7シリーズDPO ~ 新世代の広帯域オシロスコープ テクトロニクス新製品発表会
テクトロニクスは9月16日(米国時間)にオシロスコープの新製品、7シリーズDPOを発売した。同社本社がある品川インターシティで報道関係者向けの製品説明とデモが行われた。従来のユーザインタフェースを継承しつつ、新しい機能・性能を備えた広帯域オシロスコープである。7シリーズは同社の新世代フラグシップで、第1弾として周波数帯域25GHzのDPO714AXが発表された。10月に公開した製品仕様の情報も加え、新製品の概要をお伝えする。
DPO714AX
外観と主な仕様
性能面ではDPO70000SXシリーズ(13GHz~70GHz)の改良版となる。70000SXよりも大画面で、GHz帯域の高機能モデルである5シリーズ、6シリーズと同じ15.6型になり、デジタル伝送で一般的となった多値変調※1の波形品質も確認しやすくなった。入力はアナログ4つとトリガ入力(Aux In)1つの合計5つ。DPO70000DX(8GHz~33GHz、通称 7万シリーズ)にはデジタル信号入力可能なMSOがラインアップされているが、現在はほとんどニーズがないという。プローブ・インタフェースはTekConnectのため、既存資産のプローブが使える。従来からの使いやすいユーザインタフェースを踏襲し、下位の3~6シリーズと操作部のデザインはほぼ同じである。PC波形解析ソフトウェア TekScopeや高速インタフェース TekHSIによって自動計測にも対応している。
(multilevel modulation) 従来high/low(1/0)の2値で符号化していた伝送方式(NRZなど)を、3値(PAM3)や4値(PAM4)にして送信性能を向上させた。2018年のテクトロニクス・イノベーション・フォーラムでは400Gbpsの多値アイパターンをオシロスコープで表示している。PAM4:Pulse Amplitude Modulation 4-level。
| 周波数帯域(オプションで指定) | 8GHz、10GHz、13GHz、16GHz、20GHz、25GHz(ユーザ・アップグレード可能) |
|---|---|
| オプション型名(必須指定) : 7-BW-8000(8GHz)、7-BW-10000(10GHz)、7-BW-13000(13GHz)、7-BW-16000(16GHz)、7-BW-20000(20GHz)、7-BW-25000(25GHz) | |
| 入力チャンネル数 | アナログ 4(TekConnect) |
| サンプル・レート | 125GS/s(全チャンネル) |
| レコード⻑ | 500Mポイント(標準)、1Gまたは2Gポイント(オプション) |
| ADC | 10ビット |
| 有効ビット(ENOB) | 7.5ビット@8GHz ~ 6.5ビット@25GHz、125GS/s、500mVフルスケール、フルスケールの90%の信号 |
| ランダム・ノイズ | 523μV(0.10%FS)@8GHz ~ 1.13mV(0.23%FS)@25GHz(0.23%FS)、500mVフルスケール |
| 固有ジッタ | 60fs(1μs) ~ 70fs(1ms) |
| ネットワーク・インタフェース | 10Gbps SFP+ポート と 1Gbps RJ-45 |
| オペレーティング・システム | クローズドLinux(標準)またはオープンWindows10(オプション)、リムーバブルSSDで提供 |
| ディスプレイ | 15.6型高精細静電容量式タッチ・スクリーン(1920×1080) |
| 寸法、質量 | 高さ326.4mm 幅454mm(ハンドルなし)/560mm(ハンドル含)奥行620mm、重さ38kg |
| 消費電力 | 最大1600W(100V-240V) |
業界最小クラスのノイズ性能と最高クラスの有効ビット
データセンタの拡大による消費電力の増大、信号の低電圧化による省エネが進行しているが、データ通信の世界では高速・大容量に対応して多値変調が普及している。小さな信号を正確に測定するには測定器のノイズ低減が必要になる。DPO714AXのノイズ性能は世界最高クラスの1.13mV@25GHz、垂直分解能(ENOB:Effective Number Of Bits、有効ビット)は 6.5ビット@25GHzである。オシロスコープのA/Dコンバータのビット数は電圧精度のため垂直分解能と呼ばれ、最近は10ビットや12ビットの高分解能モデルが増えている。「測定信号はA/Dコンバータに入る前に様々な系を通る。前段のアンプなどフロントエンド全体の有効ビット数をENOBという。ENOB性能向上のためにアンプを新規開発してノイズを抑えている。」(代表取締役 瀬賀 幸一氏)。ノイズとENOB性能を決めるシリコンベースのチップセットTek079、Tek085は、より高い周波数にも対応できる拡張性をもって設計されているという。
