バイクの技術 ~風を楽しむモビリティ
この記事は、2024年5月7日に公開した「バイクの技術 ~風を楽しむモビリティ ~」を改版したものです。主な改版事項は、販売統計・事故統計のデータ更新およびクラッチに関連する新技術です。
バイクは移動手段として、自転車を原型として発展してきました。多くの国々では4輪が普及する過程で、先ずバイクが普及しその後、4輪へ移行しています。一方、趣味としてのバイクも根強い人気があります。また、バイクのモータースポーツも歴史があります。本稿では、まずバイクの歴史、市場規模などを述べます。次に基本構造、主要な技術、エレクトロニクスシステムを概説します。バイクの種類や、クラッチ、トランスミッション、サスペンションなどの各部位を図解します。フレームの構造、ヘルメット関連の法規、最近普及し始めた電動のバイクなどに触れます。最後にバイク開発で使用される計測器を紹介します。今まで主に4輪車で解説してきた連載記事とのリンクもつけました。
《本稿の記述は、筆者の知見による解釈や、主観的な取り上げ方の面もあることをご容赦ください。また、記載されている技術情報は、当社および第三者の知的財産権他の権利に対する保証または実施権を許諾するものではありません。》
バイクの歴史
世界で最初にガソリンエンジンを搭載したバイク「Reitwagen」は1885年にダイムラーによって製作されました。本サイトの記事で紹介した世界初の4輪車とされているダイムラー1号車※1よりも先に製作されたようです。図1は「Reitwagen」です。タイヤ、ホイール、フレームなどは木製です。後輪付近にある円形の部品は補助輪です。日本では1900年初頭に製作されていますが、市販のモデルとしてバイクの普及に貢献したのは、1947年 本田宗一郎が製品化した、自転車に取り付ける構造のキットであると評価されています。その後、現在の大手バイクメーカが市場に参入しましたが、当時、大小合わせて100社近いメーカが存在していたようです。米国では1903年にビル・ハーレーとダビッドソン兄弟が試作車を完成させています。これが、現在のハーレーダビッドソンにつながっています。欧州においては、1900年中盤までに、ドゥカティ(イタリア)、BMW(ドイツ)、トライアンフ(イギリス)などがバイクの生産を始めています。
ダイムラー1号車に関する記事は以下をご覧ください。
202年8月公開:「自動車の基本~サスペンションの技術」

市場の動向
日本国内の販売台数は減少傾向ですが、ここ10年間は減少傾向から横ばいとなっています。図2は原付第一種(50cc以下)と原付第二種(51cc以上)の国内販売台数、図3は排気量毎の販売台数比率、図4は排気量別の販売台数推移です。

出典:一般社団法人 日本自動車工業会の公表資料(2023年)を元に作成

出典:一般社団法人 日本自動車工業会の公表資料(2023年)を元に作成

出典:一般社団法人 日本自動車工業会の公表資料(2020年)を元に作成
世界の市場は各所の公開情報によると、年間販売台数は約5,700万台です。その内、インドにおいて約2,000万台となっています。二番目は中国ですが、4輪車の普及が急速に進んでいるので減少傾向が強いです。その他、東南アジア地区でも販売台数が多いです。日本の販売台数は世界レベルでは1%未満となっています。
事故分析
公益財団法人 交通事故総合分析センター(ITADRA イタルダと呼称)が公表した研究報告書によると、2輪乗車中の死傷者数は減少傾向を続けています。死者数も減少傾向です(図5)。状態別事故推移(図6)では、「歩行中」、「二輪乗車中」、「4輪乗車中」の順で死傷者数の割合が高くなっています。「二輪乗車中」の死者数割合は1.22%@2022年となっており、死傷者数の減少傾向や他の状態推移と異なり、増加傾向です。何がしかの要因が考えられます。

出典:交通事故分析センタが公表した資料を元に作成

出典:交通事故分析センタが公表した資料を元に作成
本稿では限られた分析結果を記述しましたが、上記の報告書では多面的な分析がなされています。ぜひご覧ください。
(出典:二輪車事故の特徴分析による事故・死傷者数の低減研究)。
図7~図9は警視庁が公表した二輪車の交通人身事故の発生状況です。なお、二輪車の交通事故は、原動機付自転車及び自動二輪車が関係した事故です。発生件数は、二輪車が第1、第2当事者※2となった事故の合計件数です。発生件数、死者数とも各年の増減はあるものの微減の傾向を示していると推察できます。道路の線形別割合は直線路が多くを占めています(図8)、道路形状別では交差点及び交差点付近が多くの割合となっています。
最初に事故に関与した当事者のうち過失が最も重い者。第二当事者とは、第一当事者以外の最初に事故に関与した当事者。

出典:警視庁が公表したデータに基づき作成(2025年1月10日時点)

出典:警視庁が公表したデータに基づき作成(2025年1月10日時点)

