計測・測定の基礎 | 試験用交流電源
試験用交流電源
世界中に輸出される製品は、各国の商用電源で確実に動作しなければなりません。各国の電源仕様にあわせるのは当然ながら、日本とは比べ物にならない劣悪な電源事情の国々もあります。理想的な電源波形だけでなく、悪条件な電源波形をシミュレーションできる電源が交流電源です。
写真1. 交流電源の例
PCR-LE/LE2シリーズ
出典:菊水電子工業
ESシリーズ
出典:エヌエフ回路設計ブロック
ところで、商用電源はきれいなサイン波だと思っていませんか。確かに電力会社は歪のない50/60Hzの電源を供給すべく務めています。しかし需要家である事業所、工場、家庭で使われている電気製品によって歪んだ電流が逆流しているのです。
白熱電球やニクロム線を使ったトースターなど、抵抗負荷の場合には流れる電流もサイン波になります。しかしほとんどの製品に使われているスイッチング電源は電圧のピーク周辺で電流が流れ、それ以外の区間では電流が流れません。このため電源配線の抵抗成分によりサイン波である電圧波形のピーク部分が平らになってしまいます。歪んだ電流波形は多くの高調波成分を含み、外部に流出する電流成分もでてきます。
図1. 高調波電流の逆流
この高調波電流が受電設備で火災を起こしたりする原因となり、現在では「高調波電流規制」として製品カテゴリー、消費電力により総量が規制されています。
この高調波電流を測定するには歪のないきれいな電源が必要です。交流電源はこの測定にも使われています。
図2. 高調波電流の測定
様々な交流を供給する
交流といっても商用電源だけではありません。様々な周波数、形状の交流を供給できるよう、いわば電力を供給できる信号発生器ともいえる電源があります。交流の場合、電流の位相は負荷によって、誘導性なのか、容量性なのかにより変化します。戻る電流もありますので電力の吸収もできなければなりません。そのためバイポーラ電源という製品が用意されています。
図3. バイポーラ電源の4象限
バイポーラ電源とは、負電圧から正電圧、負電流から正電流のそれぞれの領域において、図3のように第1象限から第4象限の全領域で動作できる電源のことを差します。自在に電源波形の生成ができるだけでなく、シーケンス設定が行えるものもあり、さまざまなテストで活用されています。
他の基礎コラムはこちらから