信号発生器(AWG70001)からPAM4の高速パルス列(約200ps、0.5Vpp)を70000SX(DPO73304SX)と7シリーズの両方に入力し、画面にアイパターン※2を描いた。7シリーズのアイの開き具合は74.5ps、87.93mVになっている。70000SXの周波数帯域を7シリーズと同条件で表示すると80.94mVで、7シリーズの方がアイの開口が広い。「7シリーズの方が高いノイズ性能のためEye Heightが大きい。両者の電圧は7mV程度の差だが、PAM4のアイパターン確認では大きな違いになる。」(営業技術統括部 アプリケーション・エンジニア 脇本 雄太氏)
(eye pattern)デジタル信号のパルス列を重ね書きした波形。波形が目(eye)のように見え、アイダイアグラム(eye diagram)とも呼ぶ。アイの開口度合いから視覚的にジッタなどの伝送品質を確認できる。
測定しながら、最大10倍の高速データ転送
お客さまの製品は多機能になり複雑化している。測定対象は高機能なので、デバッグでは多くのポイントの信号を測定する必要がある。複数点をできるだけ長時間、高速に測定したいが、オシロスコープが解析している間は信号を取り込めない。測定に使えない時間は無駄になり、効率が悪い。外部のPCにデータを送って解析をPCで行う場合、データを転送している間もオシロスコープは測定に使えない。これらが課題だった。7シリーズは外部にデータ転送しながら同時に測定ができ、データ転送速度は10Gbpsと従来の10倍である。内蔵している大容量メモリを使い、LAN SFP+※3端子から光ファイバで10Gbpsの伝送を行う。オシロスコープは波形を取り込むだけで解析はすべてPCで行うという手法をブラッシュアップさせた。
SFP+とは、1Gbps Eternet規格のSFP(Small Form-factor Pluggable transceiver)の10GbE版。光ファイバで高速通信を行う小型トランシーバ(送受信機)。SFP+モジュールはサイズ57×14×10mm内に変換器があり、機器のコネクタに差し込むと光ファイバを接続できる。読み方:エスエフピー プラス。
オシロスコープとPCをイーサネットでつないで測定データを転送する。70000SX(1Gbps)と7シリーズ(10Gbps)を比較すると、波形の更新速度(update rate)は49.79msから0.06msに向上している(図1)。「たとえばDisplayPort※4の評価では試験ごとに信号が規定されていて、コンプライアンステストをフルで行うときは信号を変えて数百回の測定(波形を測定して解析する、という繰り返し)が必要になる。7シリーズを使えば非常に効率があがる。」(脇本 氏)
ディスプレイのデジタルインタフェース規格。一般のOAパソコンはHDMIだが、高いリフレッシュレートが必要なゲームのモニタや高精細な画像編集などのビジネス/プロユースではDisplayPortが採用されている。
脇本 氏
5シリーズや6シリーズも同じだが、オシロスコープ内のWindowsで動いている解析ソフトウェアをそのままPCにインストールすると、オシロスコープと同じ操作ができる。2台の4chオシロスコープをPCにつないで同期をとれば8chオシロスコープになる。「7シリーズはデータ転送が速いので従来機種よりも操作の違和感がなくなる。」(脇本 氏)
ソフトウェアはモデリング機能を強化
従来からの高度な解析ソフトウェア(7-DJA ジッタ・アイダイアグラム解析など)に加えて、今回はモデリング機能を強化している。「プローブを当てた測定点から、本当に測定したい点の信号をシミュレーションすることを測定点移動と呼んでいる。従来はシミュレータが行っていた機能をオシロスコープの中に組み込んだ。シミュレーションは大変難しいが、当社は新しいテクノロジーによって実現した。解析ソフトウェアはAIを使ったIDE※5環境を提供する。」(瀬賀 氏)
(Integrated Development Environment) プログラミングに必要な「統合開発環境」。ソフトウェア開発を効率化するツールのこと。
DPO714AXの価格は26,600,000円(8GHz)からで、受注開始は9/16、出荷は9月後半予定(9/16時点)としている。7シリーズの開発には大手半導体メーカ、国立研究所、RFシステム・インテグレータなどの意見を参考に機能・性能をつくりこんだという。今後のラインアップが期待される。

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