出典:警視庁が公表したデータに基づき作成(2025年1月10日時点)
バイクの種類
バイクには使用目的や用途に応じた多くの種類が販売されています。大きく分けると、スポーツバイクとその他のバイクです。スポーツバイクは舗装路を走ることを想定したロードバイクと不整地などの走行を想定したオフロードバイクに分けられます。図10はバイクのタイプを分類した一例です。代表的なタイプを紹介します。
スクータ | 気軽に乗られるバイクとして、クラッチ操作はなく、フロアに足を載せて乗ります。当初は排気量50ccや125ccクラスでしたが、中型以上の大型スクータも販売されています。 |
ビジネスバイク | 配達業などの用途を想定しています。荷物の積載性が良く、車体の剛性が高い構造です。耐久性や燃費も考慮されています。 |
ネイキッド | エンジン、フレーム、重量など、バランスが取れた構造です。車体を覆うカウルはありません。ネイキッド(naked:裸の)の意味通り飾りのないむき出しの構造です。 |
オフロードバイク | 不整地の走行を想定したバイクです。最低地上高が他のバイクに比べて長く確保されています。また、フェンダなどは転倒しても破損しにくい樹脂製となっています。 |
スーパースポーツ | 高性能なエンジンやタイヤ、フレーム、ブレーキで構成されています。また、車体を覆うカウルが装備されています。 |
アメリカンクルーザ | 長い距離の走行を想定して、タイヤ間の距離(ホイールベース)や運転姿勢が考慮されています。 |

新原付バイク
図10のスクータで主として採用されている排気量50cc以下又は定格出力が0.6KW以下の車両(後述の特定小型原動機付自転車は除く)は2025年7月11月以降に適用される予定の新たな排ガス規制(国内第4次排ガス規制)への対応が必要となります。この新排ガス規制は大気環境保護と国際基準調和の観点から導入されます。しかしながら、現行の車種での新排ガス規制への対応は、技術的に困難であること及び開発投資の回収等経済性の課題により生産・販売を継続することが難しいとされています。ここで、技術的な課題を概説します。新排ガス規制の主要な要件は排ガス中の大気汚染物質(炭化水素、窒素酸化物等)を除去することです。新排ガス規制対応として、マフラ内に排ガスを浄化する触媒を具備することになります。一方、触媒が有効に機能するためには300℃以上の温度上昇が必要ですが、現行の原付バイク(原動機付自転車)の排気量は少ないため、触媒の温度が所定値に達する前に、新排ガス規制値を超えると見込まれています。そこで、新排ガス規制への対応として、排気量を増やすことが想定されますが、現行の法制度には合致しなくなります。現行の法制度は表1です。

以上の背景から、現行の原付バイクを新排ガス規制に対応させるために、関係省庁および有識者による検討が行われ、以下の方向性がまとまりました。
- 排気量50cc超125cc以下の原動機の最高出力を50cc相当の4.0KWに制限し、現行の原付バイクと同程度の性能とする。
- 二輪車の免許区分を見直す。
なお、最高出力が免許区分を決める要素となることから、出力が適正であることの保証や不正改造の防止が求められるので、容易に改造ができない機構の導入が必要となります。具体的には汎用の工具で出力制御部を細工できないような構造にしたり、電子的な制御と組み合わせたりするなどの機構が導入されるでしょう。また、外観上の識別が容易であることも求められます。さらに、出力が制限されていない第二種原動機付自転車(原付バイク)を原動機付自転車免許で運転できるかのような誤解を与えないように周知する活動も必要でしょう。新原付バイクと免許区分との関係は表2となります。

原動機自転車の区分見直しについて、道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令に対してパブリックコメント※3を募集し、その結果から、改正案通りで施行されることとなりました。
国の行政機関が政策を実施していくうえで、政令や省令等を決めようとする際、あらかじめその案を公表し、意見、情報を募集する手続。募集中の案件や結果については、次のサイトをご覧ください。https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/1050
改正内容は、以下です。
- 二輪の原動機付自転車のうち、「総排気量が 0.050Lを超え 0.125L以下であり、かつ、最高出力が 4.0kW以下のもの」を第一種原動機付自転車に新たに追加。
- 新たな第一種原動機付自転車については、型式認定において、その原動機に総排気量に加え最高出力も表示。
- 新たな第一種原動機付自転車の原動機付自転車用原動機については型式認定において、その原動機に総排気量に加え最高出力も表示。
公布日:2024年11月13日、施行日:2025年4月1日
パブリックコメントの募集結果については次の資料をご覧ください。https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000282514
提出された意見の詳細は次の資料をご覧ください。https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000282542
電動キックボード
図10で図示されていない移動手段として、特定小型原動機付自転車があります。図11は特定小型電動機付自転車の代表例である電動キックボードの一例です。2022年4月に成立した道路交通法の一部を改正する規定の内、特定小型原動機付自転車に関する規定が2023年7月1日に施行されました。「原動機付自転車免許」を保有していなくても、16歳以上であれば運転できる「特定小型原動機付自転車」に区分されました。

