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プログラマブル (出力可変型) 直流安定化電源の基礎と概要 (第3回)

【インタビュー】菊水電子工業の直流電源事業への取り組み

1975年以来長年に渡って、電源事業に取り組んでいる菊水電子工業のソリューション事業部営業推進部長の茂戸藤 寛様とソリューション事業推進部SE課主任の伊藤浩一様に話を伺った。

図49. インタビューを受けて頂いた茂戸藤寛様(左)と伊藤浩一様(右)

図49. インタビューを受けて頂いた茂戸藤寛様(左)と伊藤浩一様(右)

直流電源は実験室で使われる小型のドロッパ方式直流電源から始まり、現在では電気自動車を駆動するインバータの試験や大型の情報通信システムの電源環境試験を行うものまで広がってきた。特に自動車に多くの電子機器が搭載されたこと、ハイブリッド自動車の普及によって車載インバータの試験需要が増えたことが市場拡大の要因となっている。今後は自動運転を実現するためにより多くの電子回路が自動車に搭載されるので直流電源の需要が拡大すると見ている。最近では太陽光発電が急速に普及したため、パワーコンディショナの試験において太陽電池を模擬するために直流電源が使われるようになった。国内の市場の拡大に伴って直流電源市場にも海外メーカが参入して、最近では海外メーカの製品が国内で見受けられるようになってきた。

菊水電子は主にオシロスコープや信号発生器などを作る測定器メーカとして1951年に誕生した。その後1975年に小型のドロッパ方式直流電源を発売し、1983年にスイッチング方式直流電源のPALシリーズを発売した。その後市場の要望に従ってさまざまな直流電源を開発してきた。また菊水電子は電源の総合メーカを目指して、交流電源、直流電子負荷、交流電子負荷などさまざまな電源装置をラインアップし、現在では国内トップの試験用電源メーカになったことを自負している。最近では長年の経験で蓄えた計測の知識をフルに使って、電源装置を販売するだけでなく、電源装置と測定器を組み合わせた計測ソリューションの提供にも注力している。

図50. 直流電源開発系統樹

図50. 直流電源開発系統樹

菊水電子はグローバル市場で戦える製品を開発するため、仕様を決める段階からグローバルビジネスを強く意識している。また製造原価低減を実現するため、開発の早い段階から設計部門と生産部門の連携を積極的に取っている。新しい直流電源PWR-01はこのような開発の進め方でコストパフォーマンスのよい強い製品に仕上がった。

菊水電子は1983年に生産拠点として富士勝山事業所(山梨県)を設立した。国内でプリント基板の部品実装から製品の組立てまで一貫した生産体制を構築していることも強みとなっている。

図51. 富士勝山事業所での電源機器の生産

図51. 富士勝山事業所での電源機器の生産

菊水電子の電源は「高品質、高性能、壊れにくい」という評価を国内外から得られている。今後の事業展開を中期計画では「グローバル、ソリューション、事業領域拡大」という3つのキーワードで表現している。グローバル展開を強化するために2017年5月23日に海外マーケティングパートナとしてシンフォニーマーケティングと契約を締結した。まずはアメリカの市場開拓を行っていく。

ソリューションを強化するにはお客様に菊水電子が持つ「計測と電源」の知識をよく知って頂くことが重要と考えて情報発信を積極的に行っている。特に2016年に立ち上げた「KIKUSUI mag」はエンジニアの顔が見える技術情報サイトにした。また新たな試みとして若手技術者を対象に漫画を使った判り易い製品解説を始めた。

事業領域拡大では電源開発で得た技術や経験をもとに高効率双方向電源ユニットの開発を行い、新たに組込み分野に参入した。

今後とも市場要求に応える電源だけではなく、計測技術を活用した高度なソリューションを提供できるよう努力していく。


執筆協力:菊水電子工業株式会社 ホームページは こちら

執筆:横河レンタ・リース株式会社 T&M事業部 魚住 智彦

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