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学び情報詳細

電気測定器を基礎から学ぶ (第1回)

<連載記事一覧>

第1回:「はじめに」「電気測定器の歴史」「測定法の理解」「測定単位の話」「日本での電気測定器業界」

第2回:「デジタルマルチメータとは」「デジタルマルチメータの周辺ツール」「デジタルマルチメータを使うときの注意点」

第3回:「波形を測る測定器とは」「デジタルオシロスコープの構造」「オシロスコープを安全に使うために」(2024年12月中旬頃予定)

第4回:「オシロスコープ用プローブとは」「10:1受動プローブ」「AC/DC電流プローブ」「高電圧差動プローブ」(2025年1月中旬頃予定)

第5回:「測定器の校正の必要性」「トレーサビリティ体系の仕組み」「校正の種類」「電気測定器の長期使用」「校正事業者の仕事」「連載記事の終わりに」(2025年1月下旬頃予定)

はじめに

現在の生活の中では多くの電気を使った製品が使われている。これらの製品の開発、生産、保守では電気を測るということが必要となり、多くの電気測定器が使われている。

小学校3年生から電気について学ぶことが始まり、中学生になると電圧計や電流計を使ったオームの法則の実験やオシロスコープを使った音の波形の観測を行うことになり、ここから電気測定器を使いこなすことが求められるようになる。しかし大学までの学校教育の中で多くの人が最近の電気測定器について学ぶ機会は多くはないので、今回の記事が電気測定器を知る機会になればと思っている。

今回の連載記事では電気測定器を理解するための基礎知識から、よく使われるデジタルマルチメータとデジタルオシロスコープの基礎と使うための注意事項ついて解説する。最後に測定器を長期に渡って安心して使うための校正について解説する。

記事は気軽に読んでいただけるようにするために、可能な限り事前の知識がいらないようにした。

電気測定器の歴史

静電気の存在を検出する時代

古代ギリシャの技師であり哲学者でもあったタレス(Thalse 紀元前624年~547年)が植物の樹脂が化石となった琥珀(コハク)を布でこするとホコリや羽根などの軽いものを引きつけること発見したが、これが静電気によるものであるとは判らず、琥珀を布でこすると磁気が発生して琥珀が磁石に変わると考えた。その後、イギリスの医師であり物理学者あったウィリアム・ギルバート(William Gilbert、1544年~1603年)は磁石の研究を行うなかで、磁気と静電気は異なるものであることをバーソリウム(versorium)という簡単な構造の検電器を使って発見した。

図1. ウィリアム・ギルバートが静電気の存在を発見したバーソリウム

図1. ウィリアム・ギルバートが静電気の存在を発見したバーソリウム

ウィリアム・ギルバートは電気の存在を初めて知る装置を作ったので、現在では電気測定器を世界で初めて作った人になっている。

中学校2年生の理科の実験で静電気存在を検出するガラス瓶に入った薄検電器はバーソリウムと同じ原理である。

静電気の存在は知られるようになったが、人の生活の中で静電気が使われることは少なく、日本では江戸時代に西欧の文物を紹介した平賀源内(1728年~1780年)が長崎で手に入れたエレキテル(静電気発生機)をもとに作ったものが見世物や医療器具として利用されたくらいである。

電気計器(メータ)の時代

イタリアの物理学者のアレッサンドロ・ボルタ(Alessandro Volta、1745年~ 1827年)が1800年に正極に銅板、負極に亜鉛板を用いた電池を発明した。電池の発明の経緯についてはNHKが小学生向けや中学生向けに作成した下記の短い動画に判りやすく解説されている。

電池を発明したボルタ(小学生向け、NHK for School)
https://www2.nhk.or.jp/school/watch/clip/?das_id=D0005300739_00000

ボルタの電堆(でんたい)と電池(中学生向け、NHK for School)
https://www2.nhk.or.jp/school/watch/clip/?das_id=D0005401841_00000

電池が開発されたことによって電気を安定的に使えるようになり利用が始まった。これによって電気を測るという技術も生まれた。最初に登場するのが電気の流れを検出する仕組みである。デンマークの物理学者のハンス・クリスティアン・エルステッド(Hans Christian Ørsted、1777年~1851年)が1820年に行った実験で電流が流れると磁界が発生することが判った。エルステッドが行った実験は下図に示すとおりである。