特定小型原動機付自転車の規定
道路交通法施行規則では、特定小型原動機付自転車の基準は以下の通りです。
① 車体の大きさ
長さ | 190センチメートル以下 |
幅 | 60センチメートル以下 |
➁ 車体の構造
- 原動機として、定格出力が0.60キロワット以下の電動機を用いること。
- 時速20キロメートルを超える速度を出すことができないこと。
- 走行中に最高速度の設定を変更することができないこと。
- AT機構(オートマティックトランスミッションその他のクラッチ操作を要しない)
- 道路運送車両の保安基準第66条の17に規定する最高速度表示灯が備えられていること。
➂ 保安基準への適合
道路運送車両の保安基準に適合するものでなければ運行できません。図12は保安基準項目の位置づけ、表3は保安基準の概要です。

出典:国土交通省
保安基準項目 | 概要 |
---|---|
接地部及び接地圧 | 道路を破損するおそれのないものであること。 |
制動装置 | 2個の独立した操作装置を有し、確実かつ安全に減速及び停止を行うことができ、制動停止距離が5m以下であること。 2系統以上のうち1系統は、平坦な舗装路面等で確実に特定小型原動機付自転車を停止状態に保持できること。 |
車体 | 堅牢で運行に十分耐えるものであること。乗車装置が確実に取付けられ、振動、衝撃等によりゆるみが生じないようになっていること。 |
安定性 | 一定のくぼみや段差の路面において安定した走行を確保し、運転者による制御が可能であること。 |
前照灯 | 夜間前方15mの距離の障害物を確認できること。 |
尾灯 | 夜間後方300mから点灯を確認できること。 |
制動灯 | 昼間後方100mから点灯を確認できること。 |
後部反射器 | 夜間後方100mから走行用前照灯で照射した場合にその反射光を確認できること。 |
警音器 | 適当な音響を発するものであること(自転車に装着されるベル等でも可)。 |
方向指示器 | 車両中心線上の前方及び後方30mの距離から指示部を見通すことができる位置に少なくとも左右1個ずつ取り付けられていること。 |
速度抑制装置 | 設定最高速度で走行しているときに加速装置を操作しても加速しないこと。設定最高速度が2種類以上ある場合、走行中に設定変更ができないこと。 |
電気装置 | 原動機用蓄電池は以下のいずれかの基準に適合していること。 国連規則、欧州規格、国連危険物輸送勧告、PSEマーク(電気用品安全法に基づく表示) |
乗車装置 | 乗車人員が動揺、衝撃等により転落又は転倒することなく安全な乗車を確保できる構造であること。 |
最高速度表示灯 | 昼間前方及び後方25mから点灯を確認できること。 車道モード:緑色点灯、歩道モード:緑色点滅 |
④ 自賠責保険への加入
自動車損害賠償責任保険又は自動車損害賠償責任共済(いわゆる自賠責保険)への加入が義務付けられています。
➄ ナンバプレートの取付け
市町村の条例等で定められたナンバプレート(標識)を取得し、車体の見やすい箇所に取り付けなければならないです。図13はナンバプレートの例です。

出典:警察庁の資料を抜粋して作成
特例特定小型原動機付自転車
特定小型原動機付自転車の要件に加えて、以下の基準を全て満足すれば歩道を走行することが可能です。
- 最高速度表示灯を点滅させること。
- 時速6キロメートルを超える速度を出すことができないこと。
特定小型原動機付自転車を時速6km超えない速度で走行させても特例特定小型原動機付自転車の扱いとはなりません。さらに、最高速度を時速6kmに設定できるのは発進前が条件です。また、走行中に最高速度を変えられない構造が必要です。なお、「特例特定小型原動機付自転車」が走行できる歩道は、「普通自転車等及び歩行者等専用」の標識がある場合です。当然のことながら、歩行者の通行を妨げないように通行することが求められます。
型式認定制度と性能等確認試験
特定小型原動機付自転車の保安基準適合性を確認する制度が創設されています。国土交通省に認可された民間の機関・団体が保安基準の適合性を確認し、確認された車両には特別なシールが貼付できます。図14は性能等確認済みシールの例です。

出典:国土交通省の資料を抜粋して作成
2023年3月10日時点で認定された実施機関は、公益財団法人 日本自動車輸送技術協会 昭島研究室です。2024年3月26日時点で保安基準適合性が確認された型式は次のURLをご覧ください。https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001622342.pdf
モペット
ペダル付き電動バイクはモペッドとも呼称され、原動機とペダルが付いた、主として二輪車の総称で、和製造語です。原動機としてモータが使われるモペットは道路交通法で原動機付自転車として扱われます。一見すると自転車に見えますが、道路交通法や道路運送車両法を遵守していない車両の走行が散見され、交通事故も発生しているようです。モペットは電動アシスト自転車※4の範疇であると誤認識されているようです。電動機を止めてペダルだけの走行でも、自転車とはならず車両の扱いは原動機付自転車です。当然のことながら、原動機自転車の扱いなので車両としての規定を満足することはもとより、ヘルメットの着用等、交通ルールの厳守が求められます。
いわゆる電動アシスト自転車は時速24km以上でアシストしないこと。自転車の安全利用の促進や、道路交通法に基準に適合しない「電動アシスト自転車」と称する製品の情報等については、警察庁のサイトをご覧ください。https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/bicycle/index.html
ペダル付き電動バイクに関する周知・啓発
警察庁・都道府県警察は、ペダル付き電動バイクに関する誤解を正すために、パンフレットを公表、配布しています(図15/16)。周知すべき内容をまとめると、次の通りです。
- ペダル及びモータを備える車両のうち、スロットルが備えられている。
- モータのみで走行させることができる。
- 駆動補助機付自転車(電動アシスト自転車)のアシスト比率の基準を超える。
以上の項目に該当する仕様は、いわゆる自転車でなく、一般電動機付き自転車または自動車の扱いとなります。よって、公道を走行するために必要な要件は、以下です。
- 一般電動機付き自転車等を運転することができる運転免許。
- ブレーキランプ、ウインカ、バックミラ等の装備。
- ナンバプレートの取付け・表示。
- 自動車損害賠償責任保険への加入。
電動アシスト自転車(駆動補助機付自転車)の型式認定制度が運用されています。国家公安委員会の型式認定を受けた電動アシスト自転車は、道路交通法令に規定されている基準に適合したものであり、TSマークを表示することができます。型式認定制度の概要や認定を受けた電動アシスト自転車の一覧は次のサイトをご覧ください。https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/bicycle/katashiki.html
本稿では取り上げていませんが、自転車に関する「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」が公開されています。自転車通行空間の整備や自転車の交通ルールなどが解説されています。https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/bicycle/pdf/20240625guideline.pdf


