LCRメータの基礎と概要 (第2回)
<連載記事一覧>
第2回:「LCRメータの構造」「LCRメータで表示できるパラメータ」「試料との接続」「測定誤差の考え方」「【コラム】各社のLCRメータ、インピーダンスアナライザ」
第3回:「LCRメータを使っての測定例」「LCRメータ以外の測定器を使っての測定例」「LCRメータの校正」「おわりに」「【インタビュー】エヌエフ設計ブロックのインピーダンス測定器の取組み」
LCRメータの構造
現在市販されているLCRメータの多くは自動平衡ブリッジ法である。下記にはエヌエフ回路設計ブロックの5.5MHzまでの交流インピーダンスを測定できるLCRメータZM2376のブロック図を示す。
図22. LCRメータZM2376のブロック図(エヌエフ回路設計ブロック)

1mHz ~ 5.5MHzまで発生可能な発振器を搭載して、最大5VまでのDC電圧を重畳して測定するために内部にDCバイアス電源が搭載されている。発振器の振幅をゼロにして、DCバイアスの電圧設定だけで測定を行えば直流での抵抗値が得られる。
測定部は電圧と電流の信号をA/D変換器で取り込み、その後の信号処理はデジタル回路とファームウェアによって演算を行いさまざまな測定パラメータとして表示できるようになっている。
このLCRメータは汎用高性能型ではあるが、生産ラインでの利用も可能としているため、PLCなどの制御装置との接続が容易なハンドラインタフェースが搭載されている。
LCRメータで表示できるパラメータ
LCRメータでは試料に印加した交流信号の電流と資料の両端の電圧の信号をベクトル電圧計で測定してそれぞれの信号の大きさと位相差を求める。測定結果は演算によって設定した等価回路のパラメータやその他の試料の特性を示すパラメータとして表示することができる。
表示できるパラメータはLCRメータの機種によって異なるが、下記にはエヌエフ回路設計ブロックのLCRメータZM2371/ZM2372/ZM2376の事例を示す。
記号 | 名称 | 単位 | 意味 |
---|---|---|---|
|Z| | インピーダンス | Ω | 電流の通りにくさ |
|Y| | アドミッタンス | S | 電流の通りやすさ |
L | 自己インダクタンス | H |
電流の変化を妨げる逆起電力を発生する能力 インダクタンスLpもしくはLs |
C |
キャパシタンス (容量、静電容量) |
F |
電荷を貯め込む能力 容量CpまたはCs |
R | 抵抗 | Ω |
インピーダンスの実数部 抵抗RpもしくはRs |
G | コンダクタンス | S | アドミッタンスの実数部 |
Q | 回路の良さ | - | エネルギー散逸の少なさ |
D | 損失係数 | - |
エネルギー散逸の多さ =tanδ |
θ | 位相角 |
deg rad |
インピーダンスまたはアドミッタンスの位相角 電圧と電流の位相角に等しい |
X | リアクタンス | Ω | インピーダンスの虚数部 |
B | サセプタンス | S | アドミッタンスの虚数部 |
Rs | 等価直列抵抗 | Ω | =ESR |
Rp | 等価並列抵抗 | Ω | |
Lp | 等価並列インダクタンス | H | |
Rdc | 直流抵抗 | Ω |
LCRメータではこれらの測定パラメータから選択して表示するようになっている。