図2. エルステッドの実験

図2. エルステッドの実験

電流が流れると磁界が発生することは中学校の2年生の時に学ぶ。中学校で行う実験内容は下記の動画にある。

導線に流れる電流と磁界(中学生向け、NHK for School)
https://www2.nhk.or.jp/school/watch/clip/?das_id=D0005401299_00000&p=box

電流により磁界が発生する仕組みを使って作られたのが電気計器(メータ)である。まず直流の電流を検出する電気計器が使われるようになった。またアメリカの技術者のニコラ・テスラ(Nikola Tesla、1856年~1943年)が1882年に交流発電機を発明したことから交流が広く使われるようになり、それに伴って交流の電流、電圧、電力を測ることができる電気計器が登場した。

測定精度が高い電気計器を作るためのさまざまな工夫がされるようになり、測定の標準となる精度の高い電気計器は下図に示すような大きなものであり、指針が示す値を高い精度で読める工夫もされた。

図3. ダイヤゴナル目盛とミラーが搭載された標準用電気計器

図3. ダイヤゴナル目盛とミラーが搭載された標準用電気計器

出典:電気計器の細密読み取りの歴史(松本 栄寿(横河電機) 、電気学会論文誌A 1997年117巻7号)

【コラム】昔使われていた標準用電気計器の実物に会えるダイニングバー

東京の秋葉原で測定器商社を営んでいる東洋計測器が運営しているダイニングバー「Gauge」には昔使われていた測定器が多く展示されている。この中に標準用電気計器もある。詳しくは下記の記事に書かれている。

秋の夜長は計測器を眺めながら。秋葉原で噂の計測器バー、FOOD&BAR「Gauge」

アナログ測定器の時代

アメリカの技術者のリー・ド・フォレスト(Lee De Forest、1873年~1961年)が1906年に三極管という信号を増幅できる真空管を発明したことによって電子機器が急速に発展した。真空管は1970年代くらいまでは広く使われていた。またアメリカの物理学者のジョン・バーディーン(John Bardeen、 1908年~1991年)、ウォルター・ブラッテン(Walter Brattain、1902年~1987年)、ウィリアム・ショックレー(William Shockley、1910年~1989年)が1947年に点接触型トランジスタを発明したことによって電子機器の小型化と省電力化が急速に進んだ。日本ではソニーがアメリカからトランジスタの特許を受けてトランジスタラジオを1955年に製品化した。

発明された真空管やトランジスタを使った電子回路が電気測定器で使えるようになり性能は大きく向上した。

図4. 真空管を使った測定器(電子管式自動平衡記録計(横河電機))

図4. 真空管を使った測定器(横河電機 電子管式自動平衡記録計)

出典:自動平衡記録計の発明(松本 栄寿(横河電機) 、オートメーション 2003年3月号)

デジタル測定器の現在

現在の電気測定器の多くはアナログ回路とデジタル回路により構成されており、それらをソフトウェアによって制御する仕組みになっている。これにより電気測定器は電気現象の可視化というだけではなく、取り込んだ測定結果を見やすい表現に加工することもできるようになってきた。また通信インタフェースを経由して外部のコンピュータと組み合わせて高度な解析も行えるようになってきた。

下図に示すように最近の電気測定器は測定結果をさまざまな表現で示せるよう大きな液晶画面を持つことが多くなってきた。

図5. デジタル技術を組み込んだ最近の測定器(パワーアナライザWT5000(横河計測))

図5. デジタル技術を組み込んだ最近の測定器(横河計測 パワーアナライザWT5000)

測定法の理解

測定の仕組みを理解するための考え方の基礎について解説する。測定法は高等専門学校や大学での教える内容であるため、測定器を使うだけの場合は知らなくても問題はないが、知っていたほうが測定器を理解するには役立つ。

直接測定法と間接測定法

さまざまな状態を定量化するには直接測定法と間接測定法の2つの方法がある。

直接測定法は測定対象を直接測定するものである。長さを「物差し」で測るといったことは直接測定となる。下図には物のサイズを異なる大きさの穴を通して直径の異なる玉を分別する装置の事例を示す。これは玉ねぎなどの大きさを選別する時に使われる仕組みである。同じ考え方で電圧信号をフラッシュ型A/Dコンバータを用いて測る場合を合わせて示してある。