特定小型原動機付自転車の周知・啓発
特定小型原動機付自転車の周知・啓発用のチラシが関係省庁で作成されています。
① これから購入するかた向けのチラシ


➁ これから乗るかた向けのチラシ


特定小型原動機付自転車の市場抜取調査
国土交通省では、市場での抜取調査を実施しています。調査状況については、以下のサイトをご覧ください。
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr7_000058.html
また、不適合品の流通防止を図るため、従来から行っている「自動車の不具合情報 ホットライン」にて情報提供の窓口を設置しています。
特定小型原動機付自転車の交通事故状況
図22は2021年から道路交通法が施行される2023年7月までの電動キックボードに関する交通事故状況です。事故件数累計は74件です。

出典:警察庁が公開したデータを元に作成
図23は道路交通法が施行された2023年7月から2023年12月までの交通事故状況です。発生件数は85件、負傷者数は86人となっており、図22の2022年(事故件数29件)に比べ大幅に増加したことが判ります。相手方当事者は「4輪」が30%、「歩行者」が20%、「自転車」が10%です。都道府県別では東京都と大阪府で多く発生しています。電動キックボードの導入台数が多いからと推察されます。なお、本データは警察庁に報告された件数だけとなっています。

出典:警察庁が公開したデータを元に作成

出典:警察庁が公開したデータを元に作成

出典:警察庁が公開したデータを元に作成
電動キックボードの取締り状況(2024年1月~2024年11月)
電動キックボードの取締り状況(2024年1月~2024年11月)は図26です。検挙件数では通行区分違反、信号無視が85%近くを占めています。

出典:警察庁が公開したデータを元に作成(2025年1月15日時点)

出典:警察庁が公開したデータを元に作成(2025年1月15日時点)
電動キックボードの事故状況(2024年1月~2024年11月)
図28は小型原動機付自転車の2024年1月から11月における事故件数の推移です。月ごとに変動は見受けられますが、増加傾向を示しています。死者数については少数となっています。相手当事者別事故推移(図29)によると、四輪・単独・歩行者・自転車が大半を占めています。

出典:警察庁が公開したデータを元に作成(2025年1月15日時点)

出典:警察庁が公開したデータを元に作成(2025年1月15日時点)
特定小型原動機付自転車の運転に関して、一定の違反行為(信号無視等の危険行為17類型)を3年以内に2回以上反復して行った者は、特定小型原動機付自転車の交通ルール遵守を徹底するため、都道府県公安委員会が、「特定小型原動機付自転車の運転による交通の危険を防止するための講習(特定小型原動機付自転車運転者講習)講習」の受講を命じます。既に200名以上が受講しています。受講命令に従わなかった場合は罰金が科せられます。信号無視等の危険行為17類型は図30です。制度の詳細については、警察庁のサイトをご覧ください。
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/electric_mobility/kickboard_koushu.html

出典:警察庁が公表した資料を抜粋して作成
バイクの構造
バイクの基本構造は、4輪車と外観形状は大きく異なりますが、ほとんどの部品は構造や原理が似通っています。図31はバイクの基本構成です。バイクにおいて特徴的な仕様について解説します。

