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単位と計測 (後編)

前回に引き続き、単位について後編をお届けします。(前編はこちら


① 単位

T&Mの世界では、測定値は基本とするSI(国際単位)で表します(表1)。さまざまな現象を測りますが、基本となる測定量は7つしかありません。測定対象に応じて、測定結果は種々の量(単位)で表示されますが、詳しく調べれば表1の基本量の組み合わせで構成されていることが分かります。

表1

■例
速度(m/s): メートル毎秒
密度(kg/m3): キログラム毎立方メートル
物質量: モルは化学分野の基本量です。

SIはメートル法が基本です。日常生活がメートル法でない国の製品であっても、計測器の仕様書などの技術書類はSIに則り、メートル・kgで表記されています。

例えば、米国では日常生活でインチやポンドですが、Keysight Technologies社やTektronix社の製品カタログ・取扱説明書などはメートル・kgで記されています。

(参考)米国のように、メートル法でない単位(マイル、フィート)が日常的に使用されている国もありますが、日本では計量法により、メートル法でない単位(例:インチ、ポンド、尺、升)の使用は禁じられています。

(1)単位と接頭語

単位の頭に付する倍率記号を接頭語といいます。(表1)全部で20種類の記号が定められています。一般に使用されるのは1,000倍単位の接頭語です。(表2)

■使用例
mA(ミリアンペア)、ns(ナノ秒)、km(キロメートル)、cm(センチメートル)、mm(ミリメートル)


(2)単位と発見者

多くの単位は、発見者の名前が付けられています。単位表記の先頭の文字がアルファベットの大文字のものは、発見者の名前に由来する単位です。科学技術歴史を見るような気がします。

■例 記号(名称/人名:測定量)
A(アンペア: 電流)、K(ケルビン: 温度)、℃(セルシウス度/セルシウス: 温度)、V(ボルト: 電圧)


T&Mと国家

「測れないものは、作れない」といわれるように、計測・計量は産業の基盤であり、国家の重要事項なので、単位の基になる国家標準の整備・管理にも国が関与しています。

計測・計量の基準を定めること、適正な計量を実施することは、工業だけでなく商業や貿易の発展、すなわち、国力の充実に必須なのです。人類の歴史を振り返ると、国家の成立と同時に計測計量の確立が行われてきたことが分かります。今から4000年以上前のエジプトでは、ファラオが長さの標準を定め(標準=ファラオの腕の長さ)、ピラミッドの建設現場では、花崗岩や木で作られた測定器が使用されました。さらに、満月のたびごとの校正が義務付けられ(定期校正、校正周期=28日)、この義務を怠ったり、無視した者は厳罰(死刑)に処されました。壮大なピラミッドは、厳格な計測管理があって、はじめて実現可能になったのです。

表2

現代の日本では、計量法により、法律・制度の面を規定し、JISによって技術的な面(測定方法や機器が備えるべき仕様など)を規定しています。計量法の中で、校正管理に関係する事項は、以下の章です。第2章 計量単位( 第3条~第9条)(国際単位系に係る計量単位)、第7章 適正な計量管理 (第122条~第133条)、第8章 計量器の校正等( 第134条~第146条)。 計量法に違反すると、刑罰(罰金)に処せられます。

国家計量標準の供給を示します。(表2)

さらに、国家間の計量標準の整合も図られています。国際度量衡局によるグローバルMRA(国際相互承認協定)により確保されています。これにより、パリの1mも、東京の1mも、同じ長さであることが保証されます。

夏休みで海外旅行に行かれる方は、行き先で、どんな単位が使われているか、ちょとだけ、気をつけてみてください。



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