図6. 直接測定法の事例

図6. 直接測定法の事例

間接測定は測定対象量と一定の関係にある他の量に変化して測定対象の量を導く方法である。例えば下図に示す通り、タンクにたまっている水位を測定する場合、水位と比例関係にあるタンクの下の圧力をベローズ(蛇腹状の金属製の風船)により変位に変えて水位を求めるので間接測定となる。電気の測定での事例では二重積分型A/D変換器を用いて電圧を測定する場合、積分器を用いて電圧値に比例関係にある時間を測って電圧値を求めるので間接測定にあたる。

図7. 間接測定法の事例

図7. 間接測定法の事例

偏位測定法と零位測定法

測定には偏位測定法と零位測定法という考え方がある。

偏位測定法は測定量を指針の振れなどに変換して測定量を知る方法である。下図に示すように測定対象の「重さ」がばねの伸びによって示す目盛りを読み取る「ばねばかり」が偏位測定法となる。電気の測定では「可動コイル型指示計器」で電圧を測定する場合が同じ考え方である。

図8. 偏位測定法による事例

図8. 偏位測定法による事例

偏位測定法は連続して変化する現象を観測できる長所があるが、測定量と指示の関係に不確かな要素があると偏位が大きいときは誤差が拡大するという欠点がある。

零位測定法は基準量とバランスが取れる仕組みを持つ仕組みで測定量を知る方法である。下図に示すように「天秤(てんびん)」では基準となる分銅(ふんどう)と測定対象をバランスさせて天秤の指針がゼロ点を示すようにして測定対象の重さを知る仕組みである。電気の測定では既知の電圧源と未知の電圧源を「電位差計」を用いて知る仕組みが同じ考え方である。なお天秤の仕組みは小学校6年生の理科で学ぶ内容であるが、ホイートストンブリッジや電位差計は高等学校の物理で学ぶ内容となっている。

図9. 零位測定法の事例

図9. 零位測定法の事例

零位測定法は基準値との比較であるため感度を上げて安定した量を正確に測定できる長所があるが、バランスをとるための操作が必要となるため連続して変化する量を観測するのが難しいという欠点がある。

測定単位の話

日本の計量制度の歴史

国を統治するためや取引を行うために古くから必要な「長さ、重さ、体積、時間」といった量を測ることは古くから続いている。下表は日本の計量制度の歴史を飛鳥時代から現代までを示したものである。

表1. 日本の計量制度の歴史
西暦 元号 計量制度のあゆみ
701 大宝1 大宝律令公布。度量衡制度を定める
1582 天正18 豊臣秀吉が太閤検地を開始。各地でまちまちだった計量単位を統一
1669 寛文9 江戸のますを京ますに統一
1891 明治24 度量衡法発布。メートル系原器を標準とする尺貫法を制定
1921 大正10 メートル法を基準とする改正・度量街法を発布
1951 昭和26 計量法制定
1959 昭和34 メートル法完全実施。商取引がメートル法に統一
1993 平成5 新計量法施行。国際単位系(望単位)への統一

日本では江戸時代までは日本国内での仕組みを統一することが主な目的であったが、明治時代以降は海外との取引が増えたので世界の仕組みに合わせる努力がされてきた。現在ではメートル法の後継として定められた国際単位系で取引を行うことが計量法で義務つけられている。日本が明治時代から時間をかけて尺貫法からメートル法へ移行を進めるために第二次世界大戦以前には多くの小学校にあった二宮金次郎像の高さを1mとしたという話が残っている。

図10. メートル法を普及させるために作られた高さ1mの二宮金次郎像

図10. メートル法を普及させるために作られた高さ1mの二宮金次郎像

注)写真は神奈川県小田原市の二宮尊徳を祀る報徳二宮神社にある1mの金次郎像

世界のほとんどの国では日本と同じようにメートル法が使われているが、1875年にメートル法条約に加盟しているアメリカではまだ「慣用単位」としてヤードポンド法の利用が認められているためアメリカ国内ではヤードポンド法による単位がまだ広く使われているという課題がある。下表に示すようにヤードポンド法とメートル法の換算は単純な関係ではない。

