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電力計の基礎と概要 (第1回)

【コラム】電池駆動の小型船の開発が進んでいる

世界の多くの自動車会社が取り組んでいる電気自動車の開発は話題となっている。電気自動車と同じ仕組みで動く小型船舶の開発が東京海洋大学で行われているので、開発者である大出剛特任教授に話を伺った。

図25. 電池推進船「らいちょうN」と開発者の大出特任教授

図25. 電池推進船「らいちょうN」と開発者の大出特任教授

東京海洋大学では2010年にCHAdeMO(チャデモ)仕様の急速充電ができる電池推進船「らいちょうⅠ」を作って以来、ウォータジェットを推進機構とした小型の「らいちょうS」、実用化を目指した「らいちょうN」を開発してきた。

現在の小型船舶はエンジンからの排気ガスを水中に排出しているため、閉鎖水域(水の流出入の機会が乏しい入り江、湖沼)での利用は水質汚染につながるほか、エンジンの騒音や振動、事故時の燃料流出による水質汚染などが課題としてあげられる。電池推進船では電池に蓄えたエネルギーで推進用のモータを駆動するため「排ガス、騒音、振動」の課題は解決する。今まで開発した3艘の小型船を使い、さまざまな環境で実証試験を行ってよい成果を得ている。

電池推進船は電気自動車と同じく「リチウムイオン電池のコストが高い、航行距離が短い」いう技術課題がある。電気自動車と同じ課題であるため電気自動車の進化によって、いずれは解決するものと期待している。また船舶固有の技術課題として「電気設備への防水や塩害対策、船舶への急速充電方法」があるため研究テーマとしている。

技術的な新たなチャレンジとしては燃料電池自動車で使われている技術を使って、リチウムイオン電池と燃料電池(FC)を組み合わせた小型船舶を航行させることである。すでに「らいちょうN」には小型の燃料電池を搭載して実験を始めている。

図26. 電池推進船らいちょうNブロック図

図26. 電池推進船らいちょうNブロック図

今後の大きなテーマとして、電池推進船が実用となる環境を整備することであり、そのためには設計を行うためのさまざまな規格を関係機関や団体と一緒になって作ることと、実用船を作るための経験や知識を深めていくことである。今まで実験船を使って蓄えたデータや経験を活用して実用となる電池推進船を普及させる環境を作るのが大学の役割と考えている。


執筆協力:横河計測株式会社 ホームページは こちら

執筆:横河レンタ・リース株式会社 事業統括本部 魚住 智彦

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