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FFTアナライザの基礎と概要 (第2回)

FFTアナライザに接続されるセンサ

FFTアナライザは主に振動や音響の測定に使われるため、さまざまなセンサを接続される。振動現象は変位、速度、加速度のパラメータで人は感じることができる。人の感覚は振動周波数によって感じることができるパラメータは変わってくる。

図20. 振動の種類と人間の感覚

図20. 振動の種類と人間の感覚

振動の測定においても、変位、速度、加速度を測ることができるセンサが使われる。センサには測定対象物に接触して測るセンサと測定対象に触れないで測るセンサがある。

表4. 測定対象とセンサの種類
物理量 測定対象 方式 センサ
加速度 ・振動一般
・高周波数帯域
・回転機械の軸受
接触 圧電式加速度センサ
歪みゲージ式加速度センサ
サーボ式加速度センサ
速度 ・小型振動体
(圧電素子、光学ドライブ、磁気ディスク)
・回転機械振動
非接触 レーザードップラー振動計
変位 ・低周波数帯域
・回転軸(面)の振れ
非接触 静電容量式変位計
渦電流式変位計
レーザー式変位計

圧電式加速度センサ

振動の測定で最も多く使われるセンサである。圧力を受けると電荷が発生する圧電素子を使ったセンサで広帯域、小型、高感度の特長を持っている。圧電素子にはチタン酸バリウムや水晶の単結晶が用いられる。

加速度センサの内部構造は主に機械的強度が強く大きな衝撃の測定が可能な圧縮型と温度変化、取り付け面歪み等の外乱に強いシェア型がある。

図21. 圧電式加速度センサの構造と原理

図21. 圧電式加速度センサの構造と原理

圧電式加速度センサには電荷出力型とプリアンプ内蔵型がある。電荷出力型は圧電素子からの電荷信号がセンサから出力されるため、FFTアナライザに接続する場合はチャージアンプが必要となる。プリアンプ内蔵型センサの場合は電源(定電流源)を供給すればFFTアナライザに直接接続することができる。FFTアナライザにプリアンプ駆動定電流源内蔵がされているものであればセンサを直接接続することができる。

図22. 圧電式加速度センサと測定器の接続

図22. 圧電式加速度センサと測定器の接続

圧電式加速度センサを測定対象物に取り付けるにはさまざまな方法があるが、同じセンサであっても取り付け方によって測定できる周波数帯域が異なるので注意が必要である。高い周波数まで測定する場合はねじによる固定が必要となる。

チャージアンプとは

圧電素子からの信号は電荷であるため電圧信号に変換する必要がある。チャージアンプの基本は積分回路で下記のようになっている。
圧電素子で発生した電荷qdは入力容量Cd+CCおよびCfにすべてチャージされる。すなわち発生電荷qdはq0+qfと等しい。入力電圧eは常にほぼ0に保たれ、q0≒0であることからqd≒qfとなり、圧電式加速度センサに発生する電荷はすべてフィードバック容量Cfにチャージされる。感度は入力容量(Cd+CC)には影響されずフィードバック容量Cfのみに関係する

図23. チャージアンプの等価回路

図23. チャージアンプの等価回路

市販されているチャージアンプは積分回路の出力にハイパスフィルタやローパスフィルタが組み込まれているものがある。

レーザドップラ振動計

加速度センサを測定対象物に取り付けることができないような微小な物体や回転している物体の動きを測定したい場合は非接触のセンサを用いる。非接触の振動センサには静電容量式、渦電流式、レーザドップラ式がある。

図24. レーザドップラ振動計(LV-1800)

図24. レーザドップラ振動計(LV-1800)

提供:小野測器

ここでは広帯域の非接触測定ができるレーザドップラ式のセンサについて解説する。音波、電波、光を移動する物体に照射すると物体からの反射してきた信号は物体の移動速度に比例して周波数(波長)が変化する。この原理を利用すれば物体に波長が安定したレーザ光を照射して、反射してきた光の波長の変化を測れば速度が得られる。振動する物体であれば反射光の波長は振動する速度に比例して変動する。速度信号が判れば積分して変位信号、微分して加速度信号が得られる。

