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年間50回超! 有名企業から引く手あまたの人気講師に聞く(1/2)

Q:オシロスコープではプローブが重要なのですね
お客さまの例を紹介すると、ある半導体メーカに転職してきたエンジニアで、「私はプローブから選びます」という方がいました。自分の測定したいものに最適なプローブを選んでから次にそれが使えるオシロスコープを選びます。「オシロスコープは後回しです」という言葉が、とても印象に残りました。デバイス屋さんなので、評価で色々と苦労されたのでしょうね。よくわかっている方です。

テクトロニクスの1GHzモデルのオシロスコープを購入すると、1本 10万円しないプローブが4本付いてきます。これは1GHzの性能のプローブです。ところが、別売で、1本50万円の1GHzプローブもあります。値段が数倍以上違います。何が違うのでしょうか?これにはそれなりに意味があるはずです。カメラでも入門用に付いてくるレンズと同じ焦点距離でも、値段が10倍くらい高いレンズもあります。本当に1GHz帯域のオシロスコープをフルに使おうと思ったら、付属のプローブではダメなのです。これは車を購入したら、なんとなく付いてきたタイヤと同じです。エンジンはどんどん性能が上がって200馬力ありますよ、というのに貧弱な細いタイヤを履いていたらどうでしょう。直線では走れても、カーブではとても危ないじゃないですか。やっぱり良いタイヤを使わないと、せっかくの車の性能を発揮できません。

ところが、200万円のオシロスコープに1本50万円のプローブを4本用意したらいくらになりますか。倍の400万円です。これはさすがに大人の事情というものがあります。全部は揃えられませんね。そこで、”2本くらいをレンタルにしたら全部揃えられませんか?”とお話します。費用分散のお勧めです。何も毎回高いプローブが必要なわけではありません。付属のプローブで十分な場合もありますし、いざと言うときには高いプローブが必要になります。使い分けが大事です。そのあたりの使い分け方法、効率的な投資の仕方についても、私のセミナーではお教えしています。

プローブをしっかり理解して使い分けができるようになると、無駄な購入を抑制することができます。例えば、最低限の良いプローブを揃えていって、社内では共有化して使いまわすのもやり方です。アクティブプローブは高額ですから、部として共有で使うのです。ただし壊しやすいですから、注意点はセミナーを受講していただいて、扱い方を憶えていただいています。このように高額プローブを共有化したあるお客さまで、”私のセミナーの受講者でないと共有品は使えない”というルールになった会社もあります。計測管理部門が修理費を抑制するためにそんな決まりを作ったので、その会社では、ほぼ全員にセミナーをしました。また、ある会社では、3年間かけて数十台のオシロスコープを入れ替えよう、ということが始まりました。新しく導入したモデルの”使いこなしセミナー”を実施しました。スタートアップでどんどん使いこなしてもらうためには、このようなセミナーが有効です。新しいモデルを使ったら、”結果がすぐ出て業務が速く進む”となれば、開発効率が高まるはずです。


結局はノイズなんです


Q:オシロスコープの機能や性能も様変わりしたのでしょうか?
最近では、だんだんと測定も難しくなってきて、もう測れないのではないかという事例を聞く機会が増えました。具に波形が変わってしまいます。最近の高性能なオシロスコープには計測シミュレータ機能があって、現実の波形はこうではないか、という製品も出てきていますが、それは本当に正しいのかはわかりません。

最近のカメラなどは内部のLSI内にDDRが入ってしまっていて、外からは測れません。半導体メーカが作り込んでいるので、それはそれで良しとしましょう、ということです。普通のテレビのDDR内蔵製品でも、決められたパターンを入力し、これで動作することがわかっている。そのパターンは半導体メーカでも推奨しているパターンだし、シミュレータでやっても同じだから、それで良しとして、測定しないでも良いじゃないか、ということもあります。

DDRは速いですが、その周辺の回路ブロックは汎用オシロスコープで測定できる速さで、オシロスコープに求められることはあまり変わっていません。高速信号の部分ではインタフェースとしてPCI-Expressなどがありますので、オシロスコープの広帯域化が進み、求められる役割が増えてきたように思います。

今後のトレンドとして、信号レベルはどんどん下がっています。ただしノイズは変わらないのでその差(S/N)が厳しくなっていきます。(注:S/N:信号SignalとノイズNoizの比のこと。)ノイズの影響が大きくなる傾向です。そんな背景からか、12ビットオシロスコープが計測器メーカ各社から商品化されています。ノイズを正確に見るには従来の8ビットでは無理です。(注:デジタルオシロスコープのA/Dコンバータは、製品の価格帯に無関係に8ビットが標準です。)最近テクトロニクスが12ビットモデルを出しましたし、キーサイト・テクノロジーも10ビットモデルがあります。デジタルとはいえ、ノイズの重要性が増しているということです。機械が動かない原因は、大抵が電源にあることが多いです。電源とアースです。結局はノイズです。個人的には、昔からオシロスコープが8ビットであることに不満を感じていました。譲歩したとしても10ビットは必要でしょうね。ただし、A/Dコンバータのスピードを優先したので、ずっと8ビットで来たのです。(注:A/Dコンバータはオシロの中核部分なので高額です。)10ビットや12ビット製品が出てきて、やっと時代が追いついてきたと感じています。


次号へ続く..."計測テクニックを伝えていきたい、残していきたい"


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