車載ネットワークの歴史と規格概要~CANからLIN、FlexRay、CAN FD、Ethernetまで
この記事は、2020年11月2日に公開した「車載ネットワークの歴史と規格概要~CANからLIN、FlexRay、CAN FDまで」を改版したものです。
今や、車両に搭載されているほとんどのECU※1に通信手段が搭載されています。2輪車でも中型大型車で採用が進んでいます。本稿では通信手段の中でも、日本や欧米で生産されている車両のほとんどに適用されている通信プロトコル※2CAN※3を主に、導入されてきた経緯や現状について概説します。
始めに車両内ネットワークが導入された背景や歴史を述べてから、CAN規格の概要を説明します。CAN以外にLIN、FlexRay、CAN FDという現在導入されている主要な規格が生まれた理由や、特長、使用されるアプリケーションなども解説します。最後に今後の規格の動向と、評価用測定器の代表例を紹介します。
《本稿の記述は、筆者の知見による解釈や、主観的な取り上げ方の面もあることをご容赦ください。》
Electronic Control Unit エンジンやブレーキ、通信機器を制御するユニット
ここではECU間の信号を送受信する手順のこと
Controller Area Network
車両内通信が導入された背景
車両内には「走る・曲がる・止まる」機能をつかさどる多くのECUが搭載されています。また、ナビなどのインフォテイメント※4や快適システム、ボディ制御にも適用されているので、ECU間の通信手段がないと車両システムを構築できない状況です。
インフォメーション(情報)とエンターテインメント(娯楽)を合わせた造語。車載システムでは情報と娯楽の2つが提供されるため、このように呼ばれる。

ECU間の信号をやり取りするために通信手段が導入されるまで、自動車の高機能化、高度化に合わせて、ECU間を一対一の配線を接続することで行ってきました。しかしながら、各種の情報を入出力する信号やモータなどを制御するアクチュエータの数が年々飛躍的に増大し、従来手法では入出力信号を接続するコネクタのサイズが大きくなるとともに、ECUサイズの増大や配線重量の増加などの課題が深刻化してきました。
従来の配線方式でシステムを構成すると、
- 配線本数が多くなる
- コスト、重量、配線やECUの体積が増える
- 複数のECUに各種の信号がまたがるので制御が複雑化する
- 制御仕様や構造変更が難しくなる
- 各ECUの故障診断、安全設計が複雑化する
などの課題が顕在化してきました。これらの課題を解決するために、ECU間を接続する配線の本数を減らすことが最も効果的といえます。この課題を解決する手法として、いわゆるネットワークの導入が検討されました。ネットワークを適用することの効果は配線が減るので明確です(図2)。


車両内ネットワークの歴史
車両内ネットワークを実現するためにECU間を接続するプロトコルが検討されました。1980年頃から、各自動車メーカは独自のプロトコルを導入してきました。この時点で、本稿で主に着目するCANは既に採用されていますが、標準化へ移行するほど、浸透していません。
No | 自動車メーカ | プロトコル |
---|---|---|
1 | GM | J1850VPW |
2 | フォード | J1850PWM |
3 | ダイムラー | CAN |
4 | BMW | I-BUS |
5 | トヨタ | BEAN |
6 | ホンダ | MPCS |
7 | 日産 | DUETTE |
8 | マツダ | PALMNET |
9 | 三菱 | SWS |
出典:平成18年度 標準化経済性研究会報告書
CANの開発は、1983年頃にボッシュ社※5で開始されたました。このプロトコルは、1986年にデトロイトで開催された米国の自動車技術会(Society of Automotive Engineers)の会議で公式に発表されました。この仕様に基づいて、1987年にインテルとフィリップスがCANコントローラICを製造し、初めて発売されました。実際に量産車へ適用されたのは、1991年にベンツSクラスが最初です。その後、標準化の動きとなり、1994年に国際標準化機構(ISO)により標準規格(ISO11898/ISO11519)になりました。
Robert Bosch GmbH ドイツに本社がある世界最大の自動車部品(電装品)メーカ
規格 | 種類 | 通信速度 |
---|---|---|
ISO11898 | 高速CAN通信 | 125kbps~1Mbps |
ISO11519 | 低速CAN通信 | 125kbps |
CANプロトコルを適用する場合は主要な知的財産権を保有するボッシュ社へライセンス料が発生します。マイクロコントローラ※6などでCANプロトコルが採用されている場合、マイクロコントローラのサプラィヤーが予めライセンス料を支払っていると思われます。ボッシュ社のWebサイトでライセンスの条件を閲覧することが可能です。車両システムの故障状況やシステム診断を外部機器と接続をするプロトコルは欧米ではCAN規格が採用されています。日本でも全ての自動車メーカがCANを採用しています。CANの開発経緯から、採用されているのは車両システムだけと思われるかもしれませんが、産業用の設備や医療関係の機器など、多くの分野でも採用されています。
microcontrollerメモリやI/Oを内蔵して、電子機器の制御に特化した低価格のマイクロプロセッサ。
CAN規格の概要
それでは、CANの仕様について概説します。CANには多くの特徴があります。
1. 低コスト・省配線
各ECUをシリアル配線で接続するため、車両全体の配線コストを下げることができます。

