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2022/03/30

負荷を選ばない安定した出力〜エヌエフ回路設計ブロックHSAシリーズ高速バイポーラ電源

株式会社エヌエフ回路設計ブロック(以下エヌエフ回路)は老舗の大手計測器メーカで、電子計測器、電源機器、電子デバイス、カスタム機器・応用システムをつくっている。電子計測器では周波数特性分析器や微小信号測定器というオンリーワン製品があるが、計測用電源でも国内トップクラスである。特にバイポーラ電源は数十年の歴史がありラインアップが多く、顧客の需要に応えて製品追加やモデルチェンジを行っている。最近では広帯域モデルの高速バイポーラ電源の新製品HSA42012/42014を2020年に発売している。エヌエフ回路のバイポーラ電源の歴史、新製品開発の背景、今後の展望などを具体的なアプリケーションも交えて、同社 市場開発営業部 マーケティング営業企画グループ セールススペシャリスト 佐藤公治氏とパワー事業部 開発第3部 開発第3-1グループ グループマネージャ 家本悠氏に伺った。本稿ではバイポーラ電源とは何かも簡単に解説する。

バイポーラ電源とは

一般の計測用直流電源の出力は、電圧と電流がともにプラスかマイナスのどちらか同じ極性だが、バイポーラ電源は出力電圧のプラス・マイナスに関係無く、電流のソースとシンクが可能である。そのためI-Vグラフの第1象限から第4象限まで全領域で動作可能な増幅器である(図1)。

図1 バイポーラ電源の動作範囲(I-Vグラフ)

図1 バイポーラ電源の動作範囲(I-Vグラフ)

通常、CV/CC※1電源の出力電圧と出力電流の極性は同じである(図1の第1象限と第3象限が相当)。電源に接続する負荷によっては電圧と電流の極性が違うことがある。SMU※2は電圧がプラスとマイナスの2つの現象で動作する。たとえば図1の第1象限と第2象限が相当する。電圧がプラスで電流がマイナスなど、電圧と電流の向きが違うときは、電源が出力しているのではなく吸い込んでいるので、ソース(供給)ではなくシンク(吸収)と呼ばれる。最近増えた双方向※3電源もソースとシンクができる。シンクとは電子負荷の機能であるともいえる。

※1

(Constant Voltage/Constant Current)定電圧/定電流。一般に直流安定化電源には2つの動作モードがあり、設定した電圧(または電流)値の範囲内で、負荷状態に応じて自動的に定電圧(CV)や、定電流(CC)で動作する。

※2

(Source Measure Unit)電圧・電流発生(ソース)機能と測定(メジャー)機能がある、高精度な直流電源(電圧・電流発生器)。

※3

双方向とは接続を変えずに出力電流をプラス(力行・充電)からマイナス(回生・放電)にシームレスに変えること。双方向直流電源はインバータなどの評価用途に使われている。

電源につながる負荷が抵抗だけならソースで対応可能だが、キャパシタやインダクタ成分がある場合※4はシンクを含めた第1~第4の全象限に対応したバイポーラ電源が最適である。言い換えると負荷条件の影響を受けにくい電源である。バイポーラ電源の種類は大きく大容量(大電流)モデルと高速(広帯域)モデルの2つがある※5。前者の評価対象は自動車バッテリ関連機器だが、後者は高周波で駆動する素子などで、市場・アプリケーションがまったく異なる。

※4

キャパシタやインダクタに流れる交流信号は電圧と電流に位相差があるため、電圧と電流の極性が同じとは限らない。電圧と電流の瞬時値を4象限グラフ上にプロットすると、すべての象限を通過する。

※5

メーカによって種類は異なる。精密電力増幅器や、電圧範囲が特殊な車載機器向けモデルなどもある。

直流安定化電源には、外部からのアナログ信号を基準として、出力を増幅できる機種がある。バイポーラ電源も基準として入力できる周波数は500Hz程度だが、この周波数応答性能(出力が追従できる周波数)を、より高周波の100kHz~1MHz程度にした広帯域モデルがあり、高速バイポーラ電源と呼ばれる。帯域が広いとは高速(出力波形の立ち上がり時間が速い)ことで、高周波部品を実際の動作に近い状態で駆動できる理想的な電源である。コンデンサやコイルなどの電子部品、新デバイス開発時の試験で、他の電源・増幅器では駆動できないDUT(Device Under Test)も安定駆動できる。そのため高速バイポーラ電源は医療・バイオなどの先端研究分野でも広く使われる。

バイポーラ電源の仕様には周波数(や周波数帯域)が明記されているが、バイポーラ電源は交流電源ではなく、増幅器である。電源と増幅器の違いは、前者には信号源があり後者にはない。通常バイポーラ電源には信号源がなく※6、入力と出力があるだけなので、正確には「バイポーラ増幅器」である。英語表記はBipolar AmplifierでSource(電源)ではない。ただし長年バイポーラ電源と呼んでいるのでこの呼称が通っている※7

