2019/09/25
FFTアナライザの基礎と概要 (第1回)
【コラム】FFTアナライザとよく似た測定器との違い
スペクトラムアナライザとの違い
周波数分析を行う測定器としてスペクトラムアナライザがある。スペクトラムアナライザは主に無線通信機器の開発や電波環境測定の分野で使われている。スペクトラムアナライザの入力インピーダンスは通信機器を対象にしているため一般に50Ωとなっている。FFTアナライザの入力インピーダンスはハイインピーダンス(1MΩ)となっている。
FFTアナライザはデジタル信号処理技術がベースとなっているが、スペクトラムアナライザは高周波アナログ回路技術がベースとなっている。
高速高分解能A/D変換器の登場によって、最近のスペクトラムアナライザはIFブロックの信号処理をアナログ回路ではなくデジタル信号処理で行うようになっている。
メモリレコーダとの違い
メモリレコーダは12ビットから16ビットの高分解能A/D変換器を搭載した波形測定器で時間の変化とともに信号の強度を表示する測定器である。多くのメモリレコーダにはFFT分析できる機能が搭載されている。またFFTアナライザにも時間軸で波形を表示する機能があるので、FFTアナライザと用途が重なることがある。
しかし波形の形を観測するメモリレコーダと周波数分析を行うFFTアナライザでは利用目的が異なるため、製品の基本構造や性能を保証する仕様が異なっている。下記には代表的なポータブル据置き型製品の違いを示す。
FFTアナライザ (小野測器 CF-9000) |
メモリレコーダ (横河計測 DL850) |
|
---|---|---|
主な利用目的 |
振動や音響の現象に含まれる周波数成分を観測する オプションの信号源と搭載して伝達特性を測定する |
メカトロ機器や電力変換器などからのセンサ信号や駆動信号のアナログ波形やデジタル波形の時間変化を観測する |
入力構造 | 固定の電圧入力 | モジュール構造で多様な入力が可能 |
アナログ信号の入力数 | 2chもしくは4ch |
最大32ch (モジュールの搭載数によって異なる) |
最大入力電圧 | 70Vrms |
1000V(DC+Acpesk) (100MS/sモジュールの場合) |
周波数帯域 | DC~100kHz |
DC~20MHz (100MS/sモジュールの場合) |
A/D変換器の分解能 | 24bit | 12bit~16bit |
アンチエリアジングフィルタ | 高性能アンチエリアジングフィルタ搭載 |
一部の入力モジュールに アンチエリアジングフィルタ搭載 |
ダイナミックレンジ | 120dB以上 | 仕様は規定しない |
FFT演算ch数 | 4ch | 2ch |
リアルタイムFFT演算 | 機能あり | 機能なし |
オクターブ解析 | 機能あり | 機能なし |
トラッキング解析 | 機能あり | 機能なし |
サーボ解析 | 機能あり | 機能なし |
冷却ファン | なし | あり |
利用目的に合わせてFFTアナライザを選択するか、メモリレコーダを選択するかを決める必要がある。