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オシロスコープ プローブの種類 ~ 原理、選び方、基本的な使い方

オシロスコープのプローブは多くの種類があり、用途によって使い分けられています。現在のオシロスコープの元となるトリガ掃引式のアナログオシロスコープは1950年代に普及し、半導体の進歩によって多くのプローブが1970年代にできました。デジタルオシロスコープが登場しても、アナログかデジタルかの違いやメーカに関係なく電圧・電流プローブは共通で※1、1980年代には基本的に現在と変わらないプローブがつくられています。2000年代以降にオシロスコープの周波数帯域が数十GHzに伸びると、プローブの性能も向上しますが、基本的な原理は変わっていません※2

※1

近年はプローブの高性能化で、オシロスコープメーカ独自のプローブインタフェースがあり、同一メーカのオシロスコープでも使用できるプローブが限定される場合があるが、標準プローブはBNCコネクタで、多くのメーカのモデルに共通で使用できる。

※2

メーカの独自技術や新しい半導体による性能向上はある。

本稿では、プローブの役割の説明から始まり、主要な電圧・電流プローブの原理、構造、仕様、用途などを述べ、代表的なモデルを紹介します。パッシブプローブ(標準、高電圧)、アクティブプローブ(シングルエンド、差動)、電流プローブ(カレントトランス、AC/DC電流プローブ)、ロゴスキーコイル電流プローブ、ロジックプローブを説明します。用語解説や関連する技術解説記事、代表モデルの詳しい仕様も案内します。最後に、主要なオシロスコープメーカのプローブのモデル数を種類別に一覧表にしました。パワーエレクトロニクスや高速シリアル通信など、時代の要請に応える波形測定には各種のプローブが使用されます。メーカによって名称・品名が異なる電圧・電流プローブを整理して概説したので、オシロスコープ プローブの基礎・入門となっています。基本的な使い方にも触れました。

プローブの役目

測定対象(信号源や電子回路)の信号を検出し、オシロスコープの入力端子まで信号を伝送するのがプローブの役目です。オシロスコープは時間波形を正確に観測して表示するのが第一の役割のため、プローブを使ったことで波形や測定対象の動作が変わっては問題です。一般に計測器がセンシングのためにテストリードやフィクスチャなどの探針をDUTに接続すると※3、測定対象は影響を受けて僅かに動作が変わります。プローブが接触していない状態で動作している電子回路にプローブがつながると、回路は少なからず影響を受け、オシロスコープがつながった状態の波形を観測することになります。ですから、プローブの1番目の役目は「被測定回路の動作に影響を与えない(影響を最小限に抑え、測定者が求める精度を確保する)」ことです。測定対象への負荷を軽減するともいいます。測定対象の動作条件は千差万別で、測定したい電圧・電流値だけでなく、インピーダンスや動作周波数などを考慮して、DUTに影響を与えない最適なプローブを選ばないといけません。逆にいえば、さまざまな測定対象(アプリケーション)に対応して、多くの種類のプローブがつくられています※4

※3

英語のprobeは探針と訳されている。DUT(Device Under Test、測定対象物)に接触や挿入する針を指す。DMMではテストリード、LCRメータではテストフィクスチャ、電力計ではクランプセンサ、オシロスコープではプローブが使われる。

※4

大手オシロスコープメーカは約100種類のモデルのプローブをラインアップしている。

プローブの役目を重要な順に列記すると次のようになります。

  • 測定対象への影響(負荷)を最小限にする
  • 測定する周波数帯域を確保する(オシロスコープの特性を劣化させない)
  • 外部で発生しているノイズの流入を防ぐ
  • 微少な信号でも確実にオシロスコープに届ける

測定対象に最小の負荷効果で、オシロスコープの性能を損なわず、波形を歪なくオシロスコープに伝送したかは、測定結果からは知ることができません。本稿で述べる各プローブの解説が、選定の助けになれば幸いです。

プローブの種類

プローブを機能で分類すると図1になります。電圧プローブ、電流プローブ、ロジックプローブの順に特長、用途などを表1にしました。

図1 プローブの種類(名称)

