モータ・インバータの特性試験・バッテリ模擬試験に。高砂製作所 RZ-Xシリーズ 電力回生型 双方向直流電源
株式会社 高砂製作所(以下、高砂製作所)から、モータ・インバータなどのパワエレ機器開発に最適な電力回生型の双方向直流電源 RZ-Xシリーズが提供されている。高砂製作所の開発担当マネージャの難波氏とマーケティング担当の小池氏に、開発経緯に触れながらパワエレ機器開発などにおけるRZ-Xシリーズの双方向直流電源の有用性について紹介をしてもらった。

二次電池関連と自動車関連のお客さまの声から生まれた電力回生型 双方向直流電源
まずは、今回ご紹介するRZ-Xシリーズ 電力回生型 双方向直流電源の開発経緯について話を聞いた。
高砂製作所の電力回生型電源の市場提供は2000年まで遡る。この頃から、ハイブリッド自動車/ハイブリットバス、トラック、建設用重機、電車、太陽光発電などの特定市場のお客さまに対して、主に二次電池・モータ・インバータの評価試験用のシステム電源として電力回生型電源システム(下図 写真左)を提供してきた。このシステム電源は、スムースな充放電切替え・高効率・低ノイズが特長で、多くの導入実績を重ねてきた。

電力回生型の電源システム(左)、HXシリーズ直流電源(右)
一方で、電力回生型電源システムを導入した二次電池・モータ・インバータ関連のお客さまからは、10~50 kWクラスの電力回生型直流電源を提供して欲しいという要望を多く寄せられていたとのこと。また、2000年以降は、ハイブリット自動車(HV)や電気自動車(EV)などの開発が活況を見せ始めてきた頃だ。自動車関連企業のお客さまには、従来からHXシリーズの直流電源などを、自動車のインバータ・モータ試験などで利用されてきた。ただし、HXシリーズ直流電源(上図 写真右)は出力するのみの機能であった。自動車のインバータ・モータは二次電池やDC-DCコンバータと繋がっているために、双方向型の直流電源を提供して欲しいという声が多かったそうだ。
今回ご紹介するRZ-Xシリーズ 電力回生型 双方向直流電源は、これまで二次電池・モータ・インバータ関連のお客さまへの提供を通じて培ってきた回生に関する電源技術と、自動車関連のお客さまからの双方向直流電源への需要拡大にあわせて開発された直流電源となっている。

電力回生型 双方向直流電源 RZ-Xシリーズ
電力回生型 双方向直流電源の特長
ご紹介した開発経緯のように、RZ-Xシリーズ 電力回生型 双方向直流電源は、自動車業界のお客さまに焦点を当てられた仕様となっている。
1つめの特長は、2つの電圧範囲のラインナップが挙げられる。出力電圧が100 VのLタイプと750 VのHタイプが用意されており、自動車業界の市場動向を考慮されたラインナップとなっているそうだ。
Lタイプ(100 V)は、電池・モータ・電動パワーステアリングなどの電装品や低圧の電子部品などが対象になる。自動車の電子部品・システムによっては、電圧(12 V・24 V・48 Vなど)はそれほど高くないが、電流容量が必要とされる場合がある。こういった製品にはLタイプを選択するのが適切になってくる。
一方、Hタイプ(750 V)は、どんどん電圧が高くなってきている自動車のインバータ・コンバータ・バッテリなどの製品評価に適したモデルになっている。
型名 | RZ-X-10000-L (Lowモデル) | RZ-X-10000-H (Highモデル) |
---|---|---|
定格出力電圧 | +100 V | +750 V |
定格出力電流 | ±300 A | ±40 A |
定格出力電力 | ±10 kW | ±10 kW |
2つめの特長は、簡単に直並列接続が可能な点だ。RZ-Xシリーズでは、1台あたりの出力電力が最大±10 kWとなっており、複数台のRZ-Xシリーズを直列または並列に繋げることでお客さまの所望の電源構成にできる。最大接続台数は20台、最大出力は±200 kWまで柔軟に対応することが可能だ。また、一般的に面倒な設定を必要とする直並列の設定を、RZ-Xシリーズでは、通信ケーブルを接続するだけで簡単に行えるようにしている。そればかりでなく、直並列時の応答性のよさも強みの一つだ。こうした技術ノウハウをRZ-Xシリーズにも展開して製品化した。

直列・並列接続の構成図。最大20台で±200 kWを出力できる。
3つめの特長は、小型・軽量で取り回しが容易な点だ。2000年より提供してきた電力回生型電源システムは、ラックにて提供していたが、利便性を高めるため、ラックからユニット化へ設計見直しを図り「一体型」から「分散型」に構成をかえることで、1台当たりの小型・軽量・低価格を実現し、より多くの方にご使用いただけるようにした。また、簡単な直並列接続との組み合わせにより、小容量から大容量まで、多くの用途に最適に対応できるようになった。
このほか、表示操作部に7 inchディスプレイを採用している。操作性や視認性が高いため、電源の出力電圧値や電流値などの各種パラメータの設定を簡単に行えるなど、お客さまが使いやすくするという設計思想となっている。

