ユニバーサルカウンタの基礎と概要 (第3回)
【インタビュー】岩崎通信機の測定器事業の取り組み
1938年に電話機を生産する会社として創業した岩崎通信機は、1954年にオシロスコープを販売してから現在に至るまでさまざまな測定器の設計製造をしている老舗である。
このたび、パワーエレクトロニクス計測の分野で幅広い活動をされている第二営業部フィールドサポート課長の長浜竜様に岩崎通信機の電子計測器事業の取り組みについてお話を伺った。
Q1:岩崎通信機の測定器開発の歴史と特徴について
岩崎通信機の測定器の歴史は1954年に発売した国産初のトリガ式オシロスコープ(シンクロスコープ)の開発から始まっている。オシロスコープは直流から高周波までの信号を取り扱うため、当時の最高の技術を集めて開発された。オシロスコープ事業は現在に至るまで続いており、岩崎通信機の電子計測器事業の重要な柱となっている。
岩崎通信機ではオシロスコープ以外に1961年にユニバーサルカウンタ、1971年にデジタルマルチメータに参入して基本測定器の充実を進めてきた。汎用測定器は価格競争が進み日本企業にとっては厳しい面はあるが、幅広いお客様に測定環境を提供していくために重視している。
また、オシロスコープの技術を使って1961年にトランジスタカーブトレーサ、1987年に磁性特性検査装置を発売して、アプリケーションに特化した事業も行い、蓄積した測定ノウハウが現在の岩崎通信機の成長の原動力となっている。
岩崎通信機の創業者である岩崎清一は従業員の教育に熱心であり、岩崎通信機青年学校を1939年に開設した。この学校は現在の国学院久我山中学高等学校のルーツとなっている。現在でも岩崎通信機の電子計測器事業には学校教育を大切にする考えがあり、教育機関向けに様々な実習機器を提供している。
Q2:岩崎通信機の電子計測器事業の強み
岩崎通信機が持つ技術のベースは長年取り組んでいるオシロスコープにあると考えている。オシロスコープは直流から広帯域の信号まで扱う高い技術が必要である。また大信号から小信号の電圧や電流を観測するためのプロービング技術を持っていることも強みと考えている。最近はパワーエレクトロニクス分野で使われるロゴスキーコイル電流プローブのラインアップを増やしている。
岩崎通信機では古くから利用者の多いオシロスコープの正しい使い方を啓蒙するために、書籍を発行している。入門書である「オシロスコープ入門講座(電波新聞社)」とパワーエレクトロニクス計測について書いた「これでなっとくパワーエレクトロニクス(コロナ社)」の2冊が書店で販売されている。
Q3:岩崎通信機の電子計測器事業の最近の取り組み
岩崎通信機の電子計測器事業はパワーエレクトロニクス市場を成長分野と考えている。パワーエレクトロニクスは日本が得意とする産業で、日本国内に材料や部品を作るメーカから装置を作るメーカまであり、技術的にも世界をリードしている。このため日本のお客様の高度な要求に応えるのが岩崎通信機の使命と考えている。岩崎通信機は磁性材料計測、パワーデバイス計測、インバータ波形計測を得意な領域と考えている。得意な分野では測定器の提供だけではなく、お客様の要求にあったソリューションを提供ができる能力を持っている。最先端の計測技術を獲得するために大学との共同研究も積極的に行っている。
また、岩崎通信機の測定器事業は「パワーエレクトロニクス(高電圧・大電流測定)、波形観測、基本測定器」の3つの柱がある。最近はパワーエレクトロニクス分野への貢献に注力している。
お客様にとってワンストップでのソリューションを提供できることが望ましいが、1社で多くの測定器を開発することは現実的ではないので、岩崎通信機では世界の様々なメーカの測定器を数多く取り扱い、お客様に最適なソリューションを迅速に提案できるようにしている。
自社製造 | 外部調達 |
大学との 共同研究 |
事業区分 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
パワエレ | 波形観測 | 基本測定器 | その他 | ||||
デジタル・オシロスコープ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
各種プローブ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
デジタル・マルチメータ | 〇 | 〇 | |||||
ユニバーサル・カウンタ | 〇 | 〇 | |||||
信号発生器 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
通信用測定器 | 〇 | 〇 | |||||
スペクトラム・アナライザ | 〇 | 〇 | |||||
教育実習装置 | 〇 | ||||||
熱伝導率測定装置 | 〇 | 〇 | |||||
位置決め変位計/非接触変位計/非接触厚さ計 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
放射線量モニタ | 〇 | 〇 | |||||
アイソレーションシステム | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
半導体カーブトレーサ | 〇 | 〇 | |||||
磁性材料特性測定装置 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
パターン・ジェネレータ | 〇 | 〇 | |||||
パワーアナライザ | 〇 | 〇 | |||||
周波数レスポンス&インピーダンスアナライザ | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
アンプ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
航空宇宙機器システム | 〇 | 〇 | |||||
電子部品(コネクタ、スイッチ、ハーネス) | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
赤外線サーモグラフィ | 〇 | 〇 | 〇 |
今後は国内だけではなく海外にも販路を広げて、岩崎通信機はパワーエレクトロニクス産業の発展に貢献していく。