1 エンジン
エンジンの構造や原理は4輪と同じですが、気筒数は独特です。シリンダが1個の単気筒エンジン、シリンダがV型に配置されたV型エンジン、複数のシリンダが直列に配置された直列エンジンなどがあります。燃焼行程は4サイクル、2サイクルがありますが、4輪と同じく排気ガス規制に対応するため4サイクルエンジンだけとなっています。過去にはロータリーエンジンを搭載した車種も販売されました。
2 キャブレタ
いわゆる気化器は排ガス規制に対応することが難しいため、電子燃料噴射装置に置き換わっています。
3 動力伝達
エンジンの出力を駆動輪へ伝える機構は1次減速機構、クラッチ、トランスミッション、2次減速機構で構成されています。クランクシャフトの回転を1次減速機構で大きく減速させます。バイクのエンジンは4輪のエンジンに比べて高速で回転するのでクラッチやミッションの負荷を軽減します。1次減速機の機構はギヤ式が主流ですが、チェーン式やギヤ併用式もあります。クラッチの基本原理は4輪と同じですが、バイクでは寸法的な制約があり小型化のため多板クラッチが採用されています。また、クラッチ板がオイルに浸っている「湿式多板クラッチ」とオイルに浸っていない「乾式多板クラッチ」があります。図32は多板クラッチの動作原理です。クラッチハウジングはクランクシャフトからギヤを経由して回転します。クラッチプレートはクラッチハウジングと一緒に回転します。フリクションプレートはクラッチボスと一緒に回転します。図の左側はクラッチが切れている状態を示し、クラッチプレートとフリクションプレートは接合していないため、クラッチボスは回転しません。図の右側はクラッチが接続されている状態です。クラッチプレートとフリクションディスクが接合しているので、クランクシャフトからの入力はトランスミッションへ伝わります。


最近のバイクには「スリッパ―クラッチ slipper clutch」(もしくはスライダークラッチ slider clutch)と呼ばれる機構が組み込まれています。ギヤをシフトダウンした際、エンジンの回転よりも、タイヤの回転が高い場合、タイヤからエンジンへトルクが伝わります。いわゆるエンジンブレーキがかかる状態です。そうすると、タイヤがスリップしたり、チェーンがバタついたりします。この状態を回避するため、クラッチの圧着力を弱くする機構により、クラッチを滑らせてエンジンブレーキを軽減させます。
クラッチの動作原理については、以下の記事をご覧ください。
2022年6月公開:「自動車トランスミッションへの期待~まだまだ進化が続く」
バイクのトランスミッションはシフトペダルで操作する「マニュアルトランスミッション」と「無段階変速機」があります。マニュアルトランスミッションは「常時噛合い式」と呼ばれる構造が主流です。常にいずれかの変速ギヤがかみ合っています。シフトフォークによって所望のギヤが選択されると、「ドッグ」と呼ばれる機構で勘合し動力が伝達されます。なお、動力を伝えない「ニュートラル」状態もできる構造となっています。ライダの変速操作はシフトチェンジレバーを左足で行います。変速の方式は「リターン式」と「ロータリ式」があります。「リターン式」は1速を踏み下げて選択し、速度が上がるにつれて、レバーを上げていきます。変速の位置は4速の場合、1↔ニュートラル↔2↔3↔4となっています。バイクの種類によってはシーソー式のペダルとなっています。「ロータリ式」は4速の場合、ニュートラル↔1↔2↔3↔4↔ニュートラルと循環する機構となっています。図34はトランスミッションの構造例です。シフトペダルと直結したシフトドラムが回転すると、ドラムに刻まれた溝によって、シフトフォークが移動しギヤが選択されます。

「無段変速機」は4輪のCVTと同様な構造です。トランスミッションの基本構造については前述の記事をご覧ください。スクータでは車速に応じ遠心力を利用してプーリーの幅が変化する構造となっています。
2次減速機の方式は4種類の方式があります。「チェーンドライブ式」が一般的です(図35)。チェーンによってトランスミッションの出力を駆動輪へ伝えます。トランスミッション側のギヤと駆動輪のギヤとで変速比の変更が可能です。「ベルトドライブ式」はチェーンの代わりに、歯が付いたベルト(コクドベルトcogged belt)で駆動します(図36)。「シャフトドライブ式」はトランスミッションと駆動輪を、「ベベルギヤ」と「ドライブシャフト」で駆動する構造です(図37)。スクータの無段階変速機では「ギヤ式」が採用されています。



4 フレーム
バイクの骨格をなす部品です。主要な部品を装着する構造となっています。図38は主要なフレームの構造例です。クレードルフレームはゆりかご(cradle)のようなフレームで構成されます。セミダブルクレードルはダウンチューブを途中から2本に分けた構造です。ダイヤモンドフレームはエンジンをフレームの一部として構成しています。トラスフレームはトラス状のパイプで構成されています。

バイクのフレームはタイプや重量などを考慮した構造が採用されます。鉄製やアルミ製パイプ、プレス成型、ダイキャスト製法に加えて、カーボンファイバー製のフレームも採用されています。
5 サスペンション
バイクのサスペンションはフロントとリヤで構成されます。フロントサスペンションは「テレスコピック式」と「ボトムリンク式」が主流です。「ボトムリンク式」はビジネスバイクなどで採用されています。図39は「ボトムリンク式」の構造です。フォークに取り付けられているボトムリンクが支点を中心に動きます。

図40はテレスコピック式サスペンションの構造です。アッパーブラケットとアンダーブラケットに取り付けられているアウターチューブとインナーチューブが望遠鏡のように(telescopic テレスコピック)伸縮します。

リヤサスペンションはフレームのピボットに接続されるスイングアームとスプリング・ダンパーユニットで構成されます。スイングアームの方式は「両持ち式」と「片持ち式」があります。図41はスイングアームの構造例です。