回生型電源の重要な特性は低ノイズであること。高砂製作所のこだわり。
回生型電源は系統側に電力を戻すことになるが、このときにノイズが重畳されていると、系統で繋がっている工場・事業所全体にノイズが重畳された電源が供給されてしまい、誤動作や測定に影響及ぼすなどの原因となってしまう。このため、とくに回生型電源の場合は、回生電力のノイズが非常に小さいことが求められる。
高砂製作所は、電源の出力品質に非常にこだわった製品開発をしてきた。RZ-Xシリーズにもその設計思想を適用し、低ノイズな電源を実現している。
モータ・インバータ特性試験におけるバッテリ模擬に威力を発揮
RZ-Xシリーズが有効なアプリケーションに、モータ・インバータのバッテリ模擬がある。実際のバッテリを使ってモータ・インバータの評価試験を行なうには、指定条件の充電率・出力電圧の設定や充電・放電パターンなどを決める必要があり、とても難しい作業になる。
RZ-Xシリーズは、オプションで電池模擬運転機能が用意されており、リチウムイオン電池など二次電池の特性を専用PCアプリケーションソフトウェア(LinkAnyArts-BT)によって、電池充電率(SOC)に対応した電流-電圧特性(I-V特性)を編集し、簡単に設定することが可能になっている。設定したI-V特性は、LAN経由または本体単独で実行可能することができる。このオプションを利用することで、充放電出力パターンを簡単に作成することができ、お客さまの所望条件のバッテリ模擬を行なうことができる。
また、この他のオプションではプログラム運転機能が用意されており、お客さまが任意で電源出力のシーケンスを作成することができるため、バッテリ模擬だけでなく汎用的に利用することができる。こちらのオプションも、専用PCアプリケーションソフトウェア(LinkAnyArts-SC)で簡単に編集が出来る。

専用PCアプリケーションソフトウェア(LinkAnyArts-BT)
拡張性の高さと低ノイズで高品質。幅広いお客さまの試験ニーズに対応が可能。
今回は、モータ・インバータ特性評価のバッテリ模擬の例を中心に紹介したが、自動車関連だけでなく、太陽光発電のパワーコンディショナや大小の産業機器向けのモータ、インバータ、コンバータなどパワーエレクトロニクス機器の製品開発はさまざまな業種で増えている。幅広いお客さまの試験ニーズに対応することができるだろう。

株式会社 高砂製作所 マーケティング担当の小池氏。RZ-Xシリーズ 電力回生型 双方向直流電源について紹介してくれた。
仕様
RZ-Xシリーズ 電力回生型 双方向直流電源の主な仕様 | ||||
---|---|---|---|---|
仕様 |
RZ-X-10000-L (Lowモデル) |
RZ-X-10000-H (Highモデル) |
||
出力仕様 | 定格出力電圧 | +100 V | +750 V | |
定格出力電流 | ±300 A | ±40 A | ||
定格出力電力 | ±10 kW | ±10 kW | ||
定電圧特性(CV) | 設定範囲 | Highレンジ | +0.00 V~+102.00 V | +0.00 V~+787.50 V |
Lowレンジ | +0.000 V~+30.600 V | +0.000 V~+78.750 V | ||
設定確度 | Highレンジ | 設定値の±(0.1 %+0.1 V)以内 | 設定値の±(0.1 %+0.75 V)以内 | |
(出力電圧設定値+5 Vから適用) | (出力電圧設定値+20 Vから適用) | |||
Lowレンジ | 設定値の±(0.1 %+0.01 V)以内 | 設定値の±(0.1 %+0.075 V)以内 | ||
(出力電圧設定値+5 Vから適用) | (出力電圧設定値+20 Vから適用) | |||
設定分解能 | Highレンジ | 10 mV | 20 mV | |
Lowレンジ | 1 mV | 2 mV | ||
リップル(実効値) ※1 | 30 mVrms以内 | 100 mVrms以内 | ||
定電流特性(CC) | 設定範囲 | Highレンジ | -306.00 A~+306.00 A | -42.000 A~+42.000 A |
Lowレンジ | -30.600 A~+30.600 A | -4.2000 A~+4.2000 A | ||
設定確度 | Highレンジ | 設定値の±(0.2 %+0.3 A)以内 | 設定値の±(0.2 %+40 mA)以内 | |
(出力電圧+5 Vから適用) | (出力電圧+20 Vから適用) | |||
Lowレンジ | 設定値の±(0.2 %+0.03 A)以内 | 設定値の±(0.2 %+4 mA)以内 | ||
(出力電圧+5 Vから適用) | (出力電圧+20 Vから適用) | |||
設定分解能 | Highレンジ | 20 mA | 2 mA | |
Lowレンジ | 2 mA | 0.2 mA | ||
リップル(実効値) | 300 mArms以内 ※2 | 40 mArms以内 ※3 | ||
定電力特性(CP) | 設定範囲 | 電圧:H/電流:H | -10200 W~+10200 W | -10500 W~+10500 W |
電圧:H/電流:L | -3060 W~+3060 W | -3150 W~+3150 W | ||
電圧:L/電流:H | -9180 W~+9180 W | -3150 W~+3150 W | ||
電圧:L/電流:L | -918.0 W~+918.0 W | -315.0 W~+315.0 W | ||
動作電源 | AC180 V~AC250 V 3相 50 Hz/60 Hz | |||
外形寸法 | 430 mm(W)×355 mm(H)×650 mm(D) (突起物含まず) | |||
※1:測定周波数帯域 20 Hz ~1 MHz | ||||
※2:測定周波数帯域 20 Hz ~ 1 MHz 出力電圧+5 Vから適用(抵抗負荷) | ||||
※3:測定周波数帯域 20 Hz ~ 1 MHz 出力電圧+20 Vから適用(抵抗負荷) |
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