※6

一部のバイポーラ電源には発生器を持つモデルがあり、「信号源内蔵」と明記されている。エヌエフ回路のBPシリーズなど。

※7

最近では「バイポーラ電源(増幅器)」や「バイポーラ電源/電力増幅器」、「バイポーラ電源(パワーアンプ)」などの「増幅器」や「アンプ」という表現も見かける。

バイポーラ電源は計測用電源メーカがラインアップしている。エヌエフ回路は、電源機器の中の電力増幅器の項目に、24機種のバイポーラ電源がある(内13機種が高速バイポーラ電源※8)。菊水電子工業株式会社は直流電源の中の高速プログラマブル電源の項目に、25機種のバイポーラ電源がある(内20機種が大容量モデル※8)。最近は、自社開発したり海外製品を取り扱ったりする計測器メーカもあり、バイポーラ電源の選択肢は増えている。メーカによって分類は電源だったり増幅器だったりするが、品名は「バイポーラ電源」の場合が多い。

※8

両社HPの掲載機種数より(2022年3月現在)。

エヌエフ回路のバイポーラ電源の歴史と新製品開発の背景

バイポーラ電源を日本で初めて製造したのはエヌエフ回路である。1980年代初頭に発売された最新MOSFET※9の周波数特性が良いため、これを使い周波数帯域DC~1MHz、出力電力50VAの高速電力増幅器4005(広帯域のバイポーラ電源)を1985年に発売した※10。1987年には出力を100VA、200VAと高出力にしたモデル(4010~4025)をシリーズ化し、大容量モデルの先駆けとなった。広帯域モデル、高出力モデルともに、2020年からHSA42000シリーズにリニューアルを始めている。

※9

(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ。

※10

同社の社史の「交流電源・電力増幅器」の解説より。

図2 エヌエフ回路のバイポーラ電源の変遷

図2 エヌエフ回路のバイポーラ電源の変遷

MOSFETなどのトランジスタのスイッチング化が進み、バイポーラ電源に最適な素子が生産中止の傾向にある。従来は特徴的な電子部品を使いバイポーラ電源の機能を実現してきたが、廃止リスクがあるため内部の方式を変更し、HSA42000シリーズを開発した。今までに蓄積してきた多くのアナログ技術を使い、廃止リスクの少ない部品と新しい回路方式の採用で、性能を実現することに成功した。特徴的な素子を採用していないため、製品を安定的に供給できるようになった。品質の向上により、壊れにくくなり、安全性、使い勝手が増した。バイポーラ電源はデジタル系ではなくアナログの計測器のため、円熟した製品群で息が長い。これから数十年は現役の、スタンダードモデルHSA42000シリーズができたと自負している。

HSA42000シリーズの概要と特長

2020年7月にHSA(Hi Speed Amplifier)の新シリーズとしてHSA42011を発表した。主な仕様は周波数特性DC~1MHz、出力電圧150Vp-p、出力電流(AC)3Ap-pである。同年12月に出力電流6Ap-p(HSA42012)と12Ap-p(HSA42014)の2モデルを追加発売し、3モデルとなった。初出荷は2020年9月である。

当たり前なことだが、壊れにくく、負荷に強いことが一番の特長である。キャッチフレーズは「“負荷の影響を受けにくい”ではなく“負荷を選ばない”である」と佐藤公治氏は強調された。基本性能は従来機種と変わらないが、細かい違いはある(表1)。

モデル 4005 HSA4011 HSA42011
入力方式 A入力,B入力 またはA入力とB入力との加算
入力インピーダンス 50Ω,600Ω 50Ω/600Ω 50Ω/10kΩ
利得 ×10,20,50,100ステップ
×(1-3)連続可変(無負荷時の利得,入出力は同相)
×10,20,50,100ステップ
×(1-3)連続可変
×1,10,20,50ステップ
×(1-3)連続可変
利得確度 未定義 ±5%(固定利得:×1,×10,×20,および
×50,可変利得:CAL:400Hzにて)
最大出力電圧 RL≧50Ω 50Vrms (40Hz - 500kHz) RL=50Ω 50Vrms(40Hz - 500kHz) RL=50Ω 53Vrms(40Hz - 1MHz)
45Vrms (20Hz - 1MHz) 45Vrms(20Hz - 1MHz) 45Vrms(20Hz-40Hz)
RL≧100Ω ±75V(150Vp-p) (DC - 100kHz) RL=100Ω ±75V(DC - 100kHz) RL=75Ω ±75V(DC - 1MHz)
±70V(140Vp-p) (DC - 500kHz) ±70V(DC - 500kHz)
±65V(130Vp-p) (DC - 1MHz) ±65V(DC - 1MHz)
最大出力電流 DC - 40Hz ±0.75A(1.5Ap-p) DC - 40Hz ±0.75A(1.5Ap-p) DC - 40Hz ±1A
40Hz - 1MHz 1Arms(2.82Ap-p) 40Hz - 1MHz 1Arms(2.82Ap-p) 40Hz - 1MHz 1.06Arms(3Ap-p)