スプリング・ショックアブソーバの構造は2本(ツインサスペンション)もしくは1本(モノサスペンション)が採用されています。図42、43はリヤサスペンションの構造例です。


6 ブレーキ
バイクは通常、前輪と後輪で独立したブレーキが備えられています。ブレーキレバやブレーキペダルを操作することで、個々のブレーキが作動します。バイクを停車させる際の速度や路面の状況、狙いとする停止距離に応じて、前輪と後輪とのブレーキ力をライダの操作によって行います。そのため、安全にブレーキを操作するためには、ライダのテクニックが求められます。近年のバイクでは前輪もしくは後輪のブレーキを作動させると前後輪を自動的に作動させるシステム(コンバインドブレーキ)が導入されています。制動時の操縦安定性や転倒防止の向上につながります。スクータでも採用されています。後述するABS(アンチロックブレーキシステム)と協調した電子制御システムも導入されています。
ブレーキの構造や原理については過去の記事をご覧ください。
2021年5月公開:「自動車のブレーキ ~ますます高まる重要性」
7 ヘルメット
バイクの構造ではないですが、運転時に着用が必要なヘルメットについて解説します。ヘルメットの着用は道路交通法で定められています。該当する条項をまとめると、以下の通りです。
第九条の五 法第七十一条の四第一項及び第二項の乗車用ヘルメットの基準は、次の各号に定めるとおりとする。
一 左右、上下の視野が十分とれること。
二 風圧によりひさしが垂れて視野を妨げることのない構造であること。
三 著しく聴力を損ねない構造であること。
四 衝撃吸収性があり、かつ、帽体が耐貫通性を有すること。
五 衝撃により容易に脱げないように固定できるあごひもを有すること。
六 重量が二キログラム以下であること。
七 人体を傷つけるおそれがある構造でないこと。
以上の要件を満足するヘルメットであれば法令に違反しませんが、販売されている商品は安全性を高めるための認定を取得していいます。代表的な認定や規格を紹介します。
SGマーク | 財団法人 製品安全協会が認定します。国内で販売されている国産のヘルメットにほぼSGマークが張られています。輸入されたヘルメットにはSGマークが張られていないものもあります。 |
JIS規格(JIS T8133) | SGマークより厳しいと言われています。1種(125cc以下用)、2種(無制限) |
SNELL規格 | 「スネル記念財団」によって設定された基準です。バイク用だけでなく、カート用や自転車用も定められています。 |
ECE規格 | 欧州で使われている規格です。 |
MFJ規格 | 一般財団法人 日本モーターサイクルスポーツ協会(Motorcycle Federation of Japan)が規定した規格です。MFJが主催する大会では認定品を着用しないと出走できません。図44はヘルメットの代表的な種類です。バイクの種類に応じて使い分けられています。 |

