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2022/04/26

初めて使うデジタルマルチメータ・・・第2回 「デジタルマルチメータの基礎知識」

連載記事一覧
第1回:デジタルマルチメータが届いたら最初にすること
「はじめに」「6.5桁ベンチトップ型のデジタルマルチメータのパネル」「パネルに書かれた警告表示」「テストリード」「電源の投入と日付時刻の設定」
第2回:デジタルマルチメータの基礎知識
「直流電圧を正確に測る歴史」「現在のデジタルマルチメータの構造と機能」「デジタルマルチメータの選定」「【ミニ解説】測定カテゴリーとは」
第3回:直流電圧の測定と仕様の見方
「直流電圧を測定するための結線」「デジタルマルチメータの直流電圧測定の仕様表現」「直流電圧を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「直流測定で発生する誤差要因」「1000Vを越える直流高電圧の測定」「微小な直流電圧の測定」「【ミニ解説】デジタルマルチメータで採用されている安全端子」
第4回:交流電圧の測定と仕様の見方
「交流電圧を測定するための結線」「平均値検波と実効値検波の違い」「交流電圧測定での周波数帯域」「デジタルマルチメータの交流電圧測定の仕様表現」「交流電圧を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「歪んだ波形を測る際の注意点」「750Vrmsを越える交流高電圧の測定」
第5回:抵抗の測定と仕様の見方
「抵抗を測定するための結線」「デジタルマルチメータの抵抗測定の仕様表現」「抵抗を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの2端子測定での抵抗測定の操作手順」「4端子式測定を行う場合の注意事項」「高抵抗を測定する際の注意事項」「【ミニ解説】直流による抵抗測定と交流による抵抗測定」
第6回:直流/交流の電流測定と仕様の見方
「直流電流を測定するための結線」「デジタルマルチメータの直流電流測定の仕様表現」「直流電流を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの3Aレンジ以下の直流電流測定の操作手順」「電流入力端子に実装されている保護用ヒューズの断線を防ぐ」「直流電流測定時の注意事項」「10Aを越える直流電流の測定」「交流電流を測定するための結線」「デジタルマルチメータの交流電流測定の仕様表現」「交流電流を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの3Aレンジ以下の交流電流測定の操作手順」「10Aを越える交流電流の測定」
第7回:周波数測定と仕様の見方
「周波数を測定するための結線」「34461Aで採用されているレシプロカル・カウント方式」「34461Aで設定可能なゲート時間」「34461Aの周波数測定の仕様表現」「周波数/周期を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの周波数/周期測定の操作手順」「【ミニ解説】ユニバーサル・カウンタとの違い」
第8回:温度測定と仕様の見方
「温度を測定するための結線」「【ミニ解説】さまざまな温度センサ」「34461Aの温度測定の仕様表現」「温度を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの温度測定の操作手順」「【ミニ解説】温度測定で使われる多点温度計」
第9回:導通/ダイオード試験、容量測定
「導通/ダイオード試験をするための結線」「34461Aでの導通試験の操作手順」「34461Aでのダイオード試験の操作手順」「コンデンサの容量を測定するための結線」「34461Aの容量測定の仕様表現」「容量を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの容量測定での操作手順」「【ミニ解説】正確にコンデンサの容量を測定するときはLCRメータを使う」
第10回:デジタルマルチメータをシステムで使う
「デジタルマルチメータをシステムで使う」「外部トリガ入力と測定完了出力端子」「外部トリガ機能の設定」「34461Aに搭載されている通信インタフェース」「ラックを選定する際の注意点」「測定システムのノイズ対策」
第11回:デジタルマルチメータの周辺アクセサリ
「測定器メーカが用意しているアクセサリ」「DC結合電流プローブ」「30A電流シャント抵抗」「ターミナル・コネクタ」「34401Aから34461Aへの置き換え」
第12回:キーサイトの新しい教育向け汎用測定器
「【インタビュー】キーサイト・テクノロジーが考える教育向け汎用測定器」

直流電圧を正確に測る歴史

直流電圧を正確に測りたいという要求は電気の歴史とともに始まった。19世紀に電位差計や精度の高い電気計器(メータ)が登場して、第二次大戦後にデジタルボルトメータが登場するまでの長い間利用されてきた。電位差計や精度の高い電気計器は精密機械であり、取り扱いには熟練が必要であった。

第二次世界大戦後に電子回路技術が急速に発展し、最初に登場したのが機械式のリレーを用いたデジタル電圧計であり、その後すべてが電子回路によって構成されたデジタル電圧計が開発された。デジタル電圧計の登場によって測定値は数字で読み取ることができため測定作業の効率化ができるようになった。直流電圧以外の測定もできる現在のデジタルマルチメータの原型は1960年代に完成している。

