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メモリレコーダの基礎と概要 (第3回)

【インタビュー】日置電機のメモリレコーダ事業への取り組み

1983年以来長年に渡って、多くのメモリレコーダ事業に取り組んでいる日置電機の取締役執行役員イノベーションセンター長の久保田訓久様と、メモリレコーダの設計を長年担当されている技術部技術1課長の増田耕一様にお話を伺った。

図35. インタビューを受けて頂いた久保田訓久様(右)と増田耕一様(左)

図35. インタビューを受けて頂いた久保田訓久様(右)と増田耕一様(左)

Q1:メモリレコーダを取巻く市場動向について

メモリレコーダはメカトロ分野、パワーエレクトロニクス分野から医療・バイオの研究分野まで幅広い物理現象や電気信号などを測定するために使われている。特に需要が多いのは自動車、パワーエレクトロニクス、各種センサ・アクチュエータの開発分野と、電力設備関連の保守・保全の分野である。最近ではインバータを構成する半導体部品が大きく進化して、メモリレコーダには高速・高分解能で長時間測定をしたいという要求が高まっている。新製品のMR6000はこのような要求に応えて開発したものである。
また、IoTへの市場の関心が高まると多様なセンサが必要になってくる。センサ開発にもメモリレコーダは必要な測定器である。この分野は微小な信号を取り扱うことが多いので、高電圧を扱うインバータ計測とは異なる技術が必要になってくる。先進工業国はIoTの普及拡大に注力しているので、今後メモリレコーダの需要を押し上げてくれると期待している。
メモリレコーダの高機能化、多チャンネル化に伴ってパネルからの操作は複雑になってきたため、スマートフォンなどで一般化したタッチパネルを使った新たな操作環境が求められるようになっている。日置電機では2011年に発売したMR8875からタッチパネルの採用を始めた。

Q2:日置電機のメモリレコーダの強みについて

日置電機では1983年に最初のメモリハイコーダ(メモリレコーダの日置電機の商標名)を発売して以来、市場の要望を迅速に応えるために、さまざまなタイプの製品本体や入力モジュールなどを開発し続けてきた。開発ではまず市場要求をお客様から直接聞いて、要望に沿った製品を作ることを常に心がけてきた。

図36. 日置電機のメモリレコーダの進化の過程

図36. 日置電機のメモリレコーダの進化の過程

メモリレコーダの開発では入手可能な新しい技術を積極的に採用してきた。開発プロセスにおいても新しいIT技術をいち早く導入して、開発効率の向上を実現してきたのも日置電機の特色である。
日置電機ではメモリレコーダ本体だけではなく、各種電流センサをはじめさまざまな周辺機器を取り揃えて使い易い測定環境を提供してきた。特に電流センサの心臓部であるホール素子は自社で生産している。
設計と生産の部署が同じ本社敷地内に集結していることは、「新製品を早く市場投入できること、多品種の製品を安定して作れること」などメリットは多い。
最近では利用者のサポートにも注力している。インターネットを活用した製品に関する文書や動画の提供、直接お客様と会話ができる技術セミナー開催など、お客様に多くの情報提供ができることは強みと考えている。

Q3:最近の新しい取り組みについて

市場の期待に応えて、メモリレコーダの性能や機能は今後とも向上を目指していくが、それだけでは今の市場期待に応えられないと考えている。今後は客先それぞれの固有の課題を解決していく能力がいっそう求められると考えている。例えば日置電機ではソラコム社(KDDIの子会社)とともに遠隔監視ができる「GENNECT Remote」の仕組みを開発して、測定器の利用の新たな可能性を示している。今後は測定器という「モノ」を売る企業から、「モノ+コト」で客先に新たな価値を提供できる企業になることを目指していく。

図37. 遠隔計測サービス「GENNECT Remote」の機能

図37. 遠隔計測サービス「GENNECT Remote」の機能

提供:日置電機

今までないオンリーワンの製品を開発することは日置電機のポリシーであるので、時代にあった製品やソリューションの提供を目指していく。
2015年には開発力のいっそうの向上と効率化を加速するために新しい技術棟を完成させた。ここには約270人の技術者がおり、明日の日置電機を支える開発を行っている。

図38. 日置電機の新研究棟「HIOKIイノベーションセンター」

図38. 日置電機の新研究棟「HIOKIイノベーションセンター」

提供:日置電機

日置電機は2020年までのビジネスの方向性を示す中期計画に沿って事業を進めている。今後ともグローバル企業として、アジアを中心とした海外での売上拡大を目指していく。これを実現するには、世界で活躍できる人材を一人でも多く育てることが課題となっているため、グローバル人材を育成する環境を整えている。
日置電機は市場の期待に応える企業として、製品やソリューションを提供することに努力していく。

トピックス

iFデザインアワード

今回の記事で取り上げた日置電機のメモリレコーダ「MR6000」は高いデザイン性が評価されて、ドイツの「iFデザインアワード(https://ifworlddesignguide.com/)」を2018年3月に受賞した。このデザイン賞は世界的に権威があり、世界の工業製品のなかから優れたデザインの製品を表彰している。日本製品ではソニーのゲーム機の「Play Station」、小田急のロマンスカー「50000形」、カシオの腕時計「G-SHOCK」などが受賞している。


執筆協力:日置電機株式会社 ホームページは こちら

執筆:横河レンタ・リース株式会社 T&M事業部 魚住 智彦

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