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LCRメータの基礎と概要 (第3回)

【インタビュー】エヌエフ設計ブロックのインピーダンス測定器の取組み

東京工業大学の助教授であった北野進氏によって1959年に設立されたエヌエフ回路設計ブロックは設立当初から現在に至るまで「ユニーク&オリジナル」を事業のキーワードに得意なアナログ回路技術を駆使した測定器や電源装置の開発をしている。

エヌエフ回路設計ブロックは長年に渡ってLCRメータ、ロックインアンプ、周波数特性分析器(FRA)、交流電圧計を使ったインピーダンス測定の手段を市場に提供してきた。

このたびはLCRメータやインピーダンスアナライザを設計されているT&M事業部開発第1部開発第1-1グループの渡邊諭様とインピーダンス計測の啓蒙を担当されている営業企画本部市場開発営業部マーケティング営業企画グループの山上麻里子様にお話を伺った。

図56. インタビューを受けて頂いた渡邊諭様と山上麻里子様

図56. インタビューを受けて頂いた渡邊諭様と山上麻里子様

Q1:エヌエフ回路設計ブロックのインピーダンス計測のヒストリーは

インピーダンス測定は測定対象物に流れる交流電流と端子間の交流電圧の大きさと位相差を測定して、演算することによってインピーダンスを求めることである。インピーダンス測定器の基本構成は交流信号を作る発振器と振幅と位相差を検出する同期検波とフィルタである。
エヌエフ回路設計ブロックは創業当時から低周波信号発生器を作ってきた。また微少な信号から振幅と基準信号の位相差を検出するロックインアンプを作っていた。これらを組み合わせることによってインピーダンス測定が実現できるため、早くからLCRメータを作ることができた。
LCRメータは家電製品、情報通信機器、自動車などに使われているコンデンサやインダクタの生産工場の出荷検査ラインで大量に使われることが多いため、電子部品の生産ラインに注力してビジネスを行っている国内外の測定器メーカは多くある。エヌエフ回路設計ブロックはニッチではあるが、多様なインピーダンス測定の手段を提供するという考え方で現在まで至っている。このため周波数特性分析器と高速電子負荷装置を使った燃料電池インピーダンス測定装置や、周波数特性分析器と高速バイポーラ電源を使った圧電素子のインピーダンス測定装置などさまざまな装置を開発してきた。このほかにも工業材料や食品・バイオといった分野のインピーダンス計測でも実績がある。
エヌエフ回路設計ブロックでは測定器だけでなく、インピーダンス測定器を構成する要素をハイブリッドICや回路モジュールとしても提供している。組み込み装置向けにLCRメータの基本部分を1つの基板に組込んだインピーダンス計測モジュールの販売も行っている。
また、エヌエフ回路ブロックだけではソリューション提供ができない領域は海外の測定器メーカとの連携によって対応している。

Q2:エヌエフ回路設計ブロックのインピーダンス計測の強みは

エヌエフ回路設計ブロックのインピーダンス計測での強みは3つある。最初はLCRメータを構成する要素技術には自信があり再現性のよいインピーダンス測定が可能としたこと、2つ目はLCRメータ以外に周波数分析器、ロックインアンプ、バイポーラ電源など幅広くインピーダンスを測る手段を持っていること、最後はお客様の要望に合わせてさまざまな測定装置を提供できることである。

図57. 1nFのコンデンサを200回繰り返し測定した結果

図57. 1nFのコンデンサを200回繰り返し測定した結果

お客様の要望に合わせてインピーダンス測定環境を提案することは多くの苦労はあるが、実際の現場で測定を行うことによって多くの経験や知識を蓄積することができた。
2003年に出版したエヌエフ回路設計ブロックの技術者がそれぞれの得意な分野の技術を紹介した書籍「計測トラブル110番(オーム社)」にもLCRメータについて当時の技術者が解説をしている。現場で得られた経験を一般化して解説した書籍であるため現在でも好評を得ている。

図58. エヌエフ回路設計ブロックで製品設計を行う技術者が書いた解説書

図58. エヌエフ回路設計ブロックで製品設計を行う技術者が書いた解説書

Q3:エヌエフ回路設計ブロックの新しい取り組みは

インピーダンス測定器に関する最近の話題としてはインピーダンスアナライザを発売したことである。地球環境問題への関心が高まるに従って、パワーエレクトロニクスの技術が進歩している。パワーエレクトロニクス機器を構成する半導体、リアクトル、トランス、コンデンサなどの部品やそれらを構成する材料を測定する需要が増えることを期待してインピーダンスアナライザを開発した。

図59. 2019年に発売したインピーダンスアナライザZA57630

図59. 2019年に発売したインピーダンスアナライザZA57630

もう一つはインピーダンス計測を広く啓蒙する活動である。オシロスコープやファンクションジェネレータなどは多くの技術者にとって馴染みがあるため、基本的な使い方を理解することはあまり負担にならないが、インピーダンス計測は測定対象物の正確な理解と、測定器やテストフィクスチャなどの周辺機器についての知識を習得しないと正しい測定はできない。エヌエフ回路設計ブロックでは長年に渡って蓄積した現場の経験や知識をもとに、インピーダンス計測セミナーを行っている。セミナーでは座学だけではなく、実際の測定をしてもらう工夫をしている。最近ではインターネットを活用したオンラインセミナーを積極的に行い多くの方に参加いただいている。

図60. オンラインでのインピーダンス計測セミナー行っている山上麻里子様

図60. オンラインでのインピーダンス計測セミナー行っている山上麻里子様

インピーダンス計測は電子部品に限らずさまざまな分野で使われているので、エヌエフ回路設計ブロックはこれからも国内外で貢献していきたいと考えている。


執筆協力:株式会社エヌエフ回路設計ブロック ホームページは こちら

執筆:横河レンタ・リース株式会社 事業統括本部 魚住 智彦

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