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8チャネル対応、最高16bit垂直分解能オシロスコープ テクトロニクス 5シリーズ MSO

株式会社TFF テクトロニクス社(以下、テクトロニクス)から、複雑化するシステムの測定課題に対応する新しいオシロスコープ、5シリーズ MSO が提供された。新たに開発した専用ASICをはじめとして、ハードウェア/ソフトウェア・アーキテクチャを刷新した新基準のオシロスコープ・プラットフォームだ。今回は、テクトロニクス社の第1営業統括部の柴崎氏に5シリーズ MSOについて話を聞いた。

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エンジニアの測定課題が増えてきた

テクトロニクスは、古くからオシロスコープを世に提供し続け、電子計測のさまざまな場面で同社のオシロスコープが利用されてきた。これまでも、オシロスコープの基本性能の向上とともに、シリアル通信バス解析機能やロジック解析機能、各種測定ソフトウェア(パワー測定、ジッタ解析等)など、常にエンジニアの測定課題を解決するオシロスコープを提供してきた。

近年は、システムが複雑化するとともに、開発期間の短期化が進む傾向がある。エンジニアは、これまで以上により多くの範囲を、より効率的に評価やデバッグをする必要に迫られてきた。

測定課題変化

こうしたエンジニアの測定課題に対応するため、テクトロニクス史上において最大の開発努力をかけた新しいオシロスコープ・プラットフォームが、5シリーズ MSOだ。

アナログ・デジタル自由自在なチャネル構成と視認性の高い大型ディスプレイ

5シリーズ MSOは、とくにシステムの柔軟性と拡張性を刷新している点が特長だ。最近は、オシロスコープのアナログ・チャネルが不足しているといった測定課題が多い。特に、パワーエレクトロニクス分野では、三相モータやインバータ等のパワー波形計測などで6チャネル以上を求められるため、オシロスコープの多チャネル化の要望は高かった。このような背景から、8チャネル・オシロスコープを提供している計測器メーカは増えてきているが、今回、テクトロニクスも初めて8チャネル入力に対応している。モデルとしては、4チャネルのほか、6チャネルならびに8チャネル品を選択可能となっている。

5シリーズMSO

5シリーズMSOの正面。ディスプレイの大きさが際立っている。

しかし、単に8チャネルに対応したというだけでなく、5シリーズ MSOが特徴的なのは、FlexChannelと呼ばれる技術だ。これは、ひとつの入力部に対してアナログ・プローブとロジック・プローブの両方の入力に対応している。FlexChannel入力部にTLP058型ロジック・プローブを付けるだけで自動的にデジタル・チャネルとして認識される。エンジニアは評価するシステムにあわせて自由自在に測定チャネル構成を変更することが出来る。

例えば、8つのFlexChannelをすべてアナログ・プローブに割り当てて、アナログ8チャネル構成にすることができる。または、4チャネルをアナログ・プローブに割り当て、残りの4チャネルをデジタル・プローブに割り当てれば、アナログ4ch、デジタル32chといった構成にすることが可能だ。

FlexChannel

FlexChannelはチャネル構成の自由度が高いのが特長だ

8チャネル・オシロスコープのような製品は、ディスプレイの視認性とサイズ、操作性が重要となる。8チャネルになれば画面上に一度に多くの測定信号やデータを表示しなければならない。また、各チャネルの電圧軸設定など、それぞれスムースに操作できることが求められる。

5シリーズ MSOは、15.6型のフルHD(1980×1080)大型ディスプレイを搭載し、スマートフォンなどでお馴染みのタッチ操作が可能となっている。実際に製品を触れてみると測定画面は大きく、とても視認性に優れていた。

操作性では、本体右側に操作パネルが集約されている。各チャネルの垂直軸設定パネルは用意されておらず、共通の垂直軸設定パネルで操作する。設定したいチャネルボタンを押して、それぞれ設定を行なう。ディスプレイに表示されている波形の色と操作ボタンの色が同じになっており、設定するチャネルの間違えが起こらないような工夫がされている(下図では黄色)。また、設定の際にはチャネルボタンの周囲が操作ボタンと同じ色のLEDで点灯されるようになっているので、分かり易くなっている。筐体に対してディスプレイのサイズを大きくすると操作性が落ちる心配があるが、5シリーズ MSOは、視認性と操作性をうまく両立させている。操作性も含めた筐体デザインは、テクトロニクス本社で何台ものモックアップを作り、多くのエンジニアの声を反映させながら辿り着いたデザインであるとのこと。

5シリーズMSOパネル

設定チャネルはLEDライトで光るようになっている(写真左の設定パネル)。 操作パネルの拡大写真(写真右)