レーザドップラ振動計の主要な部分は安定した赤色光のヘリウム‐ネオンレーザ光源、音響光学変調器、光ヘテロダインによって構成されている。

図25. レーザドップラ振動計の構造

図25. レーザドップラ振動計の構造

レーザドップラ振動計は圧電式加速度センサに比べて高額ではあるが、数十MHzまでの振動を非接触で観測することができるメリットがある。またレーザ光を取り扱っているため注意は必要であるが、クラス2であれば一般的なレーザポインタと同じであるため特別な保護を必要としない。

インパルスハンマ

FFTアナライザを使って測定対象物の固有振動数を測定する場合はインパルスハンマによって衝撃を与えた測定を行う。インパルスハンマはインパクトハンマと呼ばれる場合もある。

インパルスハンマは測定対象物に合わせて小型から大型まである。またインパルスハンマの先端にはインパクト・チップが取り付けられている。

図26. 汎用インパルスハンマ(GK-3100)

図26. 汎用インパルスハンマ(GK-3100)

提供:小野測器

このチップを交換することによって衝撃波の周波数帯域を決めることができる。チップはハンマリングによってセンサを保護する機能もある。

図27. 汎用インパルスハンマの加振周波数特性(小野測器 GK-3100)

図27. 汎用インパルスハンマの加振周波数特性(小野測器 GK-3100)

インパルスハンマを使う場合は2度たたき(ダブルハンマリング)が起きないように叩く必要がある。2度たたきは1度目の加振で振動を始めた対象物が最初の反動で戻ってきたときにハンマと再度衝突してしまう現象のことである。2度たたきが生じているかはインパルスハンマの出力波形を観測すれば判る。

マイクロホン

音響測定を行う場合は計測用に作られたマイクロホンが使われる。一般のマイクロホンとは異なり周波数特性や安定性が優れたものとなっている。

測定に使われるマイクロホンはプリアンプ、ケーブルと組み合わせて使われる。プリアンプを駆動する電源が必要となるが、センサ駆動電源(CCLD)を持ったFFTアナライザではプリアンプの出力を直接接続することができる。またマイクロホンに接続されるプリアンプは指定されているので組合せの確認をする必要がある。

図28. マイクロホンと測定器の接続

図28. マイクロホンと測定器の接続

マイクロホンを選ぶ際には下記の仕様に注目する必要がある。

・マイクロホンのサイズ

マイクロホンの公称口径には1 インチ、1/2 インチ、1/4 インチ、1/8 インチと各種があるが、一般には1/2 インチが使われることが多い。マイクロホンの口径が小さいほど周波数帯域を高くすることができる。一方口径が大きいほど小さい音を捕らえることができる特性となる。

・レスポンスタイプ

音場型マイクロホンは1つの音源から1つの方向に発せられる音圧レベルを測定するためのものである。音圧型マイクロホンはダイヤフラム正面からの音圧を測定するように作られている。一般には音場型マイクロホンが使われて、ダクト内の音を測定する場合は音圧型マイクロホンが使われる。

そのほか周波数範囲、温度係数、自己雑音レベルなどの仕様が用途に適しているかを確認する必要がある。

PCソフトウェア

最近のFFTアナライザ本体は高度な機能を搭載しているが、大量のデータ処理、高度な演算処理を行う場合や大量の測定データの保存を行う場合は演算能力が高いパソコンを用いることが必要となる。

振動や音響の解析を行うための基本的なデータ処理やパソコンの大画面で表示する機能などを提供するソフトウェアが市販されている。例えば小野測器が開発したO-ChartはFFTアナライザで取得したデータを判りやすく表現できる。下図はO-Chartを用いて自動販売機の全面から発生する騒音をFFTアナライザによってメッシュ状に観測して周波数別に音圧分布を表示したものである。

図29. O-Chartを用いて自動販売機からの騒音を周波数別に音圧表示した事例

図29. O-Chartを用いて自動販売機からの騒音を周波数別に音圧表示した事例
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