信号によっては配線で接続する場合もある
ネットワークトポロジ(配線の構造)にはスター型、リング型、バス型などがあり、CANはバス型です。



2. システムの柔軟な拡張性
バス型のトポロジなのでノードの追加や削除がしやすい構成です。
3. 高信頼性
外部ノイズに強い差動信号方式となっており、またデータの正確性を検知するCRC(Cyclic Redundancy Check)が付加されています。
4. マルチタスク
各ノード※7からアクセスできるマルチマスタ方式※8を採用しています。バスが空いていれば、どのノードからでも送信を開始することができます。
node コンピュータネットワークにつながったさまざまな機器(能動的な電子デバイス)。
1つのネットワーク内で複数のマスタがスレーブに対して通信できる方式。1つのノードがマスタとなり、それ以外のノード(スレーブ)の通信タイミングをコントロールするのをシングルマスタ方式という。

5. 送信の優先順位付け
他のノードよりも早くバスにアクセスしたノードが送信の優先権を得ますが、複数のノードから同時にデータが送信された場合、バス上で信号の衝突を検知し、ID※9による優先順位の決定が行われます。優先順位が高いIDが送信されることになります。この方式はCSMA/NBA方式(Carrier Sense Multiple Access Nondestructive Bitwise Arbitration)といわれています。Ethernetで採用されている方式はCSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection)です。信号の衝突を検知したノードは他のノードが発信していないかを検出し、発信していない場合、所定時間待機後に再送信します。そのため、一時的にバスが空になり、バスの使用効率が低下しますが、CANの方式は何れかのノードが送信するのでバスの使用効率は高くなります。
バス上に送信するデータの内容や送信ノードの識別、優先順位情報
CAN以外の規格の概要
車両内ネットワークのプロトコルにはCANの他にも、通信速度やコストなどの目的に応じた各種のプロトコルが採用されています。代表的な規格として、LIN、FlexRay、CAN FDがあります。
1991年 | ISO11519-1認証(CAN低速規格) |
---|---|
1993年 | ISO11898認証(CAN高速規格) |
2000年 | LINコンソーシアム設立 |
2000年 | FlexRayコンソーシアム設立 |
2012年 | ボッシュ社がCAN FD 1.0を発表 |
1. コスト重視のプロトコル ~ LIN(Local Interconnect Network)
CANは既に多くの車両やシステムで採用されていますが、アクチュエータなどの通信ではブレーキの制御システムで求められるような通信速度や信頼性は必要とされていません。コストの観点でもCANの採用は最適と思われません。そこで、策定されたのがLINです。2000年にコンソーシアムが設立され、自動車メーカ、半導体サプライヤーなどが参加し、規格化を推進してきました。CANプロトコルと異なりLINプロトコルはパテントフリーです。適用されている分野はパワーウインドウ、ドアロックなどの快適系やウォーターポンプなどの制御系で採用されています。LINの主な特徴を以下に述べます。
1)ネットワークトポロジ
ワイヤ1本で構成するバス型です。ハードウエアのインタフェースはコンパレータ方式なので、CANに比べて低コスト化が可能になります。
2)ネットワークマネジメント
シングルマスタ方式です。CANのようにメッセージの調停を行わないので、マスタノードが通信スケジュールの管理と「トークン」といわれる送信要求をバス上に送信します。スレーブノードは「トークン」に応じてデータを送信します。