図1 プローブの種類(名称)
表1 主要なプローブの特長、用途、品名
No 種類(名称) 外観の例 タイプ フローティング測定 特長、用途、主な仕様 別名・品名
1 標準プローブ 標準プローブ パッシブ(受動) 不可 低コストで、機械的に強く、幅広いアプリケーションに対応。減衰比10:1が一般的(1:1や100:1もある)。500MHz(~1GHz)まで数百V入力可能。入力抵抗:10MΩが多い。入力容量は数pF~十数pF。使用温度範囲:5~40℃。メーカによっては3.9pFの低容量、-40~85℃のモデルもある。 パッシブプローブ、
受動プローブ、
分圧プローブ、
アッテネータ・プローブ
10:1プローブ
2 高電圧プローブ 高電圧プローブ グランド基準の高電圧(数百V~数kV)の測定用。数十kV対応のモデルもあるが、周波数帯域と入力電圧はトレードオフ(2.5kVピーク/800MHzや40kVピーク/75MHzなど)。ディレーティングに注意。 高圧プローブ、
高耐圧プローブ、
Hi-Zパッシブプローブ
3 シングルエンドプローブ シングルエンドプローブ アクティブ(能動) アクティブプローブは広帯域(数GHz~数十GHz)だが電源供給が必要。入力容量:1pF程度とパッシブより低容量なので理想的(1pF以下のモデルも多い)。過入力で壊れやすいので扱いに注意。シングルエンドはグランド基準。メーカによっては差動プローブと同じく「高電圧プローブ」と「低電圧プローブ」の名称で分けている。 FETプローブ、
シングルエンドアクティブプローブ
4 差動プローブ 差動プローブ 可能 【高電圧】高電圧の差動信号用。パワーエレクトロニクス機器の測定向き。国産の横河計測や岩崎通信機もラインアップ。ディレーティングに注意。電源供給が必要。 高電圧差動プローブ
【高周波・広帯域】高速な差動信号用。GHz以上の高速シリアル通信などの波形観測に、広帯域オシロスコープと併用。海外のオシロスコープメーカがラインアップが多い。電源供給が必要。 低電圧差動プローブ、高周波差動アクティブプローブ、
広帯域差動プローブ
5 電流プローブ 電流プローブパッシブ(受動) パッシブ(受動) - 安価だが、交流専用で直流は不可。テクトロニクスは大電流(1kA)や広帯域(1GHz)モデルをラインアップ。岩崎通信機は海外製のCTを取り扱っている。 カレントトランス(CT)、
AC電流プローブ
電流プローブアクティブ(能動) アクティブ(能動) - 代表的な電流プローブ。DCから測定できる交直両用。大電流や広帯域など、オシロスコープメーカとクランプセンサメーカが豊富にラインアップ。電源供給が必要(プローブとは別に電源・アンプ ユニットがある)。ディレーティングに注意。 AC/DC電流プローブ(オシロスコープメーカ)、
クランプオンプローブ(クランプセンサのメーカ)
6 ロゴスキーコイル
電流プローブ
ロゴスキーコイル電流プローブ - コイル長を選択し、狭小部分から大きな導線まで対応。パワーデバイスなどのパワーエレクトロニクス向き。国産メーカも含め、複数のオシロスコープメーカが発売。交流専用で直流は不可。 ロゴスキーコイル、
ロゴスキー電流プローブ
7 ロジックプローブ ロジックプローブ - - MSO(ミックスド・シグナル・オシロスコープ)のロジック信号測定に使うので、多くのオシロスコープメーカが発売。8チャンネル(8ビット)か16チャンネル(16ビット)が多い。 デジタルプローブ
8 その他 光絶縁プローブ、パワーレールプローブ、光プローブ(O/E変換器)、抵抗ディバイダ・プローブ

TechEyesOnline編集部作成

表1の順番に構造、原理、特長、用途、代表的なモデルなどを説明します。

1. 標準プローブ(パッシブプローブ、分圧プローブ)

パッシブプローブとは、広義には受動型のプローブですが、通常はオシロスコープに標準添付している電圧測定用のプローブ(標準プローブ)を指します。パッシブとは「電源を必要としない受動部品で構成している」という意味です。受動部品とは抵抗、コンデンサ(静電容量)、インダクタ(コイルなど)で、トランジスタなどはアクティブな(能動)電子部品です。パッシブプローブは受動プローブとも呼ばれます※5

※5

パッシブプローブには標準プローブ以外に抵抗ディバイダ・プローブ(後述)もある。能動部品を使ったプローブがアクティブプローブ(後述)である。トランジスタは1つの端子に印加する電圧で2つの端子間をスイッチや増幅器にできるが、電源供給しないと動作しない。