12bit ADコンバータを採用した新開発のASIC、大幅なシステム・アーキテクチャの刷新

一般に、オシロスコープの測定精度はアナログフロントエンドと信号処理回路の総合的な性能で凡そ決まる(正確には、プローブを含めたシステム全体で測定精度は決まる)。5シリーズ MSOの大きな改良点は、オシロスコープのADコンバータ部、デマルチプレクサ部、トリガ部、アクイシジョン部などの信号処理周辺部分を専用ASICで1チップ化をしたことだ。従来のプラットフォームはそれぞれが独立した回路・部品であったが、1チップ化によって測定誤差の要因となるものを最小化し、また、より多くの測定データを高速処理できるようになった。

このなかで、とくに注目なのが12bitのADコンバータを採用したことだ。一般のオシロスコープは8bitのADコンバータであるから、垂直分解能は従来の16倍に向上している(ハイレゾモードでは最大16bitの垂直分解能を得られる)。下図のように、8bitの場合(白)は分解能が不足しブロック表示のようになってしまっているが、12bitの場合は高い波形再現性を得られている。

12bit/8bit比較

8bit(白)と12bit(黄)の垂直分解能の比較。上部測定ポイントを拡大表示して比較している。

また、専用ASIC以外では、低ノイズなフロントエンドアンプの採用やシステム・アーキテクチャの変更などを行い、高精度な測定を実現できるプラットフォームへと刷新された。

下図は、従来機種(左)と5シリーズ MSOの測定比較である。いずれも同条件の設定となっている。従来機種はノイズに波形が埋もれてしまっているが、5シリーズ MSO(右)では、ノイズに埋もれることなくより忠実に波形を再現できている。微小な信号を観測する際になどに不要なノイズを抑えながら評価を行なうことができる。また、フルHDの大型ディスプレイのため視認性にも優れているのが分かる。

5シリーズMSO新旧比較

従来機種 MSO5204B(左)と新機種 5シリーズMSO(右)の同一条件での測定比較。5シリーズMSOは、12bit垂直分解能のおかげで波形の再現性が高まっている。

この他には、解析機能としてオプションで、シリアル・プロトコル・トリガ/解析、ジッタ解析(標準ツール「DPOJET」の基本機能は標準搭載)、パワー解析などをビルトインすることが可能であり、オプションライセンスを購入することですぐに利用することができる。

シリアルデコード

近年では一般的となったシリアル・プロトコル・トリガ/解析など、エンジニアに必須ツールも用意されている。

エンジニアのニーズに合わせてアップグレードが可能

これまでの一般的なオシロスコープは、周波数帯域やチャネル数など基本的なハードウェア要件を購入時点での選択を余儀なくされてきた。将来的に変化する測定要件に対して柔軟に対応することが困難であった。5シリーズ MSOは、周波数帯域やアプリケーション・ソフトウエアなどが、購入した後からアップグレードすることが出来る。購入時点では500MHzモデルを導入しておき、将来、1GHzや2GHzなどの高い周波数帯域が必要になった時点でアップグレードをすれば、初期投資を少なくできるほか、設備予算を有効に活用することが出来るようになった。投資を保護できるという観点からも特徴的なオシロスコープとなっている。

テクトロ柴崎様

株式会社TFF テクトロニクス社の柴崎氏。5シリーズ MSOをデモしながら解説してくれた。

また、基本仕様としては、周波数帯域は最大2GHz、サンプリングレートは最大6.25GS/s、レコード長はオプションで125Mポイントまで対応しており基本性能が高い。組み込みシステム、パワー解析など幅広いアプリケーションで測定ニーズに対応できる性能を有している。

5シリーズ MSOは、変化するエンジニアのニーズを汲み取り、プラットフォームを刷新した新世代のオシロスコープだ。旧来のオシロスコープを利用しているエンジニアには、是非この新しい製品を使ってみてもらいたい。

仕様

5シリーズMSOの主な仕様
基本仕様 MSO54 MSO56 MSO58
FlexChannel 4 6 8
最大アナログ・チャネル 4 6 8
最大デジタル・チャネル 32 48 64
周波数帯域 350 MHz、500 MHz、1 GHz、2 GHz
垂直分解能 12 bit(標準モード;3.125 GS/s)
16 bit(ハイレゾモード; 125 MS/s以下のサンプ・リングレート時)
※サンプリングレートによって垂直分解能が変わります
サンプリングレート 62.5 Mポイント(全チャネル;標準)
125 Mポイント(全チャネル;オプション)
波形更新速度 500,000 波形/s 以上
※その他詳細な仕様はメーカカタログをご参照ください

5シリーズ MSO のカタログはこちら

制作協力:株式会社TFF テクトロニクス社 ホームページはこちら

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