計測・測定の基礎 | 直流電源を供給する
電子回路の実験では直流電源がよく使われます。
-
出力電圧
-
出力電流
-
最大出力電力
の制限があります。多くの直流電源では最大出力電力の制限により最高出力電圧時に供給できる電流、または最大出力電流時に印加できる電圧には上限があります。
図1. 直流電源の動作領域例
加えて場合によっては電源の動作形式に留意が必要です。
レギュレータ方式
一旦商用電源を整流して直流を作ります。この段階で電源周波数×2の電源ノイズが重畳します。整流された直流をパワートランジスタ回路に直列に挿入し、出力電圧をコントロールします。出力電圧はフィードバックされて、商用周波数由来のリップルや負荷変動を取り除きます。電源としてはノイズやリップルが小さく優れていますが、出力電圧が低いほどトランジスタで消費される電力が大きくなります。
図2. レギュレータ方式の基本回路
写真1. レギュレータ方式の直流電源の製品例
菊水電子工業 PAN16-18A(レギュレータ方式)
16V/18A 350W
リップル: 0.5mVrms
図3. レギュレータ方式のリップルの例
スイッチング方式
現在では多くの直流電源は効率の良いスイッチング方式を採用しています。この電源では一旦商用電源を整流して作られた直流電圧はスイッチング回路にてチョッピングされ、積分回路により再び直流になります。チョッピングの段階でデューティ比を変えることで出力電圧を可変できます
図4. スイッチング方式の基本回路
写真2. スイッチング方式の直流電源の製品例
菊水電子工業 PAS20-18(スイッチング方式)
20V/18A 350W
リップル: 7mVrms/60mVp-p
図5. スイッチング方式のリップルの例
スイッチング回路は動作周波数を高める程、トランス類を小さくできますので小型・軽量が実現できます。しかしスイッチングノイズが多いという欠点があります。アナログ回路の検証においては、このノイズが問題になることがあります。“動作不良はまず電源を疑う”この鉄則はここでも活きています。
それぞれの方式の違いを簡潔にご紹介してきました。レギュレータ方式とスイッチング方式の直流電源の特徴は表1のようになります。電源ノイズの影響に敏感なアプリケーションなどではレギュレータ方式の直流電源を選択するなど、測定対象の仕様や性能目標などに応じて直流電源の特徴を考慮しながら利用することをお勧めします。
方式 |
レギュレータ方式 |
スイッチング方式 |
---|---|---|
大きさ |
大きい |
小さい |
重さ |
重い |
軽い |
ノイズ |
小さい |
大きい |
消費電力 |
大きい |
小さい |
価格 |
高価 |
安価 |
他の基礎コラムはこちらから