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光スペクトラムアナライザの基礎と概要 (第2回)

光スペクトラムアナライザを使うために知らなければならないこと

光スペクトラムアナライザを使って光のスペクトラム測定をする際に知っておかなければならないことについて述べる。

光ファイバ通信で使われる光ファイバの種類

光ファイバにはマルチモードファイバとシングルモードファイバに別れる。短距離の光通信では安価なマルチモードファイバが使われて、長距離の光通信ではシングルモードファイバが使われる。それぞれの光ファイバの違いを知って利用する必要がある。

シングルモード(SMF) マルチモード(MMF)
光ファイバの断面構造 SMF 断面構造 MMF 断面構造
外径 125μm 125μm
コア径 9μm~10μm 50μm、62.5μm
伝送距離 長距離用 短距離用
光損失 低い 比較的高い
通信速度 大容量かつ安定したデータ通信 短・中距離の高速通信
折り曲げ強度 折り曲げに弱い 折り曲げに強い
値段 高価 安価

光ファイバの仕様に許容曲げ半径(通常は30mm)が規定されている。曲げを大きくすると損失が増えるので、光ファイバを利用する場合はこの仕様を満たすようにしなければならない。

【ミニ解説】利用する波長によって使い分ける光ファイバ

光スペクトラムアナライザの主たる用途は光ファイバ通信であるため石英ガラスで作られた光ファイバを利用することが多いが、ほかの用途は利用する波長が異なるため石英ガラス以外の光ファイバが使われることがある。

図35. さまざまな材料で作られた光ファイバの種類

図35. さまざまな材料で作られた光ファイバの種類

出典:光ファイバー(構造・種類・材質・用途)とは(ファイバーラボのホームページ)

光コネクタの種類

通信装置やデータ処理装置の間を光ファイバで接続する場合は光コネクタを介して機器に接続されている。光コネクタには用途に応じてさまざまなものがあるが、特によく使われるのはSCコネクタとFCコネクタである。

表8. よく使われる光コネクタの種類
種類 外観 特徴 フェルール 主な用途
コネクタ アダプタ
SCコネクタ SCコネクタ SCアダプタ SCコネクタは現在最も一般的な光ファイバーの端子である。接続方法にはプッシュプル方式を採用しており、着脱が簡単である。現在はLANの世界標準コネクタとされている。 φ2.5mm LAN
CATV
公衆通信回線
伝送システム
FCコネクタ FCコネクタ FCアダプタ FCコネクタは接続方式にねじ締め方式を採用しており、光ファイバーケーブルをしっかりと固定して接続する際に使用する。 φ2.5mm 計測器、光機器
LAN
CATV
公衆通信回線
LCコネクタ LCコネクタ LCアダプタ LCコネクタは接続方式にプッシュプル方式を採用している。フェルール径がSCコネクタの1/2であり、非常に小型で高密度実装が可能である。 φ1.25mm 構内配線
交換機
データセンター
MUコネクタ MUコネクタ MUアダプタ MUコネクタはNTTで開発されたプッシュプル型光コネクタである。フェルール径がSCコネクタの1/2であるため高密度実装が可能である。着脱をする際には専用工具が必要となる。 φ1.25mm 光端局装置
光中継器

コネクタの種類を変換するプラグインコンバータは販売されているので、光スペクトラムアナライザとの接続に利用できる。ただしプラグコンバータによる挿入損失は発生するので注意が必要である。

光コネクタや光ケーブルを利用しないときはコネクタ端面に汚れが付かないようにキャップを取り付けておく。

図36. コネクタ端面汚れ防止のための光コネクタへのキャップ取付け

図36. コネクタ端面汚れ防止のための光コネクタへのキャップ取付け

適用できる光ファイバの確認

光スペクトラムアナライザへの光信号の接続はさまざまな光ファイバで可能となっているが、光スペクトラムアナライザの校正条件として示されている光ファイバと異なるものを用いた場合は波長分解能やレベル確度に誤差が生じる場合がある。このためカタログや取扱説明書に明記されている適用光ファイバの種類を確認しておく必要がある。

二次回折光によるゴーストの発生

回折格子を使った分光を行う場合は原理的に高次光の発生が生じる。例えば波長が633nmのヘリウム-ネオン(He-Ne)レーザーからの光を回折格子によって分光した場合には二次光として633nmの倍の波長の1266nmに存在しない光スペクトルが表示される場合がある。実際には存在しないスペクトルであるのでゴーストと呼ばれている。

一部の光スペクトラムアナライザでは高次光を抑制するための高次回折光カットフィルタが組み込まれている。下図は高次回折光カットフィルタが使われていない時に現れるゴーストの事例である。

図37. 波長が633nmの光を測定したときに発生するゴースト

図37. 波長が633nmの光を測定したときに発生するゴースト

光ファイバの点検と清掃

光コネクタの端面に汚れやキズがあると正しい測定できなくなる。レーザパワーが大きな場合は発熱が生じることもある。コネクタ端面は専用のカメラで汚れやキズのないことを確認する必要があり、汚れは光ファイバメーカが指定した方法で取り除く必要がある。

図38. 光コネクタの端面のキズや汚れ

図38. 光コネクタの端面のキズや汚れ

光スペクトラムアナライザに組み込まれている校正用光源の光コネクタに汚れがある場合は取扱い説明書に示された方法で清掃を行う。

過入力への注意

光スペクトラムアナライザの許容入力パワーを超える光を入力すると受光素子を破損する危険がある。強い光のスペクトルを測る際には光アッテネータを介して光スペクトラムアナライザに入力する。

光スペクトラムアナライザの設置の注意点

光スペクトラムアナライザは精密機械であるため、丁寧な取り扱いが必要となる。

平坦な場所に設置する

光スペクトラムアナライザは精密機械であるため、平坦な場所に水平に設置して利用する。傾いた場所への設置や垂直の設置はしないようにする。

温度環境と温度変化

光スペクトラムアナライザを利用する場合は十分な放熱が得られるように取扱説明書で規定されている空間を確保する。

また、光スペクトラムアナライザの内部には金属で作られた分光器が組み込まれている。精密な測定をする場合は仕様で示されている温度範囲で測定を行う。急激な温度変化は分光器内部に結露を生じさせる可能性があるため温度変化が生じないようなようにする。

機械振動や移動時の衝撃

光スペクトラムアナライザは精密機械であるため振動や衝撃を受けると破損や精度維持に問題を生じる可能性がある。光スペクトラムアナライザをトラック輸送する際は振動や衝撃が伝わりにくい梱包とする。

人手による運搬

モノクロメータの光スペクトラムアナライザは機械構造を多く持つため電子測定器に比べて重くなっている。このため人手による運搬をする場合は安全確保のため2人で運ぶのが望ましい。

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