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FFTアナライザの基礎と概要 (第1回)

【コラム】FFTアナライザとよく似た測定器との違い

スペクトラムアナライザとの違い

周波数分析を行う測定器としてスペクトラムアナライザがある。スペクトラムアナライザは主に無線通信機器の開発や電波環境測定の分野で使われている。スペクトラムアナライザの入力インピーダンスは通信機器を対象にしているため一般に50Ωとなっている。FFTアナライザの入力インピーダンスはハイインピーダンス(1MΩ)となっている。

FFTアナライザはデジタル信号処理技術がベースとなっているが、スペクトラムアナライザは高周波アナログ回路技術がベースとなっている。

図14. FFTアナライザの基本的なブロック図

図14. FFTアナライザの基本的なブロック図

出典:周波数領域の信号計測技術(佐久間 洋、通信ソサイエティマガジン No.13 2010年)

図15. 掃引同調型スペクトラムアナライザの基本的なブロック図

図15. 掃引同調型スペクトラムアナライザの基本的なブロック図

出典:周波数領域の信号計測技術(佐久間 洋、通信ソサイエティマガジン No.13 2010年)

高速高分解能A/D変換器の登場によって、最近のスペクトラムアナライザはIFブロックの信号処理をアナログ回路ではなくデジタル信号処理で行うようになっている。

メモリレコーダとの違い

メモリレコーダは12ビットから16ビットの高分解能A/D変換器を搭載した波形測定器で時間の変化とともに信号の強度を表示する測定器である。多くのメモリレコーダにはFFT分析できる機能が搭載されている。またFFTアナライザにも時間軸で波形を表示する機能があるので、FFTアナライザと用途が重なることがある。

しかし波形の形を観測するメモリレコーダと周波数分析を行うFFTアナライザでは利用目的が異なるため、製品の基本構造や性能を保証する仕様が異なっている。下記には代表的なポータブル据置き型製品の違いを示す。

表2. FFTアナライザとメモリレコーダの違い
FFTアナライザ
(小野測器 CF-9000)
メモリレコーダ
(横河計測 DL850)
主な利用目的 振動や音響の現象に含まれる周波数成分を観測する
オプションの信号源と搭載して伝達特性を測定する
メカトロ機器や電力変換器などからのセンサ信号や駆動信号のアナログ波形やデジタル波形の時間変化を観測する
入力構造 固定の電圧入力 モジュール構造で多様な入力が可能
アナログ信号の入力数 2chもしくは4ch 最大32ch
(モジュールの搭載数によって異なる)
最大入力電圧 70Vrms 1000V(DC+Acpesk)
(100MS/sモジュールの場合)
周波数帯域 DC~100kHz DC~20MHz
(100MS/sモジュールの場合)
A/D変換器の分解能 24bit 12bit~16bit
アンチエリアジングフィルタ 高性能アンチエリアジングフィルタ搭載 一部の入力モジュールに
アンチエリアジングフィルタ搭載
ダイナミックレンジ 120dB以上 仕様は規定しない
FFT演算ch数 4ch 2ch
リアルタイムFFT演算 機能あり 機能なし
オクターブ解析 機能あり 機能なし
トラッキング解析 機能あり 機能なし
サーボ解析 機能あり 機能なし
冷却ファン なし あり

利用目的に合わせてFFTアナライザを選択するか、メモリレコーダを選択するかを決める必要がある。


執筆協力:株式会社小野測器 ホームページは こちら

執筆:横河レンタ・リース株式会社 事業統括本部 魚住 智彦

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