3)通信方式
多くのマイクロコントローラに搭載されているUART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter 汎用非同期送信受信)を使用して送信受信を行います。
4)クロック精度
マスタノードの最大許容誤差は0.5%以内、スレーブノードの最大許容誤差は15%以内です。
5)同期方式
スレーブノードはフレームごとにクロック誤差を補正するためのデータを受信します。データ1ビットの時間を計測し、必要に応じてUARTのボーレートを調整します。この方式により、スレーブノードがクロックの精度を高めることは不要になります。
2. 制御系のECUで適用されている高速プロトコル ~ FlexRay
2000年に欧米の自動車メーカや半導体メーカがメンバーとなったFlexRayコンソーシアムが設立され、規格化の活動を推進してきました。FlexRayのコンセプトはCANに比べて、機能性能の面で上位に位置づけられる仕様です。適用を想定しているシステムとしてはステアバイワイヤ※10などです。このシステムではデータ送受の高速性に加えて、冗長性が求められます。日本では2004年にCANの代替規格としてFlexRayのコストダウンを観点にした規格の策定を主な目的として、自動車メーカやサプライヤーが参加したJASPAR(Japan Automotive Software Platform and Architecture)が設立され、仕様を策定してきました。
Steer-by-wire 自動車の運転制御システムの一種。従来の機械式制御に代わり電線(ワイヤ)の電気信号でステアリングを制御する。
FlexRayの主な特徴は、以下の4つが挙げられます。
1)時分割アクセス
通信方式はTDMA(Time Division Multiple Access)。ノードの通信時間を一定時間ごとに分割することで多重通信を実現しています。この方式では、送信タイミングや順番を予め定めているので、送信の衝突は発生せず、バス上の負荷を制御できます。CANはイベントドリブン方式(送信するタイミングは各ノードが独自に送信)です。前述したCANの特長であるデータの衝突と優先順位処理が発生します。そのため、CANでは期待したタイミングでデータの送信を行えない可能性があります。
2)ネットワークトポロジ
CANはバス型ですが、FlexRayはスター型、バス型との混合型など、色々なトポロジに対応できます。
3)高信頼性
ネットワークが2重化されているので、冗長性が高く、通信の継続性を維持できます。
4)高速通信
最大10Mbpsが可能です。
3. CANの高速化プロトコル ~ CAN FD(CAN Flexible Data rate)
CANの通信速度はシステムの高度化に対して、送受信のスピードやデータ量の課題が顕在化しました。これらの課題を解決するため、ボッシュ社はCAN規格の拡張に取り組み、2012年にCAN FD 1.0を発表しました。この仕様では、高速の通信速度に切り替わるだけでなく、異なるデータ長を可能にするデータ構造となっています。CAN FDは既存のCAN 2.0プロトコルと互換性があり、CAN FD ECUは既存のCAN ECUと同じバス上に共存できます。
車両内ネットワークで主として採用されている各プロトコルの特長をまとめると以下の通りです。
プロトコル | CAN | CAN FD | LIN | FlexRay |
---|---|---|---|---|
アプリケーション例 | 制御系 | 制御系 |
ボディ制御、 アクチュエータ制御 |
シャーシ制御 |
エンジン、ブレーキ、電動パワステ | EV、エンジン | ドア、エアコン | ステアバイワイヤ | |
特徴 | プロトコルとして主流 | CANの高速化 |
低コスト、 簡単なデータ保護(パリティ、チェックサム) |
高速通信、高信頼性 |
最大通信速度 | 1Mbps | 5Mbps | 20kbps | 10Mbps |
送信データ長 | 8byte | 64byte | 最大8byte | 254byte |
ハードウェアインタフェース | 差動電圧(2線) | 差動電圧(2線) | コンパレータ(1線) | 差動電圧(2線、2チャンネル) |
CANに関する今後の動向ですが、2018年頃から、第三世代CANと言われるCAN XL(Controller Area Network with Extended Length)※11が開発されています。既存のCANやCAN FDが制御に用いる信号などの通信を目的として開発されましたが、CAN XLの基本コンセプトはEthernetとの共存を想定したサービス指向の通信に対応するために開発されたと推察します。基本仕様を列挙すると以下の通りです。
- 最大20Mbpsの伝送速度
- CANフレームあたりのデータ数を最大2,048byteまで拡張可能
- 既存のCANおよびCAN FDと共存が可能
- CAN FDと車載Ethernet100BASE-T1(後ほど解説)とのギャップを補間
- 上位層のプロトコルであるTCP/IP※12などの使用が可能
「CAN」、「CAN FD」、「CAN XL」、「Ethernet」は各社の登録商標。
(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)インターネット通信において、最も利用されているプロトコル。通信する際の手順などが規定されている。
CAN XLの詳細は、CAN in Automationのサイトをご覧ください。
高度化する車載ネットワーク