表2. ヤードポンド法とメートル法の関係

ヤードポンド法の
長さの単位
ヤードポンド法での
単位間換算
メートル法での
換算
1mi(マイル) 8fur 1.6093km
1fur(ハロン) 10ch 201.17m
1ch(チェーン) 22yd 20.117m
1yd(ヤード) 3ft 91.440cm
1ft(フィート) 12in 30.48cm
1in(インチ) 2.5400cm
ヤードポンド法の
面積の単位
ヤードポンド法での
単位間換算
メートル法での
換算
1ac(エーカー) 4046.9m2
ヤードポンド法の
体積の単位
ヤードポンド法での
単位間換算
メートル法での
換算
1bbl(バレル) 42gal 159.00ℓ
1gal(ガロン) 4qt 3.7854ℓ
1qt(クォート) 2pt 946.35mℓ
1pt(パイント) 473.18mℓ
ヤードポンド法の
質量の単位
ヤードポンド法での
単位間換算
メートル法での
換算
1lb(ポンド) 16oz 453.59237g
1oz(オンス) 7000gr 28.350g
1gr(グレーン) 64.799mg

世界で広く使われている国際単位系(SI)

国際単位系(SI)は18 世紀のフランスで生まれたメートル法をもとにしており、1960年に開催された第11回国際度量衡総会(CGPM)の決議にて採択され、接頭語、組立単位、以前から採用されていた補助単位などの包括的な規定が確立された。国際単位系を維持する国際度量衡総会に2019年現在で加盟国は59か国、准加盟国/経済圏は42か国となっている。

国際単位系では普遍的な常数を持つ7つの基本単位が決められている。このため高精度な測定技術があれば安定した基準となる。

表3. 7つの基本単位
物象の状態の量 計量単位 定義
長さ m(メートル) 1秒の299 792 458分の1の時間に光が真空中を伝わる行程の長さ
質量 kg(キログラム) プランク定数hを正確に6.626 070 15×10-34Jsと定めることに定まる質量
時間 s(秒) セシウム133の原子の基底状態の二つの超微細構造準位の間の遷移に対応する放射の周期の9 192 631 770倍の継続時間
電流 A(アンペア) 電気素量eを正確に1.602 176 634×10-19Cと定めることによって定まる電流
温度 K(ケルビン) ポルツマン定数kを正確に1.380 649×10-23J/Kと定めることによって定まる温度
物質量 mol(モル) 1モルは正確に6.022 140 76×1023の要素粒子又は要素粒子の集合体で構成された系の物質量
光度 cd(カンデラ) 周波数540テラヘルツの単色放射を放出し、所定の方向におけるその放射強度が1/683ワット毎ステラジアンである光源の、その方向における光度

その他の単位は基本単位を組み合わせて作られるのが組立単位となっている。国際単位系では下記に示す22の単位が決められており、基本単位との関係が示されている。また日常的に使用するリットル(L)や時間の分(min)などは国際単位系には属していないが、社会的・歴史的な観点から重要な単位であるため国際単位系と組み合わせて使うことが認められている。

表4. 国際単位系に示されている22の組立単位
単位の名称 単位記号及び基本単位による表現
平面角 ラジアン rad = m/m
立体角 ステラジアン sr = m2/m2
周波数 ヘルツ Hz = s-1
ニュートン N = kg m s-2
圧力、応力 パスカル Pa = kg m-1s-2
エネルギー、仕事、熱量 ジュール J = kg m2s-2
仕事率、放射束 ワット W = kg m2s-3
電荷 クーロン C = A s
電位差 ボルト V = kg m2s-3A-1
静電容量 ファラド F = kg-1m-2s4A2
電気抵抗 オーム Ω = kg m2s-3A-2
コンダクタンス ジーメンス S = kg-1m-2s3A2
磁束 ウェーバ Wb = kg m2s-2A-1
磁束密度 テスラ T = kg s-2A-1
インダクタンス ヘンリー H = kg m2s-2A-2
セルシウス温度 セルシウス度 °C = K
光束 ルーメン lm = cd sr
照度 ルクス lx = cd sr m-2
放射性核種の放射能 ベクレル Bq = s-1
吸収線量、カーマ グレイ Gy = m2s-2
線量当量 シーベルト Sv = m2s-2
酵素活性 カタール kat = mol s-1

大きな量や小さな量を表現しやすくするために、国際単位系では接頭語が決められている。科学技術の進化によって取り扱う量の範囲が広がったので、新しい接頭語が追加されてきた。最近では2022年に更新されている。

