スラグ」と呼ばれます。ここまでの工程を「製鉄」と呼ばれます。

※9

石炭を蒸し焼きにしたもの。

図6 高炉の基本構造
図6 高炉の基本構造

参考:高炉内で起きる主な化学反応

  1. コークスと熱風の反応 → 高温のガスが発生
    2C(炭素) + O2(酸素) → 2CO(一酸化炭素) + 反応熱
  2. 鉄鉱石と高温ガスの反応 → 銑鉄
    Fe2O3(鉄鉱石) + 3CO(一酸化炭素) → 2Fe(鉄) + 3CO2(二酸化炭素)

図7は2015年7月、「明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼、造船石炭産業」の世界文化遺産として登録された「官営八幡製鉄所関連施設」の「東田第一高炉」です。

図7 八幡製鉄所(現日本製鉄) 高炉
図7 八幡製鉄所(現日本製鉄) 高炉

② 電炉法

鉄鉱石ではなく鉄スクラップを再利用して鋼を取り出す製法です。原料の鉄スクラップ、銑鉄などを製造する鋼の種類に応じて配合し、電気アーク炉で溶解させます。図8は電気炉の基本構造です。スクラップをアーク放電により溶かします。

図8 電炉の基本構造
図8 電炉の基本構造

高炉法に比べると工程が少なく、工程内で発生する温室効果ガスの量が約1/4になることや原料を再利用していることから環境負荷が低いことが特徴です。今後の主流となる製法でしょう。図9は電炉の一例です。アークを発生させる電極が判ります。

図9 電炉の例
図9 電炉の例

その後の工程は高炉法と同様に転炉にて不純物を分離します。表13は高炉法と電炉法の比率です。世界的に見ると、鉄鋼の生産量の約70%が高炉法です。この比率は地域によって大きく異なっています。日本では約70%が高炉法です。米国/欧州はリサイクル率が高く電炉法が約50%近くとなっています。中国は鉄鋼の生産量は世界1位で高炉法の比率が非常に高く、約90%を占めています。

表13 高炉、電炉比率
地域 高炉法比率(%) 電炉法比率(%)
日本 70 30
米国・欧州 50 50
中国 90 10
図10 転炉の構造例
図10 転炉の構造例

アルミニウム

鉱石のボーキサイトからアルミを製錬する基本的なプロセスは図11です。①バイヤー法でアルミナ(Al2O3)を生成し、②ホールエルー法でアルミナを電解によりアルミニウムを生成します。

図11 アルミニウム製錬の基本プロセス
図11 アルミニウム製錬の基本プロセス

① バイヤー法

ボーキサイトには酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化鉄(Fe2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)が含まれています。ボーキサイトが赤い理由は酸化鉄によるものです。ボーキサイトから酸化アルミニウムだけを取り出すため、アルミニウム元素の性質である「同性元素」※10の特性をもとに、苛性ソーダ(NaOH)を加えて加熱すると、酸化アルミニウムだけが溶け、酸化鉄と二酸化ケイ素は不純物として残ります。これをろ過することで、水酸化アルミニウムが生成されます。さらに、高温まで加熱すると、脱水して酸化アルミニウムが生成されます。酸化アルミニウムは「アルミナ」とも呼称されます。以上の工程をまとめると、

  1. ボーキサイトを水酸化ナトリウムの熱溶液で処理
  2. 不純物をろ過
  3. 水酸化アルミニウムを加熱して脱水
  4. 酸化アルミニウムを生成
※10

酸にも強塩基にも反応して溶ける特性。アルミニウムの他に、亜鉛、スズ、鉛。

② ホールエルー法

バイヤー法で得られた酸化アルミニウム(アルミナ)を高温で融かして液体にしたものを電気分解※11する「融解塩電解」という方法がとられています。高温で融かす際に膨大な電力が必要とされます。アルミニウムが「電気の缶詰」と呼ばれるゆえんです。電気が水力発電などの比較的安価で提供される国・地域で行われることが一般的です。電気分解は水溶液で行われると一般的に理解されていますが、ホールエール法では溶解した酸化アルミニウムで行われます。融点を少しでも下げて電力を節減するために氷晶石が加えられます。

