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直流電子負荷の基礎と概要 (第2回)

直流電子負荷装置の構造

直流電子負荷装置には2つの方式があり、接続された電源装置や電池から供給されるエネルギーを熱に変換して大気に放出するドロッパー方式と、交流電源系統にエネルギーを戻すスイッチング(回生)方式がある。ここでは2つの方式の説明を行う。

ドロッパー方式の原理

ドロッパー方式はトランジスタやFETなどの半導体を使って端子に流れる電流を熱に変換する仕組みとなっている。初期の直流電子負荷装置にはパワートランジスタ使われることが多かったが、現在では大電流の取り扱いがしやすいMOS-FETが使われるようになっている。

図16. ドロッパー方式の直流電子負荷装置の原理図

図16. ドロッパー方式の直流電子負荷装置の原理図

ドロッパー方式の直流電子負荷装置はパワートランジスタやMOS-FETでエネルギーが熱に変換されるため内部に大きな放熱器があり、ファンによって熱を大気に放出するようになっている。

実際のドロッパー方式の直流電子負荷装置の構造

直流電子負荷装置の例として計測技術研究所のLoad Stationシリーズの構造を示す。この製品は負荷端子間の電圧や電流を測定する機能や、さまざまな制御や複数台の同期運転ができる機能を持っている。

また、この製品では負荷端子と電流モニタ出力端子はケース電位とは絶縁されている。

図17. ドロッパー方式の直流電子負荷装置のブロック図(Load Station、計測技術研究所)

図17. ドロッパー方式の直流電子負荷装置のブロック図(Load Station、計測技術研究所)

スイッチング(回生)方式の直流電子負荷装置の構造

一般にスイッチング(回生)方式の直流電子負荷装置は大型の電子負荷装置であり、ドロッパー方式の電子負荷装置に比べて発熱量は小さくてすむ利点がある。ただし回生した電力エネルギーを電力系統に戻すので、系統連系動作ができる環境であるかを事前に確認を求められることがあるため、スイッチング(回生)方式の直流電子負荷装置の設置に際しては電子負荷装置メーカに相談することが望ましい。

図18. スイッチング(回生)方式の直流電子負荷装置のブロック図

図18. スイッチング(回生)方式の直流電子負荷装置のブロック図

スイッチング(回生)方式の直流電子負荷装置が双方向インバータによって構成されている場合は電源装置としても動作できる。

直流電子負荷装置の特性を示す用語

直流電子負荷装置のカタログを見る場合に知っておかなければならない仕様項目について説明する。

・最大定格

直流電子負荷装置に使われている部品の仕様や部品が耐える温度を考慮して、直流電子負荷装置には電圧、電流、電力の最大定格が定められている。製品によっては動作時間に条件を付けた定格電力より大きなピーク電力が規定されているものがある。

・内部抵抗

直流電子負荷装置はトランジスタやMOS-FETで可変抵抗と同じような動作ができるようになっているが、内部抵抗は存在するため0Ωにはならない。

最大定格と内部抵抗を組み合わせた範囲が直流電子負荷装置として動作が可能な範囲である。

図19. 最大定格(500V、12A、300W)、内部抵抗100mΩの負荷動作範囲

図19. 最大定格(500V、12A、300W)、内部抵抗100mΩの負荷動作範囲

・最小動作電圧

一般に直流電子負荷装置には最小動作電圧という仕様がある。負荷端子に印加される電圧が最小動作電圧以下であった場合は図20に示すように電流が流れなくなる特性が見られる。

図20. 最小動作電圧以下での直流電子負荷装置の動作

図20. 最小動作電圧以下での直流電子負荷装置の動作

最近の高性能な直流電子負荷装置では最小動作電圧の仕様がなく、抵抗と同じような特性を示すことができるものがある。ゼロボルトから負荷特性が必要な試験では最小動作電圧の仕様を確認する必要がある。

・スルーレート

定電流(CC)モードの時に電流の立ち上がり時間を設定できる。高速の負荷変動に追従するDC-DCコンバータや電流センサの試験ではスルーレートを設定して試験を行う。

図21. 高速直流電子負荷装置のスルーレートを可変した際の動作(ELS-304、計測技術研究所)

図21. 高速直流電子負荷装置のスルーレートを可変した際の動作(ELS-304、計測技術研究所)

