校正トピックス「トルクレンチ (プリセット形) : 握り方でカチンの値が変わります。」
NKS流「ためしてガッテン ! 」
握り方でカチンの値が変わります。
長く握れば、強く楽に締め付けられると思っていませんか ?
プリセット形トルクレンチは、セットしたトルクでボルトの締付け作業等に使用します。(図1)
実際に使用する際は、人が手で握って力を加えるため、人によって握る位置が様々だと思います。(図2)
また、トルクは、力(N)× 長さ(m)によるため、長く持てば強く締め付けられると思いませんか ?
そこで、握る位置によって、どのくらい締め付けトルクに差が生じるのか検証してみました。


検証してみました。
トルクレンチの握る位置を変化させたときのトルク値を測定しました。
設定トルクは 50N・m にしました。
【検証に使用した測定器】
- ◎トルクレンチ(東日製) 型式 : QL100N-MH
- 仕様 : 20 ~ 100N・m、精度 : ±3 %
- ◎トルクレンチテスタ(東日製) 型式 : DOTE100N
- 仕様 : 20 ~ 100N・m、精度 : ±1 % +1目盛


検証結果から
手力線より25mm 長い位置を力点として測定した場合、50N・mに対して、10回平均で49.13 N・m(-1.7%)とトルクの値が小さくなり、
手力線から25mm 短い位置を力点として測定した場合、10回平均で50.95 N・m(+1.9 %)とトルクの値が大きくなりました。
長く持っても、強く締め付けられる訳ではないと分かりました。
中指を手力線に沿って握ることが重要です。
上記結果から、精度内では有りましたが、握る位置で締め付けトルクが変ってしまう事が分かりました。
プリセット形トルクレンチは、手力線上に力を加えた時に正しいトルクが働く構造になっています。
したがって、トルクレンチを使用する際は、
1)中指を手力線に沿わせて握り、手力線に力が加わるようにする。
2)トルクレンチに対し直角に力を加える。
3)勢いをつけずにゆっくりと力を加える。
ことが重要です。

また、カチンと言った後、元に戻さずに力を加え続けると、設定トルク以上の負荷が掛かり、締め付け部やトルクレンチ本体を損傷させてしまいます。
カチンと言ったら速やかに力を抜く事も重要です。
転載元「エヌケイエス株式会社」のホームページは こちらから