最大24チャネル、高分解能センサ・アクイシジョン・モジュール テレダイン・レクロイ SAM40
テレダイン・レクロイ・ジャパン株式会社(以下、テレダイン・レクロイ)から、12bit高精度オシロスコープ専用(HDOシリーズ)のセンサ・アクイシジョン・モジュール SAM40が発表された。専用オシロスコープと組み合わせて使用し、オシロスコープのチャネルに加えて最大24チャネルをサポートする。今回、テレダイン・レクロイのセールスエンジニア兼マーケティング部長の船越氏に新製品について紹介をしてもらった。

12bit高精度オシロスコープの登場
2012年、テレダイン・レクロイからオシロスコープの新しいトレンドとなる製品が発表される。それが12bit高精度オシロスコープ HDO4000シリーズとHDO6000シリーズだった。従来機種のオシロスコープでは垂直分解能は8bitであったが、12bit垂直分解能を実現したのが当時大きな話題となった。実に垂直分解能が16倍に高まったことになる。同社ではこれをHD4096高分解能テクノロジと称している。


HDO4096高分解能テクノロジを採用した初代12bit高精度オシロスコープ HDOシリーズ(2012年に登場)
HD4096高分解能テクノロジは、12bit A/Dコンバータによる高速サンプリング、高S/N比入力アンプ、低ノイズ・システム・アーキテクチャの3つが特長だ。12bit化されたことで、AD変換時の量子化誤差を低減させることができ、より忠実に波形表示をすることができる。とくに高分解能センサ信号を用いる組み込み/メカトロニクス設計のデバッグとトラブルシュートには最適なモデルだ。

HD4096高分解能テクノロジ。12bit A/Dコンバータによって一般的な8bitオシロスコープと比べて16倍の垂直分解能の効果を得られる。量子化誤差が最小限に抑えられ、忠実な波形再現性を得られるのが特長だ。
その後、このHDOシリーズ オシロスコープはさらなる進化を遂げ、2014年にはHDO8000シリーズとして8チャネル・12bit高精度オシロスコープへと性能・機能が向上していった。HDO8000シリーズでは、アナログチャネルが8つあるため三相電力測定も可能となる。このため、太陽光発電のパワーコンディショナの電力変換やEV/HEVなどの三相電力変換効率測定など、パワーエレクトロニクスにおいて有用なオシロスコープとして採用が増えてきたとのこと。また、HDOシリーズ オシロスコープは周波数帯域が最大1GHzをカバーし、オプションでロジック16チャネル(MSO)を追加できるため、高速化する複雑な組み込みシステムの評価まで対応することができる。

HDO8000シリーズ 8チャネル・12bit高精度オシロスコープ。MSOオプションによりロジック解析もサポートされる。
主な仕様 | HDO4000Aシリーズ | HDO6000Aシリーズ | HDO8000Aシリーズ |
---|---|---|---|
周波数帯域 | 200 MHz ~ 1 GHz | 350 MHz ~ 1 GHz | 350 MHz ~ 1 GHz |
チャネル数 | 4チャネル | 4チャネル | 8チャネル |
垂直分解能 | 12 bit | 12 bit | 12 bit |
サンプリング速度 | 2.5 GS/s | 2.5 GS/s | 2.5 GS/s |
メモリ(標準) | 12.5 M/ch | 50 M/ch | 50 M/ch |
MSO(オプション) | ロジック 16チャネル | ロジック 16チャネル | ロジック 16チャネル |
ディスプレイ | 12.1 inch | 12.1 inch | 12.1 inch |
※その他詳細な仕様はメーカカタログをご参照ください |
さらなる多チャネル測定の要望に応える
近年、組み込み機器のみならず機械システムでも電気制御の規模が拡大している。これらの多くの製品ではセンサを多用しており、製品評価の場合には回路信号だけでなく、温度、照度、速度、無線など、さまざまセンサ信号を含めたシステムデバッグを要求されることがある。
特に、パワーエレクトロニクスの世界では三相インバータなど電力変換効率などの測定には、電圧入力3つと電流入力3つを要求され、それだけで6チャネルの入力が求められる。これはMCUでシステム制御しているが、この制御信号の観測でロジック・チャネルを使用する。当然MCUはインバータだけでなく、周辺のセンサなども同時に制御することが多いため、より多チャネル測定を求められることが増えてきたとのこと。
データロガーは非常に多くのチャネルで測定することができるが、周波数帯域が広くないために組み込み機器のデバッグなどで測定条件を満たさない場合がある。一方で、オシロスコープはアナログ入力で8チャネルが限度であるため、温度、速度・加速度などセンサ信号を中心とした測定までカバーができない。このように、年々複雑化していくシステム評価において、回路信号のような高い周波数からセンサ信号のような低い周波数まで、さらに多チャネルで同期をとって測定したいという要望が高まってきたという。

新製品SAM40とHDOシリーズ オシロスコープのアプリケーションについて語った、テレダイン・レクロイ・ジャパンの船越氏。システムが複雑になることで、さらなる多チャネル測定の要望があったと語ってくれた。
そこで、テレダイン・レクロイからセンサ・アクイシジョン・モジュール SAM40と呼ばれる製品が発表された。この製品はオシロスコープ用データロガーの位置づけで、12bit高精度オシロスコープ(HDOシリーズ)と組み合わせて使用する。


SAM40(左)とHDO8000シリーズとSAM40の組み合わせ(右)データロガーのように測定データをオシロスコープに取り込むことが出来る。
センサ・アクイシジョン・モジュール SAM40の特長
周波数は最大40 kHz、サンプリング速度は最大100 kS/sを有している。主にセンサなどの測定を想定しているため、測定信号は数 kHzまでのアプリケーションが中心となる。チャネルは、8、16、24チャネルから選択することができ、すべてのチャネルで24bit分解能で高精度に測定ができる。

24bit 高精度測定の例
DC垂直ゲイン確度は約0.05%(±(0.02% of reading + 0.02% F.S. + 100μV) at 23°C ± 5°C)、帯域制限機能(100 Hz/ 500 Hz/ 2 kHz/ 10 KHzのフィルタ)があり、測定条件によって不要な周波数をカットして正確に測定することも出来る。
測定には、温度や速度などの物理量の測定が多いため、65種類以上のSIと英単位をサポートしているため、単位変換などが容易に行うことができる。

さまざまな単位変換サポートする
SAM40はHDOシリーズ オシロスコープと接続して使用するが、接続にはPlug-and-Playに対応しておりUSB2.0ケーブルとBNCケーブルで簡単に接続できる。HDOシリーズ オシロスコープの入力波形とSAM40の入力波形のすべてを同期して表示と解析が可能となっている。そのため、SAM40はHDOシリーズ オシロスコープの測定拡張性を広げ、複雑な組み込みシステムの評価とデバッグやメカトロニクスやパワーエレクトロニクスの解析や評価などに大きな威力を発揮すると言えそうだ。
主な仕様 | SAM40シリーズ |
---|---|
周波数帯域 | 40 kH |
サンプリング速度 | 1 S/s ~ 100 kS/s(全チャネル,Single Shot) |
入力チャネル | 8チャネル(SAM40-8),16チャネル(SAM40-16),24チャネル(SAM40-24) |
垂直分解能 | 24 bit |
DC垂直ゲイン確度 | ±(0.02 % of reading + 0.02 % F.S. + 100 μV) at 23 ℃ ± 5 ℃ |
入力インピーダンス | 1 MΩ |
帯域制限リミッタ | 100 Hz,500 Hz,2 kHz,10 kHz, |
※その他詳細な仕様はメーカカタログをご参照ください |
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