※11

電気分解の概要については2024年7月30日公開「めっき ~ 素材の特性を高める技術 ~」をご覧ください。

図12はホールエルー法 電解炉の一例です。陽極であるアノードは炭素で、陰極側のカソードは黒鉛です。酸化アルミニウムと氷晶石を加えて加熱し溶解すると、カソード電極で「融解塩電解」されて金属のアルミニウムが析出します。これを取り出すと、アルミニウムが生成されます。ホールエルー法の反応を総括すると、

Al2O3 + 3C → 2Al + 3CO

となります。

図12 ホールエルー法の電解炉例
図12 ホールエルー法の電解炉例

銅の精錬は、大きく分けると3工程となります。原料の銅鉱石とコークス、ケイ砂を溶融炉に投入して溶かします。不純物が混じったスラグを取り除くと、硫化銅(Cu2S)が生成されます。硫化銅を転炉の工程を通すと、粗銅が生成されます。粗銅の銅成分は約98%ですが、鉄や金などの成分が含まれています。その後、電気分解の工程で純銅が生成されます。電気分解では、純銅の陰極に銅が析出します。銅よりもイオン化傾向の小さい金属は水溶液中に溶けださず、沈殿します。銅よりイオン化傾向が大きい金属は水溶液中にイオンとして存在します。

図13 銅の精錬工程
図13 銅の精錬工程
図14 粗銅の電気分解
図14 粗銅の電気分解

亜鉛

亜鉛の製錬では先ず、亜鉛鉱石に酸素を加えて加熱し、亜鉛酸化物(ZnO)に変換します。このプロセスでは次の反応が行われます。

2ZnS + 3O2 → 2ZnO + 2SO2

次に、コークスなどの還元剤とともに酸化亜鉛を加熱し、金属の亜鉛を生成します。このプロセスでは次に反応が行われます。

ZnO + C → Zn + CO

金属亜鉛の純度を高めるために、①蒸留法もしくは②電気分解法が適用されます。工業的には電気分解法が主流です。

  1. 蒸留法:亜鉛と高温にすると揮発して蒸気となります。この蒸気を凝縮させて純度の高い金属亜鉛を生成します。
  2. 電気分解法:焼鉱を硫酸で溶解すると硫酸亜鉛溶液となります。この溶液を電気分解することで金属亜鉛を析出させます。

合成樹脂

プラスチックの原料は、主に石油や天然ガスなどから得られる高分子化合物(ポリマ)です。「ポリマ」を構成する最小単位が「モノマ」です。プラスチックの原料が生成される流れは図15となります。石油等の原料から「モノマ」が精製され、「モノマ」を互いに結合させることで、「ポリマ」が生成されます。この結合は「重合」と呼称されます。石油等の原料から精製される「ナフサ」からプラスチックの原材料として主要な「モノマ」である、「エチレン」や「プロピレン」などが生成されます。

図15 プラスチック原料の生成
図15 プラスチック原料の生成

生成された「ポリマ」には添加剤が加えられます。色合いを決める着色剤、強度や耐熱性、難燃性などの特性を向上させる添加剤を混ぜます。近年、新たな原料として、環境負荷を軽減するために、トウモロコシやサトウキビなどの植物由来の原料を使った「バイオプラスチック」の使用が進んでいます。図16は合成樹脂などを含めた石油から各種原料や製品を生成する石油化学コンビナートの全容です。

図16 石油化学コンビート
図16 石油化学コンビート

関連計測器の紹介

材料に関連した計測器の一例を紹介します。

図17 材料に関連した計測器の例
図17 材料に関連した計測器の例

その他の製品や仕様については計測器情報ページ から検索してください。

おわりに

自動車は多くの材料で作られています。初期の自動車では、適用されている素材や材料は限られていましたが、その後、材料の技術進化により、性能や機能の改善に加えて、新たな材料が採用されています。近年では、材料のリサイクルやカーボンニュートラルの動向により、材料技術が更に発展しています。今後も、自動車を取り巻く状況に応じた材料技術の進化に期待しましょう。

自動車関連の他の記事は こちらから