図2は横河計測の701937です。ケーブル先端の白く細長い部分をプローブヘッドといいます。その先端には電子部品のピンを摘まむことができる2つの細い金属棒(接触子)※6があります。プローブヘッドから出ている黒い線はグランド・リードといって、先端はGND端子に接続するミノ虫クリップです。測定対象とオシロスコープのグランドをつなぎます。プローブヘッドは手で持って操作します。プローブヘッドの先端にはフックチップというさやが付いていて、指でフックチップを操作すると先端から接触子が現れ、端子や電線にひっかけて固定できます。約1mの細い同軸ケーブルの反対側には、オシロスコープにつなぐBNCコネクタがあります。BNCコネクタの付いた立方体(小箱)には周波数特性の補正回路が内蔵され、付属のドライバで調整できるつまみが裏側にあります。

※6

プローブ先端の形状は、接触する対象や測定条件によって交換できる。メーカは各種の取り換え部品(プローブチップと呼称)を用意している。

図2 701937 パッシブプローブ

図2 701937 パッシブプローブ

プローブの原理を図3に示します。プローブとオシロスコープ入力部を合わせた等価回路は、抵抗減衰器※7になっています。R1C1=R2C2になるようにプローブのC1を調整するのが容量補正です。プローブ抵抗R1とオシロスコープの入力インピーダンスによって、信号は分圧されてオシロスコープに供給されます。そのため分圧プローブとも呼ばれます。一般的には減衰比が10:1(1/10や10×とも表記)のプローブが使われます(10:1分圧プローブと呼称)。オシロスコープの入力インピーダンスは1MΩが多いので、R1は数MΩ、C1は数pFになります※8

※7

入力(左側)から出力(右側)に、逆L字形のCR並列をつくると、DCから高周波まで一定の減衰率の広帯域減衰器になる。C1R1=C2R2のとき減衰比は周波数に依存しない一定値になる。DCと低周波ではR2/(R1+R2)、高周波ではC2/(C1+C2)。

※8

RC回路だけでは周波数帯域が100MHz程度までのため、各メーカは工夫をしている。たとえばプローブの終端回路にT型トランスなどを付加すると、「300MHz以上の広帯域オシロスコープ用プローブとして使用可能になる。(オシロスコープのすべて、1983年 共立出版株式会社発行、ソニー・テクトロニクス 岡田清隆著)」

図3 分圧プローブの原理

図3 分圧プローブの原理

一般的な10:1分圧プローブの構造を図4に示します。プローブヘッドの内部抵抗9MΩとオシロスコープの入力抵抗1MΩによって信号は1/10に減衰します。ケーブルには浮遊容量があるため、それらも含めて容量補正を行います。

図4 10:1分圧プローブの構造

図4 10:1分圧プローブの構造

1/10に減衰させる理由は、高い入力インピーダンスによって測定対象に対する負荷効果を軽減でき、測定対象からオシロスコープを見たときのキャパシタンス(入力容量)が低いことで、広い周波数帯域が得られるからです。また、測定可能な最大電圧が10倍高くなるという利点もあります。ただし、信号が減衰するので微小電圧の測定には不向きです。そこで、減衰を行わない1:1パッシブプローブもあります。低容量の同軸ケーブルの片側にプローブ、反対側にBNCコネクタが付いています。入力インピーダンスはオシロスコープの入力インピーダンスと等しく、測定信号の振幅が小さいときに使います。ただし、プローブの入力周波数帯域が狭いので、低周波での測定に限ります。10:1と1:1の切替えスイッチがある可変減衰比プローブも販売されています。100:1パッシブプローブは10:1プローブよりもさらに測定対象に与える影響が小さくなります。入力容量は2~3pF程度で、波高値の高いパルス測定に向いています。

オシロスコープには一番汎用的な10:1分圧のパッシブプローブが標準添付されていますが、すべての測定がこれ1本で賄えるわけではなく、測定対象によって適切なプローブの選択が必要です。

TechEyesOnline内の製品ページ(仕様や製品カタログ) 701937

関連用語解説:トリマ

**ミニ解説**

同軸ケーブルの特性インピーダンスと、入出力インピーダンス(両端のインピーダンス)は異なるため、入出力端では信号の反射が起こり、波形が振動する(リンギング)。図5の①はデジタルマルチメータやテスタに使われるテストリード(黒色と赤色の2本一対)を使い、方形波をオシロスコープで観測した例である。共振によってリンギングが起きている。➁は単線を使った場合で、波形にノイズが乗っている。人が手に触れるとノイズが混入するので、手に持つプローブヘッドは完全にシールドされている。ケーブルも、オシロスコープ用に工夫された専用の同軸ケーブルで、低容量になっている。測定対象とオシロスコープをただリード線でつないでも、正しい波形は観測できない。プローブはオシロスコープ用につくられた、専用測定器である。