・設定確度/設定分解能

直流電子負荷装置は動作モードごとに設定確度と設定分解能が規定されている。動作モードによって仕様表現が異なるので注意が必要となる。

直流電子負荷装置の外部制御

直流電子負荷装置は単独で利用する以外に複数台を連結して動作させたり、通信やDIDOポートなどを用いて外部から制御を行うことができる。

複数台の並列運転

複数台の電子負荷装置を並列に接続して大きな電流に対応した測定環境を構築することができる製品がある。

並列運転を行う場合は1台をマスタ機として、ほかの直流電子負荷装置はスレーブ機とする。並列運転を行える直流電子負荷装置の仕様には最大接続することができる台数が規定されている。

並列運転を行う場合は大きな電流を取り扱うことになるので、大電流に対応した配線がされているかを確認する必要がある。また並列運転には組み合わせて使える機種に制約がある場合があるので注意が必要である。

図22. 直流電子負荷装置を複数台並列に接続して動作させるときの接続

図22. 直流電子負荷装置を複数台並列に接続して動作させるときの接続

多チャンネルの同期運転

マルチ出力を持つスイッチング電源の特性評価をする場合には複数の直流電子負荷装置を同時に動作させることが必要となる。

複数台の同期運転ができる直流電子負荷装置の仕様には同期運転が可能な最大の台数が書かれている。また同期運転時にアラームが発生したときの動作などは事前に取扱説明書で確認しておく必要がある。

図23. 直流電子負荷装置を同期運転するときの接続

図23. 直流電子負荷装置を同期運転するときの接続

PLCなどを使っての制御

生産ラインなどではセンサやアクチュエータと測定器を組み合わせて自動検査装置が作られる場合があり、その際に制御装置としてパソコンではなくコンパクトなPLC(Programmable Logic Controller)が利用される場合がある。PLCを利用する場合は直流電子負荷装置の通信ポートではなく、DIDOポートやアナログ入力端子を使って制御を行うことがある。DIDOポートやアナログ入力端子では制御が行える範囲は限定されるが、簡単な仕組みで装置を構築することができる。

図24. DIDOを使っての直流電子負荷装置の外部制御

図24. DIDOを使っての直流電子負荷装置の外部制御

通信制御機能

パソコンと直流電子負荷装置の通信ポートを使って接続を行い、直流電子負荷装置の設定と制御を行う。測定値もパソコンに取り込むことができる。

通信ポートにはUSB、GPIB、LAN、RS-232Cなどがあり、製品によって保有している通信インターフェース仕様が異なる。

表1. 計測技術研究所の直流電子負荷装置が持つ通信インターフェース
LN-300A
LN-300C
LN-1000A
LN-1000C
ELL-355
ELS-304
3300Fシリーズ
3310Gシリーズ
3340Gシリーズ
33430Gシリーズ
34000Aシリーズ
34300Eシリーズ
36000Aシリーズ
36300Eシリーズ
33500Fシリーズ
3360Fシリーズ
Ene-phant
USB *1
GP-IB *1
LAN
RS-232C
〇:標準装備、△:オプション *1:10kWモデルのみ

直流電子負荷装置の状態モニタ

直流電子負荷装置の状態をアナログ信号やデジタル信号によって出力する機能がある。これらの機能は測定システムや検査装置を構築する際に利用する。

電流モニタ

直流電子負荷装置の負荷端子に流れる電流をアナログ電圧信号としてリアルタイムに出力できる仕組みを持っている。電流の変化を記録計やオシロスコープで波形として観測する際などに利用される。

異常状態検出

直流電子負荷装置の内部には異常な状態を検出する仕組みが組み込まれている。異常な状態が生じれば直流電子負荷装置や測定対象の電源装置や電池などを破損させる危険がある。異常状態が検出されたときは直流電子負荷装置本体に表示がされるとともに、外部に接続された制御装置にも情報が送られるようになっている。

表2には計測技術研究所の直流電子負荷装置のLoad Stationに搭載された異常状態検出機能である。

表2. 直流電子負荷装置に搭載された異常状態検出機能の例
種類 保護動作
過電流保護 保護動作をいずれかに指定できる
・電流リミット設定値の110%で負荷オフとする
・負荷オンのまま電流リミット設定値の110%で電流制限する
過電力保護 保護動作をいずれかに指定できる
・定格電力の110%を超えると、負荷オフとなって電流を遮断する
・定格電力の110%を超えると、負荷オンのまま定格電力の110%で電力制限する
加熱保護 負荷部の温度異常を検出した場合、負荷オフとなり電流を遮断する
過電圧アラーム 電圧レンジごとに定められている過電圧値を超えると、負荷オフとなり電流を遮断する
逆接続アラーム 直流電子負荷への接続の極性が逆の場合、負荷オフの動作となる
注)過電圧アラームと逆接続アラームは直流電子負荷の負荷部を破損する恐れがあるのでアラームを検出した際には速やかに要因を取り除く必要がある
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