電力計の基礎と概要 (第3回)
<連載記事一覧>
第1回:「はじめに」「さまざまな電力測定器」「パワーエレクトロニクス技術の進化が新しい電力計の登場を促す」「電源の種類」「電力計選定のポイント」「【コラム】電池駆動の小型船の開発が進んでいる」
第2回:「電力計の構造」「電力計による主な測定や演算結果」「電力計への結線」「ノイズ対策」「電力計と組み合わせて使う大電流センサ、PCソフト」「【コラム】国内で入手できる主な電力計一覧」
第3回:「電力計の測定事例」「電力計の校正」「おわりに」「【インタビュー】横河計測の電力計事業への取り組み」
電力計の測定事例
電力計はモータを駆動するインバータや太陽光発電システムで使われるパワーコンディショナの効率測定、電力計を使った規格試験などで使われることが多い。そのほかにもリアクトルのインピーダンス測定や磁性材料の鉄損測定にも使うことができる。
スイッチング電源の試験
スイッチング電源の試験方法は電子情報技術産業協会(JEITA)規格の「スイッチング電源試験方法(AC-DC) JEITA RC-9131B)」に記載されている。この試験規格の中で力率、効率、高調波電流の測定に電力計が必要となる。
図41. スイッチング電源の試験

なお、米国や欧州に輸出する製品に使われるACアダプタはそれぞれの地域ごとに定められたエネルギー効率基準を満たす必要があるため、日本国内とは異なる基準で試験を行う必要がある。
モータ/インバータの試験
電力計の用途で多いのがモータ/インバータ測定である。下記に車載モータ・インバータの測定事例を示す。電池に蓄えられた電気エネルギーがモータによって力学的なエネルギーまで変換される流れを電力計で同時に測定する。
図42. 車載モータ・インバータ効率測定

住宅用蓄電機能付き太陽光発電システムの評価
住宅用蓄電機能付き太陽光発電システムには複数の電力変換器がシステムに組み込まれているため、さまざまなシステムの状態での電力変換器の効率を測定する必要がある。
下記には住宅用蓄電機能付き太陽光発電システムでの電力計の利用事例を示す。システムには複数台の電力変換器が搭載されるため、複数の電力計を使って測定環境を構築する。
図43. 住宅用蓄電機能付き太陽光発電システムの測定

工作機械の過渡電力測定
工作機械は負荷変動が大きな装置である。例えばドリルの刃が加工する金属に接触した時に大きな負荷が急に掛かる。このような装置では短い時間に生じる電力消費を正確に測定しなければならない。下記には瞬時電力が測れる波形測定器ベースの電力計の利用事例を示す。
図44. 工作機械の瞬時電力の測定

瞬時電力の測定は工作機械以外にもHIDランプのような放電現象を扱う分野でも必要な測定となる。
電源高調波の規格試験
IEC規格で定められた低周波EMC測定の試験には機器から発生する電源高調波を測定する項目がある。この試験ではIEC規格が定める条件を満たした交流電源装置と電力計が使われる。 電源高調波測定はCEマークを取得するためには必要な試験である。
図45. 16A以下の機器を対象としたシステム構成例(単相試験)

交流電源装置と電力計を制御して、自動的にIEC規格に適合した電源高調波試験を行い報告書まで作成できるPCソフトを提供している電力計メーカや電源メーカがある。
図46. 高調波/フリッカ測定ソフトウェア(電源コントロール機能付)(761921-S1)

提供:横河計測
お役立ち情報
低周波EMC試験には測定対象機器のノイズへの耐性評価するイミュニティ試験と測定対象機器が発生するノイズを評価するエミッション試験がある。これらについて詳細に解説した資料はエヌエフ回路設計ブロックから冊子として発行され、規格の更新に追従するために毎年改訂されている。
図47. 低周波のEMC(エヌエフ回路設計ブロック)

この資料が必要な場合は下記のホームページに記載内容や入手方法が掲載されている。
http://www.nfcorp.co.jp/techinfo/techguide/emc/index.html
待機電力の規格試験
待機電力の測定もIEC規格で測定方法が規定されている。この試験をするためにはIEC規格が定める条件を満たした電力計が使われる。待機電力を測定環境は下記のとおりである。
図48. 待機電力測定環境

一般に待機電力は小さいため、電力計の電圧センサが消費する電力が待機電力に含まれないように配線する必要がある。交流電源装置と測定対象の間にある接続ボックスは下記の配線の切り替えができる。待機電力測定時には「消費電流が比較的小さい場合」を選ぶ。
図49. 電力測定器の計器損失の影響を小さくする結線方法