図5 プローブ以外で測定したオシロスコープの波形の例

図5 プローブ以外で測定したオシロスコープの波形の例

2. 高電圧プローブ

通常の分圧プローブの最大入力電圧は数百Vですが、1kV~数kVを測定できるものを高電圧プローブと呼びます。別名、高圧プローブ、高耐圧プローブ※9です。図6は最も代表的なモデル、テクトロニクスの1000:1プローブ P6015Aです。絶縁を保つために形状が大きくなっています。約20kVrmsの電圧測定が可能です。最大入力電圧は条件により異なります※10。高電圧回路は出力インピーダンスや周波数が高いことが多いので、高電圧プローブは入力容量を小さくしています。

※9

後述する「高電圧差動プローブ」と区別するため「高電圧パッシブプローブ」と呼ぶ場合もある。Hi-Zパッシブプローブ(高電圧ではなく高インピーダンス)が品名のメーカもある。

※10

直流、交流、ピークなどの条件で規定している。P6015Aの詳しい仕様やカタログは こちら

図6 P6015A 高電圧受動プローブと各部の構造

図6 P6015A 高電圧受動プローブと各部の構造

一般に高電圧プローブの周波数帯域は狭く、数MHzまでです。印加できる電圧は周波数が高くなると激減します。P6015Aは40kVピークパルス※11で20kVrmsの高電圧が測定できますが、それは数百kHzまでで、50MHzでは最大入力電圧は2kVに低下します。測定対象の周波数と使用するプローブの周波数特性の確認が必須です。また、安全のためにオシロスコープの筐体をグランド接続すること(FG:Flame Ground)が基本です。

※11

(peak pulse) 高電圧プローブの最大入力電圧を、直流成分も含めたパルスの波高値(ピーク電圧)で規定したもの。

ここまで説明したパッシブプローブの仕様の例を表2に示します。

表2 パッシブプローブの仕様例
プローブ名称 減衰比 入力抵抗R1 入力容量C1 最大入力電圧
10:1分圧プローブ 10:1 1MΩ 6.5pF DC 450V
1:1プローブ 1:1 - 40pF DC 450V
100:1分圧プローブ 100:1 10MΩ - DC 450V
高電圧プローブ 1000:1 500MΩ 3pF DC 5kV

3. シングルエンドプローブ

アクティブプローブは、高入力インピーダンスと広帯域特性を兼ね備えた理想的なプローブですが、増幅回路を内蔵しているため電源が必要です。シングルエンドと差動※12の2種類があります。

※12

シングルエンドは信号とグランドの2本、差動は2本の信号線で伝送する方式。前者はグランド基準の信号、後者はグランドから浮いた(フローティング)電位差を送信している。章末の用語解説「不平衡」が詳しい。

シングルエンドプローブはプローブの信号入力部にソースフォロワ※13のFETを使っていることが多いため、一般にFETプローブと呼ばれます※14。アクティブプローブはヘッド部に増幅部があります(図7)。ケーブルはパッシブプローブと違い、インピーダンス50Ωの通常の同軸ケーブルです。増幅部の入力インピーダンスをケーブルの特性インピーダンスと同じにして、50Ωで終端しているので、出力端で反射が起きません。同軸ケーブルを分圧器の一部とするパッシブプローブと違い、増幅器をケーブルの前に入れることでケーブル容量の影響を減らし、入力容量を小さくしています。プローブヘッドで分圧、インピーダンス変換、電圧増幅する構造です。

※13

(source follower) FET(電界効果トランジスタ)で、ゲート端子を入力、ソース端子を出力とした回路。

※14

必ずしもFETを使っていない製品もある。後述の差動プローブは必ず「差動」と呼ぶので、単に「アクティブプローブ」と呼んでも差動でないことがわかるため、あえてシングルエンドと呼称しないことも多い。メーカによって名称は「アクティブ・プローブ(FETプローブ)」、「アクティブ電圧プローブ」、「FETプローブ」、「シングルエンド・アクティブ・プローブ」、「低電圧シングルエンドプローブ」など、統一されていない。文献によってはアクティブプローブを差動プローブとFETプローブに分類していたり、無減衰のFETプローブを紹介していたりして、FETプローブの正確な定義は難しい。