表1 旧モデルとの主な仕様比較

新製品で追加した特徴的な機能を1つ紹介する。従来モデルは利得設定に1倍(×1)がなかった。利得1倍とはバッファアンプと呼ばれる使い方で、電圧は変えずに電流だけを増幅する、増幅器の基本機能の1つである。たとえば電圧は1Vのままで変えずに、電流を0.3Aや1A流したいという用途があり、このような顧客ニーズにHSA42000シリーズは応えた。

図3 利得の設定機能

図3 利得の設定機能

アプリケーション例~圧電素子の高速駆動

圧電素子は圧電インバータ、圧電アクチュエータなどに使用されるが、インクジェットプリンタのインクを吐き出す部位にも圧電素子が使われている。高速に駆動するほど印刷スピードが速くなるため、圧電素子をより速く駆動する開発競争が各社で行われた。高速バイポーラ電源は圧電素子の駆動用に導入され、エヌエフ回路では2010年頃に最大の売上を記録した。別のいい方をすると、高速バイポーラ電源がインクジェットプリンタの製品開発、普及に貢献したといえる。

図4 圧電素子の駆動

図4 圧電素子の駆動

競合、シェア、今後の展望

HSA42000シリーズのメーカ標準価格(税抜き)は599,000円(HSA42011)~1,199,000円(HSA42014)。販売計画は公表していないが、「1990年頃にはバイポーラ電源は年商約3億円の商品群」※11だったことから現在はそれ以上の売上と推測される。バイポーラ電源の中で一番市場規模が大きいのは、自動車バッテリ関連機器評価用の大容量(高出力)モデルである。モデル数から推測するとエヌエフ回路はトップメーカと競うシェア2位と思われる。この分野は自動車の電動化で需要があるため、シーケンシャル信号源内蔵バイポーラ電源BPシリーズでトップシェアになりたいと思っている。二番目は高速バイポーラ電源(広帯域モデル)で、同社は50%以上のシェアだと自負している。高速バイポーラ電源で同社と並ぶラインアップ・性能の国内メーカはいないが、海外製品の動向は注視している。大容量と広帯域の2モデルをカバーしているため、バイポーラ電源全体での同社シェアは30%以上あると推定される。

※11

同社の社史の「交流電源・電力増幅器」の解説より。

高速バイポーラ電源のカタログ仕様は各社ほぼ同じで違いはないが、たとえば1,000pF程度の容量性負荷を接続しただけで発振が起きてしまう製品も他社にはある。エヌエフ回路は「容量性負荷も誘導性負荷も安定駆動し、負荷を選ばない」ことが売りで、カタログに現れないような性能と品質が他社との違いである。

現在、広帯域モデルの周波数は最大10MHz、電圧は35Vrms(10MHz)、大容量モデルの電流は100Aまで実現している。自動車関連で新しい要求が出てきたとき、それに応えられるかが腕の見せ所である。高速バイポーラ電源の需要は電子部品の進歩に連動する。たとえばコンデンサの素材が高周波化(高性能化)すると、評価用途で需要が増える。モバイル機器や車載機器、産業機器向けに需要が拡大しているMLCC※12は、現在も小型化・大容量化が進行している。新しい素材が開発され評価の需要があれば、それに応える製品を開発する。

※12

(Multi Layered Ceramic Capacitor)積層セラミックコンデンサ。誘電体と電極を多層にして小型化している。

おわりに

エヌエフ回路は創業時からアナログ技術を追及し、技術のすり合わせを蓄積してきた計測器メーカである。バイポーラ電源は発売当初からすでに高速モデルを製品化していたが、当時はそのような高速で測定する対象物はなく、使う用途がなかった。最近、電子部品が高速化したため脚光を浴びた。圧電素子の評価方法は、同社が駆動できるバイポーラ電源を提供することで確立したといえる。需要がなくても技術を持っていて、後から世の中がエヌエフ回路に追い付いてきた、とでもいう現象は同社を象徴している。今後も同社製品群が最新のアプリケーションに対応することが期待される。

佐藤公治氏(左)、家本悠氏

佐藤公治氏(左)、家本悠氏

主な仕様

型名 HSA42011 HSA42012 HSA42014
周波数特性 DC ~ 1 MHz
最大出力電圧 150 Vp-p
最大出力電流 AC 3 Ap-p、1.06 Arms 6 Ap-p、2.12 Arms 12 Ap-p、4.24 Arms
DC ±1 A ±2 A ±4 A
スルーレート 475 V/µs
利得 固定:x1、x10、x20、x50 可変:x1 ~ x3

HSA42000シリーズの製品詳細、カタログは こちら(会員様専用)

取材協力:

株式会社エヌエフ回路設計ブロックの製品ページは こちらから

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