日産自動車が2019年9月に発売した新型セダン「スカイライン」では、車載Ethernetを採用したことが明らかになっています。その後、多くOEM※13で採用されています。今後、CASE※14の進展とともに、高精細カメラや車載レーダ、LiDAR※15などによるセンシング技術の高度化が必要となり、従来の通信手段では通信速度やデータ量の対応が難しくなっています。
(Original Equipment Manufacturer) 自動車業界では一般的に完成車メーカを指す。
Connected(コネクティッド)、Autonomous(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字をとった造語。
Light Detection and Ranging(光検出と測距)またはLaser Imaging Detection and Ranging(レーザ画像検出と測距)。光を使ったセンシング技術の一つで、自動運転での導入が有望。
1. 車載Ethernet
最大1Mビット/秒のCANに対して、車載Ethernetの規格 100Base-T1※16では100倍以上の100Mビット/秒でのデータ伝送が行われます。なお、PCなどで普及している100Base-TXとは各種仕様が異なっています。先ず、一般的な民生用Ethernetと車載Ethernetとの違いを概説します。民生用規格100BASE-TXを車載へ適用する際の物理的な課題として以下の事項などが挙げられます。
- 動作電源電圧
- 動作保証温度範囲
- EMC(Electro Magnetic Compatibility:電磁適合性)対応
- 待機時の電流(一般的には暗電流と呼称)
- 通信時刻の同期性
- 実装するECUのCPU性能や使用メモリ容量の負荷
- 通信ワイヤのコスト(2本のツイストペア線、樹脂で保護)
本規格を標準化したIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)から10BASE-T1、1000BASE-T1も追加。
それらの課題を解決するために車載Ethernet規格100BASE-T1が策定されました。仕様の比較対象として民生用規格100BASE-TXを挙げます。
- 通信速度は民生用Ethernetと同等の100Mbps
- 信号方式は、EMC対応としてPAM3※17を採用
- 一本のペア線(送信信号、受信信号)で通信。100BASE-TXは送信信号ペア線、受信信号ペア線で通信
- ネットワークトポロジはバス型(マルチドロップ型とも呼称)。100BASE-TXはスター型
- ケーブル長の短縮化(100m→15m)
- コネクタは採用側の仕様
などです。詳細な技術仕様については各所の情報をご覧ください。
(Pulse Amplitude Modulation 3-level) 伝送する信号を3つの電圧レベル(+1/0/-1)で規定。従来のPAM2(+1/0)に比べ伝送効率が高められる。
車載Ethernetの仕様策定を推進している組織は「OPEN(One-Pair Ether-Net)Alliance」です。日本においては、一般社団法人JASPAR(Japan Automotive Software Platform and Architecture:ジャスパと呼称)が高速LAN等の標準化活動を推進しています。
2. 光ファイバ通信
1)MOST(Media Oriented System Transport)
車載のマルチメディア系で採用されている通信規格です。3つの速度グレード(25/50/150Mbps)があります。150MbpsのMOST150は高速化しただけでなく、Ethernetとの共存を可能にしています。MOST150からEthernetへ接続することが可能です。仕様の策定を推進している団体はMOST Cooperationです。
2)高速光ハーネス化
車載ネットワークの進化として、光ファイバによるハーネス化は1980年代から検討されていますが、光系のデバイスやファイバそのもののコスト課題が解決できずにいました。近年の技術進化により現実的な手法として検討が進められています。また、高精細センサである8Kカメラを採用するシステムでは伝送レートが20Gbpsを超えることが想定されるので、光通信の採用が進展する状況となっています。光ハーネスの特徴を挙げると以下となります。
- 10Gbps超の超高速通信が可能
- 金属ワイヤーハーネスに比べ軽量かつ細径
- EMC耐性が優位
- 光分岐デバイスを用いると、信号の分岐が可能。例えば、高精細カメラのデータをADAS ECUと表示系ECUへ同時に送信が可能
一方で、量産車へ適用させるためには、コストダウンを含めて光ファイバハーネス、光コネクタ、光分岐デバイスなどの技術開発が必要です。
3)無線通信
無線通信の新たなアプリケーションとして、電動車のバッテリモニタシステムへ適用が進んでいます。電動車のリチウムイオンバッテリはセル自体のコストが高く、さらに各セルの電圧や温度を監視するICやハーネスの複雑化やコストダウンが課題です。その解決策として、ワイヤレスのバッテリマネジメントシステムが検討されています。具体的にはバッテリセルを監視する各監視ICと監視ICを統合するマイコン間のハーネスをワイヤレス化し、ハーネスやコネクタ類の材料費およびバッテリパックの製造コストの削減、さらに、ハーネスが省略できることで、重量軽減や小型化につながります。ワイヤレス通信の手法として、標準化されたSmartMesh(スマートメッシュ)技術を適用した例があります。詳細は各所の技術情報をご覧ください。