図7 シングルエンドプローブの構造例

図7 シングルエンドプローブの構造例

シングルエンドプローブは入力抵抗が高く入力容量が小さいため、周波数帯域が広いです。そのため、高インピーダンスの測定対象や、高周波での測定に適しています。ただし、入力信号を直接FETで受けるため過入力で壊れやすいのが弱点です。図8はシングルエンドプローブの入力インピーダンス周波数特性の例で、ディレーティングカーブと呼ばれます。実線がシングルエンドプローブで、点線はパッシブプローブです。10kHz以下ではパッシブプローブが高インピーダンスですが、100kHz以上ではシングルエンドプローブの方が高い(性能が良い)ことがわかります。また、シングルエンドプローブの仕様に1MΩと記載されていても、100kHzからインピーダンスが低下し始め、100MHzでは約1kΩになっています。前述の高電圧プローブが高い周波数で最大入力電圧が落ちるのと同じく、アクティブプローブも使用前に周波数と入力インピーダンスの確認が必要です。

図8 シングルエンドプローブのディレーティングカーブの例

図8 シングルエンドプローブのディレーティングカーブの例

アクティブプローブは50Ωケーブルによって信号劣化を抑え、入力インピーダンスが高いので測定対象に与える負荷が小さい、高周波で使える理想的なプローブです(図7)。ただし、周波数によって入力インピーダンスは大きく変わり(図8)、耐圧が高くないFET入力が壊れやすいという、繊細なプローブです。静電気対策として帯電防止ストラップが必要です。各メーカは自社のアクティブプローブにはオシロスコープから電源供給する機能を用意しています。つまり、オシロスコープとプローブを同一メーカで揃えるほうが使い勝手が良く、アクティブプローブや電流プローブ(後述)は同一メーカのオシロスコープとプローブを使用することが多いです。

一般にアクティブプローブには、測定対象との接続に便利な様々なアクセサリが付属しています。図9はキーサイト・テクノロジーのN2797Aとアクセサリです。冒頭に述べたように、オシロスコープの周波数帯域が2000年代に10GHz以上になり、DUTとの接続に色々な方法が開発されました。各アクセサリの使用法、注意点は、メーカの技術資料やプローブの使い方・ノウハウのセミナーなどを参考にしてください。

図9 N2797A シングルエンド・アクティブ・プローブとアクセサリ

図9 N2797A シングルエンド・アクティブ・プローブとアクセサリ

TechEyesOnline内の製品ページ N2797A

関連用語解説:不平衡 フローティング測定

4. 差動プローブ

差動回路やフローティング回路の測定に使用するアクティブプローブです。2つの入力があり、プローブ内部の差動アンプで2信号の差の電圧値をオシロスコープに提供します。シングルエンドを差動にした構造です。増幅器への電源供給は内蔵の乾電池やACアダプタ、オシロスコープからの供給など、モデルによって様々です。

図10 差動プローブの構造例

図10 差動プローブの構造例

差動プローブの帯域は100MHz程度ですが、数GHzの広帯域モデルもあります。低圧から40kV位の高電圧まで測定できるように可変減衰器を備えた高電圧モデルがあり、高電圧差動プローブと呼ばれます。図11は横河計測の701977 高電圧差動プローブで、1000:1 / 100:1の減衰比切替えスイッチがあります。図12はPMK(国内販売:岩崎通信機)のBumbleBee(バンブルビー) 高電圧差動プローブと先端部品などのアクサセリです。

図11 701977 高電圧差動プローブ

図11 701977 高電圧差動プローブ

図12 BumbleBee 高電圧差動プローブ本体とアクセサリ

図12 BumbleBee 高電圧差動プローブ本体とアクセサリ

電子回路で電力やモータを制御するパワーエレクトロニクス技術はエアコンからEV車まで広く採用されています。省エネや小型化とともにノイズ対策が重要で、コモンモードノイズ※15を抑制する差動回路が多く使われます。差動で高電圧という需要に応えたのが高電圧差動プローブで、パワー半導体やパワーエレクトロニクス機器の評価に向いています。ただし、高電圧プローブ(パッシブ)同様に周波数に対するディレーティング電圧に注意が必要です。

※15

(common mode noise) 電源ラインや信号とグランド(GND)間に発生するノイズ。ノイズ伝搬にはもう1つ、ノーマルモードノイズがある。

USBに代表されるように、近年規格が増えたシリアル通信は低電圧で高速なため、ノイズに対する耐性が求められます。そのためコモンモードノイズの影響を受けにくい差動伝送が主流です。このような規格信号のジッタやアイパターン測定には、高電圧は不要ですが広帯域でないと正確な波形観測ができません。GHz帯の広帯域オシロスコープ用に数G~数十GHzの低電圧差動プローブ※16が各種発売されています。図13はローデ・シュワルツの差動アクティブ・プローブ RT-ZD40(4.5GHz)、図14はテレダイン・レクロイの差動プローブ DHシリーズ(8GHz~30GHz)です。キーサイト・テクノロジーのMX0031A InfiniiMax 4 高周波差動アクティブプローブは52GHzです。

