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メモリレコーダの基礎と概要 (第1回)

よいメモリレコーダとは

利用目的にあったメモリレコーダを選ぶにはさまざまな視点から求める製品を選ぶ必要がある。ここではどのような視点があるかを紹介する。

入力モジュールが豊富なこと

メモリレコーダはオシロスコープと異なり、さまざまな種類の入力信号を扱うため、入力がモジュール構造になっている製品が多い。

入力には主なもので電圧、電流、温度、ひずみ、加速度、周波数(回転数)がある。電圧モジュールには絶縁型アナログ信号モジュール、オシロスコープと同じ非絶縁モジュール、ロジック信号を観測するモジュールがあり用途に応じで選ぶ。

温度、加速度、ひずみの変化を波形として記録する場合はセンサが必要になる。入力モジュールがセンサに対応しているかを事前に確認する必要がある。

最近の高機能なメモリレコーダでは信号発生をするモジュールを搭載できるものがある。アナログ信号発生モジュールを使って、部品や電子回路の周波数特性を計測したり、メモリレコーダに取り込んだ波形を、任意波形発生モジュールを使って再現したりすることができる。

図9. さまざまな入力/出力モジュール

図9. さまざまな入力/出力モジュール

提供:日置電機株式会社

トリガ機能が充実していること

メモリレコーダは機械、電力設備、生体、材料などさまざまな対象物の挙動を多チャンネルで計測することが多い。そのためオシロスコープのようなシンプルなトリガやパネルからの手動トリガだけでは期待する波形観測はできないことがある。そのためメモリレコーダにはシンプルなトリガ以外にさまざまな組合せ条件を設定できる高度なトリガや、日付時刻を設定してトリガを掛ける方法など多様なトリガ機能が用意されている。

トリガ信号にはノイズが重畳している場合があるので、ノイズの影響を抑制するフィルタ機能が必要になることがある。

波形測定する場合のトリガ信号を何にするかは重要であるため、トリガ信号源の波形品位や信号源インピーダンスなどをあらかじめ知っておく必要がある。

波形メモリ長が十分であること

観測する波形の周波数成分が広いと、高い周波数成分を観測するために高速なサンプル周波数が必要となり、また低い周波数成分を観測するためには長い時間の波形観測が必要になる。メモリレコーダで観測する波形には広い周波数成分を含むことが多いため、高速サンプルで大量の波形データをメモリに取り込む必要がある。

例えばインバータ装置の計測では、機械であるモータの動作と電子回路であるインバータ回路の動作を同時に観測する必要があるため、波形メモリ長が長く、高速サンプリングができるメモリレコーダが必要となる。

また、発生頻度の少ない現象を捕らえる時は、メモリ長が長いと突発現象などを捉える確率が多くなるので、原因追及などの作業効率は高まる。

多チャンネルかつ大容量の波形メモリを搭載した最近のメモリレコーダには高速の波形描画回路が搭載されているため、スムーズな操作が可能となっている。

電源に自由度があること

メモリレコーダは商用交流電源が使える屋内の利用だけだはなく、屋外で自動車、鉄道車両、航空機に搭載されたり、電源がまったく供給されない場所で使われることがある。このためメモリレコーダが使われる電源環境にあった製品を選ぶ必要がある。

直流電源に対応していないメモリレコーダを屋外で利用する場合、自動車のシガーソケットから12Vの直流を得て、市販の車載インバータを使って交流電源を得る方法があるが、その際は正弦波インバータを選ぶ必要がある。多くのメモリレコーダは矩形波インバータに対応していないので、故障の原因になったり、電源からのノイズで正しい波形観測ができなくなる恐れがある。

耐環境性に優れること

メモリレコーダが利用される環境は屋内であってもさまざまである。インバータを計測する環境ではコモンモードノイズ、発熱する大型設備がある現場では温度、切削機械の評価現場ではオイルミスト、車載試験では振動や衝撃、農業やメッキの現場では腐食性ガス、製鉄所では鉄粉、土木工事現場では土ぼこりなど厳しい環境で使われることがある。そのため厳しい環境で利用する場合は、耐環境性に優れた製品を選ぶ必要がある。メモリレコーダを厳しい環境から遮断するケースに入れて使うこともある。

安全が確保されていること

メモリレコーダで商用電源の波形を直接観測したり、差動プローブや絶縁プローブを使ってインバータ内部の高電圧を観測することがある。このため観測する電圧がメモリレコーダの最大入力電圧を超えないことをあらかじめ確認する必要がある。

また、非絶縁入力モジュールを使って多チャンネルで測定する場合は、安全確保のため観測点のコモンモード電圧が接地電位であることの確認が必要である。

演算、検索機能が充実

メモリレコーダで観測した波形を見るだけでは波形の特徴を抽出できない場合がある。そのためメモリレコーダには波形データを演算する機能が搭載されている。一般的なのは周波数成分で表示するFFT機能や、取り込んだ波形にデジタルフィルタ処理を行ってノイズ成分を除去する機能がある。また電圧波形と電流波形から電力を求める場合は波形間演算が必要となる。

メモリレコーダに記録された膨大な波形データから必要な情報を人によって探すことは困難となっているため、最近のメモリレコーダは波形の特徴を指定すると、記録した波形データから自動的に検索できる機能を持つものがある。

画面表示が多様であること

メモリレコーダは多チャネルで測定した波形を同時に表示するだけでなく、演算した結果を観測した波形と合わせて表示することも可能である。

このように多くの情報を限られた大きさの画面内に表示するため、効率的な表示ができる仕組みを持っている。

利用目的にあった画面表示ができる製品を選ぶことは重要である。

図10. 観測した波形の全体とFFT解析した部分を同時に表示(MR8847A)

図10. 観測した波形の全体とFFT解析した部分を同時に表示(MR8847A)

提供:日置電機株式会社

操作性がよいこと

最近のメモリレコーダは多くの機能をコンパクトな筐体に組み込んでいるため、使いたい機能を選んで設定するには、操作をある程度熟知する必要がある。しかし波形観測のたびに紙の取扱説明書を見ながら操作するのでは効率の高い利用はできない。

このため直感的な利用ができる操作体系が組み込まれている必要がある。また設定情報の確認が容易になっていることも必要である。

最近のメモリレコーダは前面パネルのキースイッチを減らして、直感的な操作ができるようタッチパネルが採用されるようになった。

図11. タッチパンネルを用いた操作性の改善(MR6000)

図11. タッチパンネルを用いた操作性の改善(MR6000)

提供:日置電機株式会社

また、メモリレコーダは多くの機能を持つため、紙の取扱説明書が分厚くなっている。利用のたびに取扱説明書を見るのは手間が掛かるため、最近のメモリレコーダはヘルプ画面が充実しており利用に必要な情報の多くは本体パネルから見ることができる。

利用支援が充実していること

メモリレコーダを利用する場合の利用支援が充実していることも製品を選定する場合に必要となる。利用支援とは「電話やメールによる使い方に関する問合せの窓口が充実していること、技術資料や応用事例の紹介が充実していること、修理や校正の対応が充実していること」などがあげられる。

最近では計測器メーカが基本的な操作法を動画で紹介するなど、利用者への便宜を図っている。

図12. 動画サイト「YouTube」の紹介されている使い方の紹介

図12. 動画サイト「YouTube」の紹介されている使い方の紹介

提供:日置電機株式会社

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