3. CXPIインタフェース(Clock Extension Peripheral Interface)
既存技術のLINをより高速化しつつもCANに対して低コスト化を狙った通信規格です。LIN通信はシングルマスタによる定期通信なので応答性に制約があります。一方、CXPI通信は各ノードからの通信が可能です。また、CRC(Cyclic Redundancy Check)によりデータの信頼性が高められています。応答性が求められるHMI領域(Human Machine Interface)で適用されることが想定されます。公益社団法人 日本自動車技術会でJASO D 015として策定され、その後、2020年にISO 20794として国際標準化されました。CXPI通信と他の通信との位置付けは図8となります。なお、厳密な区分ではなく、イメージとして作成しています。

CXPIの特徴を概説します。
-
①ネットワーク構成
LIN通信と同様に単線によるバス型のネットワーク構成です。 -
②ネットワークマネジメント
1マスタとスレーブノードで構成されます。スレーブノード数は最大16です。 -
③アクセス方式
CSMA/CR※18方式、定期応答とイベント応答が可能です。 -
④通信方式
PWM方式。マスタノードがバスへクロックを供給し、スレーブノードは、このクロックを用います。 -
⑤伝送ボーレート
LIN通信と同様に最大20kbpsの通信レートです。 -
⑥同期方式
マスタノードからのクロックで同期できます。 -
⑦エラー検知
CAN通信で適用されているCRCが通信のエラー検知に適用されています。 -
⑧フレームバイト
1フレームで12byte、バーストフレームで255byteまで送信可能です。
(Carrier Sense Multiple Access/Collision Resolution) バスにメッセージを送信した際、データ衝突の調停を行う方式。
関連計測器の紹介
車載ネットワークに関連した計測器の一例を紹介します。

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おわりに
車両内ネットワークの導入により、システムの多機能化や高度化を実現してきましたが、自動車世界に変革をもたらすといわれているCASE(Connected、Autonomous、Shared、Electric ケース)により、自動化や電動化がさらに進みます。これらを実現するためには車両システムを構成するネットワーク技術の重要性がますます高まってくると推察されます。今後も車両内ネットワーク技術の動向に目が離せません。
この記事は、2020年11月2日に公開した記事「車載ネットワークの歴史と規格概要~CANからLIN、FlexRay、CAN FDまで」を改版したものです。技術情報の追加や最新情報による内容の更新を行いました。併せて、内容の整合を図るため文章の調整を行っています。今後も、技術の進化に合わせて、改訂や改版を行ってまいります。
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