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ユニバーサルカウンタの基礎と概要 (第2回)

ユニバーサルカウンタの仕様の見方

ユニバーサルカウンタにはさまざまな仕様項目がある。ここでは主な仕様項目について説明する。

カップリング

A入力およびB入力にはカップリングをDCとACに切り替える機能がある。

DC電圧成分を持った信号の周波数などを測定する際にはACカップリングを選択すると測定は安定になる。

図33. DCカップリングとACカップリング

図33. DCカップリングとACカップリング

周波数帯域

カウンタが測定可能な周波数帯域が示される。入力をACカップリングして測定する場合は測定可能な下限周波数があるため確認する必要がある。

トリガレベル

波形の周波数などの時間を測定する際に基準点を決めるのがトリガレベルである。トリガ検出回路はヒステリシス特性を持ったシュミット回路となっているため、信号の波形品位が悪い時は正しい測定ができない場合がある。アッテネータの設定を変えることによって正しい測定ができることがある。

図34. アッテネータの設定によるノイズの除去

図34. アッテネータの設定によるノイズの除去

入力電圧範囲

ユニバーサルカウンタのA入力およびB入力はBNCコネクタとなっており、外側の金属部はケース電位と同じになっている。入力インピーダンスは1MΩである。製品によっては入力インピーダンスが50Ωにも切り替えられる構造になっているものがある。

50Ωの入力インピーダンスの設定がないユニバーサルカウンタで50Ωの伝送路の信号を測定する場合は反射の影響をなくすために別途入力端子に50Ω貫通型終端器を取り付ける必要がある。

1MΩ入力の場合は高い電圧の入力も可能であるが、50Ω入力の場合は終端抵抗で消費される電力に上限があるため入力可能な電圧は制限されている。50Ω入力を設定した場合にDC電圧成分を含む信号を測定するときは、事前にピーク電圧が仕様を超えないことをオシロスコープで確認する必要がある。

最大入力電圧は周波数によって上限値が異なる場合があるので注意が必要である。

C入力端子は入力される周波数の上限によってコネクタの種類が異なる。3GHz程度まではBNCコネクタが使われるが、それ以上の周波数ではNコネクタやSMAコネクタが使われている。C入力端子の入力インピーダンスは50Ω固定となっている。

ストップインヒビット(ホールドオフ)

機械式のリレーの動作時間を測定する場合などは接点が跳ねることによる信号の乱れ(チャタリング)の影響を除くため、ユニバーサルカウンタには入力を禁止する時間を設定する機能を持っている。

図35. ストップインヒビット(ホールドオフ)機能

図35. ストップインヒビット(ホールドオフ)機能

ストップインヒビット機能の名称はホールドオフ機能と呼ばれることがある。

基準クロック

ユニバーサルカウンタには時間の基準となる水晶発振器が内蔵されている。そのほか外部から10MHzの基準クロック信号を入力する機能もある。またユニバーサルカウンタから10MHzの基準クロックを出力することもできる。

例えば原子時計など正確な10MHz信号を使って測定すれば、基準クロックによる誤差を小さくすることができる。

図36. 外部の基準クロックを使っての測定

図36. 外部の基準クロックを使っての測定

またスペクトラムアナライザなど他の測定器と組み合わせて測定環境を構築するときは時間の基準となる水晶発振器を1つにして10MHz入力と10MHz出力を接続して装置を構成する。

測定結果の演算

カウンタに取り込んだ測定結果を使ってさまざまな演算を行って見やすい測定結果を得ることができる製品がある。ユニバーサルカウンタに内蔵された演算機能は製品によって異なる。下記には岩崎通信機のSC-7217A、SC-7215Aに搭載されている演算機能を示す。

表3. SC-7217A、SC-7215A(岩崎通信機)に搭載された演算機能
スケーリング演算 c/X C:定数、X:測定値
X-Xref Xref:定数、X:測定値
(X-a)/b a、b:定数、X:測定値
統計演算 最大 連続/リピート/シングルの動作モードで可能
最小
平均 リピート/シングルの動作モードで可能
標準偏差(σ)
コンパレータ演算 上限値、下限値と測定値を比較

製品によっては演算結果を数値だけでなくグラフィックに表示できるものがある。

制御インターフェース(通信制御、DIO)

ユニバーサルカウンタの設定や測定結果の読み取りを行うための制御ポートが用意されている。通信ではUSB、GP-IB、RS-232などがありパソコンと接続して外部制御を行う。また製品によってはDIO端子があり、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)と接続して生産ラインなどで使われることがある。

図37. プログラマブルロジックコントローラ(PLC)とユニバーサルカウンタの接続

図37. プログラマブルロジックコントローラ(PLC)とユニバーサルカウンタの接続

測定誤差の考え方

ユニバーサルカウンタを使っての時間測定では、測定結果に含まれる誤差の要因を理解することが重要である。

誤差要因

ユニバーサルカウンタによって測った測定結果には下図にあるような真値からのずれとバラツキがある。

図38. 測定結果の誤差(分解能と確度)

図38. 測定結果の誤差(分解能と確度)

±1カウント・エラー

測定信号とユニバーサルカウンタの内部のクロックが非同期であるために生じる誤差である。高分解能に時間が測定できる仕組みを持ったカウンタでは±1カウント・エラーは非常に小さな値となる。

図39. ±1カウント・エラー

図39. ±1カウント・エラー

トリガ・エラー

電圧ノイズが原因となって時間誤差が生じることをトリガ・エラーという。立ち上り時間や立ち下り時間が急峻なパルス信号では信号に重畳するノイズの影響は受けにくいが、立ち上り時間や立ち下り時間が緩やかな信号や低周波の正弦波では大きなトリガ・エラーが生じることがある。

図40. トリガ・エラー

図40. トリガ・エラー

トリガ・エラーは信号ノイズとスルーレート(SR)から得られる。

トリガ・エラー(秒)=信号ノイズ/SR(V/sec)

トリガ・エラーを小さくするには信号のスルーレートを大きくして、かつ信号に重畳するノイズ(外来ノイズと測定器内のノイズ)を小さくしなければならない。

タイムベース・エラー

ユニバーサルカウンタに内蔵された水晶発振器の周波数は正しく調整されたのちに温度環境や経年変化によって発振周波数がずれる。恒温槽付水晶発振器(OCXO)は温度による影響を最も少なくすることができる。

水晶振動子に微量な物質が付着すると発振周波数が変動する。このため水晶振動子は高気密で封止させており外部からの影響を受けないようにしている。しかし内部の材料からの微量なガスの発生によって発振周波数が変動することがある。

タイムベース・エラーは校正によって確認することができ、再調整を行うことにより誤差を減らすことは可能である。

トリガ・レベル・タイミング・エラー

タイムインターバル測定やパルス幅測定などの時、トリガレベル誤差や入力のコンパレータのヒステリシスの影響で生じる誤差が発生する。

図41. タイムインターバル測定でのトリガ・レベル・タイミング・エラー

図41. タイムインターバル測定でのトリガ・レベル・タイミング・エラー

トリガ・レベル・タイミング・エラーを少なくするためには信号のスルーレートの速くするのがよい。

チャネル間エラー

A入力とB入力を使うタイムインターバル測定などでは2つの回路のスキュー誤差の影響が生じる。高分解能時間測定をする場合は影響が生じる場合がある。チャネル間エラーはユニバーサルカウンタの仕様に規定されている。

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