速納.com

学び情報詳細

直流電子負荷の基礎と概要 (第3回)

【インタビュー】計測技術研究所の電源事業の取り組み

1973年に創業した計測技術研究所は電源機器事業を担当するパワエレ事業部と、大型LED表示システムなどを担当する映像機器事業と2016年に合併を行った目黒電波測器の電子測定器事業を統合したMV事業部によって構成されている。今回は電源機器事業を行うパワエレ事業部営業部長の鈴木孝和様と課長の小山知剛様に日吉事業所でお話を伺った。

図51. インタビューを受けて頂いた鈴木孝和様(右)と小山知剛様(左)

図51. インタビューを受けて頂いた鈴木孝和様(右)と小山知剛様(左)

Q1:計測技術研究所の電源機器開発の歴史と特長について

計測技術研究所の電源機器事業は1980年に電源自動試験システム「K-230」を発売したことから始まっている。この製品は当時普及が始まったスイッチング電源の試験を行うために作られたものである。スイッチング電源は電子機器の小型化や軽量化に貢献できるため、従来の大きくて重いドロッパー方式の電源からの置き換えが進んだ。またパソコンや携帯電話などの情報機器が個人にまで普及したことが需要を押し上げていった。日本のスイッチング電源産業は2000年くらいまでは生産が増加するとともに、単価が下がる傾向にあった。最近は安価なスイッチング電源は海外で生産されるようになり、国内では高性能や高信頼のスイッチング電源が主に生産されるようになってきている。
計測技術研究所はスイッチング電源の需要拡大と高性能化を支えるために、さまざまなタイプの直流電子負荷を開発して市場に提供してきた。

図52. 日本国内でのスイッチング電源生産の推移

図52. 日本国内でのスイッチング電源生産の推移

2010年以降になると、太陽光発電、電気自動車、LED照明、燃料電池、パワー半導体といった分野での直流電子負荷装置の需要が増えて大容量や用途対応の製品を投入するようになった。
計測技術研究所の電源機器事業ではスイッチング電源の出力ノイズを測定するリップルノイズメータ、交流電子負荷、直流/交流電源、安全試験機などの汎用製品のほかに、計測リューションの提供としてシステム製品や特注の電源機器の開発/販売も行っている。

Q2:計測技術研究所の電源機器事業の強み

長年に渡ってさまざまなスイッチング電源の評価に関わってきたため、スイッチング電源やDC-DCコンバータの評価試験ではお客様の期待に応えるソリューションを迅速に提供できるのが強みである。
低電圧で動作する高速デジタル機器に数多く搭載されているPOL(point of load)DC-DCコンバータを評価するための高速電子負荷は計測技術研究所の得意とする分野である。高速電子負荷を実現する技術は2006年の電気情報通信学会ソサイエティ大会で発表を行った。
また、社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が定めるスイッチング電源のリップルノイズの測定法に準拠したリップルノイズメータを市場に供給している。この測定器はスイッチング電源を作るメーカにとっては必須のものとなるのでスイッチング電源業界の発展に貢献してきた。
計測技術研究所は電子負荷装置や電源装置のアプリケーションを積極的に市場に提供していく活動を長年行っている。以前は紙の媒体を使ってお客様に資料を配布するようにしていたが、現在は迅速に最新の情報を提供できるよう、さまざまなアプリケーションをホームページから提供するようにしている。長年の蓄積によって現在では約300種のアプリケーションが提供できるようになっている。

図53. 計測技術研究所のオートモーティブ燃料電池ソリューションカタログ

図53. 計測技術研究所のオートモーティブ燃料電池ソリューションカタログ

https://www.keisoku.co.jp/pw/wp-content/uploads/2018/02/AutomotiveFC_light.pdf

アプリケーション情報は「1分で読めるKGワンポイントアプリ」として計測技術研究所の女性社員が登録して頂いているお客様へ定期的に配信している。女性社員が毎回文頭に書いている機知に富んだ短い文章はお客様から好感を得ている。

計測技術研究所パワエレ事業部のメールマガジン配信申し込みページ
https://www.keisoku.co.jp/inquiry/pe_DM/contact.html

Q3:計測技術研究所の電源機器事業の最近の取り組み

計測技術研究所では大学の研究者と一緒に開発を行って最新の技術を獲得する活動と、自社が長年に渡って蓄積した知識や経験を単体製品からシステムソリューションまでお客様が望む形で提供できるよう努力している。
大学との共同開発では、2015年に中小企業庁の支援を受けて「大容量50kW交直両用回生電子負荷装置の開発製品化」の開発を電気通信大学の樋口幸治准教授(当時)の指導を得て行った。この開発の成果は研究開発成果等報告書として2018年に中小企業庁のホームページに公開されている。またこの開発の成果は製品として現在販売している。
新たな試みとして大容量の電源装置をお客様が作る装置に組み込むモジュールとして提供する事業を始めている。例えばDual Active Bridge(DAB)方式の「25kW高効率絶縁型双方向DC-DCコンバータ」がある。この製品は2018年に開催されたTECHNO-FRONTIER 電源システム展に試作品を展示して、95%以上の高い変換効率を持つことが注目された。
現在はこの製品に続き、双方向DC/DCモジュール(25kW)、片方向交直両用モジュール(25kW)、系統連系インバータモジュール(25kW)、MPPT内蔵コンバータモジュール(25kW)などのさまざまな電源モジュールの開発を新たに行っている。

図54. 現在開発中の双方向電源モジュールとコントローラ

図54. 現在開発中の双方向電源モジュールとコントローラ

新たな事業での計測技術研究所の強みは、開発を進めている双方向電源モジュールを使い、今までの電源装置や電子負荷装置の開発で得た経験を活かした「高機能で高性能な電源装置」を迅速に提供し、新しいソリューションに展開できることである。多くのアプリケーションを社内に蓄積しているため、お客様のニーズや課題解決に適したソリューションを提供できる自負がある。
計測技術研究所は常に新しい技術を獲得して、市場のニーズに答える電源・電子負荷装置の開発を行っていく。


執筆協力:株式会社計測技術研究所 ホームページは こちら

執筆:横河レンタ・リース株式会社 事業統括本部 魚住 智彦

速納.com