エレクトロニクスシステム
近年のバイクには4輪で適用された多くのシステムが採用されています。主要なシステムを紹介します。
1 燃料噴射
電子制御によりエンジンに燃料を噴射します。スロットル角度センサ、O2センサ、吸入空気圧センサ、吸入空気温センサ、冷却水温センサ、カム角度センサなどで構成されています。
2 バルブタイミング
吸気排気バルブの開閉時期を制御します。クランク角センサ、カム角度センサ、スロットルポジションセンサ、ギヤポジションセンサなどの信号から最適なタイミングを制御します。
3 点火時期
点火タイミングを制御します。クランク角センサ、カム角度センサ、スロットルポジションセンサ、ギヤポジションセンサなどの信号から最適なタイミングを制御します。
4 電子制御スロットル
スロットル弁をモータによって電子制御します。スロットルポジションセンサ、スロットル開閉用のアクチュエータ、ECUとで構成されています。
5 エンジンマネジメントシステム
燃料制御、点火時期制御、スロットル制御などを統合したシステムも採用されています。ライダの好みを設定できる車種もあります。
6 通信
各種の電子制御が導入され、センサやデータの共有化が進み、信号や情報の送受信をCAN通信で行っています。
7 ABS
4輪のシステムと同様に、タイヤのロックを防止します。前輪と後輪に装着されたホイールのスピードを検出するセンサとECUとで構成されています。
8 前後輪連動ブレーキ
前後いずれかのブレーキが作動した時にもう一方のブレーキにも制動力を発生させるシステム。ABSと協調することで、タイヤのロックを防ぎながら効率的な制動力を発生させることができます。スクータでも採用されています。
9 トラクション
4輪のシステムと同様に駆動力を制御してタイヤのスリップを軽減します。ECUが前後のホイールに設けられが回転速度を検出するセンサやスロットル開度、エンジン回転数などの情報を元に、点火時期や燃料噴射量を制御してスリップを抑えます。最近のシステムはABSと統合した制御システムとなっています。また、ライダの好みに合わせて、スリップ量の設定が可能な車種もあります。更に進化したシステムでは、車体の動的な情報(ピッチ・ロール・ヨー角速度、前後・左右・上下加速度)に基づいてエンジン制御やブレーキ制御を最適化しています。
10 ローンチ制御
バイクは車体の重量に対して高出力の機種では発進時のスリップを抑えるために、クラッチの制御やエンジン制御を行うシステムです。レース用の車両で導入され市販車にも展開されています。
11 電子制御サスペンション
各種のセンサ信号に基づいてダンパの減衰力を制御します。最近のバイクでは6軸の加速度センサを搭載した制御が行われています。
12 灯火器関連
ランプの光源は4輪車と同様にLED(発光ダイオード)化が進んでいます。バイクのヘッドライトで特徴的なことは常時点灯させることです。海外の基準であるデイタイムランニングランプ(略語 DRL)が2020年9月から認可されました。昼間時に他の車両からの視認性が高まります。DRLとヘッドライトの同時点灯は禁止されています。明るさに応じて自動でヘッドライトが点灯します。DRLの認可によりヘッドライト周りのデザイン性が向上したと評価されています。今後の改定として2023年9月から車幅灯と側方反射器が義務化されます。DRLと同様に世界基準に合わせた保安基準の改定です。
13 アダプティブクルーズコントロール(ACC)
ライダが設定した速度を維持しつつ、先行車との車間距離を適切に保つ機能です。ECUがミリ波レーダの信号を元にエンジン制御、ブレーキ制御などのシステムと協調して最適な速度や車間距離を制御します。
14 デュアルクラッチシステム
4輪で普及しているDCT(デュアルクラッチトランスミッション)がバイクでも採用されています。オートマティックトランスミッションではないですが、変速する際に、クラッチ操作を行わずに変速できる機構が採用されている車種も登場しました。「クイックシフタ」等で呼ばれています。
15 変速システム
① スロットルバイワイヤ
四輪で採用されているスロットルバイワイヤが二輪でも採用されています。250ccクラスでも採用され始めています。アクセルを回すと回転角センサの信号がECUに送られ、アクセル開度に合わせてスロットルバルブを開閉します。この機能によって、クルーズコントロールやトラクションコントロールなどが可能となります。
② クイックシフタ
発進や停止する際はクラッチ操作が必要ですが、走りだせば、シフトペダルの操作だけで変速ができます。導入当初、シフトアップ時の機能でしたが、電子化が進展しシフトダウン時も変速が可能となっている車種もあります。変速機構をさらに進化させた機構がホンダから発売されました。
③ E-Clutch
発進時を含めてクラッチ操作が不要となっています。なお、従来のクラッチも装備されており、ライダのクラッチ操作が優先される構造です。登録された商標は「Honda E-Clutch:ホンダイイクラッチ」です。表4は従来システムとの比較です。Honda E-Clutchではクラッチレバを操作せずに変速できることが理解できます。加えて、クラッチ操作による変速も可能となっています。図45はHonda E-Clutchの構造イメージです。従来のクラッチにモータによる回転機構を付加したシンプルな構造です。

クラッチ形式 | シングルクラッチ | デュアルクラッチ | ||
---|---|---|---|---|
マニュアル トランスミッション |
クイックシフタ | Honda E-Clutch | DCT | |
発進時の操作 | クラッチレバ&スロットル | クラッチレバ&スロットル | スロットル | スロットル |
変速時の操作 | クラッチレバ&シフトペダル | シフトペダル |
シフトペダル (クラッチの制御はシステムが自動で) |
― (自動変速、任意操作は可) |
停止時の操作 | クラッチレバ&ブレーキ操作 | クラッチレバ&ブレーキ操作 | ブレーキ操作 | ブレーキ操作 |
マニュルクラッチの操作 | 操作可 | 操作可 | 操作可 | ― |
図46はモータ制御によるクラッチ操作とクラッチレバによるクラッチ操作、モータ制御の途中でクラッチレバの操作による介入があっても、クラッチレバの操作が優先されることが判ります。

次に各社から公表されている変速システムを紹介します。変速システムの構造を理解しやすくするため、改めて二輪用トランスミッションの基本構造を示します(図47)。各社から公表されているシステムはアクチュエータの構造や動作は異なっているものの、エンジンからの動力をクラッチで断接し、シフトドラムで変速ギヤを選択することで最適な変速を行っています。

④ ヤマハY-AMT※5
ヤマハから、マニュアルトランスミッションの変速機構やクラッチ機構に大幅な構造変更を加えることなく、ハンドルのスイッチ操作だけで変速ができるシステムが採用されました。当然のことながら、車速やその他の条件に応じた最適な変速を行うオートマティック機能も装備されています。図48はY-AMTの基本構成です。変速をつかさどる、シフトアクチュエータとクラッチの断接を行うクラッチアクチュエータで構成されています。エンジンコントロールユニットとアクチュエータコントロールユニットが連携して、クラッチ操作と変速操作を行います。マニュアルモードではライダが変速レバーを操作して変速を行えます。
ヤマハ発動機株式会社の登録商標。登録商標は、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で検索できます。