※16

広帯域な差動プローブの名称は「差動プローブ」、「低電圧差動プローブ」、「高周波差動アクティブプローブ」、「広帯域差動プローブ」など、メーカによって異なるので、初心者にはわかりにくい。

図13 RT-ZD40 差動アクティブ・プローブ

図13 RT-ZD40 差動アクティブ・プローブ

図14 DHシリーズ 差動プローブとアクセサリ、接続図

図14 DHシリーズ 差動プローブとアクセサリ、接続図

観測したい信号はグランドとの間で変化するとは限りません。たとえばFETのゲートとソース間の電圧を測定するときに、パッシブプローブやシングルエンドプローブをソースにつなぎ、グランド・リードをゲートにつなぐと、オシロスコープの筐体を通じて機器の筐体グランドに電流が流れるなど、プローブの損傷や感電事故につながります。フローティング回路の測定は差動プローブが基本です。

TechEyesOnline内の製品ページ 701977 BumbleBee RT-ZD40 DH13-PL

関連用語解説:平衡 絶縁型オシロスコープ

5. 電流プローブ

電流プローブは、導体に流れる電流がつくる磁界の強さから電流を検出し※17、電圧に変換して場合によっては増幅してオシロスコープに入力し、電流波形を表示・解析するプローブです。電流の検出方式にはカレントトランス、ホール素子、フレックスゲートセンサなどがありますが、クランプ(スライド式で導体を挟む)のカレントトランスやホール素子を使った物が、一般に電流プローブと呼ばれています。電流プローブには、交流専用のAC電流プローブ(パッシブ型)と、交直両用のAC/DC電流プローブ(アクティブ型)の2種類があります※18

※17

直列に抵抗を入れて電圧降下で電流を測定する方法もあるが、回路動作に影響を与えてしまう。電流が発生させる磁界を利用する電流プローブは、電圧降下が起きないので正確な電流測定ができる。

※18

後述の「ロゴスキーコイル電流プローブ」も広義には電流プローブだが、一般の電流プローブとは区別されている。

図15はAC電流プローブの構造例です。電流検出用の二次巻線がある閉磁気回路内に測定対象の導体を入れ、この導体を一次巻線としてトランスを構成します。二次巻線には巻数nに反比例する電流が流れ、抵抗Rの電圧降下をオシロスコープに入力します。既知のnとRから電流が算出されます。AC電流プローブは、回路に流れる電流を検出・測定するトランスなので、Current Transformer(略記:CT)やカレントトランスとも表記されます※19

※19

テクトロニクスのAC電流プローブには、最大連続電流2000Ap-pのCT4 高電流トランスフォーマ(生産中止)や周波数帯域2GHzのCT6 高周波電流プローブがある。モデル名のCTはカレントトランスである。

図15 AC電流プローブの構造例

図15 AC電流プローブの構造例

AC電流プローブはトランスの変換原理を利用して交流電流を検出するので、直流電流は検出できません。AC/DC電流プローブは、ホール素子を付加することで直流電流を検出できますが、ホール素子のバイアス用電源や信号処理用アンプが必要です。図16に構造の一例を示します。

図16 磁気平衡式広帯域AC/DC電流センサの構造

図16 磁気平衡式広帯域AC/DC電流センサの構造

AC電流プローブの周波数帯域は、一般的に100MHz以下ですが、GHzオーダを測定できるモデルもあります。反対に直流に近い周波数はほとんど検出できません(目安:数~数十Hz)。実際の電流波形は交流成分だけではなく直流成分が合成された複雑な波形です。直流から測定できるAC/DC電流プローブが理想的な電流プローブといえます。図17は最大導体サイズがφ20mmと、クランプ部分が比較的大きい横河計測の大電流モデルです。

図17 701931 AC/DC電流プローブ

図17 701931 AC/DC電流プローブ

右のコネクタは電源供給用

テクロトニクスはDC~50MHzの広帯域モデルP6042を、1980年頃にP6302 電流プローブとAM503 プローブ用電源にリニューアルし、現在の現役モデルはTCP300/TCP400シリーズ AC/DC電流プローブとTCPA300/TCPA400 増幅器で、最大帯域幅DC~100MHz、最大ピーク電流750Aの測定ができます(図18)。ただし、ディレーティングの確認が必要です。印加できる電流は信号のパルス幅や周波数によって減少します。TCP303のピーク電流は500Aですが、これはパルス幅が30μs以下の場合で、100μsでは約200Aです。数kHz以上では印加できる電流値が低くなり、周囲温度の影響もうけます。