図12.  正確に直流電圧を測る測定器の歴史

図12. 正確に直流電圧を測る測定器の歴史

デジタルマルチメータとリレースキャナやリレーマトリックスを組み合わせた測定システムが作られ測定の効率化が一層進んだ。1970年代になると小型コンピュータや測定用の通信インターフェースGPIBが登場して自動測定システムを容易に構築することができるようになった。

現在のデジタルマルチメータの構造と機能

現在販売されているデジタルマルチメータは直流電圧を測定する高分解能A/Dコンバータとさまざまな信号を直流電圧信号に変換する入力回路によって構成されている。

入力端子はケースと絶縁されているため、コモンモード信号が印加されている信号源の電圧を安全に測ることが可能となっている。テストリードを商用電源のコンセントに直接繋いで交流電圧を測定しても危険がないのは入力端子が絶縁されているためである。なお一般的なオシロスコープの入力端子は絶縁されていないので、商用電源に直接接続することは測定器の破損や感電する危険があるので絶対行ってはならない。

図13. 一般的なデジタルマルチメータのブロック図

図13. 一般的なデジタルマルチメータのブロック図

デジタルマルチメータに使われる高分解能A/D変換器は積分型もしくはデルタシグマ(ΔΣ)型が使われている。上図は動作が判り易い積分型A/D変換器を使ったブロック図となっている。

デジタルマルチメータは直流と交流の電圧と電流および抵抗を測る基本機能だけではなく、最近のデジタルマルチメータでは周波数測定や温度測定など付加的な測定機能を持つものがある。付加的な測定機能は利用上の制約があるため注意が必要である。付加的な測定機能では要求される測定できない場合はほかの種類の測定器が必要となる場合がある。

デジタルマルチメータで測定できる項目は下図に示すとおりである。なお、今回の解説記事で使う34461Aは交流電圧と交流電流の測定は実効値のみとなっている。その他の測定機能はすべて本体に含まれている。

図14. デジタルマルチメータの測定機能

図14. デジタルマルチメータの測定機能

デジタルマルチメータの選定

デジタルマルチメータはさまざまな分野の研究者、技術者、技能者が利用する基本的な測定器であるため、多くの測定器メーカから販売されている。

デジタルマルチメータは下図に示すように用途に応じて製品が作られているため、さまざまな種類がある。まずはどの種類の製品を使うかを決める。

図15. デジタルマルチメータの種類

図15. デジタルマルチメータの種類

利用者にとって最適なデジタルマルチメータを選択するには選んだ種類のデジタルマルチメータの基本仕様の比較を行う必要がある。今回の解説記事で使うデジタルマルチメータ34461Aの基本仕様は下記の通りとなっている。

表示桁数 6½桁
基本直流測定確度 0.0035%(読み値誤差)
最高測定速度 1000回/秒(4½ 桁時)
メモリ 10,000個の読み値
測定機能 DC電圧、AC電圧、DC電流、AC電流
2線および4線式抵抗測定、周波数、周期
導通、ダイオード 、温度、キャパシタンス
リア入力端子 あり
インタフェース USB、LAN/LXI Core、GPIB (オプション)

表1. 6.5桁ベンチトップ型のデジタルマルチメータ34461Aの基本仕様

多くの場合はこれだけの仕様項目を比較するだけなので、デジタルマルチメータの機種選定作業は効率的に行うことができ、目的にあった最適なデジタルマルチメータ本体を選ぶことができる。

本体以外に注目しなければならないのはアクセサリである。マルチメータには用途に応じたさまざまなアクセサリがあり本体とともに選ぶ必要がある。

【ミニ解説】測定カテゴリーとは

デジタルマルチメータを使って商用交流電源の電圧を測定する場合があるので、安全確保のため規格(EN61010 シリーズ、JIS C 1010 シリーズ)によって使える範囲が規定されている。利用者はデジタルマルチメータ本体に表示されているカテゴリー番号の範囲で使用することが求められている。

図16. 測定器のパネルに書かれているカテゴリー表示と利用できる範囲

図16. 測定器のパネルに書かれているカテゴリー表示と利用できる範囲

一般に電池で駆動するハンドヘルド型のデジタルマルチメータは電気工事に使われるため、カテゴリー番号は大きくなっている。

ハンドヘルド型の安価なマルチメータにはカテゴリー番号が小さなものがあるので、安全に利用できる範囲は狭くなっているものがあるので注意が必要である。


執筆:横河レンタ・リース株式会社 事業統括本部 魚住 智彦

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