⑤ BMW ASA(Automated Shift Assistant)
クラッチ制御と変速制御を自動で行うシステムです。動作モードとして、「Mシフトモード」と「Dシフトモード」を選択できます。「Mシフトモード」では変速をライダが選択するモードです。「Dシフトモード」は変速が自動で行われます。基本構成は2つの電気機械式アクチュエータでクラッチとトランスミッションを制御します。ライダが要求した変速は、従来の足によるシフトレバーによって作動するギアシフトレバーセンサの信号がトランスミッションコントロールユニットへ伝達されます。その他のセンサとして、トランスミッションの入力シャフト回転速度とクラッチ位置情報が装備されています。これらの値は、エンジンコントロールユニットと連携し、クラッチを最適に制御するアルゴリズムにより、変速制御や動作状況制御の判断が行われます。クラッチは、クラッチ情報とスレーブ・シリンダーの間に油圧リンクを持つ油圧システムと組み合わされた電気機械式アクチュエータによって作動します。クラッチアクチュエータは変速時などにクラッチのスリップ量を制御するとともに、変速後にはクラッチ締結し、車両が停止する時にはクラッチを開きます。


ASA(BMW)とY-AMT(YAMAHA)との比較は表5です。ASAおよびY-AMTともマニュアルで変速するための手段として、シフトペダルやシフトレバーが具備されていますが、いずれも、機械的な手段ではなく電気的な信号を発生させるセンサの位置づけです。

既存の変速システムおよび、本稿で紹介したシステムの比較は表6です。クイックシフト(QS)は変速時に機械的なクラッチ操作を行わなくても、変速が可能です。E-Clutchはオートマティック化した変速ではなく、クラッチ操作を行わなくてもクラッチの断接をアクチュエータが行います。DCT(デュアルクラッチトランスミッション)は4輪でも採用されているオートマティックトランスミッションと同様な機能です。

16 エレクトロニク・ステアリングダンパー
ステアリング操作に対して、状況に応じた最適な操舵力を制御します。電気制御のダンパとセンサで構成されます。ダンパはコントロールユニットの指令に従って減衰力を調整します。センサとしては、車速センサ、バイクの傾きや旋回動作を検出するジャイロセンサなどが採用されています。バイクが低速走行の際は、ダンパの減衰力を低くし、ハンドル操作が軽快に行えます。中速以上では、減衰力を高めてハンドルの過度な操作を抑制します。急加速減速時には動的な減衰力を制御します。
17 盗難防止
バイクは自動車に比べて小型軽量であることから盗難されやすいです。防止策として、盗難抑制装置の導入が進んでいます。一例では、ライダが携行するカードキーとバイク側に装着されたECUと相互に通信し認証を行うことでハンドルロックの解除やエンジン制御の動作などを可能にするシステムです。駐車中のバイクの振動を検知して警告音を発する装置やバイクの位置をGPSの情報で特定できる装置も採用されています。
18 ウイリーコントロール
高出力のバイクは、不用意にアクセルを開けた時にフロントタイヤが浮くことがあります。 それを、トラクションコントロールと同じく駆動力をコントロールすることで、フロントタイヤの浮き上がりを抑制する機能です。
19 電動車
バイクにおいてもカーボンニュートラルへ向けて電動車の販売が始まっています。2000年前半に市販化されましたが伸び悩みました。2010年になるとバイクメーカ各社が販売を開始し、いよいよ普及が始まりました。システムの基本構成は、ブラシレスDCモータ、リチウムイオンバッテリ、ECUです。また、家庭用のコンセントで充電が可能な車載充電器も装着されています。モータとエンジンを併用するハイブリッド車も市販されています。バッテリは車体固定型や可搬型があります。可搬型のバッテリに関する規格を統一し、相互に利用できるようにする活動が開始されています。さらに、2022年4月 ENEOS、Honda、カワサキモータース、スズキ、ヤマハ発動機の5社によって、電動二輪車の共通仕様バッテリのシェアリングサービス提供などを目的とした法人 株式会社Gachaco(ガチャコと呼称)が設立されました。詳細は株式会社Gachacoのサイトをご覧ください。(https://gachaco.co.jp/)
20 電動過給機
エンジンの効率化や出力を高める方法として過給機が採用されています。四輪では搭載実績のある排気を利用したターボチャージャと機械式スーパーチャージャが採用されていますが、エンジンの更なる効率向上と環境要件へ対応するために、電動過給機(スーパーチャージャ)の採用が期待されます。
21 カーボンニュートラル対応
レース用のバイクではカーボンニュートラル燃料を義務化しているカテゴリはあります。市販車へ適用は、技術的に可能ですが、燃料コストやインフラ整備等の課題はあるものの、今後期待されます。
関連計測器の紹介
バイク開発で使用される計測器の一例を紹介します。

その他の製品や仕様については計測器情報ページ から検索してください。
おわりに
1989年に総務庁(現在の内閣府)がバイクの交通事故撲滅を目指し、毎年8月19日をバイクの日と制定しました。バイクは移動手段としてだけでなく、ライダがバイクと一体となって、景色や空気を直接感じることができますが、4輪とは違った安全面の意識や行動が必要です。特に注力すべきは、電動キックボートの普及拡大とともに違反検挙数や事故件数が増大していることです。一方、4輪で採用されているシステムが二輪へも展開され独自のシステムへ進化しています。これからも、バイクの楽しさや便利性を求めつつ、バイク業界がさらに発展することを期待します。
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