図18 TCP300/TCP400シリーズ AC/DC電流測定システム

図18 TCP300/TCP400シリーズ AC/DC電流測定システム

箱は電流プローブ増幅器。右がTCPA300(DC~100MHz) 左がTCPA400(DC~50MHz)

TechEyesOnline内の製品ページ 701931 TCPシリーズ

**ミニ解説**

オシロスコープメーカの電流検出用のプローブの呼称はほとんど「電流プローブ」で統一されている。電流・電力の測定器メーカはクランプセンサを「電流センサ」、「カレントセンサ」、「カレントプローブ」などの名称で発売している。中にはオシロスコープのBNC入力に直結可能なモデルもあるが、名称は「電流プローブ」ではなく「クランプオンプローブ」などが多い。電流プローブ用の電源ユニットもラインアップしていて、電流プローブの選択肢はオシロスコープメーカに限らない。電流プローブはトランスやクランプの応用製品なので、ハンドヘルドの電流測定器などの現場測定器をラインアップする計測器メーカが多くつくっている。また、テクトロニクスのモデル名でCTはAC電流プローブ(カレントトランス)だが、日置電機にはCT6700など多くのAC/DC電流プローブがある。日置電機は電流を変換する「変流器」全般をCT(Current Transformer)という形名にしている。オシロスコープと電力測定器の両方をつくる横河計測には、電力測定器のアクセサリ(電流センサ)としてCT2000A AC/DC電流センサや96001 ACクランププローブ(20Hz~20kHz)がある。電流プローブを含む電流センサの品名や形名はメーカによって様々である。

6. ロゴスキーコイル電流プローブ

電動化が加速している自動車業界ではインバータやモータの開発が進み、パワーエレクトロニクス市場を牽引しています。ロゴスキーコイル電流プローブは自動車分野では基本的な標準プローブとして使用されます。導体に流れる電流がつくる磁界と鎖交する空芯コイルには電圧が誘起されます。その電圧は測定電流の時間微分値のため、積分器で測定電流に比例した出力信号に戻します(図19)。

図19 ロゴスキーコイル電流プローブの原理

図19 ロゴスキーコイル電流プローブの原理

ロゴスキーコイル電流プローブの構成は、空芯コイルのサイズが電流レンジなどの仕様となる電流センサ部と、積分器です。図20はPEM※20のCWT Standardシリーズで、300mA~300kA、0.1Hz~16MHzに対応しています。測定電流や周波数によって空芯コイルのサイズ(コイル長)が違います。

※20

英国のPower Electronic Measurements社。一部の特殊用途にしか使われていなかったロゴスキー・トランスデューサを、1991年に汎用的な広帯域製品のロゴスキーコイル電流プローブにした老舗。

図20 CWT Standardの外観と各モデルの仕様

図20 CWT Standardの外観と各モデルの仕様

株式会社トランシー(PEMの国内総代理店)の製品カタログより

ロゴスキーコイル電流プローブは「ロゴスキーコイル」や「ロゴスキー電流プローブ」と呼称されます。大電流の交流信号の測定に適していますが、AC電流プローブ(カレントトランス)同様に直流測定はできません。岩崎通信機は2012年のSS-280シリーズ発売以降、ラインアップを増やしています※21。テクトロニクスやテレダイン・レクロイ、キーサイト・テクノロジーなどの大手オシロスコープメーカもラインアップしています。

TechEyesOnline内の製品ページ CWTシリーズ

7. ロジックプローブ

ロジックプローブは、デジタル信号の論理状態(ロジック・ステート)を測定して、TTL、CMOS※22などの回路の論理状態の解析に使います。図21はテクトロニクスの4/5/6シリーズMSOに使うTLP058 ロジック・プローブで、8つのデジタル入力があります。4シリーズB MSOではTLP058を最大6本使い、48チャンネルにすることができます。

※22

CMOS(相補型金属酸化膜半導体)は画像センサなどに使われるが、ここではCMOSロジックICのこと。CMOSレベルのしきい値は電源電圧の0.7がHigh、0.2がLowに規定されている。

図21 TLP058 ロジック・プローブ

図21 TLP058 ロジック・プローブ

1970年代に開発されたマイクロプロセッサは高性能化でデータバスが増え、CPUのピン数は100以上になりました。組み込みシステムの開発・デバッグ用に128チャンネルのロジック信号を1台で測定・解析できるロジックアナライザが1980年頃に登場します。ロジックプローブはロジックアナライザのプローブです。いまではその機能はMSO(ミックスド・シグナル・オシロスコープ)に引き継がれました。アナログ信号をオシロスコープで観測するためのプローブではないので、オシロスコープ側の入力はBNCではなく多芯コネクタです。