表5. 国際単位系に示されている接頭語の名称と記号、指数表記と制定年

名称 記号 指数表記 制定年
クエタ(quetta) Q 1030 2022
ロナ(ronna) R 1027 2022
ヨタ(yotta) Y 1024 1991
ゼタ(zetta) Z 1021 1991
エクサ(exa) E 1018 1975
ペタ(peta) P 1015 1975
テラ(tera) T 1012 1960
ギガ(giga) G 109 1960
メガ(mega) M 106 1960
キロ(kilo) k 103 1960
ヘクト(hecto) h 102 1960
デカ(deca) da 101 1960
名称 記号 指数表記 制定年
デシ(deci) d 10-1 1960
センチ(centi) c 10-2 1960
ミリ(milli) m 10-3 1960
マイクロ(micro) µ 10-6 1960
ナノ(nano) n 10-9 1960
ピコ(pico) p 10-12 1960
フェムト(femto) f 10-15 1964
アト(atto) a 10-18 1964
ゼプト(zepto) z 10-21 1991
ヨクト(yocto) y 10-24 1991
ロント(ronto) r 10-27 2022
クエクト(quecto) q 10-30 2022

日本では取引又は証明の使用が認められる単位は計量法によって決められている。計量法では国際単位系に加えていくつかの単位の使用は認められており、現在、計量法で定める72の物象の状態の量に対応する計量単位を法定計量単位として規定して、法定計量単位以外の計量単位は取引又は証明に用いてはならないことになっている。ただし航空分野などの一部分野において当分の間は取引又は証明への使用が認められている計量単位がある。計量法では認められていない単位系での取引や証明を行った場合は罰則の対象になるので注意が必要となる。

【解説文書紹介】

国際単位系について詳しく知りたい場合は、産業技術総合研究所計量標準総合センターが作成した下記の解説書に詳しく書かれている。

国際単位系(SI)は世界共通のルールです【2023年3月版】
https://unit.aist.go.jp/nmij/public/report/pamphlet/pdf/SIdata.pdf

日本での電気測定器業界

電気測定器が使われる分野は幅広くあるため、用途に応じたさまざまな測定器が作られている。使われる技術もさまざまであるため、日本国内では多くの測定器を作るメーカや海外のメーカが作った測定器を輸入販売する会社がある。また日本国内では制御機器や電気測定器を作るメーカの業界団体として日本電気計測器工業会(JEMIMA)がある。

電気測定器の分類

日本電気計測器工業会では下図のように電気測定器を分類して業界統計を取って、毎年12月に公開する「電気計測器の中期見通し」の中で統計値と今後の予測を発表している。

図11. 日本電気計測器工業会が定めている測定器の分類(2024年現在)

図11. 日本電気計測器工業会が定めている測定器の分類(2024年現在)

汎用測定器は幅広い業種で使われるため、安定した需要があり変動は大きくない。通信用測定器は有線や無線の通信機を試験するために使われる。最近では通信方式ごとに測定器が作られることもあり、通信方式が更新されると需要が一時的に大きくなる特長がある。エネルギー管理用測定器は開発・設計から点検・保守に使われる電圧・電流・電力を対象にする測定器であり、安定した需要があり変動は大きくない。

【コラム】電気の長い歴史が判る絵画

電気の歴史と発展に貢献した100名を超す人物をフランスの画家のラウル・デュフィ(Raoul Dufy、1877年~1953年)が10m×60mの巨大な壁画「電気の精」として1937 年のパリ万国博覧会の光の館に展示するために描かれた。現在はパリ市立近代美術館に展示されている。パリ万国博覧会が開催された当時は電気の利用が進んだため、当時の人にとって電気への関心が高まった時期でもある。また当時は電子回路を使った電気測定器の黎明期であり、アメリカのGeneral Radio社が1931年にブラウン管を使った実用的なオシロスコープ506Aを初めて売り出した時代である。

「電気の精」は美術的な価値に加えて、電気の長い歴史を改めて知る機会になる。詳しくは下記の電気学会のホームページに紹介されている。またこのページからパリ市立近代美術館の「電気の精」を紹介する日本語ページに移ることができるようになっている。

パリ市立近代美術館「電気の精」のご紹介(電気学会)
https://www.iee.jp/blog/la_fee_electricite/

パリ市立近代美術館の日本語紹介ページの作成は電気学会電気技術史技術委員会から指名を受けた日本人5名の「電気の精研究チーム」が担当した。

執筆:魚住 智彦 測定器メーカに長年勤務して、現在は測定器の解説記事を執筆している

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