速納.com

学び情報詳細

メモリレコーダの基礎と概要 (第1回)

【コラム】電磁オシログラフが活躍した時代

計測機器販売店会のホームページにある「電磁オシログラフの開発と国産技術の進歩」という記事を執筆された東洋計測器株式会社シニアアドバイザーの馬場利隆氏に電磁オシログラフが活躍した時代のお話を伺った。

電磁オシログラフの第一世代は横河電機が第二次大戦前の1927年に国産化に成功したが、当時の製品は写真フィルムに波形を記録する方式であったため、電磁オシログラフの近くに現像室が必要となった。このため大学や大手企業の研究室でないと使えないものであった。一般の技術者は電磁オシログラフを使う機会は少なかった。

しかし1960年代中ごろになると写真フィルムではなく、超高圧水銀灯と紫外線感光紙を使った製品が横河電機や三栄測器から販売されるようになった。紫外線感光紙を使った電磁オシログラフは現像しないで波形を記録できるため、当時としては使い易い波形測定器であった。新幹線など鉄道車両、国産旅客機YS-11、電力設備の開発など幅広く使われ、戦後の高度経済成長を支えた産業で多く使われた。

図13. 直記式電磁オシログラフ Type2915(1969年)

図13. 直記式電磁オシログラフType2915(1969年)

提供:横河電機株式会社

電磁オシログラフは複雑な機械のシーケンス動作を同時に多チャネルで観測できる当時唯一の測定器であった。この時代に電磁オシログラフが使われた用途は現在のメモリレコーダに引き継がれている。

電磁オシログラフは振動子を使っているため、使い方を少しでも間違えると破損する繊細なものであった。この振動子は熟練した職人が作るものであったため、高価なものであった。また紫外線感光紙も高価であったため、波形観測は慎重に行われた。今では考えられないが、当時の技術者は苦労して波形を観測していた。

電磁オシログラフは感光紙を折り畳みチャートするなどさまざまな改良はされたが、1980年くらいからA/D変換器で波形を読み取り、電子メモリに波形を記録する現在のメモリレコーダと同じ原理の使い易い製品に置き換わっていった。メモリレコーダはデジタル技術の進化に伴って高性能化、高機能化が飛躍的に進んで現在に至っている。

第2回(「メモリレコーダの構造」他)へ続く

※ 新製品リリースに伴い図8のMR8740をMR8740Tに変更(2018年12月28日)


執筆協力:日置電機株式会社 ホームページは こちら

執筆:横河レンタ・リース株式会社 T&M事業部 魚住 智彦

速納.com