TechEyesOnline内の製品ページ TLP058

8. その他のプローブ

パッシブプローブには、最初に説明した標準プローブ(分圧プローブ)以外に50Ωケーブルを使った抵抗ディバイダ・プローブがあります※22。50Ω入力可能なオシロスコープや変換アダプタが必要ですが、測定周波数3GHz以上の最も広帯域なパッシブプローブです。高周波のアプリケーションでは信号源インピーダンスが低いため、このプローブが適しています。ただし、入力容量だけでなく入力抵抗も低いので、最大入力電圧は数Vから数十Vと低く、プローブの破損(内部抵抗の焼損)に注意が必要です。高周波を測定するときは入力容量が負荷となって信号に影響するため、抵抗プローブよりも入力容量が小さいアクティブプローブ(シングルエンドプローブや差動プローブ)の方が優れていますが、安価で電源が不要という利点があります。

※22

メーカによっては「抵抗プローブ」や「トランスミッションラインプローブ」と呼称。

各種の測定ニーズに応えた新しいプローブも開発されています。高電圧差動プローブに比べてCMRR※23の性能が優れている光絶縁プローブ(光アイソレーションプローブ)はすでに1980年代からありますが、パワー半導体の進歩によって現在はGHz帯域のモデルが複数メーカから発売されています※24。高密度実装されたプリント基板の信号を検出するための海外製の特殊なプローブや、新しい原理の電流センサが研究されています※25。大手オシロスコープメーカのラインアップには、広帯域・低負荷ながら低ノイズのパワーレールプローブ※26やO/E変換器の機能がある低帯域の光プローブなどがあります。新しい測定需要に応えて、オシロスコープとプローブは進化を続けています。

※23

(Common Mode Rejection Ratio) コモンモード除去比。2入力がある差動増幅器などで、共通する入力信号の雑音成分を除去できる能力。

※26

(power rail probe) 「電源レールプローブ」、「アクティブ電圧プローブ」、「アクティブ・パワーレール・プローブ」など、メーカによって名称が異なる。次の記事が詳しい。2017年12月公開 パワーレールプローブとオシロスコープで真の電源ノイズを捉える キーサイト・テクノロジー 電源ノイズアナライザ

関連用語解説:パワー・インテグリティ

おわりに

近年、ミドルクラスのオシロスコープは中華系計測器が増えました。オシロスコープに続いてプローブに特化してラインアップするメーカも登場し、国内流通が始まっています。低価格化だけではなく、本稿で説明した分類には収まらない新しい種類のプローブが開発されるかもしれません。ともあれ、オシロスコープのプローブの選択肢は広がっていて、ユーザにとっては喜ばしい状況です。他方、繰り返しになりますが適切なプローブの選択と使用法が重要です。選定と使い方は簡単ではありません。

プローブには使い方(作法)があります。パッシブプローブを使用前に補正する※27ことや、測定対象にプローブをあてる前にグランド・リードから先に接続することなどです。測定対象・プローブ・オシロスコープ入力部を一体の回路として周波数特性や振幅誤差、立ち上がり時間を考慮する、などの使い方(ノウハウ)をプロービングといいます。本稿はプロービング以前のプローブの基礎知識と最低限の使い方を解説しました。使い方の詳細は別の資料を参考にしてください※28

※27

パッシブプローブの補正方法の例。2021年9月公開 初めて使うオシロスコープ・・・第3回「CAL信号を使ってプローブを調整」

※28

次の記事(7回連載)が詳しい。2017年9月公開 オシロスコープ・ユーザのためのプローブの使いこなし

主要メーカのラインアップ数

表3 プローブのメーカ別/種類別の現役モデル数
No 種類(名称) オシロスコープメーカ
岩崎通信機 キーサイト・テクノロジー テクトロニクス テレダイン・レクロイ ローデ・シュワルツ 横河計測
1 標準プローブ
(分圧プローブ)
24 20 16 19 6 8
2 高電圧プローブ
(パッシブ)
43 2 3 2 3 2
3 シングルエンド
プローブ
8 4 7 4 6 1
4 差動プローブ 11 31 32 37 8 5
5 電流プローブ 51 8 16 16 10 10
6 ロゴスキーコイル
電流プローブ
101 3 3 7 0 0

メーカのホームページやカタログを参考にTechEyesOnline編集部が作成(2024年7月現在)。
岩崎通信機は、販売店をしている海外製品を含む。

各社プローブの製品情報(約1300モデル)は こちら

プローブに関連する用語解説

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